本作はパラレル様・作 【#ザビケ】ex:トライ 第一話 の第二話となります。
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2005年。ある戦いがあった。
きっとそれは誰も覚えていない、だからこそ“ある戦い”でしかない。
俺達には新しい仲間ができて、けれど紆余曲折の末にその新たな仲間とは別れることになって。悲しい出来事だったとしても、そこに出会いと新しい絆が生まれたことは否定しないし忘れない。
だから俺達が忘れていたとしたら、認識していないことがあったとしたら。
「次はデーモンかディアボロモンか……」
未だ討たれず健在であったこの事態を起こした黒幕が。
「どちらにしても俺次だ……い……?」
トスと。
そんな軽い音と共に、突如として自分の腹を突き破って現れた黄金の剣を呆然と見つめ。
「き、貴様……何故……」
最後の力で振り返り、己の命を奪った下手人を視認して果てたことだった。
ブラリと両腕を垂らして息絶えた男をグレイダルファーから振り払う。
「………………」
無様な亡骸は海浜公園のアスファルトの上を転がり、糸の切れたマリオネットのように歪んだ姿勢で四肢を投げ出す。
それに思うことなどない。アポカリモンの残滓たるメイクーモンとホメオスタシスの使者であるジエスモン、それらが絡んだ戦いに端からこちらの関わる必要など端から存在しなかったが、漆黒の騎士王たる自分をイグドラシルの僕と認識して思うがまま操れていると勘違いした姿が愉快ではなかったかと聞かれればそれは否だ。
不愉快だった。全てが不快なことこの上ない。
だから殺した。殺すというより停止させたと言うべきか。
あれは元より機能だった。世界に死と悪意を振り撒くだけの機能、言うなればかつてイグドラシルが世界に蔓延させたXプログラムに近しい。それを踏襲するかのようにあの男、正確にはあの機能もまたメイクーモンの力に影響を受けたデジモンを感染デジモンなどと呼称していた。
だから止めたのだ。
かつて自分の同族が歴史書(クロニクル)の中でイグドラシルに立ち向かったように。
アルファモンである自分もまた同様に世界に撒き散らされる悪意は止めねばならない。
あちらに悪意を振り撒く理由があるなら、こちらにも止める理由があるということだ。
疲れた。
そう言って止まることなど許されない。
この姿になった時より自分はただ進み続けることしかできない。
その果てに何が待っているのかなど、何ら興味はない。
「……カイト」
進むだけだ。
自分の内なる衝動(こえ)に導かれるがまま。
「帰還命令が出た……が」
正面に立ちはだかるのは、光輝のクリムゾン・ナイト。
「少しばかり楽しもうじゃないか」
槍と盾で武装したその姿は、直感で並大抵のデジモンでは太刀打ちできないとわかる。
完全体、いや恐らくそれ以上。
頭に過ったのは先程ヤマトと話していたこと。選ばれし子供とそのパートナーが究極体クラスのデジモンに襲撃を受け、それに応戦する形で新しい進化が目覚めるも、戦いの後にそのパートナーは進化の力そのものを失うという謎の事態。
目の前の騎士型デジモンは間違いなくそれに関わっている。だとしたら今この場で戦っていいのか、少なくないリスクを孕むのではないかという逡巡が無いかと言えば嘘だ。
それでも今は。
「太一! オメガモンだ!」
隣の親友も考えは同じだったらしい。
だから俺にもいつかのような迷いは無く、一瞬で俺達の保有する最大戦力が顕現する。
デジヴァイスを構えた俺達の正面、アグモンとガブモンに代わり視界を覆うかの如く純白のマントが広がり、俺達自身と蹴り飛ばされて倒れ伏した小さな竜型デジモンを守るべくオメガモンが立つ。
「ふはっ」
それを前に紅騎士は笑ったらしい。
「……何がおかしいんだ?」
「笑わずにはいられないだろうよ。……そうだ、最初からそいつとやり合ってみたかったのだ、私は!」
