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第13話:龍殺しの剣
ウィザーモンと二人、無人となった東京の街を歩く。
当然のことながら、電車も動いていなければバスも走っていない。確か【反転】が行われたのは昨夜の九時だか十時だかだったと記憶しているから、繁華街の大半の店もシャッターが下りたままだ。まあ、下手に店舗が開いていると物色したくなるので、これは幸運と言えるのかもしれないが。
ウィザーモンは見るもの全てが珍しいらしく、頻りに首を傾げていた。
「大きな町ですね……何と言う町なのです?」
「東京だよ。まあ、大きいのは当たり前さ。一応この国の首都だしな」
「……なるほど、では普段ならば周辺は人で埋め尽くされるわけですね」
その都度相手をするのも面倒なので、小さく「まあな」と返して話を切り上げる。
今の八雲の目的はアグニモンを追うこと。そのためには、ひとまず奴と戦った場所まで戻らねばなるまい。だが奴と戦ったのは八雲や朱実が住んでいる二宮市だ。現在位置の東京都芝区からは単純な直線距離でも20キロ以上はある。普通に歩けば今日中に行けないこともないだろうが、何よりも面倒くさい。そんなわけで、現在八雲はウィザーモンと共に移動手段を探しているというわけだ。
実を言えば、渡会八雲は昨冬バイクの免許を取得している。バイクがあれば二宮市までは一時間程度で戻れるだろう。だが運良くバイクを拝借できても、まだ免許の交付から一年が経過していないので二人乗りは不可能だ。これではウィザーモンと共に行くことができない。
そんなことを考えていると、腹が減ってきた。
「なあウィザーモン」
「……何か?」
「お前、見た目的に魔法使いだろ? 飯とかポンッと出せないわけ?」
冷静に考えれば昨日の朱実とのデート以来、八雲は何も食べてない。朱実は靖史の家で煎餅を食べていたようだが、流石にグロットモンやアルボルモンに追われていたこともあって、八雲の方は何も喉を通らなかった。というよりも、あの状況で呑気に煎餅を食せる朱実の方が豪胆すぎるのだ。
とにかく腹が減った。八雲は昔から食事を抜くことが大嫌いである。
「そんな便利な魔法が使えたなら、私は今頃一流シェフですよ」
「……だよなあ。そう上手くは行かないか、それが人生だ」
「さっきから思っていましたが、八雲君はその年齢にして随分と悟っているのですね」
まあ、自分で言うのもアレだが俺って人生経験豊富だし。口には出さないで言う。
渡会八雲という人間は熱血漢でもなければ、むしろ感情表現が豊かな人間ですらない。普段は仏頂面が多いし、他人に笑顔を見せることなど殆ど無い。そんな意味では、長内朱実とは正反対の人間である。何故彼がそんな性格に育ってしまったのかといえば、それは彼の人生経験が豊富だからに他ならない。
1歳になるかならないかという頃に両親を自動車の事故で失い、以後は孤児院暮らし。小学六年生の時に義父であり師でもあった義父の安藤浩志が死亡、程無くして渡会老夫婦に引き取られる。渡会家は稀に見る貧乏一家だったので、中学生の身で年齢を隠してアルバイトをしたことも何度かあるし、高校生になった今でもバイトは欠かさない。現在では義父である渡会義雄の事業が軌道に乗り、無事高校にも行けているわけだが、本来なら八雲は中卒で働くところだったのである。
そんなわけで、渡会八雲という人間は無駄に老成してしまっている。既にその見方は大人にも引けを取らない、マイナスの意味ではあるが。
「……私は昔からガキは嫌いです。その意味では、君は私の契約主に相応しい」
「おっと、早くも意見の相違が出たな。俺は子供が大好きだからな」
「なっ!? ならば八雲君はまさか、俗に言うロリ○ンなのですか!?」
「はは、そう取ってもらって構わないさ」
その言葉通り、八雲は昔から子供が大好きだ。
それは多分、義父であり師匠でもあった安藤浩志の影響が強いのだと思う。だから、いつの日か自分も彼のように、事故や事件で身寄りを失った子供達を守ってあげられるような、そんな大人になりたいと思っている。そうして彼らの笑顔を見ることができたら何て幸せなんだろうと憧れる。子供はいずれ大人になる。なら子供を幸せにすることができれば、大人もまた幸せになれるのだと八雲は信じている。
だから彼の夢は皆の幸せ。世界中の皆に悲しまずにいて欲しいというのが、義父が死んだ日に八雲が胸に刻んだ誓いだ。
「まあ、別にロ○コンとはいえ私の主であることに支障はありませんからね」
