「それはなり損ないでございます」
店主は意地悪く笑いました。
「天使ではありましたが天使で在り続けられる程清らかではなく、人を恨みましたが恨みきれる程悪辣ではなく。故に、悪魔には成れませなんだ」
しかしその瞳にはやるせなさ、といいますか、川底の石のように、水に沈んでなお乾いた光をちらちらと宿しているように、わたくしには思えたのです。
「堕天使、と呼ぶそうですな。その小箱の中に居りますのは、正しくその類でありますれば」
わたくしは今一度、手の平に乗せていた、店主の言うところの小箱――黒い水晶を切り出し、煉瓦状に重ね合わせて構築した半透明の箱、その左側に設けられた正方形の窓を覗き込みました。
窓の向こうには、箱の小ささとは逆しまに、広大な景色が広がっています。
それは凍てついた荒野でした。
四方を氷に、天を灰の雲に閉ざされた、生命の息吹というものをまるで感じさせない荒れ地の光景。
聞いた事があります。地獄には、炎の責め苦を施す処だけではなく、氷の地獄もあるのだと。あまりの寒さに皮膚が張り裂け、罪人が肌から紅い氷柱を垂らすような地獄があるのだと。
そのひどく寒々とした箱の中身は、わたくしにそういった恐ろしい地の底の風景を想像させるのでした。
きっと、窓の周りに設えられた枠が、一層そんな印象をかき立てるのでしょう。
小箱の外壁や氷の園と比べていやに明るい、金鳳花の色をしていながら、その枠は、箱の内よりなお冷たい、鉄の格子であったわけですから。
檻なのです。この箱は。
魔に生まれついたものを閉じ込める、窮屈な檻。そして今や、堕ちた天使ただ1体のためだけに在る、小さく寂しい寝屋なのです。
堕天使は、檻の奥深く。ところどころが白み、ひびのの入った氷の中に、横たわっておりました。
格子の隙間と並び立つ氷柱に阻まれて、その子細を伺う事は出来ません。
辛うじて判るのは、かの堕天使が、立派な鎧を身につけている事ぐらいでしょうか。氷雪の白よりなお目映い、それこそ天使の羽根を思わせる純白の鎧に、豪奢に煌めく黄金の装飾。兜や肩甲は萌ゆる若草の色使い。遠目にも、なんと見事な鎧なのでしょう。海の向こうで語り継がれる神話にあるような、造物主に弓を引く傲れる反逆者に相応しい、輝くばかりの、それはそれは美しい鎧です。
「彼は罪故に、この檻に囚われているのですか」
私の問いかけに、店主は曖昧に首を横に振りました。
「そう捉える事も出来ますし、そうではないとも言えますな」
「というと」
「清らかでは在れなかった。先に申した通り、それだけ。それだけなのです。恨みきれずとも、恨まずにはいられなかった。故に天使は堕ちたのです」
「恨む、とは」
「その者には、かつて主が居りました。造物主などとは程遠い、単なる人の子でございます」
それでも、堕天使にとってはかの者こそが神であったのだと。
想像に難くない事でした。なにせ、小箱は本来であれば。幼子を慰めるためにこそ、拵えられた物なのですから。
*
懐かしい。と思うと同時に、如何せんわたくしには無縁の代物でありましたから。それだけに心惹かれたのでしょう。
馴染みの無い町の、当然、この地に在るとさえ知らなかった、寂れた骨董品屋。僅かに傾いた屋根がただでさえ人を拒む雰囲気を滲ませるというのに、何故だかその時のわたくしは、突き動かされるようにして店の中に足を踏み入れ、埃を被った硝子窓からぼんやりと覗いていた“箱”の下へと躊躇無く歩み寄ったのです。
今のご時世では考えられない事でしょうが、わたくしの幼い時分には、“それ”は所謂「男の子のもの」でありました。
インターネットの世界に住まう、電子情報で構築された怪物を収めた、小さな檻を模した玩具。
中の怪物を育み、養い、そして時に、他者の育てたものと争わせる。