鈍色の槍を構えた姿はまさに中世の騎士を思わせる。
瞬く間にオメガモンに肉薄した紅騎士は右手の槍を突き出し、それをオメガモンが左腕の竜頭で受け流しつつ懐に潜り込むと、無防備な足に向けて己の足を横薙ぎに払う。紅騎士は僅かに体勢を崩しつつも盾を大地に叩き付けた衝撃波で宙を舞い、再び元の位置へと戻る。
互いに望む戦いは同じ形。俺達にもオメガモンにも周囲を巻き込む派手な攻撃を仕掛ける気は毛頭なく、一方で奴もまた飛び道具や技に頼った戦いは好まない。
だから接近戦だ。オメガモンの竜の腕より白銀の刃が出現する。
「グレイソード!」
パッと火花が舞ってオメガモンの剣と紅騎士の槍がぶつかり合う。
軽やかな音楽を奏でる剣戟はその実、互いに周囲の被害を危惧して加減した小手調べでしかない。純粋な膂力ではオメガモンが上回っているらしいが、紅騎士は槍と同時に左腕の盾も用いて致命打を避け、互角の戦いを演じている。そして打ち合う度に激しさを増していくようで、二体の聖騎士はどちらも矛の収め時を伺っている。
それも当然か。俺もヤマトも敵を倒す為に戦っているわけではない。
言ってしまえば降りかかる火の粉、それを払う為に戦っているだけだからだ。
「……フッ」
だから終局も突然。
グレイソードが紅騎士の胸元を掠めた瞬間、紅騎士は肩で息をしながらも鼻を鳴らして動きを止めた。
「終わりか?」
ヤマトの声。オメガモンの一撃を受けた紅騎士の鎧に亀裂が走る。
幾何学的に刻まれた黒三角が歪んだ。
「そうだな、時間切れだ……」
それでも紅騎士には余裕がある。
戦いを続けたいのは山々だが今は退く、そう言いたげな癪に障る声。
「だが確信した。お前らを“座”に連れ行くのは、オレでなければならないらしい……」
「……“座”?」
連れ行くという意味もわからない。
そういえば奴は戦いの前、後輩とそのパートナーを捕らえたと言っていた。
「お前、大輔とブイモンを確保したってどういう──」
「その首、後生大事にしておけよ」
フッと。
そんな捨て台詞のような言葉と共に紅騎士の体が消滅する。
瞬間、パリンと砕けた奴の鎧の破片が地面に落ちた。黒三角の刻印の一端らしいそれは、コンクリートの上にカラリと転がった途端、ボゥと赤黒い輝きを噴き出して消失した。
いや。
きっとそれは、焼失と言った方がいい。
「太一、アイツは……」
「ああ。全く本気じゃなかったってことみたいだな……」
赤黒い焔。
戦いの中で奴が一度も見せなかった全力の一端がそこにはある。
「……どうする?」
「どうするったってなぁ」
立ち竦むオメガモンの前、俺とヤマトは顔を見合わせる。
相変わらず倒れ伏して気絶しているらしい小竜は、そういえばどこかで見たことのあるデジモンのような気がした。
ラーメンを極める道は長く険しいのだ!
そんなことを師匠が言っていた。いや何人目の師匠だったかなんて俺は覚えてねえけど。
だけど一つわかるのは、ラーメンに限らず何事も忍耐だってことだ。石の上にも三年、いや五年だったか? 雨だれ石を穿つとかそんな言葉も聞いたっけか。それはともかくとしてもだ、根気と継続こそが力なりって奴だぜ。
そんな話を賢の奴と久々に会った時にしたら、アイツは苦笑いしてたんだったな。
「ま、まあ大輔のラーメンはもう十分おいしいよ……」
コイツはいい奴だ。あ~、すっげえいい奴だ。
しかし評論家や批評家には絶望的に向いてない。絶望的なぐらいにいい奴過ぎる。
「そんなんで京と上手くやっていけんのかぁ~?」
「そ、それは今関係ないだろ……」
大学生になったってのに、すぐ顔を赤くする程度に初心な賢と一緒に商店街を歩く。
かれこれ十年経つが、すっかり街にもパートナーデジモンを持つ人達が増えたような気がする。それを危険なことだとタケルの奴や光子郎さんは言うけど、俺にはよくわからない。心配するようなことは何もないと思うんだけどな、俺とブイモンが上手くやれてるのが何よりの証拠って奴じゃねーのかな?
