※公式ノベルコンペに投稿した作品の、改稿前の元作品です。ぜひ投稿版と見比べて見てください。
「それ」は深い暗闇の中で目覚めた。見ていた夢は霞と消えて、手の中にあった筈の温もりの在処は、終ぞ分かりはしなかった。
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「それ」が目を覚ました時、「それ」は相も変わらず光も届かぬ洞窟の奥底にいた。
地鳴りのような唸り声を上げて「それ」は動き出す。「それ」の動きに合わせてぽろぽろと零れ落ちたそれは、「それ」の身体の一部だった、小さな小さな小石だ。
「それ」は、岩石と宝石からなる肉体を持つ、デジタルモンスターである。自他共にそう理解していた。
デジモンたるもの、「それ」にも幼年期や成長期だった時代があったのだろうが、「それ」には幼き時分の記憶は残っていなかった。
「それ」の最古の記憶は、今朝のように真っ暗な洞窟で目覚める場面から始まっている。その時間より以前に何を見ていたのか、「ある一点」を除けば何も思い出せなかった。
雨にも打たれず風にも削られさえしなければ、悠久の時の中にただ在り続けるのが岩というものである。
きっと自分は、記憶が磨耗するほどの永い時を過ごしたデジモンなのだろう。と、「それ」は「それ」から逃げ惑う、小さなドラコモン達の姿を見て理解していた。
かつての自分は足元でうろちょろしているゴツモンのように、矮小な岩のデジモンだったに違いない。などと呑気に考え事をしながら、混迷極まる群とすれ違っていく。
やがて視界の端にちらりと光が見えるようになる。
ヒカリゴケやツキヨタケのぼんやりとした光ではない、もっと強くてはっきりとした輝き——太陽の光だ。
これこそが「それ」の目的。「それ」は光をもたらす場所、すなわち洞窟の出口から飛び出し、太陽の光をこれでもかと浴びた。
体中の透き通った宝石を通して日光を取り込み「それ」は生きている。
洞窟に住むデジモン達と岩石を取り合う必要も無ければ、彼らを捕食する必要もない。
それでも「それ」は、洞窟とその周辺に住むデジモン達に恐れられていた。暴力を振るった覚えなどないのだが、「それ」は「長命故に強大な力を蓄えていると思われているのだろう」と納得していたので、気に病みはしなかった。
「それ」は太陽が好きだ。太陽は暖かいし、太陽の光は美味しい。だが、それだけじゃない。
暗闇の記憶の中で唯一光り輝く記憶、誰かの笑顔の記憶を思い出させてくれるから好きなのだ。
今となっては笑顔の持ち主が誰なのか、「それ」に確かめる術は無い。「彼女」がデジモンかどうかすら、定かではない。
何も覚えていやしないというのに、太陽よりも眩しい笑顔が愛しくて仕方がなかった。どうして愛しいのかも分からないのに。彼女の事は顔以外、何一つとして知らないのに。
この胸に溢れる感情だけは失ってはならないと、「それ」は心の底から信じていた。
会いたい。会いたい。会いたい。
だから、会いに行った。
いつだって良かったのだ。「彼女」の記憶が磨耗する前ならば、いつ出発したって良かったのだ。それがたまたま今日だっただけの話だ。
洞窟の出口からたった三歩先までしか知らない「それ」は、愛しさの正体を探して駆け出した。
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「……見つけた」
いつでも良かったのだ。彼ほどの執念があれば、「それ」がいつ住処を発っても「それ」を見つけられただろうから。
朝露きらめく新緑の森から荒野めがけて、玉虫色の槍が行く。
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きらきら、きらきら、光っている。
「それ」はそのような光り方をする物体を知らなかった。
精錬された金属は勿論、金属光沢に似た輝きを持つ甲中の翅など、荒野にある洞窟の中にいた「それ」には知る由も無かった。
緑色にぴかぴか光る鎧は、いくつもいくつも色を持っているその石は、なんていう宝石なんだい?
