≪≪前の話 次の話≫≫
「マンモン、サンゾモンのサポートにだけ徹しろ。余計な事は考えるな」
いいな、と吐き捨てるようにパートナーに命じる『アイツ』の声を聞き流しながら、オレサマはこの巨大なデジモンのそれぞれの足に突き刺さった剣、その内の1本に、無我夢中でしゃぶりついた。
清貧を極めた結果喰うものを選ばない僧侶型の顎は存外に強靭で、天使と悪魔、相容れない者達の翼を左右に纏った剣を易々と噛み砕き、腹の中へと取り込んでいく。
だが、足りない。
これでは、まだ足りない。
次に目についたのは、銃と一緒くたになったような剣だった。
飢え乾いたオレサマは吸い寄せられるように黄色い円冠の下突き立てられたその1本に飛びつき、同じことを繰り返す。
気が付けばオレサマはサンゾモンのテクスチャを破り、ディアボロモンの姿を取り戻していたが、飢えは、むしろ酷くなる一方で。
足りない。
足りない、足りない、足りない。
かつてのオレサマに、アーマゲモンにすら、まだ及ばない。
あの忌々しい聖騎士になど、とてもとても。
だが、ひょっとすると。
コレを――オグドモンを、すべて喰らえば。
オレサマは「あの時」以上の力を手に入れられるのではないかと。
そう、「傲った」刹那。
オグドモンの巨体が何の前触れも無く弾け飛び、罪の剣が腹をすかせたオレサマをあざ笑うかのように、四方八方。散り散りになって、飛び去って行って。
「――!?」
まともな声帯を持たない喉が、それでもニンゲンどもの悲鳴に似た声を上げる。
違う、違う。これはオレサマが上げるような声じゃ、無い筈なのに。
「ようするに君は、他の『罪』には認めてもらえなかったんだろうね」
そんな中、剣の内の2本は遠くへは行かず、オグドモンの足元だった場所へと揃ってゆっくりと降りていく様子が視界に入って、慌てて追いかけた先に居たのが、この女だった。
みすぼらしい女だった。酷い匂いがしていた。不潔と不衛生の具現化だ。垢に塗れて変色した肌、櫛の存在すら知ら無さそうな、絡まりきったぎとぎとの伸び放題の髪。幼さを理由に片付けるにも無理がある、あんまりにも貧相な身体つき。
『アイツ』も大概なモノではあったが、それでもいくらか身綺麗にはしていた。
だというのにこの女ときたら、自身の惨めさをまるで意に介していないかのように、へらへらと欠けた歯を覗かせて、笑っていて。
まあ、どうでもいい。
ニンゲンの個体差など、オレサマには関係の無い話だ。
重要なのは、この女の手元に、オグドモンの剣の内の1本が降り立ったという事実。
いつも通り嬲り殺して、奪い取るまでだと構えた――と、いうのに。
結局、飛び掛かる事すら叶わなかった。
「マンモンッ!!」
切迫した様子の『アイツ』の声と共に、ずどおんと『迷路』の地面が大きく揺れる。
何事か、と振り返れば、そこに『アイツ』が呼んだデジモンの姿は無く、代わりに頭部に2振りの剣――これも、オグドモンに刺さっていたモノだ――が突き刺さった鰐に似たシルエットが、身を捩りながらどんどん膨らんでいくのが見て取れて。
「っ」
『アイツ』がデバイスを操作して掲げる。途端、剣は0と1の配列に代わってから抜け落ち、奴のデバイスの中へと吸い込まれて行った。
同時に鰐の姿も掻き消え、後には横たわる古代象だけが残される。
「よ……余計な手間、かけさせやがって……!」
悪態を吐く『アイツ』だったが、声音にささやかな安堵が混じっているのが解った。……普段はマンモンに当たり散らしているクセに、コイツはコイツで、何を考えているのかよく解らないヤツだ。
まあいい、剣を回収したなら寄越せ。と身を乗り出したオレサマの隣をするりと抜けて、あの汚い女がぱちぱちと手を叩きながら、『アイツ』の前へと躍り出る。
「すごいじゃん。初見で罪の剣を制御するなんて。まるで、やり方が最初から解ってるみたいに。……オグドモンにしてもそう。まさか、全ての悪意を無力化するあの子に、食欲と援助の精神だけで対処するだなんてさ。すごいすごい。ちょっと思いつかないよ、そんなの」
「そこのサンゾモン……だったディアボロモンに関してはたまたまだ。ソイツが勝手に先走った」
「でもディアボロモンが振り落とされたりしないように、一番危険なオグドモンの足元で立ち回っていたのはそのマンモン。指示を出していたのは君。あたし、感心しちゃった」
……コイツら、何を悠長に話し込んでやがる。
何でもいいから早く食わせろと、改めて、いよいよ女に飛び掛かろうとしたオレサマに、またしても割って入る影が1つ。
金の仮面に、長い灰の髪と髭。派手な装飾の施されたケープに身を包んだ老人の姿をしたデジモンが、赤い宝玉の付いた杖でオレサマを薙ぎ払ったのだ。
「!」
「その、ディアボロモン、だっけ? この子が考え無しなのは本当みたいだね。ついでに滅茶苦茶腹ペコなのも。……でもこれ以上はあげられないから、オグドモン。せめてこの人とお話終わるまで、その子、どうにかしといて」
「……バルバモンだ、今のソイツは」
「へぇ、君ってばやっぱり物知りぃ」
オグドモン。バルバモンであるこのデジモンをその名で呼んだという事は、この女こそ、オグドモンの、『迷路』最強だと名高かったオグドモンの、パートナーだと。
オレサマは無性に腹立たしかった。ガキにしてやられたのは、これで何度目になる?
