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フィニ
2020年6月16日

啼音、妬けど

カテゴリー: デジモン創作サロン


「俺も、狼はカッコよくて好きだ」


キミがそう言ったから、ボクはもっともっとあの姿に憧れるようになった。

借り物の毛皮じゃなく、本物のミスリルの毛を纏う狼に

ボクはなりたい。


見て!

こんな事できるようになったよ!

こんな技出せるようになったよ!

ねぇ!

同じ成長期の仲間と特訓したよ!ボク勝ったよ!

もう独り立ちできるかな?!

進化したらね、今よりもっと速く走れるようになるんだ!キミより速いんだよ!ボク、キミを背中に乗せてあげるね!

お前が憧れる、なりたい姿なのだと知ったから。


ガブモンというのは皆ガルルモンに憧れるものなのだと聞いた。皆といっても個人差があるだろうに、といつも隣にいるガブモンに問うと、単語を出しただけで目を輝かせるから。


「俺も、狼はかっこよくて好きだ」


あんまり嬉しそうに笑うから、応援せざるを得なくなった。本当の事を言うと、あまり戦い…つまり殺し合いなんて目の前で見たくはない。けれどこれはデジモンの本能なのだと思うから。戦って経験を積んで強くなって、進化する事。それがお前の望みなら、俺はお前を応援するよ。

ごめん、

負けちゃってごめんね。

僕、カッコ悪かったね。ガルルモンに成るって言ったのに、本物のガルルモンに負けちゃった。

あぁ、超えたかったな。

かっこいいとこ見せたかったな。

キミにかっこいいって思って貰いたかったな。

パートナーになりたいって思って貰えるくらい、かっこよく成りたかったな。


ごめん、

生きてさえいれば良いと思ったんだ。

怖かった。俺もお前も殺されるんじゃないかと思うと、怖くて堪らなかった。

俺達は戦線を離脱した。逃げたんだ。戦いたがってるお前を無理矢理連れて。

最後まで牙をむいて戦おうとしていたお前を。

最後まで俺を守ってくれたお前を。

俺が。無理矢理。

お前を傷つけたのにまだ、お互い生きてて良かっただなんて甘い事を思ってしまう。怪我は治せるし特訓もまたやればいい、なんて。


こんな覚悟じゃ、お前のパートナーになりたいなんてとても言えない。

俺だって強くなりたかったさ。物語の主人公みたいに。

お前みたいに。


隣にいるのに遠く感じる。

焦れて、焦がれて、要らない熱が籠って、ジリジリ痛む。

まるで低温火傷。



体の奥、怪我とは違う処が苦しい。息が上手くできない。

ねぇ、これはどうすれば治るの?

どうすればキミに伝わるの?

隣にいるのに届かない、


まだ狼でないボクの、真似事の遠吠えは。



心に狼を宿すお前の啼き声は。




啼音、妬けど

(ていおん やけど)

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