「……いちいち伏せ字を使わなくていいぞ? 俺は別に恥ずかしいなんて思ってないから」
ウィザーモンに対して冷静に突っ込み返す。
しばらく歩いてみたが、二宮市まで戻るための有効な移動手段は見つからなかった。結局、頼れるものは己の体のみのようだ。誰もいない人間の世界とは、こうまで不便なものかと実感する。運転手がいなければバスも電車もフェリーも動かない。こんな状況になって初めて、自分が今まで如何に他人の世話になってきたのかを実感するというものだ。
だが今はそんなことよりも腹ごしらえ。腹が減っては何とやらだ。
「おっ、都合のいいことにセブン○レブンがあるな」
「セブンイ○ブン?」
首を傾げるウィザーモンを促し、八雲はコンビニに駆け込む。
昨夜【反転】が起きた時も24時間営業のコンビニなら自動ドアが機能したままで当然だ。八雲は現在コンビニでバイトをしているので、大体の勝手はわかっている。故に賞味期限が近付いている弁当を迷わず手に取ると、無断でレジに入って代金を入れ、お釣りを頂く。
「ごちそうさん」
やっていることは不法侵入と変わらないが、八雲としては筋を通したつもりだ。
簡単な食事の後、歩くこと数時間。
二人は足の赴くままに千代田区まで来ていた。すぐ近くには江戸城、つまり皇居の威容が見渡せる。今から何百年も前に徳川家康が改築した巨大な城。現在は天皇陛下が住まわれているらしいが、世事に興味の無い八雲は今の天皇の顔すら良く思い出せない。尤も、あんな大きな城で暮らせと言われたら八雲ならお断りだ。その意味では、皇族の方々は本当に凄いと思う。
大手町を過ぎた頃だろうか。ウィザーモンが何かに気付いた。
「おや、これは……墓ですか?」
「……ああ。確かここ、有名な武将の首塚だったと思ったが」
小学校の頃の遠足で回るコースだったので、その首塚のことはよく覚えている。
確か志半ばで死んだことから怨霊と化した武将の魂を慰めるために立てられた首塚だと聞いた覚えがある。しかし、誰が祀られているのかは曖昧で思い出せない。平安時代において関東で名を馳せた豪族だったと記憶しているが、それ以上のことは判然としない。だが少なくとも皇居近くに立ち、線香の香りを充満させた場所は、確かに八雲が小学生の頃に来た場所と合致する。
ただ、唯一見覚えの無い物体がそこには存在していた。
「日本刀……いや、これって斬馬刀か……?」
そんなもの、昔来た時には無かったはずだ。そもそも、そんな物騒なものが現代の日本で、それも道端に落ちていることなど有り得ない。無断で携帯などしていれば問答無用で銃刀法違反で逮捕されるだろうし、恐らく日本刀を持ち歩こうなどという奇天烈な考えを持つ人間はいないだろう。
それでも確かに首塚の前には、鞘に納まった一振りの大刀が置かれていたのだ。
パッと見た限りでは、この刀は戦には向かなそうだ。それというのも、無駄に刀身が長いのだ。俗に言うところの斬馬刀という奴だろうか。これでは大きすぎて、自在に扱うのにもかなりの筋力を必要とするのだろう。だが見る者を惹き付けて止まない流麗な刀身は、鞘から抜けばどれほどの美しさを誇るのか予測も付かない。
無論、鑑定士ではない八雲に正確な製造年はわからない。だが少なくとも鍛冶屋の手で打たれてから数百年は経っていると思われるので、かなりの年代ものだと予測できる。真剣など今まで資料や博物館以外では見たことが無かったが、間近で見るそれは人殺しの道具というにも関わらず、不思議と感慨を思わせた。
だが刹那、八雲は何か痛烈なデジャヴに襲われた。
「……ん? この刀、どっかで――」
思わずその刀を手に取っていた。
明確な理由など無い。ただ、その刀を「どこかで見たような気がした」だけのことだ。それも、随分と最近のことのように思い出せるが、その辺りの記憶が混濁していてハッキリとは思い出せない。確か数日前、自分はこの刀を持つ者に襲われたような気がするのだが――。
その瞬間、唐突に周囲の空気が重苦しくなったような不快感を覚えた。
「マタ一人、我ガ愛刀ノ錆トナル愚カ者ガ現レタカ……」
不意に響いた妙な声。無論、周囲には八雲とウィザーモンしかいない。
「我ガ眠リシ塚ヲ荒ラス不届キ者ヨ……黄泉ノ国ニ旅立ツガ良イ……」
「……ウィザーモン、お前何か言ったか?」
「いえ、私は何も……なっ!? 八雲君、右!」
「なにっ!?」
邪悪そのものといった声が聞こえたと思った瞬間、何も無い場所から剣が閃いた。