法律の整備とか取り締まりとか、そういった難しいことは俺にはわかんねーから、そこら辺は隣の立派な親友に任せときゃいい。
「もう10年近くになるんだな」
賢と二人、歩道橋の欄干に肘を付いて夕日を見上げながら。
「ンだよ、藪からスティックに」
「棒だよ」
足元でブイモンとワームモンがじゃれ合ってるのを見やり、賢が苦笑する。
「光子郎さんが言ってた。もう世界中でパートナーを持つ人間は数え切れないほどいるって」
「……ああ」
最後の戦いの日を思い出す。
照れ臭そうに夢を語らい、D-3を手にした女の子は何て名前だったかな。
「変えてしまったのは僕らだ。僕らにはその責任がある」
「……そんな深刻に考える必要あんのか?」
難しいことを考えるのは親友に任せるとは言ったが。
難しく考え過ぎるのは親友の悪い癖な気もするよな。
「僕達が思っていた以上に、この世界とデジタルワールドの隔たりは深かったのかもしれないと思うよ」
夕日と逆の空はもうすっかり黒く染まっていて、そちらを振り返る賢の顔は物憂げだった。
自分の過ちをコイツはきっと悔やみ続けるだろう。その後悔を安易に気にするなと言ってやるべきでないことを俺は知っている。だけど純粋に聞いてやるぐらいは俺にだってできるはずだ。嘆きも弱音も心配事も思い切りブチ撒けちまえばいい、それが友達ってもんだ。
俺は賢とは反対、燃えるように赤い太陽を見ながら呟いた。
「……また何か悪いニュースでも見たか?」
恥ずかしながら俺は新聞を読まない。テレビのニュースを見ることだって最近じゃ殆どなかった。
「何年か前の紛争地帯」
俺の横には夕日に照らされる賢の黒い髪。
「革命軍が選ばれし子供とパートナーデジモンを兵士として運用していたって記事を、見たんだ」
その後、賢としばらく雑談をして別れたはずだが、その後の記憶がどうも曖昧だ。
気付いた時にはブイモンと一緒に知らない大広間の椅子に縛り付けられていた。
「大輔ぇ、俺達どうしてこうなってるんだっけ?」
「それは俺の方が聞きたかったぜ」
二人でいるのに状況の把握もままならない情けなさにどちらともなくハァとため息を吐いた。
正面にいた黒い騎士型のデジモンは、一瞬でスーツを着た人間の姿に変わっている。デジモンが人間になった? その有り得ない事態を前に訝しげな視線を向ける俺とブイモンを真っ直ぐ見返しつつ、そいつは薄ら寒い笑みを返してくる。円卓で両肘を付いて組んだ拳の上に顎を乗せている様はあまりに黒幕ポーズ過ぎた。
その顔はどこかで見た記憶があった。雑誌だったかニュースだったか……いや、もっと色々と興味を持っておくべきだったか?
「カイト・アルベルトだ……!」
「は? 誰だっけそれ」
「いやニュースぐらい見てないのかよ大輔」
「俺はニュースを見るぐらいならエロ本を1Pでも多く読むと決めている」
「そこはラーメン仕込めよ」
それは置いといて、というか俺を置いといてブイモンに喋らせた方が良さそうだ。
「確か今日本に来てるって話だったけど……」
「ほう、パートナーの方が話は通ずると見える」
「俺は放っといて話を進めてくれブイモン」
不貞腐れたようにそっぽを向くが、ブイモンは「わかった」とだけ言って色々と話してくれた。
コイツはどこぞの小さな国の政治家で、そこで起きた紛争だか革命──なんかそんな話を最近聞いたような?──を終結に導いた立役者ってことらしい。俺から見ても若僧と十分言えるような見た目、きっと太一さんとそう変わらないぐらいに見えるが、今では立派な政治家として各国を飛び回って今は日本に来ているという話だ。
そんな男の正体がデジモン? あとそもそも俺達ってなんで拉致られたんだっけ?