どいつもこいつも、大人しく、オレサマの食い物になっていれば良いものを!
大口を開けて飛び掛かる。サンゾモンとは随分勝手が変わったが、本来であればこちらの方が慣れた姿だ。長い腕を振り回し、バルバモンのガードをこじ開けながら、コイツの喉元に喰らいつく機会を伺う。
だが、バルバモンは一向に隙らしい隙を見せなかった。巨体で無くなった分、その年老いた見た目に反して身のこなしは実に軽やかで、加えて長物を所持している点が、オレサマのリーチというアドバンテージを帳消しにしてしまう。
「ま、ぶっちゃけ別に、あげちゃってもいいんだけどさ、罪の剣も冠も、なんなら、あたし達の命なんて、そのくらい」
バルバモンにオレサマを任せているのを良い事に、女は『アイツ』と更に距離を詰める。
「でも、その前に1つ聞かせてよ。どうして、『迷路』で一番強いって事になってるあたし達を狙ったの? デジモンを2体連れているとはいえ、両方完全体でしょ? 究極体になるまで鍛えてからでも、良かったんじゃないの?」
「……だから、ディアボロモンが勝手に行ったんだ」
「でも、止める事は出来たでしょう? それに、お腹が空いているだけなら、リスクを負わなくても食べられるデジモンなんていっぱいいる」
「……」
無駄に律儀なところがある『アイツ』は、詰め寄るような調子の女に観念したのだろう。
「アイツに、世界を台無しにしてもらうために」
軽く頭を横に振ってから開いた『アイツ』の口から零れた言葉には、これっぽっちも、熱が籠っていなかった。
「強い獲物を食わせて、もっともっと、強くしなきゃいけない。お前のオグドモンは、アイツにとっても丁度良かったんだろ」
きょとん、と目を見開いて。
しかしすぐに、女はまた、にっと不揃いな歯を見せて笑う。
「気が変わった!」
「あ?」
「今死んであげるのはヤメってコト! ねえねえ、あたしにも一枚噛ませてよ。君達がバルバモン……『強欲』の剣の化身以外を食べきるまで、協力してあげる」
協力してあげるから、ともう一度繰り返して、女は『アイツ』の手を取った。
「全部食べ終わったら、最後にあたし達と殺し合ってよ。勝った方が、世界ってヤツを台無しにしに行くの! ねえ、お願い。混ぜて混ぜて! 考えてもみなかったんだもん。世界が、台無しにできるだなんて。あたしもそれ、やってみたい」
何を勝手を言ってやがる、と抗議の唸り声を上げようとしたところで、杖を軸足代わりにしたバルバモンのドロップキックがオレサマを『迷路』の壁に叩き付ける。
……『アイツ』の背後では、未だ進化の余波に苦しんでいるのか、マンモンが蹲ったままでいる。
このままオレサマに戦闘を続けさせるリスクを計算させるには、もう十分だったに違いない。
「わかった」
『アイツ』が、女の手を握り返す。
肌の汚れなど、最初から気にも留めていない。似合いもしないサングラスで隠した瞳はどこまでも無機質で、遠いところばかりを見据えている。
「約束しよう」
「……!」
野郎、流石にオレサマの性質を熟知してやがる。
悪魔であるオレサマは、どうしてもその類の言葉に、契約に縛られるのだと、あえて約束なんて、柄にも無い言葉を選びやがった。
オレサマが動きを止めたのを見て、バルバモンもまた構えを解く。……悪魔なのは、コイツも同じってワケか。今は。
「……で、俺は、お前の事を何て呼べばいい?」
「好きに呼んでよ。多分君と一緒で、名前は無いんだ」
「……。……じゃあ、縷縷(ルル)にしよう。細く長く途切れないって意味だ。お前、言ってる割に、生き汚そうだから」
「ひどい言いぐさ! でも名前の響きは可愛いから採用! それで、あたしの方は、君の事なんて呼べばいいの?」
「ゲイリー・ストゥー」
メアリー・スーの端役だよ、と、『アイツ』は、ゲイリーは力無く笑って
よくわかんないけど、よろしく! と、ルルは軽薄に、からからと笑った。
*
「……」
魔杖『デスルアー』を、手元に残していたX抗体入りキノコの力で義腕に変えて、右腕の有った場所に接続した俺は、改めて姿をゲイリーのものに戻して両腕でルルを抱え、膝の上に寝かせ直す。
すっかり冷たくなったルルは、全身も氷のように固まってしまっていて、全く、これだと本当に板のようじゃないか。
「軽いな。重りになるようなモンが無いから、本当に軽い」
そしてコイツの胸並に軽い口を叩いてみたところで、コイツの身体より軽くて薄い笑い声が返ってくる事も無い。
縷縷という女は、ここでお終いだった。
「……」
割に、胸の穴やこびりついた血糊を除けば、ルルは今にも起き上がって動き出しそうな印象を、未だに残していた。
ガラクタで飾り立てサイドで三つ編みにして纏めた髪には艶があり、頬には紅が挿してある。服からは、幽かに甘い香りもした。
コイツは、こんなのじゃ無かった筈だ。
もっと汚らしくて、臭くて、みすぼらしかった。
忌々しくて、鬱陶しくて、憎くてたまらなかった。
オレサマの喰い損ないの1つに過ぎなかったのに。
それが、どうしてこうなっている?