半ばウィザーモンを突き飛ばすように太刀筋から逸らすと、八雲も一旦距離を取る。凄まじい速度で振り下ろされ、標的を失った剣がコンクリートを叩き割った。そう、得物はどう見ても剣であるにも関わらず、コンクリートを斬るのではなく叩き割ったのだ。まるでハンマーを振り回したような剛剣だと言えよう。その圧倒的な剣は、明らかに人間によって振るわれたものではなかった。
目の前に現れたのは馬に跨っている、というより下半身を馬と一体化させた鎧武者。左の腕には妖しき雰囲気を孕む妖刀、そして右手には八雲が手に取ったものと同じ斬馬刀が保持されている。屈強な肉体の上から不気味に輝く鎧を身に纏ったその武者は、圧倒的な威圧感で八雲とウィザーモンの前に存在している。その首の上には、かつてはさぞかし面妖な顔が乗っかっていたのだろうと予測できる。
そう、彼の者には首から上が無いのだ。まるでギロチンか何かで切り落とされたかのように、気味の悪いほどに綺麗に首の断面だけが覗いている。
「くっ、首無し武者……!?」
「龍斬丸ヲ欲サントスルナラバ、我ヲ倒シテ己ガ力ヲ示セ……!」
その殺気は圧倒的。油断すれば飲み込まれてしまいそうだ。首が無いのに声がどこから出ているのかというツッコミすら許されない。
「うわぁぁぁぁ、頼むウィザーモン! 俺、幽霊とトマトだけは駄目なんだ!」
「なっ、何を馬鹿な! 八雲君が呼び寄せた種ですよ、君が自分でなんとかなさい!」
そんな風に互いに責任を押し付け合う隙を突き、首無し武者が突進してくる。
下半身が馬ということもあって、そのスピードは凄まじい。その上、振り下ろされる剣の軌跡が殆ど読めない。故に受け止められる道理は無い。だが内在する剣士としての本能か、八雲は咄嗟に先程の刀を掴み上げ、鞘に納まった状態で相手の斬撃を受け止める。
ガンという強い音。まるで自分の両足が大地に沈んだかと感じたほどに、敵の剣は重い。
「くあっ……何て怪力だ、お前!」
「ホウ、人間風情ガ我ガ一撃ヲ受ケ止メルトハ」
「くっ、マジで亡霊なのか……!?」
震えていく心を必死で支える。
首無し武者と斬り結ぶ経験など、恐らく一生の内で二度とあるまい。ただでさえ八雲は幽霊が苦手なのに、既に切り落とされたと見える武者の首の断面が間近で見える。子供の頃は朱実に何度挑発されてもお化け屋敷にだけは意地でも入らなかったというのに、今は特等席で首無し武者の姿を目の当たりにさせられている――。
「くっ、くそぉ!」
「ムッ……?」
無我夢中で刀を振るい、敵の懐から逃れようとする。
しかし次の瞬間、凄まじい衝撃が腹部を襲い、八雲は数メートル後方に吹っ飛ばされる。あるはずのない攻撃を前に、彼は思わず目を見張る。前述した通り、首無し武者の下半身は騎馬そのものだ。その強靭な前足が、八雲の体を物の見事に蹴り飛ばしたのである。
逃げの姿勢に回っていた所為か、その痛みは厳しいものの立ち上がれないほどでもない。
「やっ、八雲君!」
「……邪魔ハサセヌ」
咄嗟に駆け寄ろうとしたウィザーモンを制するように首無し武者は手を掲げる。
すると、次の瞬間には八雲とウィザーモンを隔離する障壁のように、無数の鎧武者が出現していた。ただ、こちらの武者は別に首が無いわけではなく、また下半身も人間に近い二本足。禍々しい容姿を持つ彼らの侍は、須らく妖しき空気を孕む曲刀を保持している。どれも首無し武者が左手に持つ妖刀と同じ型のようだ。そんな彼らが現れた様は、まるで志半ばで倒れた武者の魂が怨霊として迷い出てきたような、そんな雰囲気さえ感じられた。
ウィザーモンとて流石に戦慄を覚える。単体の戦闘力はともかく、数が多すぎる――!
「む、ムシャモンがこんなに……!」
「……ソノ者達ハ我ガ下郎ナリ。うぃざーもんヨ。我ガ戦イヲ妨げんと欲スルナラバ、貴様トテ容赦ハセン」
「ばっ、馬鹿な! 人間の八雲君が勝てるはずが――」
問答無用とばかりに無数のムシャモン達が一斉に襲い掛かってくる。
サンダークラウド、クリスタルクラウドを使い分けて応戦するも、多勢に無勢で全く活路を見出すことができない。一体一体はウィザーモンなら軽く手玉に取れるレベルの相手。しかし数を武器に攻められると反撃の余地は無い。故に今のウィザーモンにできることは、ただ背後を取られぬように細心の注意を払って戦うことだけだ。
渡会八雲が棟梁たる首無し武者を討ち取らぬ限り、このムシャモン軍団は決して自分を逃さないだろう。
無論、それは絶望的に0%に近い確率だったのだが。
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更新久々ですか?
