「ごめんなさい、ちゃんとします、ちゃんとします」
今にも泣きそうな声を絞り出すその子に、その子の父親は上から押さえつけるかのように「聞こえない!」や「口先だけでならなんとでも言える!」と怒鳴りつける。
さっきまで、あんなにいい人だったのに。
さっきまで、あんなにやさしかったのに。
「あそこのお子さんはあんなに良く出来た子なのに、なんでお前は同じようにできないんだ!」
「ごめんなさい、ごめんなさい、わたしももあんなちゃんとした子になります」
「人の真似ばっかりだな! なんで自分の頭で考えられないんだ!」
「考えます。ちゃんと考えますから」
「出来もしないことばっかり言って! どうしてお前は――」
正解なんて、ひとつも用意されていない。あの子の答えを、あの子のお父さんはひとつずつ丁寧に、乱暴に。虫みたいに、潰していく。
心臓がバクバクして。何もしていないされていない俺が泣きそうになって、吐きそうになって。
「ごめんなさい、本当にごめんなさい、許してください」
「謝ってばっかりするな!! 気分が悪くなる!! これじゃまるで俺が悪者みたいだろう!!」
「ごめ……あっ、う、あ……」
「言いたい事ははっきり言え!!」
忘れ物を取りに戻ってきた俺は、結局、インターホンのひとつも鳴らせないまま、その場から逃げるみたいにして立ち去った。
いや、逃げるみたいに、じゃない。逃げたんだ。
何も聞かなかった事にして、宝物だと思っていた、きっとこの家に忘れたに違いない、スマホに付けていたストラップの事すらまるで諦めて、逃げ帰ったんだ。
その日の夜。あの家は、火事で焼けて、無くなってしまった。
俺があの日見たものを。あの時見なかったものを、全部巻き添えにして。
そんな最悪な日の事を、今でも夢に、思い出す。
*
「……おーい、おーいってば!」
彼女の声に、俺はハッと我に返った。
目の前では丸々と太ったオレンジ一色のリュウキンが、背びれを畳み気味にして水面近くで力無くたゆたっている。
ミュージアム、とは名ばかりで、ここの金魚は大体が、このリュウキンに似たり寄ったりといった有様だった。
光と光を反射するものを利用したド派手な内装は、お洒落なSNSのユーザーにはウケが良くても、魚が住まうのに向いていない、と。そう考えてしまうのは素人判断だろうか。
大輪の造花を植え付けた壁に嵌め込まれた水槽は、背景を目立たせるために砂利の類は敷かれておらず、そのせいでかえって底に落ちた金魚の細い糞が良く目立ち、金魚たちの元気の無さも相まって、どこかみすぼらしい程で。
安心して見られたのは、申し訳程度に金魚の先祖的な扱いで展示されていたフナのコーナーくらいだろう。小さくて地味なあの魚はやはりこのミュージアムに訪れる客層とは相性が悪いようで、彼らだけは、天敵は居らず餌にも困らない水槽という環境で、悠々自適に暮らしているらしかった。
「ねえ、ひょっとしてあんまり楽しくない?」
そして俺の考えは、それこそ水槽のガラスのように、彼女には透けて見えていたらしい。
一瞬取り繕おうと思って開きかけた口を、結局、俺はもう一度結び直して、力無く首を横に振った。
「これならペットショップの魚コーナーでも見てた方が楽しい」
「えー? こんなに内装凝ってるのに?」
「それが嫌なんだよ。金魚も元気無いのばっかりだし」
「えっ、金魚のヒットポイントとか見ただけで分かるの? すごっ。そっか、君ってば自然派? なんだね」
「……そんな、多分お前が思ってるような、過激な自然保護団体みたいな思想は持ってないけど」
「でも、カワイソウ?」
「そういう訳でも無いけどさ」
金魚の幸せなんざ知ったこっちゃ無いし、そも、この生き物が人間が見て楽しむために改良を重ねられ繁栄に成功した種だというのは俺だって理解している。
生き物が可哀想云々を言い出すなら、俺は祭りの縁日で金魚すくいを見かける度に目くじらを立てなければいけなくなるし、ミュージアムの説明書きを信じるならば、見た目こそ派手だが展示方法自体は金魚に気を使ったものであるという話だ。素人が金魚鉢で金魚を飼うのとどちらが残酷かと問われれば、俺はきっと、答えを用意すら出来ないだろう。
だから、多分。
俺が「楽しくない」原因は、きっとこうやって俺が目を逸らしている現実にこそ、あるのだろう。
「ま~、君が水の生き物なら何でも好きな水産食系男子だと思い込んで誘ったのは私だからさ。そんなに好きじゃないなら好きじゃないってはっきり言ってくれる方が、なんていうか、健全だよ。次からは気ぃつけるし、今日は諦めて付き合ってちょ」
「……悪いな」
「なので早速元の話題に戻ります。ほ~ら、右手をご覧ください! 膨れ面金魚! ヤバくない? このほっぺ、針で突いたらどうなっちゃうんだろう?」
