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フォーラム記事

LunaReni
2022年9月28日
In デジモン創作サロン
ただいま、午後12:00。真昼の空。雲が丸く凹凸をつけて、ぷかぷかとのんきに泳いでいる。 公園のベンチに座って、それをぼんやりと眺めながら、僕は、今晩のおかずをぐちぐちと考えていた。 (昨日は、ラーメンにしたけれど、まだ材料は残ってるからな〜……。 一般論なら、こういうガッツリ系の物を食べた次の日は、野菜とか、パスタとかのアッサリ系を食べるだろうけど、あいにく、子どもの僕には関係ない。 そもそも、子どもだからってなんだ。 大人になると、エビフライやハンバーグのような、油ものがキツくなるって聞いたことがある。そうにもかかわらず、栄養士のおばさんは、「未来に向けて、バランスよく食べて、丈夫な体にしようね」という理由で、子どもっぽい栄養の成分表を押し付けてくる。ひどい。 ……何が「子どもだから」なんだ。 そういう、思い上がった屁理屈で、子どもたちから色んなチャンスを奪うなんて。本当に、大人は本当にひどい。 だいたい、何が未来だ。 明日なんて、きちんと来るかどうかすらわからないのに、分からないものを期待してどうするんだ。 今がよければいいじゃん。子どもである今だからこそ、たくさん出来ることがあるんだ。 楽しまなきゃ損じゃんか……。 クラスのやつらもだ。 わざわざ、大人の奴隷になって、あいつらの言うことを聞くのもどうかと思う。 「褒められた!」 「100点だ!」 「表彰された!」 ……っああもう。ムカつく。 それは全部、アイツらの評価に踊らされてるだけ。なに呑気に尻尾振っているのか。ピュアすぎ。騙されすぎだ。 大人はただただ、俺たちがめんどくさいことを起こさないよう、ルールを作って、管理して、適当に褒めてるだけ。そう、きちんと一人の人間として、見てくれてないんだ。 僕は騙されないぞ。「子どもは国の未来」だとうたってるなら、それなりにもっと子どもを自由にするべきじゃないか。 どーせ言っても、「子どもだから〜」って相手してくれないけど。 だったら、僕は自由に動くよ。学校には行きたい時だけ行くし、遊びたい時は遊ぶ。もちろん、好きなものは好きなだけ、食べ飽きるまで食べるつもりだ。 「また文句言われてもいいのか!」 いーいよ。僕はもうあいつらのことなんて、知らないんだから。 というわけで、……今晩は、カツ丼だ!) そうと決まると、重い腰を上げ、僕は目的地である商店街へと、足を進めた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ただいま、午後12:15。 駅から約3分、公園から約15分って距離を乗り越えて、僕は、2日ぶりに商店街へやってきた。 ガタがきそうな古いアーケードを通ると、老舗の花屋さんから、つい最近できた古着屋さんまで、両端にずらりと並び建っている。あいも変わらず、まるで、僕の帰りを待っていたみたいだ。 間を入れずに、彼らは、陳列した自慢の商品とともに、僕を「こっちにいらっしゃい」と手招いてくる。 (申し訳ないけど、僕には今、食い気以外ないんだ。) そう心の中で謝りながら、僕はまっすぐ、目的のお店へ向かった。 僕が生まれる前からずっとあるこの商店街は、入っているお店こそ、建物の劣化や売上などの限界で、くるくる変わってきた。昔からお世話になったおもちゃ屋さんも、小学生になった時期に消えてしまった。 でも、どんなに模様替えしても、昔から「どんな僕にも楽しい時間をくれる」点は変わっていないと、来るたびに思う。 たとえ、周りからの影響で、ムードが駄々下がりな時期でも、関係なしに、カラフルな商品で僕を元気にしてくれる。 そう、どんなに変わっても、いつだって味方でいてくれるんだ。 そうこう思っているうちに、僕は目的地であるいつものスーパーの前にいた。 カゴを取り、中に入ると、空気が変わった。 (さあ、戦場だ!) まず、最初に並び立つのは野菜と果物のコーナー。色とりどりの野菜や果物が、最終オーディションの如く、きれいに並んで僕を見ている。買って買ってオーラを出して、その魅力を魅せつけてくる。実ってから、今まで厳しく険しい審査を乗り越えて来たため、みんな買われるために必死だ。当然、彼らの努力に僕も買い手として、優れた目利きで応えなきゃいけない。 目に止まったのは、赤く熟れたどでかいトマト。