※アポカリモンとピコが打ち上げ花火を見ているだけの話
今年も夏が終わる
ひゅるりと打ち上げられた珠は空中でパァンと弾けて大きな色とりどりの花を夜空に咲かせた
「アポ、綺麗だね」
ピコと一緒に花火大会に参加した
黒い服を纏っているおかげ大勢の花火を見ようと押し寄せた人々はアポカリモンが空中にいることに気づかない
花火が咲く近くで気配を消して鑑賞していた
ピコは嬉しそうに花火を見ているがアポカリモンは今にも泣きそうな表情で見ている
「私もあんな風に消えればいいのにな…」
大勢の人間、デジモンが花火を見て感動している
花火は平和の象徴。火薬は使い方によっては命を奪う兵器と化す恐るべきもの
アポカリモンからすれば光の世界で生きる生命は全て花火の様に煌びやかで美しく一瞬で儚く燃え尽きる。寿命、人生のようにだ
線香花火の様に脆い生命もいればロケットの様に激しく火花を散らす生命もいる
無惨に消された生命もある
火薬に上手く点火されなかった生命もある
アポカリモンは花火ですらない
大勢の生命が散らし残した灰そのものだ
誰だって後悔がある
誰だって心残りがある
忘れ去られた、歴史から葬り去られた生命
綺麗に咲いた花火の影で綺麗じゃない、美しくないと捨てられた燃えカスと化した花火があったのだ
「なぁピコ、私の自爆技は綺麗だと思うか?」
何故そんなことを聞くの?とピコは悲しげな顔をするが花火の光を浴びて淋しげに映るアポカリモンというどうしようもなく悲しい生命を見て翼を広げ優しく包容する
「爆発しなくてもアポは綺麗だよ」
暖かく柔らかい毛に包まれながらアポカリモンは「そうか」と震えながら強くピコを抱き寄せる
花火大会はクライマックスを迎え、音楽と共に大きな花火が大量に打ち上げられる
会場が花火の光に包まれる中、ピコとアポカリモンは暗黒の世界へと身を落とし抱き合いながら静かに眠りにつく
暗黒空間の中、何処かで花火が散る音がする
灰の上で小さな灯火が優しく灰を温める
【私の花火】