チェンジリング

　わたしのお姉ちゃんは、とっても素敵なお姉ちゃんなの。

　ううん、本当の姉妹ってワケじゃないの。でも、姉妹みたいってよく言われるし、お姉ちゃんも、わたしのこと。「かわいい、かわいい」って、妹みたいに可愛がってくれるの。

　すらりと手足が長くてモデルさんみたいに綺麗なのに、ふわりと広がるピンク色のお花のスカートがとってもかわいいお姉ちゃんは、わたしの大の自慢なの。

　そんなお姉ちゃんが、「かわいい、かわいい」って褒めてくれるから、わたしも世界で一番のお姫様になったみたいに、嬉しくて、とっても幸せな気持ちになれるの。

　だから、リリモンはデジモンだけどわたしのお姉ちゃんで、

　わたしは、人間だけどリリモンお姉ちゃんの妹なの。

　お父さんとお母さんも、お姉ちゃんが、リリモンが大好きなの。

　リリモンは優しくて綺麗で可愛いだけじゃなくて、ものすごく強いデジモンなんだって。

　なのに優しくて綺麗で可愛いから、わたしのことも心配しないで預けておけるって、いっつもにこにこ、リリモンに「ありがとう」って言ってるの。

　おとなの人でも、完全体、って言ってたかな？　お姉ちゃんと同じくらい強いデジモンを連れているのはめずらしくって、だから、そういう意味でも、お姉ちゃんはお父さんとお母さんにとっては自慢なんだって。

　デジモンの強い弱いはよくわかんないけど、お姉ちゃんといっしょに暮らすようになってから、いろんな人が優しくしてくれるようになったような気がするの。

　だったらわたし、お姉ちゃんにもっといっぱい「ありがとう」しなきゃいけないかもしれないね。

　お姉ちゃんが葉っぱの形をした羽でお空を飛ぶ時は、わたしもいっしょに抱えて飛んでくれるの。

　最初はちょっと怖かったけれど、今はへっちゃらなの。

　お姉ちゃんはすごいデジモンだから、わたしのことも落っことしたりしないの。学校に行くのだって、お姉ちゃんといっしょならあっという間なの。

　お姉ちゃんが飛ぶと、後からさわさわ、そよ風がついてきて、とっても気持ちがいいんだよ。

　もちろんお姉ちゃんとケンカなんて、１回もしたことが無いの。

　ごめん、うそ、うそ。１回だけあるの。家の近くの公園で。

　理由も忘れちゃったけれど、わたしはわんわん泣いてた気がするの。

　お姉ちゃんなんてダイキライ！　そんなことを言っちゃうくらいの、大ゲンカだったの。

　でも、お姉ちゃんが泣いてるわたしの手を取って、優しくなぐさめてくれたから、わたしはすぐにリリモンお姉ちゃんが大好きになったの。

　それからは、ずっと毎日、お姉ちゃんと仲良く暮らしているの。

　それなのにある日、知らないおじさんがおうちに来たの。

　おじさんは知らない女の子の話をしたの。

　わたしより３才お姉さんな女の子のお話。

　お父さんもお母さんも困っていたの。だって、知らない女の子の話なんだもの。

　「気味が悪い」って、お父さんもお母さんも嫌がってた。おじさんが帰ってからの話だけどね。

　「デジタルワールドで見つかった」――なんて言ってたっけかな。そうそう、テンラクって、何回か言ってたような気がするの。

　詳しいことは教えてくれなかったけれど、「そんな話をされてもねぇ」って、とにもかくにも、嫌がっていたの。

　変な話だよね、って。お姉ちゃんとも話したの。

　デジタルワールドっていうのは、デジモンが暮らしている世界のことだから、デジモンのお姉ちゃんなら、わたしもお父さんもお母さんも知らない、テンラクの女の子のこともわかるかな、って、そう思ったの。

　変な話だね。って。でもお姉ちゃんも、やっぱりふしぎそうに首をかしげてたの。

「だってあの子には、森の仲間が飛び方を教えてくれている筈だもの。テンラクなんて、する筈が無いわ」

　だからワタシも知らない子だわとお姉ちゃんが笑ったから、この話はおしまいなの。

　チャンチャン。