2XXX年。
世界はメギドラモンで溢れていた。
温厚で優しくかわいいメギドラモン。
乱暴で粗暴な一昔前の不良風のメギドラモン。
料理が大好きで料理屋を始めたメギドラモン。
同族が大好きでドラゴンへの推し活、通常ドラ活を始めたメギドラモン。
世はまさにメギドラモン時代。
右を見ても左を見ても上を向いても下を向いても兎に角メギドラモン。どこにでもメギドラモンが存在する。
公園で遊ぶ幼子を見守るメギドラモンに、草臥れたサラリーマンに寄り添うメギドラモン。
女子高生とパフェを食べてデジスタに映え写真を載せるメギドラモン、着崩した制服を着てバッドを肩に担いだ悪そうな少年の傍にもメギドラモン。
買い物に行くお婆さんの荷物を持っているのもメギドラモン。
町中、否、世界中がメギドラモンだらけという異様な光景がそこにあった。
どうしてこんなことになったのか。何故メギドラモンが人間界に溢れているのか。
理由はわからない。
ただある日突然メギドラモンたちは人間界に現れたのだ。
テレビの中でしかお目にかかれないような巨大怪獣が大量に街に出現。
当時はそれはもう大変なパニックになったものである。
メギドラモン同士が喧嘩して暴れたり何もしなかったり赤い電波塔にしがみ付いて眠ったり、兎に角メギドラモンが騒動を起こさない日はなく、新聞もテレビのニュースも全てがメギドラモンの話題で埋め尽くされていた。
だが人間とは恐ろしく順応性が高い生き物である。
年月が経過するにつれ人々はメギドラモンの居る生活に慣れ始め、中にはパートナーとして共に暮らす者まで現れ始めた。
一人二人、三人と少しずつメギドラモンをパートナーにする人間は増え始め、今では街を行き交う者の大半がメギドラモンを連れて日常生活を送っている。
パートナーを得たからか、それとも他に何か理由があるのか。
人間のパートナーを持つメギドラモンはフリーのメギドラモンと比べるとどこか落ち着いているように感じられた。
とはいえメギドラモンは人間とはまた違う生き物、それもある日突然地球に現れた未知の生命体で未だ詳しい情報は何ひとつわかっていない。
共に暮らすようになってから起こるトラブルには事欠かず、パートナーと過ごすメギドラモン専門の対策委員会が設立されるのにそう時間は掛からなかった。
そもそもメギドラモン対策委員会とは何か?
それは大量発生したメギドラモンに対してどのように接し、扱っていくかを話し合い明確な方向性を決定し、人間とメギドラモンの付き合い方について日夜模索する会議が行われる委員会の事である。
パートナーと過ごすメギドラモン専用の対策委員会とはその中にある部署のひとつであり、メギドラモンをパートナーに得た人間たち。“テイマー”と名付けられた人間たちとメギドラモンとの関係を考え、相談し合える場を提供してより良い関係性を築いていく為の組織である。
最近落ち着いてきたとはいえメギドラモンは凶暴性を秘めた生き物だ。人間と同じように言葉を用いてコミニュケーションを取ろうとする知性はあるようだが、その思考回路・言動が人間と同じとは限らない。
彼らの機嫌ひとつで人間の命は、いや街そのものが吹き飛ぶ可能性だってある。
それはテイマーと呼ばれる人間たちも同じ。彼らテイマーとメギドラモンは奇跡的にも対等と呼べる関係性を築いているが、彼らがもしメギドラモンをどうにかして服従させるなりメギドラモンの凶暴性の方に同調してしまえるような悪しき心の持ち主で、暴力的な思考に支配されていた人間であったら。
この街は、いや世界は瞬く間に火の海と化すだろう。
命という命が燃え果て、後には何も残らなくなるだろう。
そんな最悪な事態を避けるために、両者の良好な関係の構築の手伝いをする。定期的に聞き取り調査を行い彼らが何を考えているのか、何を思い日々を過ごしているのかなどを細かくチェックしている。
全ては世界の平穏を守る為に。
……などと格好つけて説明をしてみたが、蓋を開けてみれば実際の所そんな非常事態が起こった事は初期の頃は兎も角、最近は無くなっている。
それでも問題が発生しない訳ではなく。メギドラモン対策委員会の職員は今日もメギドラモン対策委員会という名の『相談所』を訪れたテイマーたちの悩みを聞いていた。
「うちのメギドラモン、昨日から調子が悪いんです……何か深刻な病気だったりするのでしょうか」
鎮痛な、悲痛な面持ちで告げる一人の若い男性テイマー。
そんな彼に相談所に詰めている医師がカルテに目を通しながら診察結果を淡々と告げる。
「食い過ぎですね」
「えっ」
「ですからただの食い過ぎです、メギドラモンだって生き物ですから食べ過ぎたらお腹くらい壊しますよ」
「ええ……」
説明しながら診断結果を見せるとパートナーの男性はどこか釈然としないような。
ホッとしたような表情を浮かべながら、食べ過ぎに効くという薬を処方されて帰って行くのを見送って次の相談者を呼んだ。
「次の人、どうぞー」