「それ」は訊ねてみたかったが、「それ」はあまり賢くないので言葉をよく知らなかった。
言葉選びに手間取る「それ」の代わりに、ぴかぴか光る鎧の持ち主の方が言葉を発した。
「こちらジュエルビーモン! 報告します、例の巨人の破片を発見! 場所はポイントA-18、ゴグマモン種の形態へと変化しています! 討伐許可を要請します!」
「それ」はここで初めて、「ゴグマモン」という分類にカテゴライズされていた事を知った。
「貴様の討伐許可が下りました。さあ、今度こそ一片の欠片も残さず破壊します」
煌めく鎧のジュエルビーモンは、一切の混じりけのない殺意を以て、緋色の穂先の狙いを定めた。
ゴグマモンの理解は未だに追いつかない。元々頭の回転は早い方ではないが、それを抜きにしたって意味が分からないにもほどがある。
自分は「彼女」を探しに行きたかっただけなのに、どうして見ず知らずのデジモンから因縁をふっかけられないといけないのだ。
とりあえず「戦う意志は無い」と示すべく、ゴグマモンは両手を上げて手のひらを見せた。
「おや。では、我々に投降しますか?」
不戦の意志は伝わったものの、どうも曲解されてしまったらしい。ゴグマモンは首を横に振った。
「ではなんです? あれだけの事をしでかしておきながら、この私に見逃せと言うのですか?」
ジュエルビーモンは敬語こそ崩していないが、その言葉には一朝一夕ではとても生み出せないような深い憎しみが込められていた。初対面のゴグマモンでさえ分かってしまうほどに。
「おれ、なに、した」
身に覚えの無い憎悪に晒されたゴグマモンは、数少ない語彙を集めて訊ねる。
意味のある言葉を発したのは、前はいつだったか思い出せないほど久々だった。
「やはり貴様も覚えていないか……!」
ジュエルビーモンがゴグマモンを軽蔑するように睨みつける。
ゴグマモンは恐れられるのには慣れていたが、非難されるのには慣れていなかったので嫌な気分になった。
「まあ、それが当然の事なのですがね」
急にジュエルビーモンの口角がつり上がる。浮かべているのはただの笑みではなく、嘲笑だ。
「貴様は文字通りの欠片、怪物の残滓でしかなく、本体の記憶など持ち合わせている筈がない」
ゴグマモンのあまりよくない頭では、ジュエルビーモンの話を理解できなかった。
自分と、自分以外の誰かの話をしている事だけは辛うじて分かった。
「欠片の一部からデジモンが再生してしまうほどの生命力は、流石はパートナー持ちといったところですが……貴様は違う。貴様は所詮、奴の残りカスでしかなく、我々の敵ではありません。しかし、元々奴の一部だった以上は塵も残さず排除します。以上が貴様と戦う理由です。他に質問は? …………?」
ジュエルビーモンは怪訝な表情を浮かべた。
「貴様、何故泣いているのです?」
ゴグマモンはぼろぼろと涙を流していた。乾き切った筈の身体から、涙が湧き水のようにこんこんと溢れて流れ落ちていた。
ここまでわざと、はっきりと言われてしまえばゴグマモンにも理解できる。ゴグマモンには「本体」と呼べる大元のデジモンが存在していたのだ。
ゴグマモンが毎朝体を起こす度に、僅かに欠けて落ちる小石。ゴグマモンとは正にそういう存在だった。
暗闇で目覚めるより前の記憶などある筈がなかった。その頃の自分に自我など無く、別の知らないデジモンの体内に収まっていたのだから。
太陽のようなあの子の記憶はきっと自分の記憶ではなく、本体がうっかり落とした一葉のぼやけた写真のようなもの。ただの残りカス。自分はそれを拾い上げただけ。
あの子の笑顔も、あの子を大切に思うこの気持ちも、自分ではない誰かのもので、自分はずっと思い違い、思い上がっていたのだ。
それに気付いてしまったゴグマモンの涙はもう止まらなかった。
「あ゛……、あの子、は、」
止まらなくても、確かめなければいけない事があった。
「あの子……? まさか、奴のパートナーの事を言ってるんじゃないでしょうね」