「君達の“座”は特別だと言ったろう?」
“座”という言葉を強調して語るカイト・アルベルト。
改めて見渡してみれば、円卓には俺とブイモンが縛り付けられているのを除くと十二の椅子が並べられている。
「俺と大輔は二人で一つってわけかぁ」
何故か隣で納得しているブイモンだが、俺にはまるでわけわかめな話で。
「何を納得してんだお前?」
「俺達以外に席が十二あるだろ、俺達が二人分で一席なら全部で十三、円卓の騎士だぜ」
「円卓の騎士って何だ?」
「大輔はラーメンとエロ本以外も勉強した方がいいな」
「うるせえ! それ以上に大事なものなんてこの世にあるか!」
「友達とか大輔にはいないけど恋人とか」
「そ、それは大事だな……余計な言葉があった気がするが」
うんうんと納得していると、正面のカイト・アルベルトが立ち上がった。
「君達を見ていると退屈はしなさそうだが、表の仕事もあるのでね」
苦笑。
本来の姿が人間なのかデジモンなのか。どちらなのかはわからなかったが、そんな困ったような笑顔を浮かべるそいつを、俺はきっと心底悪い奴ではないのだろうと直感していた。
それは例えるなら賢。デジモンカイザーだった頃のアイツと、どこか近しいものを感じたのかもしれない。
「皆と談笑でもしていてくれればいい。なに、いずれ同志となるのだからな」
そう言って大広間を去るカイト。
円卓に置かれた燭台の炎が揺らめき、そこで俺とブイモンは初めて円卓に他のデジモンが座っていることに気付いた。
四体。どれも見たことのないデジモンだったが、只者ではないことが一目でわかる。というか、隣でブイモンが「うわっ」と呻いている辺り俺達だけでは勝てっこない相手らしいと理解させられた。
あー、チキショー。俺ってホント情けねーんだけど。
誰か助けに来てくれねーかなぁ。
「何の用だ。……今から仕事なのだがな」
「ご挨拶だな解析コード-αいや今はこの時空の流儀に合わせてアルファモンと呼称させて頂こう」
「何の用だと聞いた」
「キミが今の行動に出た理由了見を聞きたいのだ元より分かたれた世界の交わりは限定的であるべきだというのが次元の調停者(コーディネイター)たる我らにとって不文律であったはずだろうキミはそれを知りながら敢えて次元の敵になる道を選んでいるリアルワールドの知的生命体とデジタルモンスターの関わり二つの世界の行き来と国交の樹立までは認めようしかしキミの今の行動は断じて看過できないキミの行動と在り様はこの世界の人間達にとって甘い毒だ」
「別に、望んでこうなったわけじゃない。それ以外に選べる道が無かったんだ」
「本来であればキミの主義意向思想過去未来に我らは何ら関与しないだがキミが今その姿でここに在るそれこそが災厄であり混沌なのだよアルファモン況してやキミは己の在り様を世界に知らしめあまつさえ他の者にも同じ道を強いる気でいるなればこそ我らにはキミを異端者として裁定する用意がある実に残念この上ないことだ解析コード-α最愛の同志よ我らはキミごとキミの愛した時空を滅しなければならないキミの存在した痕跡を何ら残さず消滅させ二つの世界を切り離すまでが我らの裁定だ」
「やってみろ。そう簡単にはいかないと思うぞ」
「斯様な戯言は聞かぬこの時空における二月の後に抹消を開始するさらばだ解析コード-αキミは些か急ぎ過ぎたリアルワールドの知的生命体とデジタルモンスターの関わりには常に節度が必要だキミはこの時空の知的生命体がデジタルモンスターにとって極上の媒介であることデジタルモンスターが人間を喰らって己を高めることの有用性を知らしめてしまったキミの蛮行こそが発端だいずれ世界はデジタルモンスターを兵器として──」
「──黙れ」
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デジモンアドベンチャー ex:tri
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例えば、こんな話がある。