それと対照的に、深緑に光る長いキュウリ。そして、ゴロゴロしているけど、ゲームのお供の原材料である人気君主ジャガイモ。 (美味しそう。……うん。予定にはなかったけど、カツ丼の付け合わせの「ポテトサラダとして、完璧なパーティだ。君たちをスカウトしよう!) 僕は射止めた野菜たちを、ポイポイとカゴに入れ、別れを惜しみながら、その場を離れた。 次に来たのは卵のコーナー。いつも僕は、安値の極地に君臨している卵の王、『白峰の卵』六パックを選ぶ。 しかし、残念ながら、今日の狙いは、コクと値段がちょっと高い、『赤峰の卵』六パックだ。理由は色々あるが、味のバランスだ。 (昨日のラーメンなら、スープがすごく濃厚だから、食べ飽きてしまう可能性がある。だから僕は、普通の茹で卵を入れて、味のバランスを整えた。しかし、具材を分けて食べられるラーメンとは違う。カツ丼は全てを合わせて作られる。淡白でジューシーなお肉を引き立たせるために、素材そのもののコクは欲しいんだ。) そういうことで、僕は『赤峰の卵』を手に取り、ヒビがないか確認して、そっとカゴに入れた。 その後、ちょい足し具材がないか探すために一周したが、オードソックスに行こうと思い、僕は最後のコーナーで、パン粉と薄力粉を手に取った。 手に取ってカゴに入れ、最後に買い忘れた物がないか確認する。 (…………うん。全て揃った。素晴らしいメンツが揃ったぞ!今日も、美味しく作れそうだ!) こだわり抜いた素材たちを眺めながら、もう早く料理してあげたいという気持ちでいっぱいだ。僕はレジへ向かおうと、目線を上げた。 (………………え?) 何かが、目に映った。 状況が理解できない分、整理するために、瞬きをして、目を細めて、もう一度見る。 (いる……。確実にいる。) 何かが映って、いた。 簡単に説明すると、青い物体。全身がノイズのようにガタガタしていて?燃えていて?いかにも「とんがり帽子を被ったオバケ」と言える……ちょっと怖いマスコットキャラみたいな見た目だ。そんな、アニメや漫画だけに存在するはずの、二次元の存在が、僕の目の前に映っていた。 二次元の存在は、三次元の現実には存在しないのが、一般論だ。普通なら、絶対ありえない。 (なんなんだ……?僕、浮かれすぎて、幻覚が見えるようになっちゃったのか?) そっと頬をつねって、痛覚があるのを確認する。大丈夫、夢じゃない。僕は正常だ。いや (……現状は異常だ。しかも、誰もそいつに気が付いてない。異常すぎる……。) そうこうしているうちに、そいつと目が合ってしまった。 瞬間、青い物体は体と目を激しく輝かせ、瞬時に僕の元へヒューン!!と飛んでくる。動けるわけがなく、僕はそのまま固まってしまった。 「わはぁ!!!こんにちは!こんにちは! ぼくはゴースモン!!きみ、ぼくのこと見えてるよね!?」 青い物体は、ふよふよ浮きながら、そう興奮気味に、僕に話しかけてきた。 どっかのニチアサ的展開なら、ここで話しかけるのが主人公だ。でも僕は主人公じゃない。ここは一般論に従って、逃げるが勝ちだ。 そのまま僕は、回れ右して足速に逃げる。 「ま、待つんだ!」 どうやら、あの青い物体は僕を追いかけて来るみたいだ。 (悪いけど、こっちははやく帰って、カツ丼を食べる使命がある。ここまでの楽しい時間を、黒歴史にされてたまるもんか。) そのまま気にせず、歩調を早めていく。 「きみ!!ぼくはきちんと、きみに挨拶をしたのに、それを返さずに逃げるのかい?」 (これは、幻聴だ。無視だ無視……) 「挨拶したら挨拶し返すのが、人間の礼儀の一つだと聞いたけど、そうじゃないのかい?」 (それは、時と場合による) 「それはちょっと失礼じゃないのかな!!」 (カツ丼カツ丼カツ丼カツ丼カツ丼カツ丼……) 「あーーー!!『カエルの子はカエル』と聞いたのに、人間の子は人間で、個体差は激しいのか!?人間の子どもたちって、みんなこんな失礼極まりない子なのかい!?」 (カツ丼カツ丼カツ丼カツ丼カツ丼カツ丼カツ丼カツ丼カツ丼カツ丼カツ丼カツ丼カツ丼カツ丼カツ丼カツ丼カツ丼カツ丼……) 「わからないよおおぉぉお!! なぜこんな素晴らしい世界に産まれたのに、こんなに無礼な子がいるんだぁぁあ!!」 (……………………。) ……これ以上、無視を決め込んでも、このウザくてうるさい幻聴は、止まないらしい。 勝手に憶測を語り、勝手に嘆いてくる。 もう、本当の本当にうんざりだ。 僕は足を止めて、後ろを向いた。 