朽ち果て、夜明けの光が差し込む建物の中。柔らかな光に照らされながら、少女が微睡む。
透き通るような白皙の肌に、光に照らされ豪奢な輝きを放つアッシュブロンド。開けば鋭い印象を与えるだろう、切れ長の目。ジーンズにノースリーブというシンプルな出で立ちながら、どこか気品すら感じられる存在感。まるで人形のような少女が廃墟で眠るその姿は、さながら御伽噺の一頁のようだ。
そんな少女の閉じられた目から、一筋の涙が零れ落ちる。
時に夢見るのは、過去の記憶であるという。
些細なこと、印象的なこと、忘れたいこと、忘れられないこと。そんな過去を、人は夢に見るのだ。
――だからこれは、微睡む少女が見る夢の物語。
懐かしくて、大切で、輝かしくて、そして。
もう二度と取り戻すことのできない、過去の物語。
そして――
●
「ん……ここは……?」
ふと、少女は目を覚ます。
いつものスプリングが効いていないベッドとは違う感覚に違和感を覚えながら体を起こすと、そこは森の中だった。柔らかな光が差し込み、風にそよぐ木々の音が静かに響く様は、まるで御伽噺のようですらある。
と、霞がかかったようにぼうっとした頭で考えたところで、はたと違和感に気づく。
「あれ……? 私、病院に居たはずじゃ」
それがなぜ、このような見渡す限り木々ばかりという自然の只中にいるというのか。そうでなくとも、彼女は軽々に外を出歩くことができる体ではないというのに。
風に靡くアッシュブロンドの髪を軽く抑えながら、必死に最後の記憶を辿る。
「えっと……そう。今日は姉さんたちが来る日だから、談話室に行こうと思って……ナースステーションのパソコンが、光ってるのを見かけて……」
徐々に見かけるようになってきていたとはいえ、未だ珍しかったパソコン。
ナースステーションが無人になっていたのをいいことに、画面が光るパソコンに興味を覚えて近づいたのだったが。
「……ダメ。思い出せない」
そこから先のことが、どうしても思い出せない。まるでそこだけ、霞がかかったかのように記憶がぼやけてしまう。自分が何故こんな所にいるのか。ここは何処なのか。何もわからない。
「とりあえずここにいても始まらない、か」
自分に言い聞かせるようにそう言って、彼女は立ち上がる。
とりあえずは、ここが何処なのかをはっきりさせなくてはいけない。色々考えるのはその後。元々即断即決のタチである彼女はそう決めると、光射す方へと歩みを進めていく。
「……そういえば、体が軽い。うん、こんな風に外歩いたの、いつ振りかしらね」
彼女は生まれつきの病で色素が少なく、あまり晴天の下を歩くことができない体だった。透き通るような白い肌も、日本人には少ないアッシュブロンドの髪も、普通より赤みがかった褐色の瞳も、それによるものだった。
だからこそ得難い機会と、ある意味能天気な思いもあって歩いていたのだが。
「何……あれ」
歩みを進めた先。山火事でも起きたかのように黒く焦げた一帯を見つけたかと思ったら、そこにそれはいた。
ピンク色の体に赤い嘴を持った、まるで鳥を思わせるシルエットの何か。それが小さな子供ほどの大きさでなければ、だが。既存の生き物には見えない、未知の生き物としか言えなかった。
「これは……そんな、酷い……!」
だがそんな未知の存在への恐怖なんてどうでもよくなるくらいに、その存在は傷だらけだった。彼女が思わず駆けよると、その鳥のような何かが薄く眼を開ける。
「貴女は……もしかして、ニンゲン?」
「しゃ、喋った!?」
「ああ……そんな、ニンゲンが。ああなら、貴女が……!」
「え、えっと……」
たとえ異形であってもはっきり無理をしているとわかる様子で身を起こし、彼女に縋るように眼を向ける。
その瞳を見た彼女は、何故だろうか、どうしても目が離せなかった。
「お願いです、ニンゲンの少女よ。どうか名前を聞かせて下さい」
「わ、私の名前は……――」
○
それが、私の運命との出会い。
あの日パソコンに触れて、この世界に迷い込んで。
全てはきっと、この日に決まったんだと思う。
……ううん、ひょっとしたら、もっと前から。
○
「そっか。アナタはピヨモンって言うのね」
「はい。当面は、そうお呼びいただければ」
鳥型の異形――ピヨモンと名乗る存在は、こくりと頷く。明確に知性を感じさせるその仕草に、少々たじろぐ。
だがそれでも、彼女がパニックを起こさなかったのには、理由があった。
「それにしても驚きました。まさか我々デジモンを、ひいてはデジタルワールドをご存知だとは」
そう。彼女は聞いたことがあったのだ。この異形の存在、『デジモン』と呼ばれる生き物と、異世界たる『デジタルワールド』のことを。
「ええ、華麟姉さんから。ずっと子供の頃に聞いた話だったから、病気の私の為に作ってくれた物語か何かだと思ってたけれど。まぁ流石に、魂だけこの世界に来てるみたいなモノで体は現実でそのままなんだとか、驚いてはいるかしら」
かつて姉から聞いたのは、デジタルワールドとデジモン、そしてそれを巡る大冒険の物語。とても信じられないような、ファンタジーだと思っていたのだ。
それが今、自分の目の前にあるなんて。
「やはり……信じられませんか」
「いいえ、信じるわ」
不安げなピヨモンに対し、キッパリと首を振る。
「私ね、本当なら日光に弱いの。外に長く出歩けないし、何より普通ならこんな日差しの下じゃ、眩しくて仕方ない筈。なのにそうならないもの。だからきっと、普通の状況じゃないんだろうなってね」
そう言って自虐的に笑う。皮肉にも自らを悩ませていた病が、この状況を信じる理由になったのだから、皮肉以外のなにものでもなかった。
「でも……ふふ、姉さんから聞いてた通りね。デジモンには、神様みたいのもいれば、ぬいぐるみみたいに可愛い子もいるって」
「そう言ってもらえて、悪い気はしませんが……残念ながら、私の本来の姿は可愛らしさとは程遠いものですよ?」
「あら、そうなの?」
「はい。そしてそれが、貴女がこの世界に招かれた理由にも繋がっているのです」
スッと、可愛らしいピヨモンの眼が細められる。それまでの可愛らしい印象が一転し、鋭く、老獪な雰囲気すら感じられるものに変わった。
きっとこの子は尋常な存在ではないのだと、そう思い知らされる。
「私は《天樹》――イグドラシルよりこの世界を司る特別なデジコアを授かり、守護を任じられていました。ですがそれを、『闇』としか形容できない存在に奪われたのです」
「それで、こんなにも傷だらけに?」
「……はい。不意を突かれ、力及ばずこの姿に。ですが私はそのデジコア……『星宿核』を取り戻さなければなりません。何があろうと、必ず」
ピヨモンは目を瞑ると、翼のような手を、ぎゅっと握りしめる。傷だらけな姿がなお痛ましく感じられるように、強く、震えながら。
「星宿核……」
「はい。この世界の摂理を司る二十八の星宿核。そのうち、私に授けられた七つ――即ち井宿、鬼宿、柳宿、星宿、張宿、翼宿、軫宿を」