「スイホウガン、って金魚だよ。頬に入ってるのはリンパ液だったかな。実際に破れる事もあるけど、そうなっても治るのは治るって昔聞いたような」
すいほーがん! と俺の教えた固有名詞を繰り返して、彼女はより一層水槽へと顔を寄せる。慣れているのかこの変わった面の金魚はそしらぬ顔で、鉢状のガラス面に沿ってゆっくりと泳ぎ回っていた。
「でも、金魚の品種なんてよく知ってるよね。私、出目金ぐらいしか知らないよ?」
「俺だってそんなに詳しい訳じゃないよ。スイホウガンはインパクトが強い見た目してるから、たまたま頭に残ってただけで」
「はは、確かに。私も当分は覚えてると思う」
でも、と、彼女は曲げていた腰を持ち上げ、こちらに向き直る。
「まず、見なきゃ覚えないでしょ?」
「それは、まあ」
「本当に魚、好きだよね」
「まあ、それなりに」
「おさかな博士!」
「そんなんじゃないけど」
「サカナ君さん!」
「それはやめろ」
それとも、お前が一番好きだよとでも言った方がいいのか? と小突くと、魚と比べられても嬉しくないよー! と、彼女は顔をわざとらしく覆いながら笑った。
結局のところ、2人で出かけられる口実さえあれば、お互いなんでも良かったのだろう。
……水族館の類に出かける事が多いのは、俺の個人的な調べ事が理由なので、その点は少し心苦しい時があるのだが。
彼女が気にする風では無いのは、実際、そこそこの救いではあった。
*
家の近所に趣味で鯉を飼っている年寄りが居て、その老人と仲の良かった祖父についていく形で、俺はよくその人の家に遊びに行かせてもらった。
その爺さんが近所でも気難しい頑固ジジイと煙たがられていたというのは後になって知った話だが、高校の先輩だった祖父には頭が上がらなかったらしく、また、息子の一家が離れて暮らしているというのもあってか、俺の事はその人の奥さんも一緒になって、孫のように可愛がってくれていた。
そう広くは無い庭のほとんどを占領するビニールハウスの中、コンクリート造りの堀の中に放されていた錦鯉達はよく慣らされていて、近寄っただけで顔を出し、ぱくぱくと水面付近で餌をねだっていたのをよく覚えている。
そしてそんな中に鯉用の餌を撒かせてもらったりしていたのが、俺が魚に興味を持つようになったきっかけであったのは確かだろう。
「そうかぁ! 坊は魚が好きか!」
小学校の遠足で県外の水族館に赴き、そこで初めて錦鯉よりもデカイ魚を見た俺は、その事を喜々として鯉の家の爺さんに報告した。
自慢の錦鯉以外の魚が褒められていても爺さんは嫌そうな顔ひとつせず、どころか、息子さんに昔買い与えたという、淡水海水問わず有名どころの魚全般が載った図鑑を持って来て、俺の見た魚をあれだこれだと一緒に確認してくれたのだった。
「俺も魚、飼いたい! えっとね、これと、これと、これと………」
気に入った魚の写真をひとつひとつ指で指す俺を見ながら、爺さんは呵々と笑っていた。
「そりゃ、わしのところよりでっかい水槽買わなきゃならんな。それに海水はなあ、この辺で飼おうと思ったら大変じゃぞ」
「じゃあ、俺、大きくなったら水族館の人になる!」
「それやったら、いっぱい勉強しやんとやなあ」
結局その道に進む事は無かったけれど、幼い俺の周りにいた人たちは皆優しくて、親切で。俺は毎日が楽しかった。
家の都合で魚の類を飼わせてはもらえなかったけれど、代わりに母は(今思えば、母が本当に用があったのは隣のホームセンターで、そのついでに過ぎなかったのだろうが)よく近所のペットショップに俺を連れて行ってくれた。
もちろん水族館と比べられるような規模では無かったが品ぞろえは良い方で、人ごみを気にせず水槽に張り付いていられるのは、水族館には無い利点だった。……店からすれば、ありがたい客では無かっただろうが。
俺のお気に入りは、もっぱら『古代魚』と呼ばれる魚だったらしい。
Poというアルファベットに、カタカナの覚えにくい名前が続くそいつらには、魚なのに恐竜を彷彿とさせる迫力があって、対して動きもしないのに、幼い俺はいつだって目を離せずにいたと記憶している。
そのイカすアルファベットがポリプテルスという種の略であると知るのはもう少し先の話で、「誕生日にぴーおーが欲しい」と言って両親を困らせた事もあったっけか。
正体を知った両親は、大人になって、自分でちゃんと飼えるようになるまではこれで我慢しなさいと、魚釣りのゲームに添えるようにして、このポリプテルスの描かれたストラップを買ってくれたのだった。
俺はそのストラップと一緒に、引き続きペットショップへと。本物を見るために何度も何度も足を運んで。