コイツは、いつからこうだった?
「……やめて」
こつ、と背中に何かが当たる。
あたりに散乱していた瓦礫の欠片か何かだろう。振り返れば、皮膚が白むまでルルに返された物――『しっかりもののすずの兵隊』の、クスリも何も入っていない絵本を握りしめたリンドウが、歪んだ表情でオレサマを睨みつけていた。
……アイツ、やっぱり持ち帰ってやがったのか。店に帰った後リンドウが無い無いと騒いでいた、あの絵本を。
何故? ゲイリーはクスリ以外の絵本は触るなと言っていたし、アイツにだって、そんなモノを手に入れた所で、これっぽっちもメリットは無い筈なのに。
「お父さんの身体で、いつまでも他の女の人、抱きしめないで。そんな、悲しそうな顔、しないで」
振り絞るように、訴えかけてくるリンドウ。……だが、その様子以上に、彼女の発した単語が、どうしてもオレサマの中で引っかかって。
「カナシイ?」
『絵本屋』がその単語の意味を勝手に引き寄せ始める。
泣きそうになる程、心が痛くて、つらいさま、だとか。
じゃあ「つらい」って何だ? と問えば、それは苦しいという意味だという。そして「苦しい」というのは、我慢が出来ないような事を指すのだと。
なるほど、オレサマに悲しみとやらを訴えてきた連中が、皆一様に腹を立てている風に見えたのも頷ける話だ。
「つらい」は苛立たしいし、「苦しい」も頭にくる。そこに選ばれし子供の力が加われば、憤怒の魔王くらい生まれるだろう。
……なら、オレサマはどうしてそうなれない?
オレサマが今「カナシイ」と言うのなら、何故、燃え上がるような激情が、腹の底から湧いてこない?
この、何もかもが空っぽになったような感覚は、何だ?
「やめてって、言ってるでしょ……!」
「……お前は本当にそればっかりだな」
お望み通りルルの死体を膝から降ろし、立ち上がる。
「「やめて」「やめて」「やめて」……口で懇願するばかりで、行動に移せるだけの度胸も、実力も無い。いい加減、聞き飽きたぞ」
「っ」
ゲイリーの口調を真似る余裕も無いオレサマに、リンドウが怯む。
だけど結局、この幼い少女は引き下がらなかった。ぎゅっ、と絵本を抱え直して、無理やり挑発的な姿勢を作り出す。
「それで? 行動に移したあんたはどうなのよ。あんなに息巻いてたクセに、文字通りあいつに手も足も出なかったじゃない! あんたのやってきた事って何? 何の意味があったの?? 『契約』も碌に果たしてくれないのに、私にそんな偉そうな口きかないでよ、お父さんの身体で!!」
……言わせておけば。
「「あんたのやってきた事」? 何を自分やゲイリーは清廉潔白だったみたいに言いやがる。アイツははなっから人殺しだ。オレサマと出会う前、お前より若い頃からもう既に、アイツはチューモンの必殺技で人の頭吹き飛ばして日銭を掻き集めてたって聞いてるぞ。お前は、どうにしたって最初から人殺しの娘なんだよ!!」
「っ、そんな、そんな事知ってる! 『あの人』が悪い人だったなんて、とっくの昔に知ってる! でも、でも――」
「ああ、そうだそうだ。この際だから教えておいてやるが、お前の手だって既に真っ黒さ! レンコ婆さんの頭をぶち抜いて殺したのはお前のベルゼブモンだ! パートナーにもう殺しをさせてるっていうのにお前と来たら! まるで初めてみたいにピーピー喚いてゲロ吐きやがって、傑作だよ! 本当にな!!」
リンドウの顔が、またさっと青ざめる。
反論の余地はいくらでもあった。そもそも話を挿げ替えるなと糾弾する事も可能だったはずだ。
だが
「う――うるさいっ!!」
リンドウは、ただそんな言葉だけを半ばひっくり返ったような声で吐き出して、あれだけ大事そうに、縋りつくように抱きしめていた『しっかりもののすずの兵隊』を、オレサマに向けて投げつけた。
オレサマは、それを避けすらもできなかった。
「っ、てめえ!!」
顔面に張り手のように叩きつけられたそれを振り払い、大股でリンドウと距離を詰めて左手を振り被る。
リンドウの表情が、凍り付くのが見えた。
同時に、彼女の右の頬が、赤く腫れているのも。
「――っ」
イザサキ タスクに殴られた頬だと気付いた瞬間、オレサマは、手を振り下ろせなくなってしまう。
「……!」
長い長い数秒の間、オレサマとリンドウは、お互いにそのままの姿勢で固まって。
だが、やがて。リンドウは結局涙の一つも出ないままの顔をくしゃりと歪めて、オレサマに背を向けて走り去った。
あっという間に、『迷路』の角に、少女の影が消えていく。
「……」
オレサマは引き続き、その場から動く事さえ出来ないでいた。
リンドウを追いかける事など造作も無い筈なのに、それをしてどうなるんだという気持ちの方が強かったのもある。
「……!」
そんなオレサマを、ひょいと追い抜いていく小さな影。
いつ、目を覚ましたのだろう。モルフォモンが、短い足でとてとてと駆けながら、一度だけ振り返り、丸い目を半円に変えてオレサマを睨みつけ、リンドウの後を追いかけて行った。
「……何なんだ」
モルフォモンに対して、ではない。何もかもに対してだった。
オグドモンの破片を食い漁って得た物も
イザサキ タスク――ディノビーモンに一蹴された自分も
ルルとそれ以外の死体の違いも
リンドウが何を考えているのかも
なにも、かも。
オレサマは、一体どうすればいいんだ?