それこそまるでファンタジー小説のような壮大な話に、彼女は二の句が告げない。だがそれでもはっきりとわかったことがある。ピヨモンが真剣であること、そして何故だかそれを、無条件に信じている自分がいるということだ。
「星宿核を『闇』に奪われ、世界は、《天樹》は危機に瀕している。だからこそ、貴女が招かれたのです」
「私が? でも私は何もできなくて、病気で……」
「いいえ、いいえ。そんなことは関係ありません。貴女はイグドラシルによって招かれた。デジモンの――私の、パートナーとして」
その言葉に、どくんと心臓が鳴り、何かが体を駆け巡る。
事情は、正直なところさっぱりわからない。けれどピヨモンの発した『パートナー』という言葉に、体が熱くなる。
そう、確かにピヨモンはパートナーなのだ。
誰に言われるまでもなく……そして、誰に否定されようとも。
「お願いです。かつての貴女の姉のように、この世界を正すため、力を貸してはくれませんか」
差し出された、手のような翼。
異世界だとか、異形の生き物だとか。一体自分は何に巻き込まれているのだろう。そんな想いは確かにあった。
何故自分なのかとか、元の世界に帰る方法はあるのかとか。聞くべきことも沢山あった。
だがそれでも、彼女は。
「ええ分かったわ、ピヨモン――いいえ、私のパートナー。共に行きましょう?」
そうして、ピヨモンが差し出した傷だらけの翼を、優しく握り込んだ。
○
そうして私とピヨモンは、『世界』を救う旅に出た。
現実では病弱で、近頃は満足に外も歩けないような身体で、家族に迷惑をかけ続けていた。
そんな私が、子供の頃に憧れた姉の『物語』と同じような道を歩めるという。
そんな状況に、どうしようもないくらいに胸が躍った。
たとえこれが夢だろうと、虚構だろうとかまわない。
今はただ、自由でいたかった。
それだけだった。
○
「後ろ来てる! 避けてバードラモン!」
「はい!」
背に乗った彼女の言葉に従い、ピヨモンが進化した姿――バードラモンは急速に旋回し、後ろから飛んでくる生体ミサイルをギリギリまで引き付けて躱す。もちろん、背に乗せた彼女を落とさないように気を使いながら。
旋回した先、バードラモンと彼女へ向かってくるのは紫黒の機械竜、ギガドラモン。金属をこすり合わせたような不快な咆哮を上げながら、彼女達のことを追い続ける。
彼女たちは今まさに、空中でギガドラモンとドッグファイトを繰り広げていた。
「! バードラモン、今!」
「はい、掴まっていて下さい――『メテオウィング』!」
高度を一気に上げたバードラモンが翼を大きく広げ、炎を纏った羽根をギガドラモンめがけて流星の如く降らせる。それを読んでいたのだろう、相手も生体ミサイルで相殺しつつ攻撃しようと両腕を構えようとした。
だが、地上から放たれた一条の氷の矢がギガドラモンへと突き刺さり、それを許さない。暗黒竜は苦鳴を上げ、矢を放った地上の存在へと怒りの篭った眼差しを向ける。
しかしそれこそが狙いであり、致命的な隙だった。炎の羽根が、相殺も防御もないままギガドラモンへと降り注ぐ。碌な防御もないままに受けた攻撃に、機械翼が砕けて折れる。それで飛行能力を失ったのか、ギガドラモンへ墜落していった。
しかしそれでも、暗黒竜の眼は死んでいない。墜落する最中、ミサイルを放とうと腕を向ける。
「させません! 『ファイヤーフラップ』!」
墜ちるギガドラモンを猛追し、炎を纏った翼で更に叩き落す。そして叩き墜ちた先に待っていたのは。
「『ムーンナイトキック』!」
すらりとした兎の獣人――レキスモンが飛び上がって放つ、強烈な蹴撃だった。墜落してくるギガドラモンの頭を正確に蹴りぬくその一撃で、今度こそ暗黒竜は意識を刈り取られる。そしてそのまま、地面へ轟音を立てて墜落していった。衝撃音は凄まじく、暗黒竜の沈黙は明らかだった。
そのことを確認したレキスモンは、ゆったりと空を舞うバードラモンと彼女へと、軽く手を振る。バードラモンも、それにこたえるようにレキスモンの下へと舞い降り、その背から彼女のことを降ろす。
「よいしょ、と。レキスモン、さすがの蹴りね」
「何、キミとバードラモンの一撃があってこそさ。でも……フフ。お褒めに預かり恐悦至極、ってね」
そう言って、芝居がかった仕草で一礼をしてみせるレキスモン。その様子は、かつて見た有名な歌劇団のようだと、彼女は感心してしまう。
「本当にカッコいいわね。私も格闘術、教えてもらおうかしら。元の世界じゃできなかったし」
「キミがお望みとあればいつなりと。但し、ボクの指導は厳しいよ?」
「あら、望むところよ――と、そういえばシュウはどこ?」
ふと思い出したように、彼女は周囲を見渡す。バードラモンに彼女がいるように、レキスモンにもパートナーがいるのだが、その姿が見えないことに今更ながら気づく。
「ああ、シュウジなら、」
「ここです、ここ!」
声がするほうに顔を向けてみれば、そこにいたのは線の細く優しげな、眼鏡をかけた少年。墜落し気絶したギガドラモンのすぐそばで、彼が招くように手を振っている。
彼は相山修慈。彼女と同じくデジタルワールドへと迷い込んだ少年だった。星宿核を探す旅の最中に出会って以来旅路を共にし、そして共に戦ってくれていた。
「シュウ、何か見つけたの?」
「何か、じゃないですよもう……元々コレの為に戦ってたんじゃなかったんですか?」
少々呆れ顔の彼が指さすモノは、メガドラモンの背、折れた翼の根元あたりに埋め込まれていた。まるで焔の如く紅い輝きを宿す、宝玉のようでいて生物のように脈打つ、不思議な何か。
「……忘れてないわよ?」
「いや忘れてたでしょ絶対……」
「ま、細かいことはいいじゃない。バードラモン!」
いや細かくないでしょ……などと言い募る修慈の頭を軽く引っ叩きつつ、彼女はパートナーの名を呼ぶ。バードラモンはそれに応え、彼女の方へと歩み寄っていった。
「バードラモン。これでいいのよね?」
「はい。これぞ2つめの星宿核……鬼宿に間違いありません」
「ギガドラモンにこうして埋めたのが、『闇』という存在なんですか?」
「ええ。星宿核を奪ったのは、恐らく世界の調和を崩し、イグドラシルを打倒するため……星宿核自体はあの者には扱えない。それゆえその力を配下に利用した、といった所でしょうか」
そういうと同時、バードラモンは大きく翼を広げる。すると、ギガドラモンの背中に埋め込まれていた筈の宝玉――鬼宿はひとりでにギガドラモンの体から抜け落ち、ふわりと宙に浮かんだと思うと。
「……へぇ」
「え、消えた?」
レキスモンと修慈が驚きの声を漏らしたように、鬼宿の星宿核は、赤い光の粒子と化したかと思うと、バードラモンの体に宿って消えた。
「ん、そっか。二人とも見るのは初めてだったわね」
「ええ。最初の1つも、どこに持ってるのかとは思ってましたけど……」
「世界を司る星宿核、か。いやはや、なんとも不可思議なものだね」