やがて、ある日。見た事も無い、図鑑にも載っていない『魚』と出会う機会を――幸か、不幸か――得たのだった。
*
「ドラゴンみたいな魚?」
トカゲだったんじゃない? と、ミュージアムの近所にあるジューススタンドの椅子席に腰かけ、俺の話を聞きながらミックスジュースを啜っていた彼女は実も蓋も無い考察を呟いて首を傾げた。
だが、実際にそうである確率の方が高いんじゃないかと、最近は真面目に考えているくらいだ。そのぐらい、俺の記憶の中にあるその魚は、魚の姿からはかけ離れていて。
「でも、トカゲって言うにも変な形でさ。羽みたいな胸鰭があって、それで水槽の底を押すみたいにして泳いでたんだ。水面付近に行くときはひらひら動かして、そこから降りてくるときは滑空してるみたいだった」
「胸鰭じゃ無くて、ホントに羽だったって事は無い? ペンギンかもよ」
「……そもそもペンギンって、一般家庭で飼えるのか?」
「君が知らないなら私も知らないよぉ」
うーん、と、伸びをした彼女が、腕を解くがてらお手上げとでも言うように肩を竦める。申し訳無いが、俺が知らないのに彼女が知っている筈が無い、というのは、まあまあ正論ではあって。
何にせよペンギンでは無かったと思うが。
「でも、そんな謎のドラゴンフィッシュを探しての水族館巡りだって言うなら、なおの事今日のここは的外れだったね。そこはごめん」
「いいよ、あの魚を探すのは、もう今じゃついでみたいなもんだし」
「ついで」と割り切れる程度には、もう長い事あの魚を見ていないのも事実だ。それこそ夢だったのかもしれないと。……夢であってほしいと、時々思ってしまうくらいには。
「うーん、でも聞いちゃった以上、私も気になっちゃうな、ドラゴンフィッシュ。こっちでも調べてみよっかな。君がわざわざ探し回ってるってことは、ハイパー超絶イケイケフィッシュだろうし。お刺身とかで食べたいよね」
「食えるのかなぁ」
「食べて食べれないことは無いでしょ。私、シーラカンスはクソ不味いって話聞いた事あるよ? 不味いって解ってるって事は、食べたって事でしょ? 何事も冒険だって」
「いや、食べるために探してるわけじゃないよ。ファンタジーグルメ漫画じゃないんだから」
「それはそう」
ただ、真面目な話、と。あんまり真剣そうでは無い表情でまた一度ジュースを啜ってから、彼女は口を開く。
「大人と子供で姿が違う生き物とか。そういう可能性とかもあるんじゃない? もうそういう方面も調べてるなら何だけど、いろいろ可能性、広げるのもアリだと思うよ?」
「……」
全くしていない、という訳ではないが、彼女の言い分は最もだった。
思い切って、相談してみて良かったかもしれない。
個人的にあまり楽しめる施設では無かったけれど、彼女にあの魚の事を話すひとつのきっかけになったのだと思うと、そう悪いひと時でも無かったような気がしてきた。
「じゃあ、もっと特徴、教えてくれる? シロート視点の方が、案外発見あるかもだし」
「えっと、鱗は黒くてごつごつしてて……ところどころ、赤い部分があったのは覚えてる」
「ほうほう。……そういえば、その魚を飼ってたのって、どんな人だったの?」
彼女の言葉と共に脳裏を過った人の好さそうな中年男性の顔に、一瞬。ほんの一瞬だけ、ひゅ、と俺の息がつまった。
*
「ぼく。古代魚、好きなのかな?」
急に声をかけられて思わず声を上げると、膝を曲げて俺に視線を寄せた中年男性が、見るからに人の好さそうな笑みをこちらに向けていた。
とはいえ、「知らないおじさんに話しかけられてもついていってはいけません」と、再三小学校で教え込まれるような年頃だ。
俺は碌に返事もせずに、慌てて近くできらきらと輝くネオンテトラの群れを退屈そうに眺めていた母の後ろに回り、その足にしがみ付いた。
「どうしたの?」
「いや、その、すみません。急に話しかけたものだから、びっくりさせてしまったみたいで」
俺の代わりに、俺の後に付いて来た男性が口を開いたものだから、俺はよりいっそうぎゅ、と母のスカートを掴んだ。
母は驚いて俺を見下ろし、それから「知らないおじさん」に視線を向けて。そうしてすぐにしゃがみ込むと、困ったように俺と視線を合わせた。
「こら、ちゃんとご挨拶しなきゃだめでしょう?」
注意されているのが俺の方だと気付いて、俺は母と中年男性をせわしなく交互に眺めた。
母が、なにやら難しい肩書を口にしたように記憶している。ようするに、この男性はそれなりに偉い人だったようで。
いえいえ、と、中年男性はより一層笑みを深くした。
「さっきも言ったように、驚かせてしまったのは私の方なので。良い子ですね。防犯意識がしっかりしている。親御さんの教育が良いのが見てわかります」
