フォーラム記事

フィニ
2020年6月30日
In デジモン創作サロン
目を開けると、眩しく動くオレンジ。紺色の背景。少しずつピントが合う。眩しいのは焚き火。それを座って見つめる君。あぁ、もう夜なんだ。 目が赤く腫れてるね。水を勢いよく飲んで、口の端から溢れてる。顎をつたって、肩から掛けてるのは…ねぇ、それ僕の大事な毛皮じゃない?濡れてない? 僕はまた君を泣かせちゃったんだね。 やっと戦えるようになったのに。今日からは君に頼って貰えるって、そう思っていたのに。 第二幼年期の頃からトレーニングをいっぱいして、それでも無理はさせないようにって、君はいつも僕を気遣ってくれたね。何かあるとすぐに僕を抱っこして、目の高さを合わせてくれて、 「痛くない?無理してない?」 って困ったように笑いかけて、なでなでくれる。元気だよって伝えたくて、まだ言葉を持たなかった僕は、その手を甘噛みするんだ。そうすると笑ってくれるから。気遣ってくれる優しい問いかけも安心できるけど、ちゃんと笑った顔の方が好き。 今日も、ただ笑って欲しかったんだ。やったねって一緒に喜んでほしかったんだ。 今朝やっと僕は成長期に進化した。つまりトレーニングだけじゃなく、誰かとバトルができるようになったって事だ。単純に嬉しかった。強くなれた。なれた気がしてたんだ。これまでより大きくて強くて頼もしい、今度は僕が君を守ってあげられるような存在に。 僕のデビュー戦は惨敗に終わった。憧れたミスリルの毛皮の持ち主に。「負け」なんて優しいものじゃない、殺されかけた。バトルっていうのは命の取り合いだ。そんな当たり前の事に、実体験するまで気づけなかった。 結局また君に助けられて、抱えられて逃げた。立てないくらいの大怪我だった。今も、あぁ、せっかく忘れていた傷が痛みだす。脚が、背が、熱を持ってジンジンと疼く。 毛皮の代わりに僕に掛けられているのは、君がいつも使ってるブランケットだね。君の匂いがする。少し気持ちが落ち着いた。 衣擦れの音に気づいた君が、駆け寄ってくる。頭を限界まで下げて、目線の高さを合わせてくれる。 「無理しないで、痛みは?」 平気だよって言いたいのに、声が出ない。 察してくれたみたいで、頭を撫でてくれる。いつもみたいに困ったように笑って、でもいつもと違って目に涙が溜まっていて。 泣かないで。僕、元気だよ。 「ちょっと待ってて、水持ってくるから」 待って、ねぇ待って! 撫でてくれている手が離れるのが心細くて、噛みついた。ちゃんと加減してるよ。ねぇ、僕元気だよ。前と同じだよ。 寝転んで君を見上げていると、昨日までの進化する前の僕に戻ったみたいだ。 また君は屈んで頭を下げて、僕に目線を合わせてくれる。 「こんなにクッキリ歯跡がつくくらい噛めるなら、まだまだ元気そうだね」 溜まっていた涙は溢れちゃったけど、ちゃんと笑ってくれた。 痛かった?ごめんね、でも伝わって良かった。噛んだところを一舐めして、息を吐く。まだ少し眠い。 「寝てていいよ、ゆっくりお休み」 またなでなでしてもらって、安心する。 本当は君を安心させてあげられるようになりたいけど、今はまだこの方法しか思いつかないから。 笑って貰えるなら、僕はいつでもはあとを君にあげるね。 ----- あとがき もう10年くらい前に書いた同じタイトルの作品を1から書き直しました。 前作『啼音、妬けど』も『はあと』のリメイクのつもりで書き始めたのですが、やっぱり懐かしくなってしまって。覚えてる人がいるといいなぁ
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フィニ
2020年6月16日
In デジモン創作サロン
「俺も、狼はカッコよくて好きだ」 キミがそう言ったから、ボクはもっともっとあの姿に憧れるようになった。 借り物の毛皮じゃなく、本物のミスリルの毛を纏う狼に ボクはなりたい。 見て! こんな事できるようになったよ! こんな技出せるようになったよ! ねぇ! 同じ成長期の仲間と特訓したよ!ボク勝ったよ! もう独り立ちできるかな?! 進化したらね、今よりもっと速く走れるようになるんだ!キミより速いんだよ!ボク、キミを背中に乗せてあげるね! お前が憧れる、なりたい姿なのだと知ったから。 ガブモンというのは皆ガルルモンに憧れるものなのだと聞いた。皆といっても個人差があるだろうに、といつも隣にいるガブモンに問うと、単語を出しただけで目を輝かせるから。 「俺も、狼はかっこよくて好きだ」 あんまり嬉しそうに笑うから、応援せざるを得なくなった。本当の事を言うと、あまり戦い…つまり殺し合いなんて目の前で見たくはない。けれどこれはデジモンの本能なのだと思うから。戦って経験を積んで強くなって、進化する事。それがお前の望みなら、俺はお前を応援するよ。 ごめん、 負けちゃってごめんね。 僕、カッコ悪かったね。ガルルモンに成るって言ったのに、本物のガルルモンに負けちゃった。 あぁ、超えたかったな。 かっこいいとこ見せたかったな。 キミにかっこいいって思って貰いたかったな。 パートナーになりたいって思って貰えるくらい、かっこよく成りたかったな。 ごめん、 生きてさえいれば良いと思ったんだ。 怖かった。俺もお前も殺されるんじゃないかと思うと、怖くて堪らなかった。 俺達は戦線を離脱した。逃げたんだ。戦いたがってるお前を無理矢理連れて。 最後まで牙をむいて戦おうとしていたお前を。 最後まで俺を守ってくれたお前を。 俺が。無理矢理。 お前を傷つけたのにまだ、お互い生きてて良かっただなんて甘い事を思ってしまう。怪我は治せるし特訓もまたやればいい、なんて。 こんな覚悟じゃ、お前のパートナーになりたいなんてとても言えない。 俺だって強くなりたかったさ。物語の主人公みたいに。 お前みたいに。 隣にいるのに遠く感じる。 焦れて、焦がれて、要らない熱が籠って、ジリジリ痛む。 まるで低温火傷。 体の奥、怪我とは違う処が苦しい。息が上手くできない。 ねぇ、これはどうすれば治るの? どうすればキミに伝わるの? 隣にいるのに届かない、 まだ狼でないボクの、真似事の遠吠えは。 心に狼を宿すお前の啼き声は。 啼音、妬けど (ていおん やけど)
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フィニ

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