「ふふ、確かに。私も初めて見た時は驚いたもの。ましてやいきなりバードラモンに進化するんだもの、ねぇ?」
揶揄うように言う彼女に、バードラモンは苦笑を漏らす。その瞳は、以前より僅かに緋いようにも見えた。
「その節は驚かせて申し訳ありませんでした。ですが……これでようやく、2つ。貴方達のおかげです」
「礼には及ばないさ。世界を救うなんてとても胸が躍ることだからね。それに何より、ボクもこうして、パートナーと出会えたのだから。ねぇ、シュウジ?」
「うん。レキスモンと出会えて、僕も変われるんだって思えたから……だから、手伝わせてください。レキスモンはともかく、僕に出来ることなんて、たかが知れているけれど」
最初にあったときは、ただ家族の下に帰りたいと、泣き叫ぶだけだった修慈。それがレキスモンと出会い、変わっていった。そして今や、震えながらも手を握りしめながらも、元の世界へと帰るために彼女とバードラモンに協力してくれている。
それがなんだか、彼女には嬉しく思えてならなかった。
「……姉さん達は、こんな気分だったのかしらね」
「え?」
「いえ、なんでもないわ。さ、バードラモン、次の星宿核の場所はわかるかしら」
「ええ。井宿と鬼宿のお陰で、引かれあう力が強まっているようです」
そうしてバードラモンとレキスモン、そして修慈がどうするべきか話を始めた。
そんな様子を少し離れ、彼女は眺める。
元の世界に、家族の下に帰りたい。その思いは確かにある。だが。
「……こんな時間がいつまでも続けばいいのに、ね」
そう、ぽつりと呟いた。
○
それは、何物にも代え難い時間だった。
大切な相棒と、掛け替えのない仲間と共に、未知の世界を旅する。
まるで映画や小説の世界に入りこんだそんな体験は、私を夢中にさせた。
けれどここは、異世界だけれど確かに現実で。
私が目を反らしていた現実を、突き付けられることもあった。
……嫌というほど、徹底的に。
○
細く冷たい雨が、静かに激しく降り続ける夜だった。そしてそんな雨でも消せない炎があちこちで上がり、破壊の跡があちこちにある街の姿を照らし出す。
街は、まさしく混乱の坩堝だった。突然の混乱に泣き叫ぶ者がいた。争い合う者がいた。何が起こったかわからず立ち竦む者がいた。
そして血を流し、倒れ伏す者の姿も、大量に。幼年期が、成長期が、成熟期が完全体が。様々な姿形のデジモン達の亡骸が、そこかしこに転がっている。
彼女はそんなデジモン達の亡骸を前に、崩れ落ちたようにして座り込み動けずにいた。服は濡れ、くすんだ灰金髪も水を吸って顔や体に張り付いている。そんなことすらお構いなしに――いや、まるで気づいてすらいないかのように。
「あぁ、こちらでしたか。『選ばれし子供』の方!」
そんな彼女に、駆け寄る姿があった。紫色の鎧に真っ黒な翼を生やした鳥人、カラテンモン。彼もいたるところに傷は見られたが、それでもこの街の中ではマシな方だった。
「パートナーのバードラモン殿達が、あちらのほうでお待ちです。なんでもお探しのものが、」
「――やめて」
悄然とした様子の彼女からは信じられないほど鋭く、まるで撥ねつけるような言葉。
「は?」
「やめて。その名前で呼ばないで」
「で、ですが……」
「お願いだから……私にそんな資格なんて、ないから」
怒りと悲しみ、そして無力感。そんなものが綯交ぜになったような彼女の声色に何も言うことが出来ず、カラテンモンは静かに去っていった。
それと入れ替わりのようにオレンジ色の巨影が彼女に近づき、その頭上を自らの翼でさっと覆う。その時初めて、彼女は視線を上に……彼女のパートナーへと向けた。
「……バードラモン」
「このままでは、風邪を引いてしまいますよ」
「魂だけ……精神データだけでも、風邪ってひくのかしらね」
自虐的にそう言って、ふいと目を背ける彼女に、パートナーは返せる言葉が無かった。彼女がこの状況を、どれだけ後悔しているのか。それが痛い程に伝わってきたから。
「……それで、あった?」
「ええ。あのキメラモンにゲートの核として埋め込まれていました。5つ目の星宿核、張宿が」
炎に照らされるバードラモンの瞳は、以前よりも更に紅い。それで、言葉通り回収がうまく行ったのだと知れた。そのことをちらりと確認して、しかし彼女は唇を噛む。
「……何が『選ばれし子供』って話よね。こんなの勝ったなんて言えない。調子に乗ってただいたずらに、皆を殺してしまったようなものじゃない……!」
『選ばれし子供』――それは彼女たちのことを指す呼び名として広まっていた。
星宿核を求めて旅するうち、『闇』によるダークエリアからの侵攻に苦しむデジモン達を助けることも増えた。
そうした内に、いつしか呼ばれていたのだ。世界を救う『選ばれし子供』と。
デジモン達に求められ、彼女達自身もデジモン達を助けたくて。積極的に『闇』の軍勢と戦うことも増えた。そして初めて、『闇』の軍勢が通るゲートの1つを破壊しようと、多くのデジモンに協力を求めて討って出た。
だが、その結果が目の前の惨状だった。
溢れ出る激情に、雨ではない雫が彼女の頬を伝う。
目の前で失われる命を、彼女はどうすることもできなかった。彼女達を守ってくれたデジモンがいた。彼女の言葉を信じ、先陣を務めてくれたデジモンがいた。
そんなデジモン達が無残に殺されていくのを、己がパートナーに守られ、見ていることしかできなかった。そして思い知らされた。どこかこの旅を、『物語』のように見ていたことを。
『命』が掛かっていることなのだと、どこか実感が欠けていた。彼女は命の儚さと重さを、よく理解できている筈なのに……いや、だからこそ。
「ただ普通に動けることが楽しくて、アナタ達との旅が輝いていて、他のデジモン達に頼られるのが嬉しくて……ただそれだけの、私が……」
心に溜まったものを吐き出すように懺悔する彼女とそれを守るように翼を掲げるバードラモンへ、静かに歩み寄る影があった。その影は、隣にしゃがみ込むと、泥にまみれた彼女の手を優しく握る。
「仮令、そうだとしても。デジモン達の助けになりたかったのは、本当でしょう?」
「……シュウ」
そこにいたのは、彼女と同じくずぶ濡れになっている修慈だった。少し離れたところに、レキスモンの姿も見えた。
「僕は、一緒に旅をする中で見てきましたから。デジモン達が、ダークエリアの軍勢に傷つけられているのを見て、心から哀しみ憤っていた貴女を」
「それは……」
優しい修慈に、彼女は言葉を返せない。確かにあの時感じた悲しみや憤り、それは間違いなく本物だったから。言葉に詰まった彼女を横目に、修慈は言葉を続ける。
「そんな人が真摯に語り掛けたからこそ、皆協力してくれたんです。貴女の光に惹かれて。最初から『選ばれし子供』だったんじゃない。そんな貴女だから、『選ばれし子供』と呼ばれたんです」
「……でも私のせいで、大勢が死んだわ」