異性の学友が教師の目を掻い潜ってまで校内に持ち込み、声を上げて楽しんでいた様子の“それ”を、本音を言えば、わたくしは羨んでおりました。
だって手の平に収まるような檻の中で、自分だけの怪物を。自分の勝手一つで生き死にの決まる生命を飼育できる、だなんて。この歳になるまでに覚えた言葉で表すのであれば、「背徳」と。そんな、幼く残忍な情緒を覚えずにはいられなかったのです。
窮屈で、息の詰まるような家でした。わたくしの家は。
子供じみた欲求をひとつ口にすれば、食器を扱う音や戸を閉める音に言葉を代弁させるような両親が、わたくしの家族でした。
周りの人々はわたくしの家を、何不自由の無い、満たされた家庭だと影で妬んでおられたようですが、わたくしがあの家で不自由を感じずに過ごせるようになったのは、ごくごく最近の事でございます。
嗚呼、今思えば、わたくしは。結局両親に似ているわたくしは、我が身の辛さを同じように押しつけられる、か弱い隣人を欲していただけなのでしょう。それが可能な生き物の「もどき」が、たまたま同窓達の所持品という形で、わたくしの目に入っただけの話なのです。
「デジタルモンスター」
白銀の金具で、木を模した銅のアクセサリースタンドに、果実のように――あるいは、罰のように――ぶら下げられた、色とりどりの玩具の小箱を食い入るように見つめていたわたくしは、ふいに背後から響いた声の方へと振り返りました。
男性とも女性ともとれない、ざらざらと掠れた砂嵐じみた声を発した人物は、声音の印象に違わない、性別も年齢も正確には測れそうに無い、それこそ、骨董屋という概念をそのまま人の形に押しとどめたような、なんとも言えない、妖しい風貌をしておられました。
「いえ、随分と熱心に眺めておいででしたから。店主として、商品名でもお伝えした方がよろしいかと思いましてね」
「ああ」
僅かに頬が熱を帯びました。わたくしはどのくらいの時間、この何の変哲も無い小箱の列を見つめていたのでしょう。
「ごめんなさい。冷やかしのつもりでは無かったのですが」
「いやはや、こちらこそ申し訳ない。厭味のつもりでお声がけした訳では無いのです」
デジタルモンスター、と。
店主を名乗ったその方は、もう一度“箱”の名前を、そして、箱の“中身”の名を繰り返して、会計用の棚の脇から、こちらへと歩み出て来ました。
「時々居られるのです。それにひどく惹かれる方が。お嬢さんも、その類かと思いましてな」
全身が露わになってなお、身体の線が掴めない、それでいてきっちりとした印象の装束を身に纏った店主は、動き始めてからはむしろ余計に、古物の類のように映るのでした。
もう「お嬢さん」などと呼ばれる歳でも無いのですが、この方にそう呼ばれると、なんだか己を固めるこれまでの生がひどく未熟なものであったと、突きつけられているような気さえして。
「惹かれる」
平静を装って問い返すわたくしにすぐには応えず、並んだ傍からぬっと細く長い指を伸ばすと、店主は迷わず箱の内の1つを手に取りました。
「覗いてご覧なさい」
店主はそのまま、箱をわたくしへと差し出したのです。
「きっと、気に入られる」
躊躇う。フリをして。しかし不思議と抗えず、恐る恐る、わたくしは箱を手に取りました。
そうして覗き込んだ鉄格子の向こうで眠っていたのがかの堕天使で、それを見た時わたくしは、檻の小箱で飼う怪物の中には、人に似た形のものが居ると。そう耳にして心を弾ませた事を、ぼんやりと思い出したのでありました。
*
「こんな商売をやっていると、そう珍しい話でも無いのです」
付喪神。
壊れること無く、長く現世に留まった物品には霊魂が宿ると。そのような御伽噺(あるいは、怪談の類やもしれません)を耳にした事はありました。