「いやいや、そんな」と言いつつ母の声音がワントーン上がっていた事と、続けて「えらいぞ、ぼく」と褒められて。そんな状況から、幼い俺は、この人は本当に優しいおじさんなんだと、そういう風に判断して。
こんにちは、と、母の隣に並んで、俺はようやく、彼に頭を下げたのだった。
「こんにちは。挨拶がきちんとできるのもえらいね。うちの娘にも見習わせたいよ」
母はまた照れ臭そうに口元に手を当てながら会釈して、しかしふと疑問に思ったのだろう。「息子が何か」と、やや不安そうに、母は男性に問いかけた。
「ああいや、あまりに熱心にポリプテルスの水槽を見ていたものだから、つい。実は私も古代魚が好きでして、微笑ましくなって、つい」
「おじさん、あの魚飼ってるの?」
ほっとしたのもつかの間、今度は不躾に問いかけた俺を、母はまた「こら」と声を潜めて咎めかけたが、まあまあと笑みを崩さないまま、男性は柔らかな仕草で母をなだめ、改めて俺の方に向き直った。
「前は飼っていたのだけれど、今はもっと違う奴を1匹、ね」
写真を見るかい? とまず母に許可を取ってから問いかけてきた男に、俺はこくこくと何度も頷いた。当初の警戒なんで、もう、この時には影も形も無くなっていた気がする。
そうして、彼からスマホの写真を見せられた俺は、わあ、と心から感嘆の声を漏らしたのだった。
多分、専用の装置込みで壁に嵌め込んであったのだろう。壁の一部を置き換えた、絵に描いたような金持ちの家の水槽の底には、だいたいそういう水槽の中を悠々と泳いでいるアロワナとはまた違った魚が佇んでいて。
「うわあ、ドラゴンみたい!」
黒い、ごつごつとした鱗に覆われ、発光しているかのような棘がいろいろな所から生えた、翼のような胸鰭を持つ魚。
厳つい割に、瞳にどこか愛嬌があったと記憶している。
きらきらと目を輝かせていたに違いない俺の言葉に、男はより一層笑みを深くした。
「そうそう、ドラゴンみたいだろう? よかった、このカッコよさを分かってくれる子がいて。娘とじゃこんな話すらできないからね」
ガキだった俺は、その言葉を額面通りに受け取って、親の機嫌が良いのも相まって、つい男にとある提案をしてしまったのだ。
「ねえ、おじさん。俺、こいつホントに見て見たい。見に行っちゃ……ダメ、ですか?」
母がまた俺の名前を呼んだが、少なくとも怒っているという風では無かった。「もう、すみません」と男に頭を下げはしたものの、なんとなく向こうの出方を伺っているような雰囲気もあって。
そして男の方も、むしろ更に気をよくしたようだ。「いえいえ」とまた口角を上げて姿勢を正し、母の方と、目線を合わせる。
「家もこのすぐ近くなので、奥さんさえ問題無ければ、私は構いませんよ」
それから母と男は二言三言社交辞令のような会話を交わして、最終的に門限と「粗相の無いように」との約束事を言い渡して、俺を男の家へと送り出した。
地域の有力者と交流を持っておくチャンスであり、そしてペットショップから帰る口実としても、都合が良かったのだろう。
もちろんそんな母の思考になど露程にも意識する事無く、俺は男の案内に従って、本当に徒歩数分の範囲にあった男の家へと辿り着いた。
田舎町の有力者の家にありがちな、立派な門構えと巨大なガレージが並んだ入り口に、幼い俺は秘密の組織に招かれる冒険アニメの主人公のような気分になって、心を弾ませていたと記憶している。
広い庭を眺めながら石畳を歩いてようやく玄関に辿り着けば、しかし内装は比較的「普通」といった印象で、まあこんなものかと俺の高揚はここで少しだけ収まった。
収まったついでに――ふと、視界の端に、俺と同じくらいの背丈の人影を捉えて。
「?」
そちらに目をやれば、階段の影から同い年くらいの女の子が、不安そうに顔をのぞかせていた。
目が合うと、彼女は「あ」と微かに声を絞り出し、さっと頭を下げて、その顔を上げないままに階段を駆け上がって去って行った。
「??」
「ああ、娘がごめんね。気にしないで。後で君の事は聞かせておくから」
なんだか慣れたような口調でそう言って、それよりも、とワントーン上げた声音でそう告げてから、男が俺を連れて行ったのはどうやらリビングらしかった。
俺の家の居間よりも二回りくらい大きな部屋の突き当りの壁。入り口から入ってよく見えるその位置に、写真で見た時よりもずっと大きな印象の水槽が嵌め込まれていて。
「わあ!」
思わず歓声を上げた俺の頭に、もう先程の彼女の姿は無かった。
速足で歩み寄り間近で眺めたあのドラゴンのような魚は、古代魚にしてはそこまでのサイズでは無い筈なのに、そも見た目故か信じられないような迫力があって。
基本的に水底に居る魚なのだろう。泳ぐのの邪魔になるといけないから、赤っぽい底砂以外の装飾は存在していない、シンプルな水槽は、しかしそれだけにこの魚の姿をより一層引き立てていた。