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第14話:ゼロの答え
目の前には斬馬刀と妖刀を携えた首無し武者。
「くっ……」
蹴られた腹を押さえながら、八雲は静かに立ち上がる。
もう少し腹筋を鍛えておいた方が良かったかもしれない。朱実から教わった受身、陸○圓明流・浮身とやらは相変わらず効果覿面だが、それにも限度はある。本来、受身というものは地に叩き付けられる際の衝撃を殺すものであり、受けた痛み自体を和らげるものではない。故に馬の足で蹴り飛ばされた腹はかなりの痛みを訴えてくる。咄嗟に後方に下がろうと試みていたおかげで、決して直撃ではないようだが。
「オ主カラハ殺気ノ一ツモ感ジラレヌ。ソノ程度ノ剣技シカ持タヌ者ガ我ガ龍斬丸ヲ手ニシヨウナド笑止千万ヨ。……龍斬丸ハオ主ナドニハ渡セヌ、渡サセヌ」
「……そうかよ」
殺気があるから強いのか? むしろ達人は殺気を微塵も発さないとも聞くのだが。
そう思ったが、言い返さない方が良いだろうか。何しろ目の前の首無し武者が放つ殺気は圧倒的だ。剣士たる者、常に殺気は最小限に抑制しておくようにとは義父の言葉だが、奴にはそんな常識は通用しないらしい。尤も、八雲は如何なる戦闘においても自らの殺気を解き放ったことは無いし、そもそも殺気という概念が本当に存在するのかどうかも知らないでいる。野生動物ならいざ知らず、こんな自分に殺気を放つ力も感じる力もあるのだろうか。
だがそれよりも、今は聞いておきたいことがあった。
「……戦いを始める前に聞いときたいんだが」
「ホウ、申シテミヨ」
「お前が持ってるこの刀だけど、これって他の奴が持っていたりするのか?」
純粋な興味から八雲はその疑問を声に出していた。
「何ヲ馬鹿ナ。我ラざんばもんノ一族ガ携エシ龍斬丸ノ中デ、コノ世界ニ現存スルノハオ主ガ手ニシタ一振リノミヨ。単ナル模造剣ナラ幾ラデモアロウガ、完全ニ同ジ剣ナド有リ得ヌワ」
「……そっか。悪かったな、変なことを聞いて」
そう答えながらも、八雲の顔はどこか納得が行っていない。つまり奴の剣は模造剣ということになるのだろうか。だがそれにしては、今手にしている龍斬丸と感触が変わらなさすぎる。
「……愚カ者ガ。ソノ首、貰イ受ケル!」
「チッ!」
敵の剣戟は最初から様子見などと言っていられるレベルではない。それを理解すればこそ、八雲は素早く刀を抜いて応戦する態勢に入る。そんな彼に対して、首無し武者は徐に左手の妖刀を投げ捨て、八雲と同じく斬馬刀のみで襲い掛かってきた。それは奴の剣豪としての意地と言うべきか。
奴の放つ一撃なら、確実に首を斬り飛ばすだろう。一撃一撃が全力を纏う、まさに必殺の域なのだから、既に到底余裕のある状況ではない。それ故に八雲の剣もまた、必然的に急所を狙って奔らされる。何の躊躇いも無く互いの急所と急所を狙い合う戦いだからこそ、剣戟はその中間点で激突する。迸る閃光と閃光とがぶつかり合い、激しい火花を散らす。立ち入る者は即座に切り刻まれるほどの剣戟戦。そんな中で、八雲は微かな驚きを感じていた。先程見た時は長すぎて戦いには向かないと判断したこの斬馬刀。それが驚くほど自分の体に馴染んでいる。自分より遥かに技量が上であろうこの首無し武者に対して、互角に渡り合えているのだ。
だが次第に八雲は押し込まれ始める。それは当然のことだ。
馬上の相手に対して歩兵はどうしても不利なのだ。頭上から剣を振り下ろしてくる騎兵に、歩兵は必ず見下ろされる形になってしまう。歩兵にも小回りが利くという長所はあるものの、常に戦局全てを見渡せるほどの視野の広さを持つ騎兵の絶対的な優位は動かない。無論、歩兵の方に絶対的な力量があるのなら、騎兵の首を刎ねることも可能だろう。だがそれは、相手に首がある場合に限られる。現時点で八雲が相対している敵には首が無いのだから、それは不可能であった。
その上、単純な力量は明らかに奴に分があるのだ。故に隙など見当たらないし、八雲も反撃を受け止めるだけで精一杯なのだから。
「去ネィ!」
「うぐっ!?」
今また、打ち落とされる刀を受け流して逸らす。