そもそも、何がしたかった?
――もうちょっとよく考えてみたら? 別に状況は最悪でも何でもないでしょ。
「!?」
ルルの声が聞こえたような気がして、思わず振り返る。
だが当然、死体は喋らない。いや、内側から動かすデジモンでも居れば話は別だが、あの平べったい身体にわざわざ入り込む物好きなんざ、そうそういやしないだろう。
だから、それはただの幻聴で、いつか聞いたセリフの再現で
しかし彼女がリンドウに絵本を返した理由だけは、目に見える形で、転がっていた。
「……!」
慌てて駆け寄る。
投げつけられ、開いて落ちた『しっかりもののすずの兵隊』の傍ら。黒いチップが落ちていたのだ。
絵本も一緒に拾い上げると、開いていたのは、最初の方。父親から受け取ったクリスマスプレゼントの箱を、夢中で開ける兄妹の絵があるページで。……本の構造上、偶然開くようなページでは無い。
そんな項の内、妹がリボンを解いている赤い箱の中央に、穴が空いていた。デジモンのテクスチャを剥がした時のような、そして『迷路』の壁のような、電子的な光の走る穴が。
チップは、ここから零れ落ちたらしい。
まるで、リンドウが大事な絵本を投げ捨てる程自暴自棄に陥ったその時のために。用意されていた贈り物のようだと。
そう考えてしまうのは、果たして、おかしなことだろうか。
「……お前、知ってたのか? ルル」
やはり死体は、答えない。
「本当に、喰えない女だよ、お前は」
だがやはり、俺の知っているこの女は、無意味な事をする女では無い。
だったらそれが、オレサマの答えだ。
世界を台無しにする。滅茶苦茶にする。
生き残った奴が。
ルルは、そのための手段を、ゲイリーが死んだ後も掻き集めていた。オレサマに協力しながら、自分も準備を整えていたのだ。否、そもそもオレサマ達がアイツの『手段』だった可能性もある。そうでなければ、ゲイリーも居ないのに引き続き協力なんて、しやしないだろう。
そして自分がダメになれば、臆面も無く、次の世代へとそれを託す。
「選ばれし子供どもと、同じじゃないか。そんなのは」
つまるところ。何かを誰かに継承するのは、奴らの専売特許では無いという話だ。
アイツらが、無意味なモノを遺す筈が無い。
まだ、終わっていない。
足掻き切っていない。
やりようは、ある。
『迷路』と同じで、抜け道はある。
「……『パンデモニウムロスト』」
オレサマは表層化させた義腕『デスルアー』をルルに翳す。途端、彼女の身体が業火に包まれ、数秒後には骨も残さずに燃え尽きた。
パートナーの技で弔ってやったのは、せめてもの礼で、はなむけだ。
せいぜい地獄で待っていろ。とびきりの結末を聞かせてやる。
「その内な」
それまでは、お前の事も覚えておいてやるよ。と。
それがオレサマからルルへの、最後に贈る言葉だった。
*
「……オレサマがちょっと目を離した隙に、ンな厄介な目にあってんじゃねーよ」
呆れてものも言えないとはまさにこの事だ。
クラモンを飛ばして捜索したところ、リンドウの奴、オレサマから逃げてものの数分で、『迷路』を巡回中だったタスクの仲間に――選ばれし子供に見つかってしまったらしい。
ナツコとミヤト兄妹の丁度中間位の年齢の男が、パートナーデジモンらしいナイトモンに、暴れるリンドウを抱えさせている。
「離して!」
「大丈夫、怖がらないで。タスクさんに保護を頼まれてるんだ。さあ、お父さんの所に行こう、リンドウちゃん」
「もう、なんにも心配しなくていいんだよ」
「嫌って言ってるでしょう! あんなヤツ、私の父親じゃ無い!!」
「可哀想に……アーマゲモンに洗脳されているっていうのは本当みたいだね」
……この手のひっでェ冤罪を吹っかけられるのは2度目なワケだが、それもまだ数日前の事だと思うと、頭が変になりそうだ。もう、随分と前の出来事なような気がして。
「やめて、やめてってば!」
リンドウも、そして一緒くたに小脇に抱えられてしまったモルフォモンも、身を捩る以上の事は出来ないでいるらしい。……選ばれし子供のパートナーの数少ないデメリットとして、人間の精神状態によって大きく進化状況を左右されてしまう、というものがある。