「その箱の中身はただでさえ、生き物という形状が与えられていますでしょう。いえ、生き物、というだけならまだしも、怪物、物の怪、化生の類です。この世に漂う霊魂とやらとは、ひどく相性がよろしいのでしょうな」
内緒ですぞ、こんな話は。と店主が喉を鳴らしました。しかし、荒唐無稽な話にもかかわらず、幼年の頃は元より、現代の技術を以てしても、まずこんな極小の空間に再現はできないであろう凍える荒野を目にしてしまえば、わたくしもとても、一笑に付す事など出来そうに無く。
「あの」
わたくしは、未だいくつも木の枝に下がる、違う色の同じ箱の方へと目配せしました。
「他の小箱もにも」
「ご想像にお任せしますが、あたしの見立てでは、お嬢さん。貴女が垣間見るのは“それ”だけにしておくのが賢明かと」
「……」
「なあに。同じように、単なる相性の話でございますよ」
わたくしの視線から何を読み取ったのかには触れず、そしてそれ以上わたくしが何かを尋ねる事も許さない眼差しで、店主は一層笑い皺を深くして見せました。
わたくし自身、全く気にならないと言えばもちろん嘘にはなりますが、自分でも不思議な程に、それ以上箱の中身を暴きたいとは思わなかったのです。
「買って行かれるのでしょう」
きっと店主の言い当てた意志が、この時のわたくしの全てでした。
「はい」
「お包みしましょう。さあ、こちらへ」
丁寧に元いたカウンターを指の腹で指し示し、胸元に堕天使の小箱を抱き留めたわたくしを先導しながら、ふいに店主が、通りすがった陳列棚の端から、ひょいとデジタルモンスターの箱とは別の、長方形の箱を取り上げました。
見れば、それはつやつやと光る、黒塗りの木箱のようでした。
蓋には花の細工が密に彫り込まれていて、しかし塗りが真っ黒なものですから、もしも己が焼けた事さえ気付かないままに炭に変わった花の束があったとすれば、きっとこんな姿になるのだろうと、わたくしは他愛も無い空想を膨らませるのでした。
同時に、こうも思ったのです。
まるで、棺のようではないか、と。
「この小箱は、こちらの箱に入れて差し上げましょう」
店主がそう言って長い指で木箱を開くと、途端、耳に覚えのある曲が、厳かに流れ始めたのです。
金属の櫛が円筒のピンを弾く、軽やかで、涼やかで、しかしどこかもの悲しいその音色は、オルゴールのもの。そしてこの曲は、わたくしの記憶が正しければ、死者を弔うために歌われるという――
「あの、それは」
「ご安心くださいな。あたしから、心ばかりの“気持ち”ですから。堕天使の寝屋を、そしてお嬢さんのお部屋を飾るのです。美しいものでなければなりますまい」
そのまま店主はゆっくりと、箱内の赤いベルベッド敷きの上に、堕天使の小箱を収めました。
「それから、こちらもお付けしましょう」
そうして今度は、木箱の隙間にぴったりと収まる長さの、金色の鍵を小箱の隣に添えたのです。
「使い方は、使いたいと思えばその用途も含めてすぐにお分かりになる筈です。ですが、お勧めはいたしません」
「それは、どういう」
「それも、お分かりになる筈です故」
ただし、これだけはお伝えしておきましょう。と、戸惑うわたくしを構わずに、店主は目を細めて、ぴんと立てた人差し指を己の唇に当てました。
「繝?ず繧ソ繝ォ繝ッ繝シ繝ォ繝は、案外人の世の傍に在るものなのですよ」
わたくしには、店主がなんと言ったのか聞き取る事も、聞き返す事も出来ないまま、わけもわからず頷く事しか出来なかったのです。
*
1人きりの我が家で自室に帰るでもなく、わたくしは裏手の庭へと足を運びました。
初夏の草花は伸びるのが早く、庭師による手入れもつい数週間前にお願いしたばかりだというのに、もうそこかしこを緑に色づかせて、芽吹きと共に掘り返した土から湿ったにおいを漂わせています。