たとえ修慈が言ったことが事実だとしても、それだけは動かしがたい事実だ。実際、彼女に恨み言を吐いたデジモンだって、確かにいるのだから。
それは修慈も知っている。だが彼女の言葉に首肯したうえで、それでも言葉を続けた。
「確かに、この戦いで多くのデジモン達を喪いました。僕たちのせいっていうのも、きっと否定できません。だから――強くなりましょう」
え、と彼女は思わず顔を上げる。
その言葉。その力強さ。それは今までの修慈からは、考えられないようなものだったから。顔を向けた先、修慈は彼女と同じように涙を目の端に溜めながらも、しかし瞳には確かな光を宿していた。
「実際、僕たちが出来ることなんてたかが知れてます。デジモン達のように戦えるわけでもない。けど大切なパートナー達と一緒にいて、そのパートナーと、デジモン達の為に出来ることがあるなら……出来る限りのことを、したいんです」
「シュウ……」
「元の世界に帰りたい。生きていたい。けど……苦しんでるデジモン達を見て見ぬふりなんてできない。知ってしまったから、もう後には戻れない。でしょう?」
「……うん」
確かに、現実を見ていなかったのかもしれない。
けれどデジモン達を助けたいとそう思ったのは……それは、紛れもなく本当のことだった。たとえ『物語』でも、それに心を痛めたことは事実だ。その思いを背負うのには、自覚も覚悟も、足りてはいなかったけれど。
「だから、強くなりましょう。体はデジモン達に勝てなくても、心だけでも。デジモン達の想いを、背負って戦えるように」
そう言って、修慈は手を差し出す。よく見てみれば、彼の目じりにも涙がたまっているのが見て取れる。それでも修慈は、そうやって手を差し出していた。
そんな姿が嬉しくて……少し、眩しい。
「……シュウみたいな人を、強いって言うのね」
そう小さく呟いて、顔に張り付く濡れた髪を掻き上げるようにして払いのけると、修慈の手を取った。
「ええ……シュウのいう通り。私達のことを『選ばれし子供たち』と呼んでくれるデジモンがいるのなら。それを背負って、応えられるように……強く在りたい。それで、その……」
「?」
「きっと、もっと大変になっていくけれど……シュウも、一緒に居てくれる? バードラモンは勿論、貴方となら、きっとそうなれると思うから」
「――はい、勿論!」
まるで花が咲くような笑顔で彼がそう言った、その瞬間。
「これは……!?」
「ボクの中から、力が……!」
彼らを羽で守っていたバードラモン。そして遠くからそれを優しく見守っていたレキスモンが、声をあげる。彼らの姿が突然光り輝き、まるで溶けて崩れたかのように見えた。だが、それも一瞬のこと。すぐさま溶けた姿は再構成され、光の中から現れたのは。
「バードラモン、よね?」
バードラモンの時と同じく、彼らを翼で守っていたのは赤き偉丈夫の鳥人。
そして。
「レキスモン、いや、違う?」
兎の意匠は継ぎながらも、両手に武器を手にし、装甲を鎧い、レキスモンよりも武人然とした印象を漂わせる獣人。
「進化した、のよね。でも星宿核を手に入れた直後でもないのに、なんで」
「この『私』の名はガルダモン。デジモン達の『希望』たる貴女の輝きが、私に進化を」
「レキスモンも、なんだよね」
「ああ。でも、『ボク』の名はクレシェモン。震えながらも進もうとするシュウの『勇気』が、ボクを進化させてくれたのさ」
希望。勇気。その言い回しに困惑した様子を見せる二人に、ガルダモンが膝をついて優しく言う。
「我々はパートナー。貴方達の力であると同時に、貴方達に力を貰う存在でもあるのです。星宿核の力だけではない。貴方達がこの状況に負けず、前に進もうと決意してくれたことが、我々に力を齎してくれたのです」
「そう。キミ達が強い心で共に居てくれるだけで、ボク達の力になってくれるんだ。キミ達にできることがたかが知れてる、なんてことはないのさ」
ね? と呼びかけるクレシェモンに、ガルダモンはこくりと頷く。
「この事態は、偏に私の不徳の致すところ。本来ならば、貴方達はこの世界に来ることすらなかったかもしれないのです。でも……それでも叶うのなら、共に戦ってくれますか。私達の、パートナーとして」
その言葉に、彼女と修慈は一瞬だけ顔を見合わせて、そして己がパートナー達の方を振り向く。
その顔に悔恨の影は残れども、迷いはない。
「ええもちろん、ガルダモン」
「一緒に行こう、クレシェモン」
そう力強く答え、繋いだ手を力づよく握りなおす彼女らの頭上。
いつの間にか雨は止み、静かに月光が降り注いでいた。
○
そうして私達は、本当の意味で闘い始めた。
ダークエリアの侵攻から、デジモン達を守るため。
最初はただ、パートナーの手を取ったことで始まった旅。
星宿核を取り戻し、現実世界へ戻ることが旅の目的だった……あるいは、旅そのものが。
だけどそうしてデジタルワールドを知って、デジモン達を助けたい、守りたいと思った。
その闘いは、決して楽しいだけのものではなかった。
けどそれでも、色褪せない、輝いた時間だった。
大切なパートナーと、大切な人が、隣にいてくれたから。
○
「ようやく、ここまで来たんですね……」
朝日に照らされながら、目の前に広がる現実ならばあり得ない雄大な光景を眺めて、修慈が呟く。
ここはデジタルワールドの中心と呼ばれる場所。《天樹》イグドラシルの根本だった。まさしく天を衝かんばかりの高さ、そして現実では見たこともないくらいの太い幹。その圧倒的なスケール感は、《天樹》と言う異名が相応しいと、彼女は思う。
「ええ。ダークエリアの連中と闘って、行き着く先がここだなんて思いもしなかったわ」
「ここに、中心部へと繋がるゲートがあるんですね。デジタルワールドの管理者で、神のような存在……そこがダークエリアに繋がってるなんて」
「あのコも、それは知らなかったみたい。なんでもゲートに関わることは、三大天使の領分なんだそうよ?」
「だからオファニモンは、ここのことを知っていたんですね」
「そういうコト」
星宿核を用いて自らに施された枷の一部を解いた『闇』――ズィードミレニアモンは、デジタルワールドへの侵蝕速度を早めていた。最早ゲートからの物理的な侵攻だけでなく、各地が文字通り崩壊し、ダークエリアへと『堕として』いったのだ。
彼女達は様々なデジモン達の助力を得ながら、必死に抗った。星宿核を取り戻し、デジタルワールドの摂理を司る存在を復活させた。堕とされた三大天使の一角を打倒し、取り戻した。そしてズィードミレニアモンが砕いた枷から生まれたミレニアモンの大軍勢と、たった2体で闘った。
そんな闘いの果てに、たどり着いた。ズィードミレニアモンの本体が潜むというダークエリアの中心部、そこに繋がるというゲートの下へと。
修慈が、イグドラシルを仰ぎ見ながら、微かな緊張を滲ませて言う。
「……これで、終わるんでしょうか」
「ええ、きっと」