モルフォモンをベルゼブモンにできるメンタルでは無いのだろう。
非力な子供。肝心な時に、言葉で訴える事しか出来ない子供。
言ってる傍から、アイツはよう……。
……だが、それでもこの『先』には、リンドウが要る。
「『トゥインクルシュート』!!」
オレサマはゲイリーのガワの内側をピーターモンに変え、飛行して連中に接近しながらナイフを飛ばす。
自動追尾の剣はナイトモンの、空いている方の腕の関節に突き刺さる。
「っ!?」
左腕はリンドウ達を放さねば使えず、右腕は曲げられない。
その隙を着いてオレサマは妖精型らしくナイトモンの背中の剣を掠め取る。
引き抜いた勢いをそのままに振るった刃は人間の方の首を容易に切り裂き、ごぼ、と裂けた喉からは血が噴き出した。
ナイトモンが悲鳴のようにパートナーの名を呼ぶ。どうせ助からないだろうが、ナツコの二の舞はゴメンだからな。やるならば、徹底的に、だ。
オレサマはナイトモンがパートナーに気を取られた隙に、もう一撃。
剣は捨て去り、この姿でも問題無く起動する『デスルアー』を手刀のようにして、鎧の隙間に叩き込んだ。
「『セブンス・ジュエライズ』!!」
直接デジコアに干渉して、ナイトモンの核を宝石に変換する。
「あ……っ、がっ……」
崩れ落ちるナイトモンから引き抜いてみれば、それはなかなかに見事な青い宝玉と化していたが、別段この手の物体を愛でるシュミも無い。地面に叩き付けて、粉砕する。
それから、ごぼごぼとパートナーの名を、喉を塞がれて呼べないでいた選ばれし子供の胸を踏み潰した。
……さっさとカタが着いてくれて、何よりだ。ナイトモンは、進化されたらどんなバケモノが飛び出してくるか解ったものでは無いからな。
「……何、よ」
振り返る。
リンドウは、ナイトモンの居た位置で腰を抜かしていた。
口元を手で押さえて、また、せり上がるものを必死にこらえているように見える。
「あんた、どの辛さげて」
「お前の父親の面だろうが」
「……!」
大きな丸い瞳が、更に見開かれる。
今度こそ言い争ってる暇は無い、と、俺はリンドウ達の元へと歩み寄った。
「手短に説明してやる。オレサマがお前をもう一度連れて行きたい理由は3つ。お前がデーモンのデータをデバイスに入れたままだから。お前が『暴食』の剣と冠を持つモルフォモンを連れているから。……そして」
オレサマは、デバイスから『しっかりもののすずの兵隊』と例のチップを取り出して、リンドウの方へと差し出した。
「ゲイリー・ストゥーから、素敵な贈り物があるからだ」
恐る恐る、本を受け取ったリンドウが数枚、ページをめくる。
……なんだかんだ言って、聡い娘ではある。該当のページを見て、全てを察したのだろう。
「……お父さんは、悪い人だったと、思うけれど」
リンドウは、そうっと。
この本を投げ捨てた事実を償うかのように。いつか握らなかった誰かの手の代わりに。静かに『しっかりもののすずの兵隊』を抱きしめた。
「でも、いっぱい、いろんなお話をしてくれた。絵本を読んでくれた。私の事、叩いたりしなかった。時々、お菓子だって食べさせてくれた。……お母さんの、こと。……大好きだったって、言ってくれた」
「じゃあ、タスクよりはいくらかマシってワケだな」
「うん。……うん。」
モルフォモンと協力して、リンドウを立ち上がらせる。
そのままオレサマは、リンドウの小さな両肩を支えた。
「お前達人間は強欲だ。自分の欲望のために、平気で事実を挿げ替える。欲しいもののために、平気で嘘を吐ける。……『強欲』を食ったお蔭で、おおよそそれが、理解出来た」
「……」
「だが肝心要、お前達がどうしてそこまで必死になるのかは、さっぱり解らん。手始めにそこの男をぶち殺してみたワケだが、コイツやナイトモンに、お前に匹敵する程の願望があったとしたら、と思いを馳せてみても、全く良心の呵責とかいうヤツが起こらない。あの便利な行商人とコイツらの命が等価値だとは、微塵も思えない」
「……何が、言いたいの」
オレサマは、まっすぐにリンドウの目を見据えた。