ますます表情が険しくなったジュエルビーモンに向かって、こくりと頷いてみせる。
「何故それを貴様が気にするのかはどうでもいいとして、今奴がどうなってるかなんてこちらが知りたいですよ。今、血眼になって探している所なんですから。さあ、他に質問は? 無いなら——殺します」
ジュエルビーモンは目にも留まらぬ速さでゴグマモンに肉薄、槍より鋭い殺意をゴグマモンに突き立てる。
「あ、あの子、あの子、」
ジュエルビーモンにとって、ゴグマモンの本体だったデジモンは敵らしい。そのデジモンから受け継いだものは殆ど無いゴグマモンさえ許せないような相手らしい。
「あの子、に、」
ゴグマモンはデジモンでありながら戦った事がない。道を塞いでいた邪魔なデジモンを突き飛ばすついでに戦闘不能にさせた事は何度かあったが、このように向かい合って戦闘を行った経験など皆無だ。
「に、に、さ……」
だが、もしもそれを理由にジュエルビーモンをここから通してしまったら。
今、自分を貫いた殺意はあの子を突き刺すのだろう。
「さ わ る な !」
ゴグマモンの棍棒のような腕が、ジュエルビーモンを殴り飛ばした。
もんどり打って地面に転がり落ちるジュエルビーモン。よく磨かれていた碧の鎧は砂で汚れ、ヒビまで入っている。
しかし、ジュエルビーモンを震わせる怒りの源泉はそんなものではない。
「本体のみならず、残滓までもが我が“女王”の覇道を阻むとは……。そんな事は許されない! 我らが女王の名の下に、その叛意、砕いて差し上げよう!」
鎧のヒビが広がるのも構わず、背中の翅を広げて宙を舞う。
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ゴグマモンは苦戦していた。理由は単純、ジュエルビーモンは飛べるから。当たれば致命傷の拳も、届かなければ意味が無い。
一方、ジュエルビーモンの方も苦戦はしていたものの、ゴグマモンほど焦りはしていなかった。
ジュエルビーモン種は格闘の名手である。戦い慣れておらず、腕を振り回すだけのゴグマモンの攻撃を見切る事など容易い。ただし、ゴグマモンにダメージを与えるには岩の継ぎ目や唯一の生身の肉体である眼球を狙う必要があるため、決定打を与えるのに苦慮しているというのが現状だ。
「戦い方は本体の面影こそありますが、あそこまで洗練されてはいませんね」
ゴグマモンの拳とジュエルビーモンの槍が一瞬だけ触れ合った。細い槍に負荷がかからぬように、ジュエルビーモンは槍に込める力を弱めて向きを変え、ゴグマモンの有り余る腕力を受け流す。
「女王、て、だれだ」
互いに喋る余裕がある内に、ゴグマモンは疑問を解消しておくことにした。
「女王は貴様らネイチャースピリッツのデジモンを始め、デジタルワールドの生きとし生ける者全てを統べる女王だ! デジモンを従える者、“テイマー”を名乗る資格を持つ唯一のお方、その力は、その力は、あのような小娘が持っていていいものでは決してない!」
突如として激昂するジュエルビーモン。しかし、その怒りはゴグマモンが付け入る隙を与えてしまった。
怒りに任せた槍の連続突きは単調な動きにしかならず、ゴグマモンにも必死になればなんとか躱す事ができた。
その後、ゴグマモンはジュエルビーモンの腕を掴むのに成功し、彼が槍を突く勢いを利用して肩の関節を逆に捻り上げた。
「ぎぃやあああああ!!」
ジュエルビーモンの肩から鳴った嫌な音は、彼自身の悲鳴によってかき消される。
負傷した肩を無事な方の腕で押さえている内に、ゴグマモンは勝負を仕掛けた。両手のクリスタルを祈るように二つ揃えて真上から振りかぶる。
「貴様が、貴様がこうやって大将の肩をヤっちまったから進軍が遅れたんじゃねえかああああああああ!」
しかし、次に隙を与えてしまったのはゴグマモンの方だった。
両腕を攻撃に使えば防御はがら空き。ジュエルビーモンはゴグマモンの懐、それも真正面に潜り込む事に成功する。