加えて水質の関係なのか、魚の周りは幽かに水の流れが歪んでいるかのように見えていて、まるで、魚そのものが高温を発しているかのようで、その揺らめきだけでもずっと見ていられそうだと、幼い俺は思っていたような気がする。
「すごい、すごいよおじさん! こんな魚、見た事無いもん」
「はは、喜んでもらえて嬉しいよ」
「ねえおじさん、この魚は何て名前なの?」
「ああ、この魚は――」
魚の名前は、俺の記憶からは欠けてしまっている。
思い出せるのはあの時の確かな興奮と、いくつも訊ねた魚への疑問。最新の設備だと言ってスマホを操作するだけで自動的に餌をやれる画期的なシステムや、そして、件の魚の、あの力強いシルエットばかりだ。
あっという間に母と約束した門限の時間が迫ってきて、俺は男の家にまた遊びに来る約束を取り付けつつ、またあの広い玄関を抜けて――
――そう長くは無い帰り道すら我慢が効かず、もう一度あの魚の写真を確認しようとスマホを取り出して、俺は、大事なポリプテルスのストラップをどこかに落としてきたらしい事に、ようやく気付いたのだった。
どこかも何も、あの魚の写真を撮影している時には、まだ確かにスマホケースからストラップは垂れ下がっていたと、俺は急いで帰ればまだ門限には間に合うと、来た道を走って引き返して。
優しくて、魚好きで、母にも偉い人だと思われているおじさんが、けして「いい人」では無かったという、知りたくも無かった事実を垣間見る羽目になって。
*
「……どうしたの? 大丈夫?」
今回こそは間違いなく魚を気遣っている印象が伺える、薄暗い照明の中でさえ、彼女が俺を慮ってか不安そうな眼差しを向けているのが理解できた。
古代魚の展示にも力を入れているとあった県外の水族館は、しかしそれだけに遠い日の思い出を蒸し返すかのようで、俺は砂の上でじっと身を潜める大きなポリプテルスの仲間をじいっと見つめたまま、しばらく動かなくなっていたらしい。
「……ああ、うん」
「ひょっとして、今回も楽しくない?」
「そんな事は無いよ。ただ……ちょっと、昔の事、思い出してただけで。前に話した……」
「あー……まあ仕方ないんじゃない? だって、火事で死んじゃったんでしょう? そのおじさんも、ドラゴンフィッシュも、女の子も」
そりゃ、直接見て無くてもトラウマにはなるよと俺を慰める彼女の言葉をぼんやりと耳にしながら隣の水槽を眺めれば、とんでもない大きさのピラルクがマングローブの根をもしたオブジェの隙間をゆうゆうと泳いでいて、俺はその鱗に挿した赤色に、やはり炎を見出して。
「それにその様子だと、やっぱりドラゴンフィッシュもここにはいなさそーなカンジ?」
「うん、少なくともここまで見た展示の中にはいなかった」
「ここにいないならショージキもう当て無くない? 少なくとも日帰りで行ける範囲は無さそうっていうか」
「じゃ、今度はいっそ、泊まりで旅行、行っちゃうか?」
「えっ? ……おお。なんだよぉいつになく積極的じゃん。楽しんでるっていうの、嘘じゃなかったんだね。よかったよかった。でも思い出話まで出しにして不健全な事言い出したので、1億点減点! なので優勝は蛇のマークの寮です!」
「不純な想像してるのはどっちだよ全く……」
苦笑する俺に、お辞儀をするのだだのなんだの言いながらころころと笑う彼女。
水族館はやはり、大学生カップルの他愛も無い戯れが許される程度には空いていて、少なくとも今、このエリアに居るのは俺達だけだった。
「ところで、当てが無いと言いつつ、なんだけど」
そんな中、ふと彼女が俺の方へと向き直る。
「何だよ」
「いや、うちの割と近所に珍しいアクアリウムのお店があってさ。ひょっとしたらそのドラゴンフィッシュもいるかもしれないなーって、そう思って」
「……アクアリウムの店?」
水族館に行っても見つからない魚が、一般の店舗に? と、首を傾げる俺に背を向け、彼女は俺達の背丈よりも遥かに高い水槽の硝子へと歩み寄る。
「ラヴォーボモン、って名前じゃなかった? その魚」
「え?」
びり、と。
電流が、走ったかのようだった。
初めて聞いた単語であるかのような気と、その単語をどこかで聞いた事があるという確信。その両方が、いっぺんに。俺の頭を駆けて行って。
水槽の前で振り返った彼女のシルエットは、水槽から挿す光と通路の薄暗がりの影響で逆光となっており、俺には今、彼女がどんな顔をしているのか、判らなかった。
「私も調べるって言ってたでしょ? で、見つけたのがその魚ってワケ」
「どうやって?」
「偶然偶然。まさに灯台下暗しってヤツだよね。私も地元のペットショップとかぶらぶらしてみたんだ。そしたらびっくり、変な魚の専門店があってさ。そこに、君が言ってたような魚がいたの。それがラヴォーボモン」
