やぁ!オイラ、ワイズモン。兄弟、あの日起こったこと兄ちゃんの身に起きたことについてここに記録して置く。大丈夫?準備はいいかい?
八月下旬の猛暑日。肝試しをしようと弟のウィザーモンやインプモン達を連れて人間世界の墓場にやってきたね
とっても古く雑草まみれなところ見るに何十年も人が立ち入らない場所だろう。オイラ達は絶好の場所だ!と最初はとてもわくわくしながら探索していた
「インプモン気になるところはないか?」
「お墓なのに霊魂が見当たらないくらいかな」
「人間ってデジタマに戻らないからお墓作るんでしょ」
「そうだね、今後人間とパートナー関係を結ぶ機会があればその時は接し方や力加減を注意しなくちゃね」
そうさ、こんな風に脆い骨と薄い皮になって干からびて死んじゃうから
人間の人体模型を本で見たことがあるがミイラ化した遺体や白骨化した遺体を直接見るのは始めてだ。断言しよう!人間とオイラ達デジモンは違う生き物だと。また少し頭が良くなったとうはうはしていた
「なんか沢山散らばってるね、人間達の服?それとも遺品?お捧げ物かな?」
「インプモンは生の死体を見て怖くないかい?」
「全然、スカルグレイモンの方が怖い」
ウィザーモンもインプモンは将来魔術を極めるデジモン。近年死のデータや怪異を取り込むことでパワーを得て凶暴化したデジモンの事件が多発している。これも人の思いに共鳴するからなのか、謎は深まるばかり。探究心をくすぐられる!
「兄ちゃん!こっちに何かあるよ!」
「なんだこれ、魔法陣?」
「これは…」
墓の奥へ向かうとやたら広いスペースに魔法陣らしき石が落下してきたのか大きなクレータを作っていた
辺りがザワザワと草木が不気味に笑いだす。それを見てはいけないと本能が悟っているのにどうしても見てしまう
「ああ…そんな…!」
巨大な石には大きな五芒星のマークが刻まれていた
「や、やばいぞ!早くこの場から逃げなければ!!」
「えー!?どうして!」
「ウィザーモン!インプモン!目を閉じろ!耳を塞げ!兄ちゃんが何とかしてお前達を…」
『ふん█るい む███なふ くと████ ███████ んがあ・ぐ█ な████ん ██ く███ぐあ』
ワイズモンは聞こえてしまった、そしてソレを見てしまった
「兄ちゃん!」
「絶対あとで来てね!」
その声を最後にウィザーモンとインプモンをデジタルワールドに転送し終えた。オイラは声主の方へ呆然と見つめ立ち尽くす
考えてみれば骨や腐った肉がそこらじゅうバラバラになって散乱しているなんておかしかったんだ。インプモンが見つけた遺品(カメラや現代の携帯端末)若者が着そうな服、そして大量のローブを着たミイラ化した遺体の山、どれもまだ新しい。恐らくついさっきまで彼らは生きてたんだ。コイツを召喚する為の生贄にされた、もしくは自ら望んで死んだに違いない。
「おいおい勘弁してくれよ…」
巨大な何かに見つめられる感覚、時間が経てば経つほどオイラのデータが崩壊し発狂しそうな恐怖でもう自死しようと考えてしまった。まさに生きた心地がしなかった
「ごめんね兄弟、兄ちゃん死んだわ」
ブツンッ
ザザッザァ──────────ッ
やぁ!オイラ、ワイズモン。この後、恐怖で頭がパンクして気絶してしまったんだ。幸い目覚めたらアイツはいなくなってた。オイラは運が良かった。五芒星のマークの石もなくなっていた。あれは夢だったんだと今も不思議に思うよ。
やぁ!オイラ、ワ█ズモン。今まであんなに知識を欲していたのに今は全然欲が湧いてこない。まるで自分が自分じゃないみたいだ。おかしいな。おかしいな。
やぁ!オイラ、████。兄弟、迷惑をかけたね。ここに謝罪と共に遺言を残そうと思う。決してヤツについて探求してはいけない。これを聞いたらあの日のことについての記憶は消しておくこと。いいね!
やぁ!オイラ、いや、ワタしは████、お前達のオ兄さんの体を借りて顕現したコの世界とは異なる存在。これを聞いたらお前達の記憶も消シテおく。
やぁ、ワタしの名は████、██の王と呼ばれるこれから君達が忘れるモノ
君達のオ兄さんも黄金を纏ってたね
見た目もこの████にそっくりだ
アリがとウ、そして
さ
よ
う
な
ら
█████ ██████ はすた██り
██=ぐる ふ█ぐん
海の声が聞こえる
【完】
どこか異質ながらものどかですらあった前半から急転直下とはまさにこのこと。夏P(ナッピー)です。
てっきり「人間とデジモンでは常識が違い過ぎる! 命の概念すら異なる! やべえ……やべえよ光子郎!」みたいな展開かと思いきや、終わってみれば事態はもっととんでもない方向に進んでしまいました。ワイズモンの一人称の語りが軽妙なので一気に読めてしまいましたが、ふんぐるry出た瞬間アカンと確信できる奴。
02の某呼び声の如く異質な空気の中で抗し切る話……で終わるはずもなく、無事かゆい うま。当初予想していたものとは全くの別方向で「やべえ……やべえよ光子郎」でしたが、ウィザーモンとインプモンを逃がせただけでも良かったのか。ちなみに超古代のHP宜しく████は隠し文字かと思ったのは内緒です。
作中で起きた事態としてはとんでもないことなのに、テンポの良い文章と語り手のおかげでスムーズにヤバいことになってしまったのは皮肉な話。
それでは今回はこの辺りで感想とさせて頂きます。