見ると、青い物体は、『えんえんと泣き喚く子ども』のポーズをしたまま、空中に固まっている。 僕はため息を吐き、イライラを含めた口調で、青い物体と会話を始めた。 「こっちだって、なんで得体の知れない生物に説教されなきゃいけないのかわからないよ。」 「!!確かにそうだ……。 素性の知らない相手になら、敵意を向けても仕方がない!!……きみのことを考えていなかった、ぼくの方が無礼だった!!ごめんなさい!!本当にごめんなさい!!」 「……いいよ。気にしてない」 「では改めて!」 「え?改めなくていいのに」 「だって、さっきの態度で、きみはぼくの名前を、頭にきちんと入れてないと思ったんだ」 「それは、僕は最初から、君と関わりたくないからだよ」 「そんなこと言わないでよ、 『袖振り合うのも多少の縁』 『一期一会』ということわざは、こういう時のために作られた言葉じゃないのかい?」 「そうだけど、人間が全員、その言葉に従わなくてもいい世界なんだよ」 「じゃあ、ぼくはこの素晴らしいことわざに従うね。」 「は?」 「よし、仕切り直しも兼ねて、もう一度、自己紹介させてもらうよ!」 「……」 「こんにちは!ぼくはゴースモン!ついさっき、デジタルワールドからこの世界にやってきた、デジタルモンスター、『デジモン!』という生き物だよ!」 「へー……」 「さあ、ぼくは自己紹介をしたよ。 次は、きみの番だ!」 「………………。」 「きみの名前は?」 「…………リコ。蝦蔓リコ。10歳。」 「えらい!もっと教えて!」 「小学四年生」 「うんうん!それで!?」 「……ついさっきから、周りの人に好奇の目線を向けられている、日本人」 「おお、好奇の目線とは、いいこと……ではない!!」 そう。話している間、周りにいる買い物に来たお客さんや店員さんたちが、「あの子、頭おかしいの?」という目線を、僕に刺してきていた。 止めるつもりだったのに、結局、楽しい買い物は、僕の悲惨な黒歴史になってしまった。 「ええと、リコちゃん、大丈夫?」 昔から馴染みのある、店員のお兄さんが苦笑いで話しかけて来ている。 マズイ。実にまずい。 無論。今の状況を話しても、お兄さんには理解できないだろう。 さっきも言った通り、二次元の存在は、三次元の現実には存在しないのが、一般論だ。さらに、コイツが見えない以上、僕の言い訳は99%、お兄さんは理解できない。 (コイツさえ、他の人から見えていれば……。) 歯軋りしても仕方がない。こんなこと考えている間も、悔しさよりも恥ずかしさが湧き立っている。なにより……その憐れんだ目線から、早く逃げたかった。 「うん……大丈夫ダヨ!!」 僕はお兄さんに返事をしながら、素早くレジへと駆け込んだ。会計を済ませ、レジ袋へ買った商品と得体の知らない生物……じゃない、『ゴースモン』を投げ込み、忍者のごとく、そのまま外へ飛び出した。 (うわああああああ……!! 多分、もう来られない。 1ヶ月以上は来られない!! 最悪だ!知らない!僕は知らない! こんなことになるなんて知らないよ!!) 恥ずかしさと悔しさで、頭がこんがらがりながらも、僕は、駅を越え、公園を抜け、気づけば、家へたどり着いていた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 家に入って、レジ袋から卵を取り出して置き 、その他全てを冷蔵庫へ突っ込んだあと、僕はすぐ布団に入って寝た。本当なら、体力回復のために、おやつを食べて寝るべきだったが、得体の知れない物体を持って帰ってきてしまった以上、そんな余裕はなかった。体調が悪い時は、いつも寝ていた。不調は眠ればすぐ取れる。寝りは万能薬だと思っていた。しかし、違った。 ただいま午後17:00。青い物体、、、いや、ゴースモンという生物は、僕が目覚めても消えていなかった。 一度、頬をつねってみる。 (……痛い。正常だ。) 「……ねえそれって、人間がよくやる『自分が今見てるのが、夢か現実か確かめる方法』だよね!?……実際に効果はあるのかい!?」 「君が見える以上、ないのかもしれない」 「へぇ、意外と迷信なものもあるんだね」 というわけで、僕はこのゴースモンの語りに渋々付き合わされることになった。 といっても、基本的な情報を語りながら、生まれた時の感情や、仲間との思い出話、特に面白かった授業のことなど、くどくどくどくど交えながら、無駄に駄弁っていた。 結果、話が終わった時には、時計は一周していたため、かれこれ小一時間くらい掛かった。 