そう言いながら歩み寄ってきた彼女の表情は、当初からそう変わってはいなかった。
いつも通り、明るく笑っている。いつもとは違う照明の下に居るから、少し些細な印象が異なるだけで。
「旅行の前にさ、一緒に行ってみようよ」
「……そっか、うん。そりゃいいな」
灯台下暗し――そうと言う他無いのだろう。彼女が、俺が十年近く探して回っていた魚を、こんなにもあっさりと見つけ出してしまったのは。
珍しい魚だから、きっと水族館にしかいないと。そう思い込んでいたから、見つけられなかったのだ。
あの日の事が、今でも見るような悪い夢だったから、見つけられなかったんじゃなくて。
「そうしよう」
ようやく目当ての魚をもう一度見られるかもしれないのに、むしろ俺の心臓はやけに自分の存在を強く主張し始めていて。
「楽しみだな」
自分で吐き出した言葉が、なんだか、とても空虚に感じられた。
にもかかわらず、彼女はまたにこりと笑って、今度は俺に身を寄せて、ぎゅ、と素早く俺の右手を取った。
彼女の細い指と俺の手の平との間に、なんだか柔らかい感覚がある。
「?」
「つっても、私の勘違いでただのぬか喜びかもしれないから、保険にね。代わりになるかどうかは判らないけど、コレ、プレゼント!」
そっと彼女が離れたタイミングで、俺は右手を持ち上げ、手渡された「それ」に視線を落とした。
「――ッ」
それは、枯葉色をした細長い魚のストラップだった。
鱗の代わりにもふもふの布。瞳はつぶらな黒いビーズ。うっすらと入った縞模様は、子供の引いた稚拙な線のようだけれど、恐竜を彷彿とさせる力強いシルエットを始めとした要所要所で、特徴はしっかりと掴んでいる。
俺があの日失くしたのと全く同じ、ポリプテルスのぬいぐるみストラップだった。
「君、この魚好きでしょ?」
彼女は無邪気に笑っている。
「言っちゃ悪いけどパンピーにとってはマイナー魚だし、グッズ、全然無くてさ。それも実は中古品なんだ。でも、言わなきゃわかんない程度には美品でしょ? お兄ちゃんお兄ちゃん、うちの魚は新鮮だよー!」
申し訳程度に声を振動させて魚屋の真似を始める彼女だったが、正直、俺はそれどこではなかった。
俺がずうっと見つけられず、思い出せなかった魚の名前。
俺がずうっと昔に失くして、探し出しもしなかった魚のストラップ。
彼女が、両方、見つけてきた。
こんな偶然って、本当にあるのか?
そもそも――さっき、彼女。なんて言った?
火事で死んだのは、あのおじさんと、あの魚と、女の子だって言わなかったか?
俺、彼女に『あの子』の話はしたか?
「……」
思い、出せなかった。
「……あ、やっぱり男子大学生に渡すにはちょっと可愛すぎたかな。ごめん、いくら保険だとか言ってもだね。もっとリアルなタイプの方が良かった?」
「え、あ……いや」
と、彼女がほんの少しだけ眉尻を下げたのに気付いて、俺は我に返って頭の中に絡みついていた「余計な考え」を振り払う。
余計な考えだと判断すべきだと思った。しなきゃいけないと。
魚を見せてくれたおじさん。
鯉を飼っていたおじいさん。
そして、俺自身のおじいちゃん。
優しい人だと思っていた。俺はそう、思っていた。
でもあの人達が死んだ後、周りの人は、声を潜めて、でも口々に、こう言った。
本当は嫌な奴だった。本当はひどい事をしていた。本当は付き合いたくなかった。
本当は、本当は、本当は、と。
その「本当は」を口にする輪の中には俺の両親も居て――俺が見ていた彼らの「側面」は、全部偽物だったかのように片付けてしまうのだ。
そして俺自身、その度に娘に憂さ晴らしのように怒鳴り散らすあの男性の影がちらついて――知りたくなかった事ばかりが、本当の面なのだと。平気で手の平を返して人の悪口を言ってのける両親も含めて、そう感じざるを得なくなってしまっていて。
「暗くて、一瞬何かわかんなかったんだ。ポリプテルスじゃん。覚えててくれて、嬉しいよ」
まだ、偶然でしか無い。
「本当の面」を見た訳じゃない。彼女がそう言ったワケじゃ無い。
彼女があの男性が当たり散らしていた女の子で、火事で死んでなんかいなくて――見て見ぬふりをして逃げ出した俺を恨んでいるかもしれないだなんて。そんな事、俺の想像に過ぎないんだって。まだ、片付けられるんだから。
「ありがとう」
俺はポケットからスマホを取り出して、カバーに空けてある穴の中にストラップの紐を通した。
たしかに大の男が持つにはちょっとファンシーなデザインではあるものの、彼女からの贈り物だと言えばむしろ自慢にしかならないだろう。
俺の好きな人は明るくて、可愛くて、優しくて、気が利いて、趣味にも理解があって――それが、「本当の面」。それで、いいじゃないか。