わたくしは庭の隅にある、錆の浮いたガーデンチェアに腰掛けて、持ち帰ったばかりのオルゴール箱を開きました。
結局店主は、小箱の代金以上のお金を受け取っては下さいませんでした。単純に考えれば子供の玩具よりも、木彫り細工のオルゴール箱の方が、よほど値打ちがあるように思うのですが。
もっとも、小箱の中に居る“彼”に値がつけられないというのであれば、それ自体は、頷ける話ではあります。
膝の上を見下ろせば、箱の鉄格子から覗くのはやはり極寒の地獄。
季節相応の、湿気と熱の息苦しい空気の中で垣間見る氷河は、なんだかわたくしにおかしな気分を覚えさせるのでした。
同じなのは、空の色だけです。どんよりと曇った、灰の空だけ。
ああ、この箱の中、その雲の向こうには、天の国とやらがおわしますのでしょうか。
彼は、そこから堕ちてきたのでしょうか。
「ああ、そういう事ですか」
そうやって琴に似た音色に耳を傾けながら常冬の国を眺めているうちに、ふと気がついたのです。店主の仰っていた事に。
言われてみれば、小箱の鉄格子には、錠前が取り付けられておりました。骨董の店の中ではただのくぼみに過ぎなかった筈の鍵穴が、いまではぽっかりと、真っ黒な深淵を覗かせているのです。
わたくしは一度、オルゴール箱から小箱と、そして渡された鍵を取り出しました。
鍵の先端は、ぴたりと錠前の穴に合わさる事でしょう。
開けば、どこに繋がるというのか。
店主は、お勧めはしないと言っていらしたけれど。
昔話にも、あったような。開いてはいけないと渡された鍵を、好奇心に負けて、開いてしまうお話が――
*
こんなにも寒々とした景色の中で、しかし夏の衣に身を包んだわたくしは、これっぽっちも冷たさを感じないのです。
ただ息だけが白く、時折風に髪が揺れ、瞬けば睫毛から霜が零れるような。“氷の国”という記号だけが、わたくしを取り囲んでいるようでした。
鍵穴の先で、錠前と鍵がかちりとかみ合った音を耳にしたその刹那。
わたくしは、あの鉄格子の小窓から覗き込んでいた、氷の荒野に佇んでいたのです。
にもかかわらず、もはやわたくしの手元には無いオルゴールの音色が、今なお昏い天から降り注いでいて。だからわたくしは、やはり檻の中にいるのだと。自分でも驚く程冷静に、この身に起きた不可思議をつぶさに観察していたのでした。
そして、案の定。
雪原の奥には、“彼”を閉じ込めた氷が、横たわっていて。
歩み寄れば、あの小さな窓から眺めていた時よりもずっと、ひどく立派で、重苦しく、そして荘厳な鎧を纏っておられるのだと知れたのでした。
ですが、子細の露わになったその装飾の、なんと悪意に満ちたものか。
天の国から突き放された彼の身体を嘲笑う赤い唇の意匠が、そこかしこに刻印されているのです。
そして輝ける若草色の兜にも、罰の印が。
“彼”は清廉では居られなかった、と。ただ、それだけの咎で。彼の生きてきたこれまでの全てが否定されているのだと。何も知らない、解らないなりに、わたくしは、そう、感じたのです。
たまらなくなって、わたくしはどうにか、この堕ちた天使の、せめて心だけでも救って差し上げたいと思い立ちました。
思った。いいえ、傲ったのです。きっとわたくしにならそれが出来ると。店主の弁から、勝手に“彼”に見初められたのだとばかり思い込んで。
結局のところ、わたくしは。心のどこかで“彼”を、“彼ら”を。手元で如何様にも愛でられる、矮小な怪物だとしか認めていなかったのです。
これ程までに美しい、横たわる“彼”を目の前にしても。
事実として、わたくしが思わず氷の表面、その中でいっとう大きなひびに指を添えた瞬間。オルゴールの音色よりも繊細な音を立てて、ゆっくり、ゆっくりと、冷たい割れ目が広がったのです。