彼(第一人称が『ぼく』なので)が話した基本情報は、主に4つ。 まず一つ目に、ゴースモンは『デジモン』という生物であること。 デジタルモンスターは、僕たちの世界『人間界』とは違う異世界、『デジタルワールド』に生息している。ということで、正真正銘の『異宙人』だ。 二つ目に、ゴースモンは『ウィッチェルニー』にある魔法学校の生徒であること。 というのも、デジタルワールドにもさまざまな次元が存在しており、ゴースモンはその中の『ウィッチェルニー』という世界から来たということだった。『ウィッチェルニー』とは、デジタルワールドの中でも特に、魔法に秀でた世界であり、いろいろな魔法学校が存在しているらしい。その中でも、『霊』のデータを持つデジモンの魔法学校に、ゴースモンは在籍していた。そしてなんやかんや楽しい思い出を作りつつ、最近、基礎クラスを修了し、進級する権利をもらったんだとのこと。 そして、進級するためには『進化』が必要だということだった。 三つ目に、デジモンの『進化』について。 デジモンの『進化』とは、人間の起源であるホモ・サピエンスや動物のように、環境に適応しながら、少しずつゆっくりと成長していくのではなく、あるデータを吸収したり、バトルを積み重ねたり、何か気づきを得たりなど、ある『きっかけ』によって、突発的に起こりうる段階的な成長であることが、前提とされている。 基本的に進化の段階は、「幼年期Ⅰ」から始まり、「幼年期Ⅱ」から「成長期」、そこから「成熟期」、「完全体」となって、最終的に「究極体」になると言われている。 じゃあ、人間との違いはというと、デジモンには自身の持つ『データ』……人間界で言うところの『DNA』によって、そのデータと持つデジモンに進化できる仕組みがデジコアにプログラムされている。 例として、人間界にいる「オタマジャクシ」はカエルのDNAを持つため、カエルに進化する。 しかし、それをデジモンに置き換えると、「オタマジャクシ」は『両生類のDNA』を持っているため、カエルだけに限らず、「別のカエル」や、「他の両生類」に進化することが出来る。 また、特異まれな例もあり、オタマジャクシが自身の持つDNAとは違う種族……鳥や人間に進化したりする可能性も、デジモンが吸収したデータの反応によって、あり得るらしい。 要するに、この『DNAの性質』の違いが、人間とデジモンの『進化の自由度の違い』だそうだ。 これを踏まえて、話を彼の進級についてに戻すと、この『進化の自由度』が広いことから、進級先のコースも、進化の可能性だけ多岐に分かれている。そのため、ウィッチェルニーにある全ての魔法学校では「進化先のデジモンのタイプによって、選べるコースを絞る」制度を取っているそうだった。 四つ目に、ゴースモンは『進化のきっかけ』を探しに、この人間界に来たこと。 彼自身、興味があるものなら、なんでも学ぶ性格であり、今その瞬間を大事に生きることがモットーらしい。しかし逆に、「どんなデジモンになりたいのか」、「どんな魔法を使えるようになりたいのか」というような、自身の将来像が全く浮かばない現状に、深く思い悩んでいた。 そのことを担任に相談したところ、「人間界に行くこと」をアドバイスされたのだという。その理由は二つあり、「異世界にいる他者と交流すれば、普段の学びでは得られない価値観に、たくさん接触できるチャンスがあるから」という先生らしい理由と、「人間界は我々の祖を生み出した存在であるため、同じプログラム言語や話し言葉でコミュニケーションがしやすいから」という、単に都合がいいという理由からである。 それでも、彼は素直にその言葉を信じて、人間界のことをたくさん勉強し、転移魔法を先生にかけてもらい、人間界へとやってきて、今に至るということだった。 「というわけで、きっかけ探しとして、僕の質問に答えてほしい!!」 「パス。」 「え〜〜なんで!?なんで!?ぼくってほら、人間界でいうところの『物珍しい』存在じゃん!ほとんどの子どもは食いつくと思うのに、きみは何とも思わないのかい!?」 「むしろ気味が悪いよ。ここまでの経緯聞いたって、まだ僕の中にある君への不信感は消えてないし、そんなこと頼まれても、僕は手伝いたくないよ」 「えええええ…… 人間は基本お人好しな性分だから、きちんと説明すれば協力してくれるって、本に書いてあったのに!」 「そんなわけあるか。全ての人が都合のいい奴とは限らないよ。今どき、他人に対しては冷たい人のほうが多いし」 「じゃあ、どうすれば答えてくれる?」 