「大事にするよ」
俺が彼女を見てそう告げると、彼女はにこりと、やはり俺の知っている顔で、微笑んだ。
*
「いらっしゃ……」
やって来た客を出迎えようとしたアクアリウムの店の店主は、女性の顔を見て台詞を口の中で霧散させる。
「こんにちはー!」
対照的に、女性は明るく笑って見せた。彼女がこの店に足を運んだのは2度目で、そして、店主と顔を合わせたのは3回目だった。
明々と燃え盛る炎の中で見上げたその顔の、年齢的な印象が全く変わっていない事に彼女は最初の来店の際多少驚きはしたものの、初めて会った時の状況の方がよほど非現実的であったが故に、そういうものなのだと、彼女はあっさりとその感情を割り切っていて。
「ラヴォーボモン、まだ売れてませんよね? 明日彼氏が見に来るんで、確認しておこうと思って」
「……この前と同じところに居るよ」
どうも、と軽く会釈しながら女性が足を運んだ先には、かつて彼女の家にあったものの3分の1ほどしか無い水槽があって、しかしその中には、かつて彼女の家にいたのと全く同じ姿をした魚が、翼のような胸鰭で赤い底砂を撒き上げながら、力強く泳ぎ回っていた。
否、魚では無い。
ラヴォーボモンは、そしてこの店の水槽にいる存在は、全て『デジモン』と呼ばれる生き物だ。
彼女は既に、それを知っている。
「同じデジモンでも、うちにいた奴とは全然印象が違いますね。ま、ことあるごとに子供に怒鳴ってるような奴がいるんじゃ、畏縮しちゃって当然か。……そういう意味ではあの子も被害者だったんだって。今更割り切れたところで、なんですけど」
「……」
独り言のように、そして自分の気持ちを整理するように呟く彼女の言葉に、店主は静かに耳を傾けていた。
責任を感じているのだ。目の前の彼女にも、そして、目の前にいるものではないラヴォーボモンにも。自分が、アクアリウムを飼った人間の性質をきちんと見抜けなかったが故に、ひとつの悲劇を引き起こしてしまったのだと。
と、そんな店主の視線を感じてか振り返った彼女が、慌てて「そんな顔しないでくださいよ」と取り繕う。
明るい風に振る舞えるようになっても、相手の顔色を窺ってしまう癖はなかなか抜けないなと、そんな自嘲を込めて半分だけ笑いながら。
「店長さんを恨んだりなんてしてないんです。コレはホントに。だって、別の魚飼ってる時からクソでしたから。今は便利ですね。モラハラって、ちょうどいい言葉がある。モラハラクソ野郎。……もう、父親扱いするのもおこがましいって言うか」
「……だが」
「それに、ちょっと勘違いさせちゃったような雰囲気あるんですけど……彼の事だって」
店主の言葉を遮りながら、彼女は再びラヴォーボモンの水槽へと視線を移す。
「あの日」も彼女は、そうしていた。
今よりもずっと無機質な眼差しをラヴォーボモンに向けながら。
右手に、工具箱から出してきたネイルハンマーを、力いっぱい握り締めながら。
「むしろ、彼には感謝しているんです。小さかった彼が、あの男と楽しそうに過ごしてなきゃ。ぷつんって、アイツの抑圧の糸ごとはキレちゃえなかっただろうし」
いつものように1時間近く罵声を浴びせられ、数時間もの間くどくどと人格を貶められ、ようやく解放されて部屋で息を殺しながら泣いている時に、急に機嫌が戻った男に「言い過ぎたねごめんねでもお前のためにお父さんは言っているんだよ」と決まり文句の猫なで声で慰められ――だが、その振舞いが家に突然やって来た少年に対するものとは決定的に違うと、その時、確固たる差異を感じられたから。
少女は、自分より大切にされている魚が、その時初めて、許せなくなったのだ。
幼かった彼女は、激情に任せてアクアリウムを叩き割った。
「何度も言うように、あのラヴォーボモンには可哀想な事、しちゃいましたけど。でも、ああしなかったら私、アイツから解放なんてされなかっただろうし、アイツに追い出されたママの事も、私を捨てたんだって勘違いして恨んだままだっただろうし。……すぐにね、迎えに来てくれたんですよ。抱きしめてくれた。最初はわけがわからなかったけど、でも、嬉しかったなぁ。これが本当の家族なんだって。そんな事すら、あのままだったら、解らなかったんです」
「……」
「それもこれも、彼がうちに遊びに来たのがきっかけで……それから、店長さんがあの爆発から私を助けてくれたお蔭なんですから」
割れた水槽の中身が現実のテクスチャを浸食する中、自分に向けられていたものでは無いとはいえラヴォーボモンの心を蝕み続けていた心無い言葉の数々に、確実に自分に向けられた『暴力』が火をつけて。ラヴォーボモンもまた、自分の中からマグマのように噴き出した激情に身を任せた。