再び突き出された槍の穂先は、物の見事に胸元の岩の継ぎ目に侵入。ゴグマモンは痛みに悶えた。
「かつて、我らが将軍はあの悪魔を粉々に砕いたのですよ! 決して砕けぬ金剛石と呼ばれた奴を砕いた我らが、貴様ごときに苦戦するものかあ!」
一度は崩れたジュエルビーモンの口調だが、ゴグマモンへ一撃を加えて精神的な余裕を取り戻したのか今は元に戻っている。
デジコアへの直撃こそ免れたものの、胸の刺し傷は無視できるものではない。確実にゴグマモンの体力は削られていった。
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「早く、早く跪け! もはや立つのもやっとなら、その力は女王への敬意を示すためだけに使い切れ!」
立つのもやっとなのはジュエルビーモンも同じだった。彼は長引く戦闘の中でダメージを受けすぎた。
元々のフィジカルの差でゴグマモンより早く砕けそうな体を、忠誠心のみで支えている。
「あの美しい花畑も、希少な宝石も、あの空だって、貴様だって! 全部全部全部彼女の物だったんだ! それなのに、それなのに貴様等はいつもどうして!」
気がつけば、ジュエルビーモンも泣いていた。
その泣き方がさっきまでの自分にあまりにもそっくりで、ゴグマモンはいたたまれない気持ちになった。
もしも勝ちを譲ってやる気が無いのなら、ここで介錯してやった方が彼は楽になれるのではないか。ゴグマモンに憐憫の心が芽生えた。
「きっ、貴様、何をする気だ!」
ゴグマモンはがばりと口を開いた。
途端に上昇する熱量。常に彼らの頭上に煌々と君臨していた太陽の光がゴグマモンの宝石に侵入し、乱反射し、増幅され、集積され、ゴグマモンの口腔内に充填されつつある。
「まさかその技は巨人の……! やっ、やめろ、やめてくれ……!」
ジュエルビーモンの脳裏に、かつて自分が所属していた基地が仲間ごと蒸発し壊滅した記憶が蘇る。
彼の体は本能のままに待避行動を取る。しかし、もう遅い。
小さく「キュイン……」と鳴ったと思えば、豪雷の如くに放たれる『カース・リフレクション』。
木が折れ、岩が割れる爆音の中、ジュエルビーモンの体は音も無く燃え尽きた。
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「分かった。全部持ってけばいいんだね」
蒼く、美しい蝶の翅を持ったデジモンを前にして、ゴグマモンはこくりと頷いた。
「おれ、しぬから、きおく、だけ」
「大丈夫。分かってる。分かってるよ」
フーディエモンと名乗ったそのデジモンは、臆する事なくゴグマモンに優しく触れてくれた。痛みで顔をしかめていたゴグマモンの表情が和らいでいく。
「そ、れ、」
ゴグマモンはフーディエモンの背後にあるものを指さした。
いくつも連なった青いカプセルの中に、白く、ぼんやりとしたもやが浮かんでいる。
「そっか。あれが誰の記憶か分かっちゃったんだね。でも、ごめんね。この記憶を担当したのは前の担当者だから、私には見せる権限も見る権限も無いの……」
フーディエモンは申し訳なさそうに目を伏せると、自身の足元に控えているデジモンに向き直る。
「分かった? モルフォモン。記憶は厳重に扱わなければいけないもの。だから、例えどんなに親しい間柄だろうと閲覧するのもさせるのも、記憶の元の持ち主と預かった担当者しかできないんだよ。今私がこの人から預かる記憶も、モルフォモンは勝手に見たりあげたりしちゃ駄目なの。あ、勿論お届け先の人だったら話は別だよ」
「あい! わかったでしゅ!」
モルフォモンと呼ばれたデジモンが、元気に手を挙げて返事をした。
マシュマロのような体で背負っている、フーディエモンに似た翅が揺れていた。