「この先は、そんな奴しか行けない本物の地獄だぞ。堕ちてもいいなら、一緒に来い」
肩から震えが伝わって来る。
滲まない瞳が、それでも揺れて、心臓は早鐘を打ち、息が荒くなる。
それでも――リンドウは、ゲイリー・ストゥーの娘は、もうオレサマから目を逸らさなかった。
「誰にものを言ってるの。私は最初から人殺しよ」
「……『レヴィアタン』を出せ、リンドウ。一度ネガの店に戻る。流石に少し休む必要もあるからな」
オレサマは、もう1人で立てそうなリンドウから手を放した。
「大丈夫なの?」
指示通り『レヴィアタン』をデバイスから取り出しつつ、リンドウが首を傾げる。オレサマは一応なと頷いて見せた。
「シャンブルモン。アイツ、のうのうと店に戻ってやがる。……戻っている以上は、周囲の警戒もしちゃいる筈だ」
「万が一スニーキングが得意なデジモンにつけられてたら?」
「そん時ゃ今度こそ一巻の終わりだな」
「……笑える冗談で済むといいわね」
モルフォモンに代わってハンドルを握り、リンドウ達がシートに跨ったのを確認してからエンジンを噴かす。
『嫉妬』の悪魔獣のデータを用いたモンスターマシンは、着実に、終わりに向かって前進を始めていた。
*
数日後。
オレサマとリンドウ、そしてモルフォモンとメアリー2号は、チップに残されていたURLから、ドーム状に変形した壁が多い『迷路』の一角へと足を運んでいた。
そして今、オレサマ達の目の前には、探し求めていた『最後の魔王』が鎮座していて。
デフォルメした黒山羊に似た姿の、全身に鎖を巻き付けた巨大な浮遊物体が、愛らしい顔で健やかな寝息を立てている。
「これが、『怠惰』の魔王、ベルフェモン」
「スリープモード、だな」
それだけではない。
ゲイリーの遺した情報が正しければ、本物の『絵本屋』の本拠地は、この眠りこける魔王の夢の中にこそ、存在しているだとか、何だとか。
誰も彼もが夢見る程度には、希望と諦めに満ちた噂話。……思い返せば、『絵本屋』を表す歌には、いつも「夢」という単語が付き従っていた。
恐らく『絵本屋』の影響は、このベルフェモン:スリープモードを介して『迷路』の全土に及んでおり、過酷な現実を前に全てを諦めかけた人間――『怠惰』に身を任せかけた者の無意識に、直接働きかけるように出来ていたのだろう。
その上で。『絵本屋』という知識バンクを見出してなお『迷路』で生き残る事を投げ出した純度の高い怠け者は、そのまま己の糧に。
知恵を付けた「程度」で再び立ち上がれるような半端者は、念のため『絵本屋』との接続だけは残して放逐する。
肝心の「何故ベルフェモンの夢の中がそんな高度な知識バンクと化しているのか」は不明瞭ではあるが……寝たまま飯を食えるシステムとしては、実に画期的だし、とことん『怠惰』らしい。
そして、恐るべきは絵本屋――『スー&ストゥーのお店』店主、ゲイリー・ストゥーだ。
あの野郎、オレサマに死体を使わせておいて、この事実を完璧に隠匿してやがった。
概ねあの、自分用の『絵本』に仕込んでいたのだろう。狙った情報だけを削除できるように改造した、記憶喪失効果を持つ『ポイズン・ス・マッシュ』を。
万が一自分にもしもの事があった時、『絵本屋』の真実を真っ先に手に入れられるのが、オレサマではなく、リンドウになるように。
死ぬ少し前までモルフォモンが『暴食』の器としてオレサマに目をつけられている事に気付いていなかったアイツは、オレサマがリンドウを不要と切り捨てる事が無いよう、彼女に独自の付加価値を与えていたのだ。
彼女が最も大切にしていた『絵本』に、秘密を隠すという形で。
……それをルルがくすねたもんだから多少話はこじれたが、巡り巡って、贈り物はリンドウのケツを叩く為に、こうして戻ってきたという訳だ。
「オトウサンからのメッセージがコイツの居場所と『絵本屋』の情報だけで、がっかりしたかい? リンドウ」
「全然。……むしろ、あんたと違って余計な事言わない人で、良かった。……使い方も使う事自体も、選ばせてくれる人で」
「そーかよ」