まともに防御を試みれば、龍斬丸とて数撃も持たないだろう。また八雲が得意とする、敢えて隙を晒して相手に大振りの攻撃を誘うという戦法すら奴には通用しない。そんなことをすれば、今と同じように渾身の一撃を以って打倒される。敵の一撃は文字通り必殺と呼んで差し支えの無いもの。少なくとも剣の一撃に籠められた力において、人間である渡会八雲が奴に敵う道理は無い。
下手に防御に専念すれば、一撃の下に両断される。故に受けには回れない。だから攻めて攻めて攻め続けることにしか勝機は見出せない。ただ何も考えずに前進あるのみ、そんな児戯に等しき無謀な剣技。
「……!?」
そんな時、思いがけず気付いた。確かアグニモンと戦った時、自分は奴の剣技を同じように嘲笑ったのではなかったか。まるで幼稚な剣だと、まだまだ未熟な技量なのだと。
「くそっ! こいつ、強い!」
「ソノ程度ノ力量デ我ガ龍斬丸ヲ手ニ入レヨウナドト……片腹痛イワァ!」
奴にあるのは己が魔剣を守らんとする強き意志。
最早自分に彼と戦うべき資格があるのかとさえ疑ってしまうほどの絶対的な気迫を前に、八雲は圧倒される。けれど本能は戦いを否定することをしない。武者と刀をぶつけ合う度に、彼の胸には止め処の無い思いが溢れてくる。もっと戦いたいと、もっと強い力で奴と斬り合いたいと。その感覚は昨夜アグニモンと戦った時と同じだ。戦いを心底楽しいと思い、この戦いが長く続けばいいと願った。確かにあの時の八雲は戦いに勝つことではなく、戦うこと自体に快楽を抱いていた。
けれども、心の底ではそれを望みながらも、それは間違っていると思う。戦うために戦うなんてこと、自分はしたくない。迫る首無し武者の攻撃は疾風の如きスピードと津波の如き荒々しさを併せ持つ。体勢を大きく崩されながらも、その攻撃を幾度と無く受け切れている自分だからこそ、この戦いは違うのだと感じた。
そう、今の自分が拠り所としているのは借り物の剣。
そんなもので勝利を得たことで、自分に何が残るだろうか。八雲の考える戦闘とは互いの意志のぶつけ合いであり、それ故に真の意味で勝ちたいと、負けたくないと願った者が勝利を手にする。だとするなら、こんな借り物の剣で戦うこと自体、その意志に反している――。
だから斬られることを覚悟で動きを止めた。
瞬間、不意に動きを止めた八雲に虚を突かれたのか、首無し武者が振り下ろした長刀は八雲を斬り裂くことはせず、彼から二寸ほど離れた足下に叩き付けられた。やはりと言うべきか、奴もまた剣を振らぬ者を斬ることは良しとしない者らしい。その意味では、奴は紛れも無い武人だ。自分が憧れ、追い求めてきた心意気を持つ者だと直感できる。
「オ主、何故戦イヲ止メル」
「……やっぱ嘘だからさ」
そう言って、八雲は龍斬丸を鞘に収め、首無し武者の前に差し出す。
「ムッ?」
「この刀、返すよ。俺は別にお前の剣を盗もうだなんて、そんなことは考えてなかったから」
「何ィ……?」
顔が無いから表情はわからないが、首無し武者は明らかに不思議そうな声を上げた。
「勝負を挑まれたからには俺は退かないし、何より退けない。……だけど、この剣は俺の力じゃなく、お前の大切な剣らしいからな。だから返しておく。結構いい刀みたいだけどな、俺が持つには少し早すぎるみたいだし」
「……徒手空拳デ我ニ挑モウトデモ言ウカ?」
「ああ。勝てないってわかるけど、それでも……油断してたら足下掬うぞ?」
少年の笑顔が武者には眩しいものに映った。
そう、首無し武者にとって己が存在を示す魔剣、龍斬丸は命よりも大切なもの。故に彼の首塚から奪おうとする者は今まで無数にいた。その愚か者達を、彼は亡霊の姿で幾度と無く撃退してきた。盗人達は須らく、最後には彼の力量を前に恐怖を覚え、必至に命乞いをした。その様は彼が望む〝武人〟の姿ではない。
故に落胆。彼が亡霊になってまで望んだ戦いは、彼に落胆しか与えなかった。
だが目の前の少年は違う。数百年前に武者の首を刎ねた憎き人間とは違い、明らかに武人としての心を持っている。己が延命も邪な心も、少年は何も望んでいない。彼の意志はただ戦闘にのみ向けられている。そんな彼の心意気は長年武者が求め、手に入らなかったもの。この少年とならば、全身全霊の戦いができる。本能的にそう感じ取れた。
無意識に口を開いていた。
「早クナド……ナイワ」
「えっ?」
だから顔の無い首を振った。その剣は既にお前のものだと示すかのように。
「今一度剣ヲ抜ケ。……最早我ラニ語ルベキ言ノ葉ハ無イ」