前世紀最後の10年は現代に至るネットワーク社会の黎明期と言えた。誰もがインターネット、あるいはパソコンを所持して世界中のまた誰かと繋がる社会が形成されたのは、この10年があればこそと言って差し支えないだろう。なればこそ、この10年は一般人の生活が劇的に変わった最後のタイミングであったとも言われている。
そして同時期、人類はデジタルワールドなる異世界とのコンタクトを果たした。デジタルモンスター、一般的にデジモンと呼ばれる原住民は恐竜型や獣型、植物型といったこちらの世界の数多の動植物と似通った性質を持ちながら、人語を解して人類とのコミュニケートを可能とした。故にまず数名の“選ばれし子供”と呼ばれる子供達を契機として、爆発的に人類とデジタルモンスターの結び付きは広がっていく。パートナー、そう呼ばれる契約関係によって結び付いた両者は互いの肉体・精神状態においても密接な繋がりを有し、一説には片方が死に至れば残る片方も死亡するとの論も提唱されているなど、デジタルワールドの交流はこれまでの人類の在り方を根本から変えかねない劇薬であった。
更に言えばそもそもの問題として。
何故その世界をデジタルワールドと呼ぶのか、誰も知らなかったしわからなかったのだ。
それは原住民たるデジタルモンスターも同様。名称からして人類のネットワーク社会の発展こそがデジタルワールドの誕生に関与しているという声が根強く、現代でもその説が主流となっているが、デジタルワールドには人類など及びも付かぬ超古代の伝説が明記されており、それが真実であるのなら人類と等しい、あるいは人類以上に長期間の文明を保っていることとなる。それを含む数多の謎を解き明かす為、二つの世界の行き来が可能となった際には数多の科学者がデジタルワールドへと旅立っていったが、明確な回答を得ることはついぞできなかった。
だが結果的に彼らの持ち帰った情報が一部の者達の目を引くこととなる。
先述の通り、パートナーは互いの精神・肉体の状態に大きく影響される。そしてデジタルモンスターは進化──これが人類の定義する進化と同義でないことには注意すべし──と呼ばれる変質を経てより巨大に、より強靭な姿となっていく。パートナー関係を結んだ人間が精神的、あるいは肉体的な危機に陥った時、デジタルモンスターは変わるのだ、今より強大な姿に。
今より10年ほど前の2002年のクリスマス、世界中に突如として現れた謎の黒き塔。
後の世でダークタワーと認知されるそれは、果たしてデジタルモンスターの進化を阻害する電波を放つ機能を備えていたが、極東の島国に現れた五本のダークタワーは、その国の首都より出現した巨大な竜によって一瞬で破壊された。
一瞬で、である。
その国の東西南北数千キロずつ離れた場所に聳える五本の塔。それらが首都・東京に座す巨竜が背中に備える砲塔が光を放った途端、跡形も無く消し飛んだのだ。
ある者が戦慄した。
人間と結び付いたデジタルモンスターには、これだけの可能性(ちから)があるのだと。
ある者は恐怖した。
それだけの力が建造物や悪性デジモンだけではなく、我々に向けられることになったら。
ある者は歓喜した。
発展途上にある国でも、斯様なデジモンを使役できれば強国に対抗できるに違いないと。
皇帝竜インペリアルドラモン。二つの世界が出会い、溶け合う未来を阻む最後の闇を祓ったとされる英雄は、彼ら自身気付かぬ内に偉業と同時に一つの過ちも犯していた。その強大な戦闘力を前にすれば人類が戦慄・恐怖・歓喜を抱くのも必然、皇帝竜は皮肉にもデジタルモンスターの兵器としての有用性を如実に示し過ぎたのだ。
しかし彼らに罪は無いのだろう。
何故なら彼らには、人類が自分達の争いの為にデジタルモンスターを利用することなど、想像もできなかったのだろうから。
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第二話「余談アリ~溶け合う世界は何にナル~」
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【後書き】