「それからジュエルビーモンの事も、許さなくていいから理解はしてあげてほしい……。あいつらの女王様、テイマーの女の子。二年くらい前……あなたはもう産まれたかな。その頃に病気で死んじゃったんだ。もうちょっと頑張れば六界全部攻略して、天下統一できそうって所で……」
ゴグマモンはジュエルビーモンの涙を思い出していた。
いかにもテイマーがいるような口振りで、自分と同じ顔で泣いていた意味がやっと分かった気がした。
「じゃあ私たち、もう行くね」
「おたっしゃででしゅ〜」
フーディエモンとモルフォモンは、数多の記憶カプセルと共にふわりと浮かび上がる。
どんどん空に昇っていく彼女たちを、ゴグマモンは手を振って見送った。
蒼い翅が青空に溶けて見えなくなるまで見送った。
彼女たちが完全に見えなくなったので腕を下ろすと、その腕は肩ごと地面にぼとりと落ちた。
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「モルフォモン! 今、一番後ろの記憶がぶつかりそうだったよ! ちゃんと見てて!」
「ぎええ先輩なんでそこまで見えてるんでしゅかぁ……? 成長期一人じゃ見切れないでしゅよこんな量」
「私も昔先輩に同じ事言った。先輩には訓練すればできるって言われた。実際できたから、モルフォモンにも同じ事を言うね」
「す、スパルタでしゅ!」
文句は言いつつも仕事はこなそうとするモルフォモン。
フーディエモンが先導する記憶カプセル同士がぶつからないように、また、離れすぎないように必死で整えていく。
「すいましぇん、しょのテイマーの女の子って本当にリアルワールドに帰ってないんでしゅかぁ?」
「だって帰った記録が無いんだもん。確実に帰ったって証拠が見つかるまではこっちを探すしかないよ」
モルフォモンは途方に暮れた。それはそれとして怒られたくないので記憶の列は整える。
「待ってて、ゴグマゴグの軌跡。巨人が見た夢。確かにあった愛の証たち。あなたたち103“人”のカケラ、一人残さずあの子に届けるから」
後書き
ぼくはアニメ『カイバ』が好きです。
ぼくはアニメ『ケムリクサ』が好きです。
ぼくはアニメ『ツバサ・クロニクル』並びに原作漫画の『ツバサ』が好きです。
ぼくは『空の境界』の『矛盾螺旋』が好きです。
つまりはそういう事です。
ペンデュラムZ発売記念の恋愛小説企画、ネイチャースピリッツ担当は羽化石でした。ブラストモンの進化前としてのポテンシャルを秘めたゴグマモンを主役に据えて書かせていただきました。
いかがでしたでしょうか? お楽しみいただけたのでしたら幸いです。
今回はゴグマモンという存在に話の焦点を合わせるため、叶うなら彼に感情移入していただくため、敢えて世界観の説明を省きました。
一つだけネタばらししてしまうと、ゴグマモンの元となったデジモンはブラストモンです。元々欠片から再生する能力があるデジモンですが、あまりに細かく砕けてしまったのでもはや元の彼としての再生は不可能だったんですね。
ジュエルビーモンくん関連の設定も一応あるのですが、語るときは野暮になってしまわないようにワンクッションを置いてからお話しますね。
ちなみにタイトルの「砕壊」はそのまま「さいかい」と読みます。
p.s.フーディエモンとモルフォモンの関係性はエリカとワームモンを意識した訳ではなく、気がつけばああなっていました。
一月ほど遅れる形となってしまいましたが感想を書かせて頂きます、ご存じ夏P(ナッピー)です。
ゴグマモン認識する以前から「ブラストモンか……? まさかコイツ俺(ブラストモン)のことがry」となりましたがやはりブラストモンだったようで嬉しい。肉体が幾つに分割されようともそこに確かに残る記憶は残滓などでは無く確かに真実だったということなのか。それはそうと高飛車な台詞回しに見えたジュエルビーモンも本人は本人なりに悲しき過去……というか思いを背負っていた様子で。六界全部制覇って大したジェネラルだぜ!? またしてもタイキにしてやられたな!