「そうしたら僕達は、元の世界に戻れるんですよね……皆と別れるのは、寂しいけど」
「あのコとオファニモンは、そう約束してくれた。だから、私は信じるわ」
「そうやって闘って、勝てて、現実世界に戻ったとして……」
修慈の語尾が、弱々しく消える。その『勇気』で、優しさはそのままに逞しく成長していった彼には今や珍しいその様子。だが彼女には、そんな彼の気持ちが手に取るようにわかった。
「今は考えることはやめましょう? でも、約束……いえ、誓うわ」
「誓う、ですか?」
「ええ。絶対に生きて戻って……そうしたら、私から会いに行くから」
「……っ。はい!」
そうして、どちらからともなく手を繋いだその時だった。頭上から、二人の目の前へどこか月を思わせる、優美な白い影が飛び降りて来た。その白い影は彼女達の様子を見て、おや、と面白そうに声を漏らす。
「これはボクとしたことが。大切な時間を邪魔してしまったかな?」
「ちょ、ディアナモン……!」
パートナーの揶揄うような視線に、彼は手を離そうとする。しかし彼女はそれを許さず、更に指を絡ませ合い、しっかりと握りこむ。まるで、見せつけるように。
「あらいいじゃない。今更でしょう? 恥ずかしがってるの?」
「勘弁して下さいよ……!」
「ふふ。最後の闘いの間際でも、貴女らしい。とても頼もしいことです」
その声は、彼らの頭上から降ってきた。先ほどまでは輝いていた太陽がふと陰る。彼らが頭上を見上げてみれば、そこにいたのは燃え盛る焔を思わせる巨鳥。これまで取り戻した星宿核を身に纏うように浮かべ、こちらへと降りて来た。
「スーツェーモン! お帰りなさい!」
「はい、只今戻りました」
デジタルワールドの摂理を司る四聖獣が一角、スーツェーモン。
それこそが彼女と共に在った闘いの中で取り戻した、そして何より二人で辿り着いた姿だった。修慈とディアナモンと、同じように。
「……ふふ」
そんな感慨と共にパートナーを見つめていた彼女だったが、ふと笑みが漏れる。
「おや、どうしたのですか?」
「ううん。最初にアナタと会った時のことを思い出して。私の本当の姿は可愛いものじゃない、って言ってたじゃない?」
「ああ……懐かしい。随分と前のことのようです」
「確かにピヨモンみたいな可愛い姿ではないけれど……でも私は、今のアナタが好きよ、スーツェーモン。デジタルワールドの守護神……カッコいいじゃない?」
軽くウィンクををしてそういうと、軽く頭を下げるようなしぐさを見せる。感情が現れにくい姿ではあったが、照れていることが彼女にははっきりと分かった。
そんなやり取りの後。さて、と仕切りなおすようにスーツェーモンが切り出した。
「上空から見た限り、敵影はなし。予定通り、カラテンモン達が他のゲートは抑えてくれています。行くなら今の内です」
その言葉に、全員が顔を見合わせて頷いた。事ここに至って、もう言葉はいらない。ここまで共に、歩んできたのだから。何をするべきかは、はっきりとわかっていた。
そして彼女と修慈は視線を合わせることなく、けれど一度だけ強く手を握りあってから、その手を解く。そしてそのまま、互いのパートナーへと触れた。
「それじゃあ行こうか、ディアナモン」
「最後の戦い……よろしく、スーツェーモン」
そしてその言葉と共に、二人の姿が光に包まれ――解ける。
彼女は輝く金色の、修慈は太陽を思わせる橙色の光の帯となり、互いのパートナーへと吸い込まれて、そして消えた。
『……どう? スーツェーモン?』
「ええ、我が内に貴女をしっかりと感じます」
『ディアナモンも、大丈夫だよね』
「ああ、勿論さ。しかし人間とデジモンの一時的な融合進化とは……三大天使は底が知れないねぇ」
それは、三大天使に授けられた力。強い心を持つ人間とパートナーを一体化させ力を増す、マトリックスエヴォリューションという名の秘法。この力を以ってズィードミレニアモンを封じてほしいと、託されたものだった。
問題がないことを確認した後、スーツェーモンが翼を広げて一つ啼くと、イグドラシルの根元を飲み込むようにして、漆黒のゲートが広がった。決戦の地へと続く、昏き門が。
そして二体は――二人と二体は、それぞれの覚悟を胸に、ゲートへと飛び込んでいった。
○
ズィードミレニアモンとの決戦は、困難を極めた。
圧倒的な巨大さ、見るだけで狂いそうになる瘴気。
現実世界では見たこともなかったようなその存在は、まさしく『闇』の体現だった。
恐怖を抱かなかったといったら嘘になる。
死を覚悟した局面だって何度もあった。
時間を操るなんていう強大な存在に勝てるのかと、何度も自問自答した。
でも、それでも闘った。デジモン達の為にもこの存在を放ってはおけないから。
そして何よりパートナーが、そして大切な人が、共に在ったから。
○
何もないはずの空間を、時空間ごと揺るがす咆哮が響く。
思わず耳を塞ぎたくなるような衝動を必死で堪え、スーツェーモンは飛び続ける。双頭の竜か獣を思わせる、闇が凝縮したような異形から、破壊の奔流がスーツェーモン目掛けて押し寄せてくる。触れれば即ち死を意味するその一撃。それをバレルロールで躱しつつ背後へと回る。
もはや攻撃は、最後の悪あがきに過ぎない。スーツェーモンと彼女が、幾度も星宿核の力を篭めて放った炎が楔となり、ズィードミレニアモンを縛り付けており、もはや動きもままならない状態なのだから。
だがそれにも拘わらず、楔の隙間から闇を吹き出し、彼女たちを滅しようと攻撃を仕掛ける。
『させません!』
「行け――『アロー・オブ・アルテミス』!」
だが、ディアナモン達がそれを許さない。背中から引き抜いた氷の矢を続けざまに放ち、闇の奔流を撃ち落とす。その攻撃に、敵意がディアナモン達の方へと向く。炎の楔越しに向けられる殺意に、しかしディアナモン達は動じない。
『ディアナモン!』
「ああ、スーツェーモン達に手出しはさせないさ! 『グッドナイト・ムーン』!」
謳うようなディナモンの宣言と同時に、三日月を象った足が、ズィードミレニアモンへと冷たい月光を放つ。本来ならば、敵を深い眠りに落とす技だ。当然、『闇』のような強力な存在が眠りに落ちるわけもない。せいぜい、攻撃の手が止まる程度だ。
だが最終局面たるこの状況で、それは致命的な隙となる。ズィードミレニアモンが眠気を厭うように不快な咆哮を上げる中、その背後でスーツェーモンが大きく翼を広げる。
『行けるわよね、スーツェーモン』
「ええ。これで二十八撃目……終わりです、『紅焔』!」
他の四聖獣たちの星宿核の力を借りた、封印の一撃。スーツェーモンが放つ太陽にも斉しい輝きの焔が、闇を灼き尽くし、封印の楔の中へと押し込んでいく。
その様子を、彼女たちは固唾を呑んで見守った。楔を砕こうと暴れ、咆哮をまき散らす。だが、新たにスーツェーモンが作り出した封印の楔は強固だった。再度砕くことは叶わず、暴れることすらままならないよう、楔に縛り付けられていった。