「ど、どういうことだ!?」
「オ主ヲカヨウナ時世ニハ珍シキ、武人ノ心ヲ持ツ者ト見タ。……ナラバ、我ラガスベキ事ハ只一ツ」
殺し合いではなく、果たし合い。それが武者の望むこと。
「い、いいのか? この刀はお前の――」
「良イ。己ガ剣ニ全テヲ託セ。……存分ニ果タシ合オウゾ」
「……わかった」
八雲もまた、武者の言葉に何か感じ入ることがあったのか、再び剣を引き抜く。
その姿はまさに武者の望んだ〝武人〟そのもの。真の意味で強さを求める者ならば、己より強いかもしれぬ者を前にして、どうして剣を納めることができようか。故に二人の間に最早言葉は要らぬ。ただ、どちらが強いか戦って決めるだけ。生粋の武人が求める果たし合いとは、元来そういうものだ。
その瞬間、確かに武者には在りし日の彼の頭部が甦った。
「それがお前の本当の顔……か」
「如何ニモ。我ガ愛刀、龍斬丸ノ名ニオイテ……疾風ノざんばもん、イザ参ル!」
「いいぜ。俺は八雲、渡会八雲だ。その勝負、受けてやる!」
今度こそ、本当の意味で二人の武人は激突を開始した。
突如として、無数のムシャモン達が掻き消えた。
「な、何が――?」
同時に響き渡る一際高い剣戟音。
思わず背後を振り返ったウィザーモンの目には、激突する八雲と武者の姿が映る。それだけなら先程と同じだ。だが二つの明確な違いが見て取れた。まず一つ、先程まで首が無かったはずの武者に顔があること。そしてもう一つ、戦闘を続ける彼らの顔が、言い難いほどの歓喜に満ちていること。要するに、八雲も武者も楽しそうなのだ。面妖な顔立ちの武者が歓喜に表情を染めている様は少し不気味なものがあるが、それでも渡会八雲は決して歓喜の表情を消そうとはしない。
互いが奔らせる長刀が、吸い寄せられるように交差する。響き渡る剣戟音は、よくできた音楽のよう。
「楽シイ……楽シイゾ……! オ主コソ我ガ望ンダ者ニ他ナラヌ……!」
「そうかよ!」
軽やかな声で返すものの、その笑みに反して八雲の心は必死だとウィザーモンは直感した。
彼の力量はザンバモンには遠く及ばない。それ故に本来なら受けに回らねば数合と持たぬ相手。だがその剣戟を前にしてなお、彼は一歩も退かない。繰り出されるザンバモンの一撃を、八雲は一度として避けてはいないのだ。全て刀で受け流し、弾き返し、受け止めている。だが如何に龍斬丸といえども、ザンバモンの全力を前にすれば数撃で歪曲するはず。それなのに、何故少年の手に握られる剣にそれ以上の力が宿るのか――。
剣を弾き返して一旦距離を取るも、間髪を入れずに再び突撃する。
「はああああああーーーーっ!」
「八雲君、何故退かないのです……?」
その姿がウィザーモンには信じられない。何故敢えて自ら死地に飛び込まんとするのか。
理解できなくて当然だ。ウィザーモンは確かに戦闘種族ではあるが、武人ではない。故に八雲の突撃など無謀なものにしか見えないだろう。だが八雲が退かないのには理由がある。それは自分が逃げに回れば負けが確定しているから、攻撃が最大の防御だから、ということだけではない。ザンバモンは己の全てを一撃に籠めている。ならば逃げることは許されない。受けなければ、全力で迎え撃たねば恥だ。
己の意地を懸けて挑んできた相手だ。ならば愚かなほどに真っ直ぐなその豪剣を前にして、どうして引き下がることができよう――。
「先ニ言ノ葉ハ要ラヌト申シタガ、今一度オ主ニ問ウ! オ主ハ何故剣ヲ志ス!」
「俺を信じてくれた人のため! 俺に剣で宇宙一になれると言ってくれた人のためだ!」
「ホウ、宇宙一ト……確カニオ主ノ剣ニハ曇リガ無イ。ソノ猛ル心ナラバ、イズレハ天ヲモ斬リ伏セ得ルヤモシレヌ。ダガオ主ノ剣ニハ……否、オ主ニハ決定的ニ足リヌモノガアル!」
それは八雲に対しての戒めだったのだろうか。
頭上から一閃された龍斬丸のスピードは、まさに神の領域だ。脆弱な人間、渡会八雲の力量では遥かに及ばぬ剣戟。その一撃は四肢を切断し、胴を四散させて余りある。そんな次元の違う攻撃を、八雲は反射神経だけで受けた。いや、反射神経というのは適切ではないだろう。両手で握る龍斬丸を大きく軋ませながらも、八雲の体は彼自身の脳が反応するより早く動いていたのだから。
そこには最早理屈は無い。彼の体が勝手に動いて、必殺の一撃を受け止めた。その事実だけが全てだった。