そんな無駄口を交わしながら、ベルフェモン:スリープモードの眠るドームに足を踏み入れると、眠りながらとはいえオレサマ達を感知したのだろう。
途端、ベルフェモン:スリープモードの鼻から提灯が膨らんで、そのままシャボン玉のように本体と分離し、ゆっくりとこちらに迫って来る。
相手を覚めない悪夢へと誘う必殺技『エターナルナイトメア』だ。
「あんまり当たりたいワザじゃないわね」
「実際当たると困るンだよ」
躱す事は造作も無い。だがその間にも、催眠シャボンはどんどん量産され続ける。
目を凝らせば、これらを回避しきれなくなった哀れな犠牲者達の干からびた屍が、あちこちに転がっていて。
「……失敗したら、恨むからね」
そう吐き捨ててリンドウがデバイスから取り出したのは、1本の毒キノコ。
『眠り』の状態異常を引き起こす『ポイズン・ス・マッシュ』だ。
リンドウはそれを、自分と自分に付き従うモルフォモンの足元に投げつける。
途端、毒への耐性を持たない人間の少女と、多少耐性は有るだろうが成長期故に単純に弱いモルフォモンが、その場にぱたりと崩れ落ちる。
「じゃあな。後は頼んだぜ。上手く逃げ回れよ、メアリー2号」
恭しくお辞儀をしたプラチナブロンドの美女は、次の瞬間その皮を破り捨ててオレサマと同じ、ディアボロモンの姿を現す。
……この変身方法、傍から見るとこんなにヒデー見た目だったんだな。今更だが、多少は反省してやろう。
とはいえそれは今やるべき事では無い。
オレサマは、気を失ってなおリンドウが握り締め続けているデバイスの中へと、ゲイリーの姿のまま、データとして自分の身体を投げ入れた。
聖なるデバイスの中は連中に邪悪認定されているオレサマには凄まじく居心地が悪く、しかしそれ自体が邪悪という訳では無い人間の皮一枚が端末のセキリュティの目を掻い潜り、防衛プログラムを差し向けられる前に、どうにか再び、デバイスの外へと浮上する。
「……うまくいったみたいね」
オレサマの姿を確認するなり、眠っていた筈のリンドウがそう言って息を吐く。
モルフォモンが前に立って一丁前に警戒に当たっているこの空間は、もはや『迷路』の、ベルフェモン:スリープモードの御前では無かった。
一面の、本、本、本。
『迷路』よりも入り組んだ、びっしりと本の詰まった棚の列が、薄暗がりの中所狭しと立ち並び、オレサマ達の事を囲い込んでいる。
『エターナルナイトメア』を直接くらってしまった場合は、この本の内の世にも悍ましい物語が具現化して、対象を呑み込んでしまうのだろう。全く、恐ろしい話じゃないか。
「ここが、『絵本屋』」
「言う割に絵本なんて1冊も見当たらないんだが」
活字嫌いなら、『エターナルナイトメア』抜きでも十分発狂させられそうな光景だ。てっきりもっと、以前駆けずり回ったインターネットの回線のような、電子的な光景が広がっているものとばかり思っていたのだが。
まあ、何にせよ。リンドウの言う通り、オレサマ達の試みは成功したとみて良いのだろう。『エターナルナイトメア』への疑似接続――同じ区画で眠りに落ちる事により、意識データを『絵本屋』へと送り込む作戦は。
加えて聖なるデバイスという、現実・電脳空間問わず選ばれし子供に付き従う御都合アイテムがあってこそ、オレサマの侵入も可能となったワケである。
あとは向こうに残したメアリー2号の奴が、しっかりリンドウとモルフォモンの肉体を守り切ってくれれば良いのだが。
と、
「なんじゃなんじゃ。こりゃまた思い切った方法で、おかしな客が上がってきたもんじゃのう」
不意に響き渡る、しわがれた老人の声。
モルフォモンが警戒に触覚をピンと立て、オレサマもまた、リンドウを背に回して周囲を見渡す。
……人影も、デジモンの影も無い。まさかこの空間自体が喋ってるだとかじゃないだろうな?
「ここじゃい、ここ、ここ! 全く、やはりこの姿じゃと、人の子と話すには不便でならんわい」
「……ゲイリー、もしかして、アレじゃ」
「あん?」
リンドウの指差す方向を見上げると、そこに居た――在ったのは、この空間の薄明りを辛うじて反射している、小さな小さな硝子の破片。……いや、鏡の破片、か?