こーいう時、自分なら絶対「あの女の子? ああ、奴ならとっくに死んだよ」とか残酷な真実を突き付けてしまいがちですが、もしかしたら──と、ネイチャースピリッツに相応しい爽やかな風を感じさせるとても希望のある締め方でした。フーディエモンとモルフォモン、奇しくも近年のデジモンを支えたご機嫌な昆虫コンビいいな……。
では簡単ではございますが、この辺りで感想とさせて頂きます。
存在と記憶の残滓。発端が偽物だとしても、そこに抱いた感情も足された記憶も紛い物ではない……こういうのは自分も好みです。最高です。
新デジモンでありながら既存のデジモンとの繋がりを無理なく演出させつつ、そこに他作品との設定を想起させるフレーバーを盛り込む。さらにはあの二体の蝶のデジモンでゴグマモンを突き動かした記憶を救済する。設定と構成が上手いのなんのと。
お先真っ暗でも、ユメは生き続ける。あの娘の未来に福音があらんことを。
変な締め方ですが、これにて感想とさせていただきます。
今回は思いつきの様な企画に参加してくださって本当にありがとうございます。
背後にはいつもの羽化石さんの匂いをさせながらも、メインになる様なデジモンには今回のペンデュラムZ登場デジモン達で固めてくる辺り流石だなと思いました。
それもただ入れてくるのではなくて、フーディエモンの能力の話や、ゴグマモンが岩石である事もうまく組み込んで、とても切ないけれど同時にもしかしたら未来で彼女にとも思えるいい塩梅でした。
本当に、今回は参加して頂いてありがとうございました。
どうも、快晴です。おそれながら、感想を投下します。
作品を読み進めるごとにひとつずつ解き明かされて行く謎には文字通り目を引き付けられっぱなしで、最後まで一気によんでしまいました。そして最後にあとがきで明かされるタイトルの読み方……ぐっときました。
思わず「はっ! ジュエルビーモン!!」と声に出してしまいそうになりましたが、そもそも彼のカテゴリーは『ネイチャースピリッツ』でしたね。新デジモンでは無いものの『デジモンペンデュラムZ』で新たに収録となったデジモン達の活躍を見ていると、改めて記念企画という感じがしてなんだかわくわくしました。
ゴグマモンとジュエルビーモンの織りなす戦闘の描写はお互いの感情含めてお見事の一言で、そのまま情景が思い浮かぶかのようでした。
あとがきで仰っておられた通り、物語はあくまで主人公のゴグマモンに焦点を当てて語られており、その全景は読み手側がちりばめられたパーツを使って想像する他無いのですが、それが作品そのものに奥行きを与えていて、ひとつの確固たる世界に在った一場面を抜き出して見せてもらっているかのようでした。
そんな中で、未来に羽ばたいていく2体の蝶……。
ゴグマモンは途中で一葉のぼやけた写真のようだと表現されていましたが、ゴグマモンの前身たるブラストモンが、全身でパートナーを愛していたからこその一葉だと思うと、本当に胸が締め付けられるように切なく、しかしどんな宝石よりも美しい愛の物語だったと思います。
いつか『あの子』に全ての証が届くよう祈りつつ、拙いながら、これを感想とさせてもらいます。素敵な物語をありがとうございました。