奇跡を起こした気にでもなったのかもしれません。わたくしはその場を動かずに、氷の全てが砕け散るのを待ちました。
永遠を感じましたし、瞬き程の刹那のようにも感じました。
氷は床に落とした硝子細工のように粉々に砕け散り、それから一呼吸分の時間をおいて、鎧の堕天使はその場から起き上がったのです。
“彼”は身を起こすなり、それまでは無かった筈の翼を、十枚。ばさり、と背中に広げました。
毒々しい紫の、蝙蝠を思わせる翼でした。浮き出た骨の影が、まるで宙に円を描いているかのように、貶められた彼の所業からは想像も出来ない程に、行儀良く等間隔に並んだ翼です。
「 」
“彼”はわたくしには理解できない言葉で、何かを叫びました。
わたくしの名前で無い事だけは、確かなようでした。
そのまま“彼”は、わたくしに一瞥もくれないまま、いつか在った筈の天へと飛び立ちました。
ですが雲と地表とのちょうど中程に至ったあたりで、急に羽ばたくのを止めたかと思うと、“彼”は両手で兜に覆われた己の顔を掻き毟り始めたのです。
“彼”の鎧は、堕ちる前とそう変わらないものであったのではないかと思います。
その手甲の指先に備わった、スピネルにも似た赤い鉤爪を除いては。
爪は恐ろしく耳障りな音を立てながら兜の表面を削り、“彼”の声にならない悲鳴と、冷ややかなオルゴールの音色と。悍ましい不協和音を奏でながら、しばらくの間鳴り響いていたように思います。
それがようやく鳴り止んだ時には、“彼”は“彼”自身を、がしり、と抱き締めておりました。今度は己の細い胴に、深々と爪を突き立てながら。
てすためんと
己の信心を訴える言葉を残して、次の瞬間、“彼”の身体は塵も残さずに焼け落ちました。
一瞬、この寒空に太陽が戻ったかのような輝きを灯して、次の瞬きの後、それが地の底より伸びた業火であったと悟る頃には、もう、“彼”は居なかったのです。
「そう」
わたくしは、何の感慨も無しに呟きました。
「あなたのお心には、未だに誰かがいらっしゃるのね」
初めて特別になれた気がした高揚感はすっかりと冷え切って。吐き出された科白は、自分でもぞっとするほど、この景色よりもずっと冷たい声音に彩られておりました。
*
ええ、ええ。その通りです。塵も残さず、とは言いましたが、“彼”の焼け落ちたところには、こちらのタマゴが遺されていたわけです。
元の庭先に戻っても、青白い氷の上で拾い上げた”これ”は、わたくしの胸元にしかと抱き留められておりました。
だというのに。今になっても、ちっとも孵る兆しが無いのです。孵ってくださらないのです。
幸いもう、わたくし自身の所持品について、両親に誤魔化し、言い訳する必要もありませんから。ずっとずっと、手元に置いてあるのです。それ相応に、長いこと。
尋ねようにも、あの骨董屋の場所さえ、今となっては解らなくて。
だからです。“彼”のような怪物が生まれるという電子情報の蜘蛛糸に、この家の名を掲げて這わせた言伝を見て、あなたもいらしてくださったのでしょう?
「天使のタマゴを預かっております。心当たりの在る方は、どうかご連絡ください」と。
いっそ、冷やかしでも構わないのです。タマゴが孵るまでの時間を潰す、言ってしまえば、道楽に過ぎない行為ですから。
なので、正直にお答えくださいな。
あなた、“彼”とはどういったご関係で?
ノベコンお疲れさまでした!
感想を配信で喋らせていただきましたので、リンクを下に貼っておきます!
https://youtube.com/live/lvzwnURzAUs
(5:50~感想になります)
手を上げろ! 『テスタメント』は自爆技警察だ!!
今すぐこの技を発動したセラフィモンおよびブラックセラフィモンの命を捨てろ!!!!