「ナ………………ニ?」
「――――――!」
衝撃で剣が折れた。ザンバモンの刀か、それとも八雲の剣か。そんなもの、聞くまでも無いわかりきったことだった。
宙を舞う龍斬丸の半身は、今まで斬り伏せてきた数多の者達の血脂と刃毀れで剣としての用を成さない状態だった。それでも長年、亡霊と化した主と共に在り続けてくれた愛刀。それが無残にも圧し折れた様を目の当たりにした武者の瞳に映ったのは無念か、それとも哀悼か。
彼が最後に見た光景は、自分に対して剣を構え直す少年の姿。そこには躊躇いも何も無い。ただ、真っ直ぐに敵だけを見据えて――。
「でぇいっ!」
そうして響き渡ったのは、肉を断つような乾いた音。
「バ、馬鹿ナ――!」
幾多の激突によってザンバモンの刀は折れ、少年の剣はザンバモンの鎧を袈裟懸けに叩き割った。ただそれだけが、この数分の間に起きた事柄。
剣を振り下ろした体勢のまま、少年は不動だった。
屈辱も悔しさも、不思議と感じなかった。元より剣が磨耗していたから負けた、などと言い訳をするつもりも無い。ただ、自分が敗れて少年が勝った。その事実だけを自らに受け入れるかのようにザンバモンは元々見えていない目を閉じ、静かに背中から大地へと崩れ落ちた。
先程から感じていた違和感にやっと気付く。……少年が誰なのか、それを今更理解した。
「ソウカ……オ主ハ十闘士ノ――」
その言葉が少年に届くことは無い。何よりも初めから伝える気すら無いのだから。知らぬが仏という諺が俗世にあると聞くが、少年の今の境遇はまさにそれだ。知らない方がいいことなど、世の中には数え切れぬほど沢山ある。少年の場合は、単にそれが彼の在り方自体に根差す問題だというだけのことだった。
そんなザンバモンの思惑など知らず、倒れ伏した彼に少年は歩み寄る。
「……俺の勝ちでいいのか」
「見事ダ」
何を言うことも無い。ただ、できる限りの賞賛の意を込めて、その言葉だけを口にした。
やがて、ザンバモンの体が粒子化を始める。少年が二度目に見る、明確なる死がそこにはある。その様を前にして、途端に取り乱し始める少年の姿を、ザンバモンは僅かに滑稽に思う。先程は阿修羅の如き表情で剣を振っていた癖に、根本的なところで彼は死という概念とは対極に位置する人間なのだと、そう思う。
その姿も、やはり〝彼〟に似ているのだろうと思えた。
「おっ、おい! 何で消えるんだよ! 急所は外したぞ!?」
「案ズルナ。死ヌトイウノナラ、我ハ既ニ死ンダ身。……今回ハ所謂、成仏トイウ奴ダ」
「そ、そっか。言われてみれば幽霊だったもんな、お前は」
八雲はその事実を思い出し、顔色を少し青くした。
「……マサカ、アノ状況デ急所ヲ外ス余裕ガアルトハナ。ソノ腕前、見事トイウ他ハ無イワ」
「そうか? 俺は峰打ちなんてできないから、正直不安だったんだが――」
「アレダケノ剣ヲ見セテオキナガラ、尚モ己ヲ未熟ト断ズルカ。全ク以ッテ、末恐ロシイ小僧ヨナ」
そう、八雲の太刀筋は浅かった――否、甘かったと言うべきか。
単に鎧の表面を斬り割っただけにすぎず、ザンバモン自身への傷は酷く浅い。最後の一撃を繰り出す前、八雲が一瞬だけ見せた間は、相手のどこを攻撃すれば命を奪わずに済むか、それを推し量っていたからだ。故に渡会八雲には最初からザンバモンの命を奪う気など無かった。それは人間としては正しいが、武人としては甘すぎる考えだと思える。尤も、それをわかっていながら甘んじて彼の剣を受けたザンバモンもまた、剣士としては甘いと言われる対象なのかもしれないが。
それでも、そんな少年の姿が酷く好ましいものに思えるのもまた、ザンバモンは否定できずにいた。
「我ハ間モ無ク消滅ノ憂キ目ヲ見ル。……至極感謝スルゾ、渡会八雲……否、近年稀ニ見ル武人ノ魂ヲ持チシ者ヨ。オ主ヲ我ガ魂ノ篭モリシ天下随一ノ名刀、龍斬丸ヲ受ケ継グ新タナ担イ手トシテ認メン。ソノ誇リヲ胸ニ秘メ、己ガ邁進スベキ道ヲ見極メルガ良イ」
「分不相応にも程があるが、アンタが言うならありがたくもらっておく。……そういえばアンタ、さっき俺に足りないものがあるって言ってたが――」
八雲が最後の一撃まで力を奮えたのは、その言葉の所為だ。