「うちの子最近話しかけても全然反応してくれなくて……それどころか姿を見るだけで舌打ちするんです。もしかして私、何かしてしまったんじゃないかと不安で不安で」
話をしながらハンカチで顔を覆い泣き崩れる赤い髪の女性テイマー。
不安で食事も喉を通らないのだろう、以前相談所を訪れた時よりも彼女は明らかにやつれていた。
彼女の所のメギドラモンにも何度か会ったことがある。確かあのメギドラモン、人間でいうと中高生くらいの精神年齢であったはず。
突然の素っ気ない態度、これはもしかして。
「確証はありませんが……その、反抗期なのでは」
「はんこうき」
「ええ、もしかしたら違うかもしれませんが」
「いいえ、よく考えてみたら今のあの子の言動は昔の息子や娘たちが反抗期だった頃と同じ。……ふざけんなよバカ息子ーー!!帰ったら覚えておけよ!!!」
急に活力を取り戻したらしい女性は礼もそこそこに帰って行った。つよい。
その後何人か相談に訪れては話を聞いて解決したり専門家を呼んだりして対応して帰って行き、日が沈む頃。本日の業務の終了のチャイムが鳴り響いた。
本日の受付終了の札を出し、帰りの支度をして家へと帰宅するとひょこりと赤い竜が顔を覗かせる。
「おお帰ったか親父殿!今ラーメンが出来た所だぞ!ささ、伸びないうちに食べようではないか!!」
「ありがとう赤くん。味は何かな?」
「みそだ!寒いからな、是非とも暖まってくれ」
「ふふ、美味しそうだなあ」
初めて出会った時はとてもこわくて、おっかなくて中々歩み寄ることなんて出来なかったけれど。
赤くん、そう呼んでいるこのメギドラモンは話してみるととても明るくて元気で、良い子だった。
多分、結婚して子供がいたらこんな感じかなと思うような。
他のメギドラモンたちより少し、いやかなり?小柄な事を気にはしているようだが頭を撫でやすいのでいいと思う。
やんちゃな所もあるけれど、カーテンを破いたり食器を割ったりするくらいで、被害としては可愛いものだ。
おっかなびっくり触れ合ううちに赤くんのことを知って、少しずつ歩み寄って。
今では家族のようになって暮らしているのだ。
「赤くん、これ美味しいねぇ」
「ふっふっふ、今日のは自信作だからな!」
そうして夜は更けていく。
♦︎あとがき♦︎
合法的に推しをいっぱい書きたかったんです、許して下さい。
この世界観ならメギドラモンは大量発生しても問題ないんだ、わちゃわちゃするメギドラモンたちが見たいんだ私は。
開幕土下座を決めつつ言い訳を。
今回はデジモン創作サロン公式企画の『THE BEGINNING フリーマーケット』に参加させて貰いました。
当初は中々作品が思いつかず。
ネタが降りないなら仕方ない、今回は諦めようかなと思った時考えつきました。
メギドラモン大量発生させよう!と。
深くは突っ込まないでください、メギドラモンだらけの街が見たかったんです。
というか私はこの街に住みたい、職員さんみたいにお帰りって出迎えてくれるメギドラモン欲しい。
という訳でいつも通りふわっとゆるっとした世界観や登場人物の話を。
・世界観。
メギドラモンが当たり前のようにたくさん世界。
メギドラモンが現れてから最低でも数年は経っている。
現段階ではメギドラモン以外のデジモンが居るかどうかは不明。職員さんが把握していないだけで居るのかもしれない。
・登場人物。
職員さん
男性。名前はない。
メギドラモンをパートナーにした人達専門の対策委員会で働いている。彼もまたメギドラモンテイマーである。
穏やかな人。独身。
赤くん
職員さんのパートナーメギドラモン。
やや小柄。
ラーメンが大好き。とっても元気いっぱいの男の子。職員さんを「親父殿」と呼んでいる。
普段は家で留守番。ご飯を作ったりしている。
その他のメギドラモンたち
滅茶苦茶いっぱい。個性豊か。
食い過ぎで倒れたり反抗期になったり色々。
暴れて倒されたのとか、赤い電波塔に棲みついてるのとか居る。
その他のテイマーたち
突然現れたメギドラモンたちとパートナーになった人たち。
毎日メギドラモンに振り回されては相談所に来ている。幸せだったり苦労してたり反抗期と対決していたり色々。
もし続きを書かれる方が居られるならばお好きなようにお書き下さい。
二行目までで既に錯乱しているのがわかる。夏P(ナッピー)です。
ドーナツてるのこの世界。メギドラモンスター、略してメギモンの物語ことメギモンアドベンチャー02の戦いでも終わったのか。今や世界中の人達にパートナーメギモンがいる……(CV平田弘明)。むしろ他のデジモンいないのか!? 世はまさにメギドラモン時代とかそんな海賊王ゴール・D(ドラモン)・ロジャーみたいなこと言われても。女子高生とパフェを食べるメギドラモン、その女子高生も実はセーラー服を着たメギドラモンとかいうカオスな光景を想像してしまったのは内緒。
ふーんメギドラモン対策委員会、ほうつまりここは流石に他のデジモンを伴ってメギドラモン塗れとなった世界の平和や安寧の為n
こっちにもメギドラモンがいた。
何故だ!!
それでは今回はこの辺で感想とさせて頂きます。