というわけで、パラレルさんのデジモンアドベンチャー ex:triに2話を書かせて頂きました。
一番書きたかったのが冒頭の謎の男あうんだったのは言うまでもない。
パラレルさん想定だとデジアドと02から直系っぽいですが、それ故にtriもあったものとして書いてしまっております。ただの2話じゃねえぞド級の2話、ド2話だ。……生き残って座ってる四人+デュークモン以外の出撃中の二人が誰かわからねえ! オメガモンマグナモンジエスモン除き、ガンクゥモンだけはあうんしてるということなのでわかるが! ってな悩みから、本当はロイヤルナイツ四人と大輔ブイモンの会話まで書きたかったのですが断念してしまいました。アルフォースいたら「いやー実は俺、下着姿で歩き回るド級の超グレイト美少女テイマー取り込んでんだよねー」とか言い出していたかもしれない。もしかしたらVテイマー版タイチかも。
以前書かれていた短編も踏まえさせて頂き、デジタルモンスター(と選ばれし子供)が兵器として運用される契機って何かなと思ったら、やっぱり東京から拡散ポジトロンレーザーで全国のダークタワー瞬殺したインペリアルドラモンだろということで、最後にそんな設定を地の文で追加しちゃいました。当時見た『コイツ一体いれば日本の防衛費要らんだろ』という感想が忘れられない。
あまりに時空を超えた戦いを思い出し過ぎる故、デュークモンの中にタカトおるでと書きた過ぎましたが耐え切りました。最後にメギドラモン匂わすのだけは執念で入れましたが。
書き上がるのにめっちゃ時間がかかった理由は、案外思い返してみるとデジアドの登場人物のそれぞれの呼び方がイマイチ理解し切れていなかったからだったりする……大輔は先輩方さん付けか先輩かどっち呼びだったか。
・調停者(コーディネイター)
ジョージ・グレンではない。時空だ時空だと騒いでいた(※俺が)為にうっかり書いてしまった、別世界から干渉してきている声だけの人。声は多分ゲンナイと同じ平田広明。
書きながらシン・ウルトラマン観てたのでどう考えてもゾーフィ。ゼットンもといオメガモン(アルファベット最後のZ+カタカナ最後のン⇒ギリシャ文字最後のΩ+カタカナ最後のン)を伴って世界を滅ぼしに来るかもしれない。来ないかもしれない。
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二話書いていただきありがとうございます。……これが俺の見たかったtri.の黒幕の末路や。ざまあないぜ! フェードアウトしてたアルファモンの扱いも引用するとは流石。
デュークモンくん、本当に適当に遊んで帰ってて草。良い感じに固執しててライバル認定する辺りのやんちゃさがなんとなくApoのモードレッドさんを思いだしました。赤いし、本来次の世界の作品の主人公の種族だったのもあってなんとなく。
正直、賢は一話書いてた段階で絡むと面白いだろうなと思っていましたが、予想通り……いやそれ以上でした。カイザーとして戦っていた立ち位置だけでなく、生来の気質から内乱の一件を気にする一幕から、大輔とブイモンがカイトと対峙する一幕に繋がると。……なお、話が通じるのはブイモンの模様。
原作者も知らない黒幕! ……調停者(コーディネイター)……一体何者なんだ。とりあえずカイトが強硬策を焦るのも仕方ないということは分かる。ホメホメだのイグイグだの、果ては宇宙からの何かだの、この世界はやたら黒幕志望が多い気がします。
選ばれし子供とパートナーデジモンの軍事転用は大前提として考えていたものの、具体的な契機は考えてなかったので皇帝竜の力は納得すると同時にありがたかったです。功罪という形で02組の繋がりにもなるとは。
余談ですが、ナイツの面子の内訳は下記の通りで、種族名がないのはフリーです。
カイト及びその仲間:6(確定枠:アルファモン、デュークモン)
敵対し討伐した光球:4(確定枠:ガンクゥモン)
現在は空席扱い:3(オメガモン、マグナモン、ジエスモン)
改めて、続きを書いていただきありがとうございました。