自分に足りないものがあるという事実。それを認めたくないがために少年が放った最後の一撃には、今まで以上の気迫が漲っていた。だが不憫にも、少年自身はそのことを理解できていないらしい。それを酷く惜しいと思う。それを理解することができれば、目の前の少年はあのような愚かな姿に堕することなど無かったろうに――。
少年はいずれ堕落するのだ。その無情な事実を、ザンバモンは知っている。
無論、ザンバモンにそれを語るつもりはない。あの堕した存在は少年がいずれ向き合う己の運命そのものであり、彼に敗れた自分が語るべきことでもあるまい。それに、自分を打倒したほどの者ならば堕ちた闘士などに打ち勝てないはずが無い。そう信じることにして、今は眠りに着こう。
少年は今のままで十分強い。変わらずとも、十分にやっていけるのだから。
「フッ、老婆心ガ疼イタダケダ。……気ニセズトモ良イ」
「そうなのか?」
微妙なニュアンスの言葉に、少年は目を丸くする。
やがて霧散していくザンバモンの体。実体の無き亡霊と化してまでも剣を振り続けた無名の剣豪は、己が剣技を存分に発揮できる相手との戦いの中に光明を見出し、遂にその剣を収めたのだ。そんな彼が歩んできた業の道の幕を引いたのが自分だということを考えると、何故か八雲は誇らしいような気恥ずかしいような気分を覚えた。
ただ、自分と果たし合うことで既に死した剣豪に笑顔を与えることができた。そのことが堪らなく嬉しかったのだ。
「コノ先、如何ナル困難ガソノ身ヲ襲オウトモ、己ガ拳ニ握リシ龍斬丸ニ籠メタ魂ヲ信ジテ突キ進ンデ行クガ良イ」
そんなザンバモンが残した優しさすら感じさせる最後の言葉が、不思議と八雲の中には温かい記憶として残る。その言葉こそが今この世界に巻き込まれた後に渡会八雲が初めて掴んだ、自らにとっての確かな支えとなる言葉だろう。
だが。
渡会八雲に、今の自分にまだ足りないもの。戦いの中でザンバモンが言い残したその言葉もまた、八雲の心から消えることは無かった。
【解説】
・ザンバモン(Vi種/究極体)
遙か昔、選ばれし子供に討たれて首を失った武者の亡霊。古代より亡霊として世界を見つめ続けてきたことから十闘士やロイヤルナイツなど高位の存在についても詳しい。
龍斬丸と共に【反転】世界において将門の首塚に憑依することで出現、渡会八雲と激闘を繰り広げる。学生時代の作者はこの話を書く為に授業サボって現地を半日ぐらい眺めていたとかいないとか。2010年前後の超古代、ナマ足ド派手に晒した長澤まさみもこの辺フラフラ出歩いていて作者は歓喜した。
・龍斬丸(りゅうざんまる)
龍殺しの剣とも謳われるザンバモンの愛刀であり、将門の首塚の前に墓標の如く佇んでいた。ザンバモンとの激闘を経て渡会八雲の手に託され、彼の終生の愛刀となる。デジモンフロンティアでデュナスモンにガラス細工のように折られて作者はキレた。龍属性を持つ者であればあらゆる強者を一太刀の下に斬り捨てる当代最強の業物の一つであり、これ以上の剣は電脳世界に存在しないとされている──が。
仔細は違えど【如何なる可能性においても渡会八雲の愛刀となる】運命を持つ魔剣である。
【余談】
第14話のタイトルは作者がUVERworldで一番好きな同名の曲が由来であり、本作にOPつけるなら絶対この曲だなと10年以上提唱し続けています。
【後書き】
気付いたら最後の13話投稿してから二年経っていましたので、時の流れというものは恐ろしい。ここからはひとまず42話までは一気に投稿させて頂きたいと思います(そこで一区切りになる)。というわけで、自分でも久々に読み返している干支一周前の我が文ですが、八雲の野郎やな奴だなァ! 厨二病真っ盛りだった頃の作者に書かれただけのことはあるスカした野郎だぜ! 今回はヒロイン二人がどっちも出番無かったので余計にそう感じる!
ウィザーモンは例によって「そ、そんな馬鹿な!?」要員ですが彼もまた二話分頑張ってきた男なんだ……侮ってはいけなかった。作者が五番目ぐらいに好きな究極体であるザンバモンもまた同様。ちょうどデジモンネクスト完結した頃に書いていた話でもあるので、敢えてあのザンバモンとは差別化しようと書いていた気もしますが、話としては生身の人間に敗北という憂き目。
それでは早めに次回以降も投稿させて頂きます。……ホントにな!!
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