「仕方ないのう、ちょっとばかし面倒ではあるが、久々の客じゃ。どれ、確か、ここを、こうして、こうすれば――」
年寄りらしくぶつぶつ独り言を呟きながら、右へ左へ、鏡の破片はその場で2、3回転し――次の瞬間、オレサマ達の前で、人間の男の姿を構築する。
ゲイリーよりも遥かにある上背。オールバックに整えた黒髪。ピシッとノリの効いた黒いスーツに薄いグリーンのシャツというシックな装い……から、恐ろしく浮いた、いやに派手なネクタイと、馬鹿みたいに先の尖った黒い革靴。
『迷路』ではまず見かけないタイプの、ゲイリーと同じか少し上くらいの男が、無機質な金の瞳でオレサマとリンドウを見下ろしていた。
「あー、あー、あー。テステス……ふむ。この姿なら声はこんなものかのう。歳を合わせてやった方が親しめるじゃろう? 気の利くワシに感謝するが良いよーん」
ほとんど無に近い表情と噛み合わない、ルルとはまた別方面に軽いノリ。
どう、対応したものかと決めあぐねているオレサマとリンドウを置き去りにして、目の前の男は見た目年齢通りの声質に変えた音声を早速発する。
「さあて。ようこそようこそ、いらっしゃい。古代の叡智、太古からの記録。この世の真理と呼べるものの宝庫・アカシックレコード……の、ひとかけら。良い子のための『絵本屋』へ。お前さん達、こんなヘンピなところにまで、今日はどんな知識をお求めに?」
「じゃあとりあえず教えてちょうだい。あんた、誰」
ニコ、と、男が唇で弧を描く。笑っている風に装ったような表情だ。
「本来のワシってばちょーすげー究極体デジモンなんじゃが、その名からは切り離されて久しい故、とりあえずこのニンゲンの名で呼ぶが良い」
キョウヤマ コウスケ。
男はそう名乗って、思い出したかのように目を細めた。
ちょっと離れてる間に一気に三話も進んでる上に、なんか大変なことになってた夏P(ナッピー)です。毒親いすぎなのではこの世界。
壁だの薄いだの煽られ続けた結果、本当に穴の開いたペラペラソースにされてしまった彼女の名前の由来、熱喉鼻に効くアレかと思ってたのにストレートにボロ雑巾だった。死んだ後でも煽り続けるのもうアーマゲイリーというかむしろゲイリー本人含めてめっちゃ仲良しだったろと言わざるを得ない。文字上なので明確ではありませんが、脳内に繰り広げられる光景は吐瀉物と鮮血で地獄絵図だぜェーッ! リンドウ毒親に叩かれたり恐怖で動けなくなったりゲロ吐いたり毒親(※別)に叩かれそうになって涙目脱走したり、女の子にどんだけ酷い目遭わせるんだ。
同じように出てきた、死んだで終わったナイトモンとのそのテイマーなんてサクッと死に過ぎて無念で化けて出るレベルの悲惨さ。毒親その3ぐらいのディノビーモンが超強かったので、これは如何に完全体と言えど油断はできねえ……と思ったら普通にナイトモン瞬殺という憂き目。この三話の間に選ばれし子供とそのパートナー死に過ぎやろ。
毒親イサザキ タスクっててっきりアーマゲイリーと同じような状態にあるのかと思いましたが素でああなのか……? そう考えるとアーマゲイリーより怖いな……アーマゲイリーというかディアボロモンと対になるブイモン&ワームモン系なのは意図的な配置でしょうか。それこそ完全にアーマゲモンとの対比でインペリアルドラモンパラディンモードが人間の皮を被ってるもんかとばかり。しかしこの毒親ぶり、今んとこ脳内に浮かんでる姿は“父親”を演じている時のロイド・フォージャーをサイコに振ったような感じ。
一方で回想された本物のゲイリー、生物的に死んだ後も話を動かし続けている……結果的に気付いたのはアーマゲイリーの方でしたが、しっかりリンドウの為に導き手を遺していたのは父親として誇れる行為。ここまで付き合ってきたのに実は絵本屋の本拠地こっちだとォーッ! ベルフェモン(スリープモード)がやっぱり重要な存在っぽいのは嬉しくてニヤリ。やっぱベルフェモンは特別だよなァーッ!
あ、あの最後に現れたワシ、いやアンタひょっとしなくてもアレでしょ? もうぶっちゃけアカシックレコードって単語出しちゃってるしアレだろ……?
それでは次回もお待ちしております。
あとがき
Q.ここまで地獄じゃ無かったんですか
A.らしいですよ奥さん。
はい、という訳でこの度は『Everyone wept for Mary』16話をお読みいただき、誠にありがとうございます。上記の台詞は去年の大河ドラマから着想を得ました。去年の大河といいジャ○プといい、今鎌倉時代が最高にアツい文字書き、快晴です。
まあこうは言いましたが、地獄めいたキツい展開はもうそんな、無いんじゃないかな。多分。きっと、恐らく。
さて、今回のお話は最終章開幕直前スペシャルといったところでしょうか。心身共にぼこめきょに打ちのめされたアーマゲイリーとリンドウちゃんの再起編ですね。まあこの2人に再起されると世界がヤバいので、作劇として盛り上がったとしても状況的には複雑なんでしょうが、まあ、それはさておき。
快晴は昔から(この界隈的にはぶん殴られても仕方のない性癖かもですが)『人間になっていく人外』が好きでして、そういう意味ではアーマゲイリーは、主『人』公としてはようやくスタートラインと言えるかもしれません。彼は自分以外の命の価値に差異を見出し始めましたから。全ての罪はそこから生まれる。多分。
そしていよいよ登場、最後の魔王・ベルフェモンです。ベルフェモンがトリなのは間違いなくデジモンストーリーの影響。……それ以上に一部読者には妙~に既視感の有る野郎が出てきた気がしますが、それは一先ず置いておくとして。
一応次回でも触れはしますが、「オグドモン分裂前から『絵本屋』ってあるんじゃないの?」という矛盾に対する答えは「オグドモン分裂前からベルフェモン:スリープモードはベルフェモン:スリープモードとして『迷路』に存在していた」になります。既に魔王がいたから罪の剣もそっちに飛んで行ったというだけの話。間違い無く当時のディアボロモンより器として相応しかったでしょうし。
と、とりとめも無く語りましたが、こんなものでしょうかね。
次回はいよいよ全てが解き明かされる編、ようするに怒涛の説明パートです。ひぃん……。
どうかお付き合いいただければ、幸いです。
それでは、改めて。ここまで読んで下さり、本当にありがとうございました!