そしてそれは、この世界においては人1人が亡くなった『火事』として処理されたのだ。
「何でしたっけ。もう、ラヴォーボモンじゃなかったんですよね?」
「……ラヴォガリータモン。それが、あの時のあの子の名前だよ」
「ラヴォガリータモンを食べたあの『口』も、店長さんの力だったんですか?」
十数年越しの少女の質問に、この白黒の老人は、沈痛の面持ちを浮かべるばかりで、答えはしなかった。
だが、答えを得ようとまでは、彼女も考えていなかったらしい。
彼女は今この場に居るラヴォーボモンに軽く手を振って、元来た道を、引き返す。
「私も店長さんの事、誰かに言ったりしませんから。店長さんも、彼には秘密にしておいてくださいね」
本当の要件はそれだと言わんばかりに、静かに言い残して。彼女は店を後にした。
彼女の言を信じるのであれば、彼女は1人の男性とともに明日もこの店にやって来て、しかし、今店主に見せていたような表情は、きっとおくびにも出さないだろう。
店主は目を閉じて、あの日見た光景を思い返す。
大きくなった翼を羽ばたかせる事すら出来ずに暗がりに呑み込まれて行く、怯え切ったラヴォガリータモンの瞳を。
人とデジモンが関係を結ぶなど、それ自体が間違いなのだと。自分達に訴える、自分達自身の、ひとつの『面』を。
女の子のお父さん、なんであんな風に叱りつけていたんですか⁈血が繋がっていない、とかだったらまだ分かるんですけど。何というかお父さんは頭ごなしに叱りつけてばかりで、作者さんには大変申し訳ないんですが……
何か理由があるのでしたら知りたいです
夢と水槽はなんぼでっかくてもいいってばっちゃが言ってた。
はい、というわけでこんにちは、『デジモンアクアリウムEpisode:8 見て見ぬふり』をご覧いただき、誠にありがとうございます。古代魚の飼い方の本に乗っていた「エサの冷凍ムカデは管理の仕方を誤ると妻にバチクソ怒られます(意訳)」の1文がいつまで経っても忘れられない快晴です。
今回は「前に進む話」ですが、進は進むでも「見なかった事にして進む話」となります。……と、このテーマとモラハラクソ野郎が自業自得で死ぬ展開は決めていたのですが、製作にはかなり難航しました。どのくらい難航したかと言うと、ネタを求めて某府の水族館に足を運び、サンタマリア号に乗ってコロンブスの薔薇アイスを食べたりするくらい難航していました。コロンブスの薔薇アイスって何。
最終的に7話と対になるよう、アクアリウム購入者からは視点をずらして書くという構成を選びましたが、まああんまり書いてて気持ちの良い話では無かったですね。直接的な描写は冒頭だけとはいえ、全体的に影を落としていたんじゃないでしょうか。いや、でも大学生カッポーの特に必要の無いいちゃいちゃ描写もまあまあした気がするからプラマイゼロってことでどうか。
さて、デジモンアクアリウムですが、予告通り次回、最終回となります。いや、正確にはまだ普通に1話分あるエピローグも残されているので全然最後では無いのですが、物語としては、そして(多分)店主さん達の正体やアクアリウムそのものの謎については、9話で全て決着がつくと思います。むしろ10話何するの? って感じになると思いますが、兎にも角にも、最後までお付き合いいただければ幸いです。
改めて、デジモン『アクアリウムEpisode:8』を読んでいただき、本当にありがとうございました!
以下、感想返信です。
夏P(ナッピー)様
この度も感想をありがとうございます!
種明かしをすると、後輩ちゃんの買ったアクアリウムがタッパータイプだったんです。水を入れられる容器ならなんでもいいのかって感じだとは1話で明かしてある通りなので……。加えて容器が安い&壊れにくいものだと、お値段も控えめになるシステムだったりします。
ダイブモンがけっこうフェアな精神を持つデジモンという設定らしいので、今回はサメパニックにはならなかったのでした。
多感で、それでいてまだまだ幼い時期ですからねぇ、中学生って。どこまでも自分の思い通りにはならないけれど、理想は沢山あると言いますか。そして好きの形だって、いろいろあっていい筈なんですよね。今回はなるべく爽やかになるよう、自分でも気を配ったつもりです。何せ他が爽やかでは無いので……。
学生全員がパルスモン連れてるスポーツものっていうのもなかなか面白そうな。しかしナマケモン、本人がしっかり運動していてもトロフィーを確保しないとナマケモン一直線なので、バイタルブレス越しだと仕様に踊らされる生徒も居そうな予感が。
まあ……似てはいますからね、サーフィモン。彼にもいつかスポットライトが当たる日が来ることを信じて……。
改めて、感想をありがとうございました!