はい。
というわけでこんにちは。『テスタメント』は自爆技警察です。
『失落縁』をお読みいただき、誠にありがとうございます。本作はノベコン快晴5作品におけるお耽美ホラー枠です。
私が日頃『テスタメント』は自爆技普及委員会の一員として、『テスタメント』が自爆技である事を広めている事はまあ皆さんご存知だとは思いますが、今回はやはり公式の催し物と言う事でですね。本当はホラー枠を作るつもりは無かったんですけれどね。ほら、デジカでブラックセラフィモンがACEで実装されて、しかもなんかパラレルとSPもらってたじゃ無いですか。
お礼をね、お伝えせねばならないなと。そう思ったんですよ。あとついでにフロンティアで『テスタメント』が全然自爆技じゃない事のお礼参りもやっぱりしなくちゃいけないなと思いまして。ええ。そう思い至ったら、なんか1日で書き上げていたのが、本作です。実質感謝の正拳突きですね。
これと明日(?)投降する最後の1作に関しましては、正直賞である事は度外視して執筆いたしました。自分的にはエキシビジョンマッチですね。本戦勝ち抜いてないのに何言ってるんですかねコイツ。でも、そんな気持ちで書きました。書いたんです。
オルゴールの曲は皆さんお察しの通り『Requiem』です。ご存知ですね。ブラックセラフィモンといえば『Requiem』ですからね。死の輪舞曲からお前に捧げる鎮魂歌が鋼の闘士メドレーだと、フロンティア28話を予習していれば解らない筈はありませんからね。『テスタメント』は自爆技警察学校の筆記試験ではフロンティア28話からの問題が頻出しますので、解らなかった方は是非覚えて帰って下さい。
というか、すっかりお話し損ねていましたが、本作の登場デジモンはブラックセラフィモンとなります。
ブラックセラフィモン。アレです。セラフィモンの黒くないやつです。黒いセラフィモンのブラックセラフィモンもいますが、今回書いたのは緑色の方です。ブラックセラフィモンは兜の側面から覗く髪が黒い事で有名だったのですが、公式図鑑のイラストやデジカのイラストを確認するに、最近は銀髪がトレンドっぽいですね。黒髪と銀髪。両方違って、どっちも好(はお)。
ブラックセラフィモンが主に緑色なのは、先程から何度も挙げているアニメ『デジモンフロンティア』に登場する中ボス、鋼のヒューマン闘士メルキューレモンに由来するのですが、『デジモンアドベンチャー:』でタケルのパタモンが回想で一瞬ブラックセラフィモンになっていた描写を挟んだ事もあって、普通にセラフィモンが堕天しても緑色になるというのが現代の通説になっています。この緑色という色は、海外では「悪役の色」として扱われる事も多いので(要出典)、ひょっとすると下手に黒色になるよりも、海外での展開も多いデジモン的には、緑は黒よりブラックなのかもしれません。
脱線しましたね。本作についての解説を始めます。
今回ブラックセラフィモンがラストシーンまでずっと眠りについていたのは、ブラックセラフィモンの好きなものが『シエスタ』、即ちお昼寝だからです。かわいいですね。反対に、嫌いなものは『今の自分自身』らしいので、自爆してもらいました。かなしいですね。なお、こちらの情報は『デジモン公式大図鑑』情報なので、公式です。
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、主人公が入手した『小箱』は初代ギア・デジタルモンスターのバージョン2、つまり、エンジェモンが初登場したギアだったりします。一応、公式のギアを使用したお話も書いておきたいと思いまして。
残念ながらブラックセラフィモンを育成可能なギアは”まだ”存在しないので、セラフィモンが初実装された携帯機を使用する事も考えたのですが、セラフィモンが初実装されたのはタケル仕様のD-3からだったため、デジヴァイス系列を使うよりは、と、デジタルモンスターを採用し、「エンジェモンとして育成されたけれど、それ以降放置され、ついに堕天するにいたった」みたいな裏設定で書かれたのが本作、ということになります。彼が『テスタメント』する前に叫んだのは、そのパートナーだった人間の名前です。そしてそれは、あなたなのかもしれません、という感じのお話です。
みなさん、エンジェモンを育てた事はありますか。
エンジェモンにしてから、それから、どうしましたか?
”あなた”は”彼”を、どう育てましたか?
”あなた”は”彼”の愛を、どうやって勝ち取り、その心を今に至るまで縛り付けたのですか?
どうかお聞かせ下さいな。そうしないと、卵が孵ってくださらないのですから。
あ、本作に登場した骨董屋の店主はアクアリウムの店主とは全くの無関係です。そこんとこヨロシク。
というわけで、『失落縁』をお読みくださり、本当にありがとうございました。
次回の投降で、ノベコン参加作品は最後です。お付き合いいただければ、幸いです。