その様子を見ながら、しばらくは誰も言葉を発することができなかった。
誰かが何か言葉を発するよりも先に、二体の融合が解ける。再び光の帯が現れて、二人の人間の姿を編み上げていった。
「……終わった、んですよね?」
光の中から現れた修慈が、静寂のなかで確かめるようにぽつりと言う。信じられない。そんな思いを、言葉の端に滲ませながら。応えるディアナモンは、疲労ゆえか軽く膝をついていた。それでもその口調は、どこか力が抜けたように聞こえる。
「ああ……そのはずさ。スーツェーモン?」
「確かに、同胞の力と共に二十八の楔を打ち込みました。これで、これでようやく……」
感極まったような、スーツェーモンの声。その声を聴いて、ふと彼女はそこに出会った頃のピヨモンの姿を見た気がした。傷だらけになりながらも、取り戻さなくてはならないものがあると必死になっていた、あの頃の姿を。
それがなんだか、嬉しいような、懐かしいような。なんだか不思議な感慨に襲われて、自らのパートナーへと飛びつこうと走り出した、その刹那のことだった。
「……?」
その違和感に気付いたのは、彼女だけだった。ズィードミレニアモンをダークエリアへと縛り付ける焔の楔。それが機能しているのだろうことは、なぜだか彼女にも感じ取れた。実際今も、ズィードミレニアモンの巨体を封じ、闇を灼き続けている。だがそこから、何かが零れ落ちる音を聞いた気がしたのだ。
「あれ、は……」
澄んだ音を立てて封印から零れ落ちたのは、闇色のダークエリアよりもなお昏い、手のひら大の闇色の水晶。その水晶の中に蠢く何かを見た時、背筋に寒気が走るのを止められなかった。蠢いていたのは、まるでズィードミレニアモンの形を模したような、闇色の影だったのだから。
彼女が声を出す暇もなく、水晶が自立して音もなくふわりと浮き上がる。そしてそれは、彼女のことになど目もくれず、スーツェーモン目掛けて飛んでいく。
「ダメ!」
直感だった。この『ナニカ』がスーツェーモンに当たってしまえば、何か取り返しのつかないことになると、そう感じたのだ。考えるまでもなく体が動き、水晶の射線上に割って入る。
彼女の叫び声を聞いて全員が振りむいた時には、既に手遅れだった。『ナニカ』は割って入った彼女の胸へ、その勢いとは裏腹に音もなく吸い込まれる。
まるで糸の切れた人形のようにぱたりと彼女は倒れて、そして。
「―――――――――!!」
彼女の口から、声にならない絶叫が迸る。
「スーツェーモン!」
「封印は確かに……! ですが今のは一体……!」
何が起こったのかわからず混乱するパートナー達。だが修慈は恐慌に陥ることなく、素早く彼女の下へと駆け付けた。
だが。
「なんだ……これ」
絶叫し、もがき苦しむ彼女のことを必死に抑えようとしながらも、修慈の口から、困惑の声が漏れる。
いつも彼女が纏っている簡素なノースリーブから覗く白皙の胸元に、闇色の水晶が巣喰っていた。鼓動のように脈打ちながら、
「シュウジ、それには触らないでください」
遅れて駆け寄ってきたスーツェーモンが、鋭く警告の声を発する。焔色の二対の瞳が、その闇色の水晶を凝視していた。
「スーツェーモン、これは何なんですか?」
「それに彼女の苦しみ方、尋常じゃないよ。まさかコレ……」
「ええ。恐らくは『闇』のコア……その一部ではないかと。封印が完成する間際、分離し逃がしていたのでしょう。そして彼女は、それに侵されている」
「……明らかに根を張ってるいるね。これは……かなりマズそうだけれど」
「彼女の体を――魂そのものともいえる精神データを侵食しているのです。人間があの闇に耐えられるわけもない。このままでは精神が崩壊するか、最悪、新しい『闇』となってしまう可能性も……」
厳しい色を帯びた声に、修慈がそんな、と悲鳴を上げる。
「やっと終わったと思ったのに……なんで……なんで、そんなことに!」
「……私の責任です。私の油断が、彼女をこんな目に……」
察して余りあるほどの悲痛な思いが漏れるスーツェーモンの声に、修慈も二の句が継げなかった。彼と同じくらい……あるいはそれ以上に、今の状況を悔いていることはすぐにわかった。
そんなスーツェーモンの体を、ディアナモンが軽く叩く。
「後悔は後でも遅くない。今は彼女をどうすれば助けられるのかが重要さ、そうだろう?」
「……はい。そうですね」
「それで、手は?」
「侵食してしまった以上、破壊は危険です。彼女の精神が壊れてしまう危険性がある」
「なら……どうするんですか」
修慈の問いに、僅かに悩むような様子を見せた後。スーツェーモンは重々しく口を開く。
「……私が抑え込みます。三大天使の秘法を利用して」
「三大天使の……どういうことだい?」
マトリックスエヴォリューションは、一時的な人間とデジモンの融合のことだ。それを利用するとはどういうことなのか。理解が及ばず、修慈とディアナモンは困惑せざるを得なかった。
「普通は、彼女が私に融合します。それを逆流させ……私が、彼女に融合します」
「そうすれば、助かるんですか」
「私の星宿核の力で、『闇』の欠片を封じられるでしょう。ですが……」
言い淀むスーツェーモンを、修慈は無言で先を促す。いずれにせよ猶予はないのは、火を見るより明らかだった。スーツェーモンも、あきらめたように口を開いた。
「ですが……恐らく彼女の精神データは、人間ともデジモンともつかないものに変質してしまうでしょう。現実世界への帰還は……」
それがどれだけ重大なことかは言うまでもない。現実世界へ戻ること。それが彼らの目的の一つでもあったのだから。
だが修慈は、迷わなかった。
「それでも、生きていられるんですよね」
「私の命に懸けて、必ずや」
「それなら――やってください。僕は何より、生きていて欲しいですから」
「わかりました。では、始めます」
そう言ってスーツェーモンは嘴を彼女の額へと触れさせる。首や尾に纏った星宿核が、紅い光の粒子と化したかと思うと、彼女の体に吸い込まれていく。そして次第に、スーツェーモンの巨体も紅い光の帯へと分解されていく。
その時、スーツェーモン達のことを固唾を呑んで見守っていたディアナモンが、はたと顔を上げる。
「待つんだスーツェーモン。彼女の侵食をこれから先も封じるというのなら、まさかキミは――」
その問いに、スーツェーモンは微かに笑ったように、修慈達には見えた。
「一度は使命を果たせず、失ったも同然だった命。ですが《天樹》の導きで、彼女と会って、旅をして……これ以上ない幸せをもらいました。なれば今度は、私が返す番。彼女に要らぬ重荷を背負わせてしまうかもしれませんが……それでも、生きていて欲しいのです」
スーツェーモンの言葉に、修慈達は何も返せなかった。パートナーとの絆がどれだけ深いか、それはよくわかっていたから。
そうしている間にも、スーツェーモンの体はどんどんと紅い光の帯へと分解されてゆき。
