数え切れないほどの情報と概念が集う世界――デジタルワールド。
そこは人間を含めた知的生命体の生きる現実世界の影響を如実に受ける傾向にあり、現実世界に『戦争』が起きれば鏡合わせとなるが如くデジタルワールドでも『戦争』が起きたりするし。
現実世界の文明が発展すればするほど、デジタルワールドの文明も見違えるほどに発展していく。
原始時代を思わせる自然の風景は、徐々に文明的な建造物の立ち並ぶ『街』や『都市』へと移り変わり、しまいには『国』として上書きされるまでに至った。
環境が変わればそこに生きる者達の生態が変わるのもまた必然。
恐竜のような姿をしていようが狼のような姿をしていようが昆虫のような姿をしていようが、デジタルワールドに生息する生命体――デジタルモンスター達の中からはその姿形に似合う生き方から外れ、人間のそれに近しい生き方をするようになった者たちが現れはじめた。
文明を、理性的な共存方法を重んじる彼等は、しかして『戦い』というものをどれだけの時間が経過しようと取り除くことこそ出来なかったが、一方で弱肉強食の自然の摂理という闘争のカタチをある意味において平和的な、見方によっては理不尽なものへと変化させていった。
つまる所、
「メタルグレイモンⅩ抗体でセキュリティチェック宣言する時に進化元の『Ⅹ抗体』の効果発動!! 進化コストを支払ってメタルグレイモンⅩ抗体をウォーグレイモンⅩ抗体に進化!! メタルグレイモンX抗体の進化時効果とグレイモンの進化元効果、加えてテイマーカード『八神太一』の効果によって合計4枚チェック!! そしてオプションカード『緻密な戦術』の効果によってチェックしたセキュリティからオプションカードが出てもその効果は使えない!! あとセキュリティ1枚減る度にメモリープラスだ!!」
「まだだ、4枚割ろうがセキュリティは1枚残ってる!! オメガモン持っていようがトドメになることは」
「ウォーグレイモンⅩ抗体をオメガモンに進化!! 進化時効果でアクティブになって『進撃』発動でアタック宣言!! 同時に進化元の『Ⅹ抗体』の効果を再び使ってオメガモンをオメガモンⅩ抗体に進化ぁ!! 進化時効果で進化元のウォーグレイモンX抗体をデッキの下に戻してお前のセキュリティを見て選んで1枚破棄!!」
「流石にそれは手札揃い過ぎだろお前!!!!!」
世はまさに、カードゲーム時代であった。
手にした合計55枚のカードの束、即ちデッキを手に勝ったり負けたりして――そうして個体としての『強さ』を高めようとするデジモン達の戦国時代。
そこに、腕っ節の強さだとか年齢だとかが介在する余地は一切無い。
各々が頼りに出来るものは即ち、カードの束から的確な戦術を編み出す知能と引き運のみ。
勝った者が栄誉を手に入れ、負けた者は悔しさで地団駄を踏む、新時代の戦闘方式。
……いやいや、そうはならないだろう、と常識のある者であれば口に出すことだろう。
何せ、どれだけカードゲームが上手くなろうが勝利を重ねようが、デジモン達の一種族としての能力、発揮出来る力が特段変動するわけではないのだから。
成長期の子供が成熟した大人に勝ったところで、子供がより強い姿に成るわけではない。
あくまでも在るのは、勝利と敗北の概念だけ。
何ならカードゲームで負けようが暴力で道理も条理も自分勝手に捻じ曲げてしまえばいい――そんな風に考えるデジモンも、そう少なくはなかった。
だがある時、一部のデジモン達が口にした言葉が、それ以上に暴力派のデジモン達のプライドを燃え上がらせた。
――正々堂々戦うのがそんなに嫌か?
――イイ年した究極体のくせに、成長期相手に負けたままで恥ずかしくねぇのか?
――暴力に逃げるな卑怯者!! 逃げるなぁ!!
――そんなに怖いか? 新時代が!!