「なんで、僕が"答える"前提なの」 「だって、ぼくが見えるのは、周りを探しても、きみしかいない。ぼくの質問に答えられるのは、今のところきみだけ。つまり、今のぼくが頼れるのはきみだけなんだ!!お願いだよ!!ぼくが進化できるまででいいんだ!!そのためなら、ぼくのできる範囲でなんでもするよ!!」 「じゃあ、とりあえず黙って」 「むん!」 「回れ右」 「ふん!」 「そのままドア開けて出て行って」 「意地悪しないでよ!!」 「だいたい、そんなにたくさん学んで何になるんだよ。子どもの時期は、その時に出来ることを精一杯やるためにあるんじゃないの?勉強に費やすのも必要だけど、後回しにしてもいいじゃないか」 「確かに、その考えも正しいよ」 「なら」 「でも、人にもデジモンにも『寿命』は存在するでしょ。各個体ごとに寿命は違うけど、その寿命が尽きる前に、突然終わりを迎えることがある。偶然という定めることができない確率でね。そんなただの乱数で、ぼくの終わりが決められるなんて、やるせないじゃないか。 だからね。僕は今だからこそ、あらゆる事を学んで、この身に入れて、知識欲を満たして、この今がいつ終わっても後悔しないように、全力で楽しむべきだと考えているんだ。 それをさらに、使命としているからこそ、ここで終わりにしたくないんだ。……妥協したくないんだよ。 きみにも、そういうものがあるんじゃないのかい?」 (…………………………。) 「……他に見える人とか、わからない?」 「見える人間の見分け方は、書いてなかったんだ。でも、今ぼくのことが見えているきみのことを、僕がすっごく知りたがっているのは分かる!!そして、同時にぼくの心が理解したがってる。本で読んでも分からなかったことももちろん聞きたい。けど今は、最初に出会った時、きみは袋にある食材で、何をしようとしていたのか。まず、先に知りたいな」 「…………わかったよ。君の質問に答える。ただし、あんまり答えたくない事もあることを覚えておいて。僕だって、得体の知れないやつに、自分の個人情報を詮索されたくないからね。」 「わひゃぁあ!!やったぁぁ!! ということで、まずは最初の質問!! 『きみはこれから何をするの?』」 「今からするのは『料理』。今日買ってきたものや、冷蔵庫や戸棚にある材料を、調理器具を使って、今晩のご飯を作る……僕の楽しいショータイムなんだ。 今日のメニューは『カツ丼』と『サラダ』だよ」 「ふむふむ。ぼくも手伝っていい?」 「僕は自分のステージに、ゲストは呼ばない主義なんだよ。遠慮してくれるかい?」 「じゃあ見学、見学だけ。見るだけならいいでしょ!!」 「……もうめんどくさいからいいよ。」 「ほんと!?ありがとう!!」 気の遠くなるような長い会話は終わりを告げ、僕は大切なショーの準備をするためにエプロンを身につけた。 ☪︎⋆ こんばんちは。この場では、お初にお目にかかります。Luna✩Reniです。この作品を目に留めてくださり、誠にありがとうございます。 この作品は、元々へりこにあんさんの「彼岸開き」という短編企画のために書いた作品でした。しかし案の定、自分の力不足で、物語のフォーカスが定まらない稚拙な物になってしまいました。オマケに、〆切前に作品のデータを消してしまうというドジをやらかした始末です。 それでも、このまま隠れて没にしても、自分に対してケジメがつかないと思い、パートごとに分けて読みやすくなるよう、3部に分けて投稿する事を決めました。 リコとゴースモンについて、、、 今のところ、今後の展開のために語ることはありません。今回はそれぞれの人生の違いについて、まとめておきます。 リコが思う人生とは、「自由に子どもの時期にしかできない事を楽しむこと」。料理はあくまでも「毎日の楽しみのひとつ」ということです。 逆に、ゴースモンが思う人生とは、「後悔しないよう、生きている今を全力で楽しむこと」。そしてその方法は「たくさん学んで知識欲を満たす」だけしか、彼にはないということです。 自分だけの自由を謳歌し、今の「時期」を楽しむリコ。 自分の人生に悔いが残らないよう、今の「使命」を楽しむゴースモン。 さまざまな要因に縛られつつも、生きようとする彼らが、料理を介してどうなるのでしょうか。次回をお楽しみに。 それではまた次回。御閲覧ありがとうございました。
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