「貴女との旅路は、私の永き生の中でも輝きに満ちたものでした。ありがとう、愛する我がパートナー、――…」
彼女の名を、愛おしそうに呟いて。光の帯は彼女の体へと吸い込まれていった。
そして一瞬の静寂の後。
彼女の体から、焔が噴き上がった。
●
「ん……少し寝すぎたかしら」
朝日が昇りきったころ、廃墟で眠っていた少女が目を覚ます。彼女は立ち上がると一つ伸びをして、長い灰金髪を軽く搔き上げた。
整った顔立ちに、勝気な印象を漂わせる切れ長な眼、そしてすらりとした立ち姿は、衆目があったなら人目を惹くことは間違いないだろう。だがその瞳だけは、異様だった。普通ならばあり得ないほどの紅に染まっているのだ――まるで、焔のような。
「ふふ、あの頃のことなんて……また懐かしい夢を見たものね」
そう呟いて、灰金髪の下、耳につけたイヤリングに触れる。そこには両耳とも同じデザインで、ルビーとは似て非なる赤い宝玉が1つずつあしらわれている。そして同じ宝玉が両手のブレスレット、両足のアンクレット、ネックレスにも1つずつ――計、7つ。
そのそれぞれを愛おしそうに、大事そうに、そっと撫でる。
「それもこれも、あの子たちの話を聞いたからかしら」
今、デジタルワールドには何らかの危機が迫っていた。かつて封じた筈の『闇』か、はたまた別の何かが、各地のデジモン達を暴走させているというのだ。だがそれを助けながら、各地を旅する一団がいるという。人間とパートナー達が共に歩む、『選ばれし子供たち』が。
そして近い内に、彼女の下を彼らが訪れるだろうと、ある者から聞いていたのだ。
「さて、今代の『選ばれし子供たち』は、どんな子なのかしらね……と、噂をすれば、かしら」
人を超えた聴覚を有す彼女は、こちらへと歩んでくる足音と会話の声をとらえていた。声と足音は4種類。デジモンとパートナーが一緒であることを考えると、恐らくは2組のパートナーなのだろうと察しがついた。
「……今代はもっと数が多いと聞いていたのだけれど」
まぁそれも聞けばわかるかしら、などと独り言ちて、廃墟の瓦礫に座って待つこと数分。
――そして彼女は、今再び運命と巡り合う。
「ここ……か?」
「話によると、そうみたいだけど。何、煌麒ってば怖いの?」
「馬鹿な事言ってるなよ、紗綾」
「冗談よ、冗談。それにしても本当にこんなところに、四聖獣がいるのかしら」
そんな会話をしながら、警戒するように教会の廃墟に入ってきたのは、背の高い少年と少女の2人組だった。
少年の方は眼鏡をかけ、周囲の者を寄せ付けないような鋭い雰囲気を纏っている。理知的に見えるがそれだけではなく、足運びや体格から、何か鍛えているのだろうことは見て取れた。
少女の方は、しなやかな細身に凛とした立ち姿が特徴的だった。背も高いが、それ以上に目を惹くのは腰にも届くかという長い髪だろう。それを一つに纏め、デニムのロングスカートと共に揺らしている。
一体、自分のような存在を見たら彼らはどう思うだろうか。そんな思いにほくそ笑みながら、廃墟の影から姿を現す。
「ようこそ、『選ばれし子供たち』のお二人さん。お望みの四聖獣なら……――」
少々、かつての愛する人のパートナーのように芝居がかった仕草で二人の前に姿を現して、その顔を改めて間近で見て。
思わず、彼女は言葉を失った。
突然のことに、少年少女は驚いたような様子を見せる一方、少年の方は素早く少女のことをかばうように前に出ていた。物音で何事かをパートナー達が察したのだろう、外から二体のデジモンが駆け寄ってくるのが見える。雄々しき体躯の古代獣と、黄金鳥を伴った戦士が。
だが、彼女にとって、今はそれすらもどうでもよいことだった。驚きのあまり声が震える。
「姉さん……それに義兄さん? なんで、なんでこんなところに……?」
もう会えないと思っていた、最愛の家族と、その夫。その2人が、在りし日の姿のままで、目の前に現れたかと思ったのだから。
そんな彼女の言葉に、少年少女、そしてデジモン達は明らかな困惑を浮かべている。
「何を言ってる……?」
「それに貴女は誰? 貴女も、ここに招かれた人間なの?」
その言葉に、彼女ははっとさせられた。そう、ここにいるのが彼女の知る家族であるはずがないのだ。ましてや在りし日のままの姿でなど。もうあれから、随分と年月が経ったのだから。
自分の勘違いを悟り、少しだけ寂しさを感じたものの、それでも興味は尽きなかった。たとえ別人なのだとしてもこれほどまでに似ているのだから。
「ごめんなさい、少し混乱しただけよ。貴方達、名前は?」
彼女の問いに、警戒心を滲ませながらも、2人は応える。
「……俺は海山煌麒。パートナーは、このサーベルレオモンだ」
「私は高品紗綾。パートナーは、こっちのヴァルキリモンよ」
鋭い少年と雄々しき古代獣デジモン、そして凛とした少女に精強なる戦士型デジモン。不思議と絵になるパートナー達だと、自分達の時のことを思い出して少しだけ懐かしい思いにかられた。
そしてなにより名乗ったその名前に――特に少年の名前に、やはり、という思いがした。想像通りであれば、二人が見覚えのある姿をしているのも、わからなくはない。それにしても彼女としては、驚きではあったが。
答えを聞きたいような、聞きたくないような。そんな思いを胸に、再び彼らの問いを投げかける。
「ふぅん、コウキにサヤね……ところでお二人とも、『美咲華麟』という名前に、聞き覚えはないかしら?」
その言葉に、少年と少女の顔色が変わる。驚きと警戒心と、そんなものが綯交ぜになった表情に。
僅かな困惑と驚きのせいだろう沈黙の後、少年の方が応える。
「アンタが何故その名前を知っているのか知らないが。美咲華麟は……海山華麟は、俺の母だ」
「そして私の、母方の叔母よ……それがどうしたの?」
その答えに、あぁ、と嘆息せずにはいられなかったのか。懐かしさ、後悔、喜び。色んなものが、一気に胸へと去来した。思わず焔色の瞳から、涙が流れる。
「そう、そう……貴方が華麟姉さんと羅雪義兄さんの息子なのね。そして貴女は、紅葉姉さんの……本当に、つくづく因果なものね、『美咲』の血は」
その言葉に、彼らはパートナー共々再び顔を見合わせる。意味が分からない、と思っているのは、言葉にしなくてもあきらかだった。だがそれでも少年は、一歩前に出る。
「それで……さっきから意味の分からないことばかり言ってるが、アンタは一体何者なんだ。俺たちは四聖獣のスーツェーモンがここにいると聞いて来たんだが」
強い疑念と敵愾心を滲ませる彼の声に少しだけ笑みを浮かべ、涙を拭う。
そう、血に纏わる話は後でも出来る。今は求められるのならば、『四聖獣』の役目を果たさねばならない。
そう決めて頷くと、首元のネックレス……正確にはそこにある宝玉に触れて、呟く。
「封印――《第二開放》」
その言葉と同時、彼女の背から炎が噴き出す。太陽にも斉しいと称される炎は、しかし他の物を灼くことなく、ある形を取ってみせた――即ち、かつての彼女のパートナーと同じ、大小四対の翼へと。