そんなこんなで、いつの間にかデジタルワールドの各所に形作られた『街』や『都市』の中では、他ならぬ彼等デジタルモンスター達を主役としたカードゲームによる『対戦』や『大会』がものすごい速度で流行した。
具体的に言うと、
「……あの、ドゥフトモン」
「何だい。今は僕の番だよ? 君の盤面的にから出来る事は基本的に無いし、僕のデッキはこういうものだから特に聞くことは無いと思うんだけど」
「いやそれは解ってるんだけど」
「しかし、そちらはアーマーアグロか。あまり時間を掛けていては負けてしまうな。では私は『究極のコネクション!!』を使って――」
「何であんたロイヤルナイツなのにそんなデッキ使ってるの???」
世界を守護する類の聖なる騎士たちとか、
「ねー、ユピテルモン?」
「何だ」
「何でキミのデッキのユノモン、パラレルイラストなの?」
「『大会』に出たからに決まっておろうが、バッカスモン」
「何で4枚全部優勝者仕様なの? 『大会』って昨日から始まったばかりだよね?」
「世界を巡って参加出来る『大会』全てに殴りこみしたからだが」
「そこまでユノモン愛してるのに何でミネルヴァモン入れてるの?」
「どちらも愛らしいからに決まっておろう」
現実世界に語られる神々を原型とした十二体の神人たちとか、
「なぁプレシオモン。リヴァイアモン様いったいどうしたんだ? なんかすげぇ拗ねてたけど」
「あぁ、確か推しのアルファモンの限定カードを目当てに最新ブースターをスーパーカートン買いしてそれで当たらなくて、その隣でわたしがバラ買いしていたパックから目当てのカードが出てしまったから、でしたっけ。別にわたしは特別欲しかったわけではないので、あげようとしたのですが断られて、それっきりあのような感じに」
「……えぇと、そもそもリヴァイアモン様ってどうやってパックを開けてるんだ?」
「さぁ? 魔王の超パワーとかではないでしょうか」
大罪を紋章の形で背負う魔王たちなど、お前ら暇なのかと誰もが言ってしまうぐらいのビッグネーム達がちょくちょく顔を出しに来る程度には流行りだしていた。
当然、世界の管理者がマッチポンプを企みそうになる程度には、世界の秩序は混沌を極めていた。
知能と運(と財力)さえあればジャイアントキリングなど当たり前。
負けた後で暴力など振るおうものなら、世界規模の恥さらし。
自らのプライドとか何とかを護るためには、正々堂々の平等なルールの下で行われる『対戦』でもって自らの『強さ』のほどを証明するしかない。
たった55枚のカードの束に、デジモン達は自らの闘争本能の全てを懸けていた。
というかむしろ、命のやり取りが介在しないためか、争いの勢いはただただヒートアップするしか無かった。
「レッド・メモリーブースト!! うおお引けてくれジエスモン!!」
「ベルスターモンを登場!! 効果でトラッシュからネイルボーンを回収、そしてノーコストで発動!!」
「友樹くんかわいい」
「マメモンをバンチョーマメモンに進化!! 効果でデッキの上を3枚オープンしてその中から相手の場のデジモンの数まで名称にマメモンを含むデジモンを出せる!!」
「ブロッサモンをニーズヘッグモンに進化!! デジバースト4!!」
「ケケケ場の『ディアボロモン』を消滅させてアーマゲモンを3コストで登場……!!」
「ゴッドドラモンのアタック時効果!! トラッシュからチンロンモンとホーリードラモンとメギドラモンを一枚ずつデッキの下に戻して相手のセキュリティを上から2枚破棄!!」
世はまさに、大カードゲーム時代。
神と呼ばれる存在でさえ理解不能と匙を投げるこの世界で、覇者となりえるのはいったい誰か。
そしてそもそも、カードゲームで『強さ』を誇らんとしているデジモン達に進化する気はあるのか。
おかしい形に捻じ曲がった世界の形に誰も疑問は覚えないのか。
生物として、強弱の概念がおかしくなったデジタルモンスター達の行き先は、誰も知らない……。
「いやそもそもカードゲームでマウントとか取るなよ」
そーいやテイマーズ第1話で健太と博和がプレイしてたデジカに合わせてダークティラノモンがメタルティラノモンに進化してメイルドラモン叩き潰したの見て「現実世界のカードの結果がデジタルワールドに影響及ぼすのかな」とか思ってたのを思い出した夏P(ナッピー)です。
もう終わりだよこの世界。
というか売ってるの誰だよ。あと突然現れたシャンクス誰だよ、オレーグモンかフックモンかな……とか言ってたら正々堂々とチートしてるユピテルモンでダメだった。魔王のリヴァイアモン氏もそうだけど所属持ってる人たちも暇なんすね。そーいや俺、基本的なルールとスターター&最初のブースターしかわかんねーな……。
友樹可愛いとか言ってるのいて噴く。普通に人間キャラのも流通しとるんかい! さては流通させてるのアキバマーケットのナノモンだな!?
最後の冷静な台詞も「そんなに怖いか新時代が」で封殺できるので赤髪はんの台詞がホンマに五臓六腑に染み渡るで……。
そんなわけで噴いてばかりでしたがこの辺で感想とさせて頂きます。