驚きのあまり言葉すらなく、彼女のことをただただ見やる『選ばれし子供たち』に印象通りの勝気な、傲岸不遜にすら見える浮かべて、力強く宣言する。
「私の名前は美咲神無。かつて『選ばれし子供』と呼ばれて、『四聖獣』の力を宿した者で――貴方達の叔母にあたる者よ」
ばさりと、翼を一つ羽搏かせ。
彼女は自らの運命と、対峙した。
●
これは、かつてデジタルワールドを駆け抜けた少女の物語。
懐かしくて、大切で、輝かしくて、そして。
もう二度と取り戻すことのできない、過去の物語。
――そして彼女達と共に、世代を超えて巡る、因果の物語。
【後書き】
七つの星の名前にニヤリとした人は僕と握手。
湯浅桐華と申します。いや、四神相応と二十八宿はいいモチーフですよね。
今回は今まで投稿したものとは全く異なる、ファンタジー風の物語です。
この物語の中では、あえて説明していないことがたくさんあります。
時代はいつなのかとか、彼女の旅の最中にどんなことがあったのかとか、なんで呼ばれたのか、とか。
ですがこれは、あくまで『彼女』の駆け抜けた旅路を、夢という形でダイジェスト方式で追う形になっています。
故に細かい説明は、あえて省いているところもあります。
『彼女』が旅したデジタルワールドには、こんなことがあったのかな……あれはこういうことなのかな……と想像を膨らませていただければ幸いです。
更にもう一つ言えば、これは作者の私の心残りをぶつけた物語でもあります。
故にこんなに長くなってしまいました。
本当は1万字程度に収めるつもりでしたが倍になってますね。アホかな。
ですが先述の通り、私自身の心残りを描くためのものでもあったため、無駄こそ省きましたが、無理に削ることはしませんでした。
半ば自己満足で大変恐縮ですが、お付き合いいただけたのなら幸いです。
あ、ちなみに一つ申しますと。
選ばれし『子供』とは言ってますが、設定上『彼女』は19歳だったりします。
……まぁギリギリ子供ですね。うん。
連載でやれ、という声が聞こえてきそうな気がしなくもないですが、それではこれにて。
湯浅桐華でした。
こいつの爪は赤くて伸びねえのかい?
やってくれた喃!!(挨拶)
ちょっと感想というか感情のままに言葉を投げかけましたが、せっかくなのでこちらでも、狐火です。
忘れもしませぬ、あれは拙僧がプレジャムにちょくちょくお邪魔していた頃……
Salus本編でちょくちょく存在が仄めかされた過去の選ばれし子供、そして現実世界でもデジタルワールドの存在を知る大人たちが、これはもしや親世代が過去に選ばれし子供として活躍していたのでは? そんなこんな考えながらチャットで語り合っていたあの時。
渾身のドヤ顔で「計画通り」した湯浅さんの顔は十何年経とうと忘れはしませぬ。
そういうことか、まさかそういうことだったのか。
そりゃあ感想投げねばなるまいよ! ある意味この作品に仕掛けられた特大の時限爆弾が通じる側の数少ない人間だものね私! やられました!
当時のプレジャム各作者代表最強チートキャラ列伝の湯浅さん枠だった神無さんの真実が令和のこの世に明らかになるとは、あの鮮烈な紅はそういうことだったのか。スーツェーモンと一つになって紅に染まった瞳とどこかで見た名前が出た時にはもうね、言葉にならないとはこういうことか。
だってあの苛烈でバトル強者な姿しか知らんかったわけですからね、まあ人間色々経験すれば色々変わるのでしょうが。
そんな色々をダイジェストとはいえ眺めることが出来たのもまた良いものでした。他の方も仰られてましたが四聖獣を四聖獣の一員としながらここまで出番を一体に絞るというのも中々新鮮な読み心地、そこはダイジェストの妙でしょうか。
特に中盤の、目的の物を得たが代わりに多くを喪ったシーン、燃える街、怒号と悲鳴、雨と涙、いかにも湯浅さん節を感じるシーンでしたが戦いが終わってあの状況での進化というのは連載だと盛り上がりとか考えてしまって中々やり辛いだろうなと、冷静になって読み返すとまた違う発見があったりしたのです。
私もやはり冷静になり切れず長くなってしまいましたがここらで〆とさせて頂きます。
まさか奴らか? 奴らが帰ってきたのか!?
そんなわけで夏P(ナッピー)です。いや待ったぞというか途中で「……もしや?」と思ったがやっぱり予想通りだったので大興奮でしたぞ!
というわけで俺がすげー読みたかったSalusの世界が帰ってきた上に二人の俺の嫁がどっちも出てきてるじゃねーかというリビドーは元より、はぇー当時正体不明で終わった“彼女”ってそういうことだったんですね……三大天使が絡んでるのは明言されていた気がしますが、まさか四聖獣絡みでもあったとは。シュウジ君も名前と姿だけチラッと出てきただけだったと記憶していますが遂に出番が。湯浅さんはオファニモンがお気に入りデジモンと仰ってたような気がしますがキチンと三大天使が大した奴だと明言されていたのは嬉しい。そして“彼女”の言う通り、ピヨモンは可愛くない姿と言いますが俺もスーツェーモンはヒロインのパートナーとして完璧なチョイスだったと思うぞ! ていうか、アンタのイメージカラーの赤・朱・紅ってスーツェーモンのそれだったのかよ!? かつて二次(三次?)創作で何度か書かせて頂いていた身としてはそれが一番衝撃かつ明かされてとても嬉しかったです。
というわけで、この時点で読み手としては大興奮過ぎて彼らの旅の終わりはある意味で悲しいものだったのかもしれませんが、画面の前のこっちが盛り上がり過ぎて呼吸困難に陥っておりました。今明かされる真実ウウウウウウウウ! 元・病人なのにそんなえっちぃのはいいのか神無サン。シュウジ君は最後までイイ奴でしたがその後どうなったんでしょうか……そして現実世界での神無サンの扱いも……あ、そういえばSalusのデジタルワールドに来る人間って確か……。
と思ったらオメーらあのイケメンと美女!
まさかの奴ら登場で興奮Ver2.0。しかもしっかり究極進化まで果たしてる! 湯浅さんならではのレオモン族皆勤も果たしつつ、美咲の血ってアンタ短編で興奮する要素突っ込まれ過ぎで最早パニック。待ってた! 俺はこれを15年待ってたんだ! 神無サン煌旗達と会わず仕舞いだったもんな……こんな感じで蒼崎青子みたく主人公組と絡む形だったとは! ……誰か足りなくねーか? グレイモン連れたとても可愛い女の子がもう一人いたような? ……死んだ? ぬあああああああ!!
うおー、これはメチャクチャ連載で読みたかったですが仕方ない! 今この時にこうして出して頂けただけで喜ぼうと思います。というか既に俺は興奮冷めやらぬ感じで今日はSalusを夢に見そうだ。
というわけで、長くなりましたが今回はこの辺で感想とさせて頂きます。
連載とまでは言いませんが、是非この世界観と神無サンで何かしらの短編とか読ませてもらったら嬉しいです!