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史香
2021年10月17日

明星の精神科医 読み切り(フィクション)

カテゴリー: デジモン創作サロン

「以前から私の陰口がすれ違いざまに聞こえてきたり、容姿について笑っている気がしていました。」

「大学ですれ違う女の子にキモイと言われたりとか…。」


「ほう?」

男はカルテを書く。


「道ですれ違う人に胸がでかいとかいい体だと言われたりとか、皆が私の事を注視しているように感じます。」


「成程な。」

パソコンにカルテを打ち込んでメガネを外す。


はっきりと目の端に映るものが男には見える。


「暁先生…、私は普通に生活したいんです!」


「薬の量を増やしましょう、睡眠薬も付随させます、よく寝て下さい。」


女のすぐそばにいるのだ。

キシキシと笑っている緑色の棍棒を持った鬼が。


その医者の目にははっきりと見えていた。


緑色の小鬼で棍棒を持ち、黄色の髪をモヒカン状に生やして下卑た笑みを浮かべている。

暁と目が合ったのと同時に女もその部屋から退出した。


暁はメガネを拭いて再びかけなおしたのち、コーヒーを入れた。


…この手の病気には必ずあのデジモンが付きまとう。

皮肉なことにあれは彼らのパートナーデジモンだ。

それに気が付かなければ見えてもどうしてやることも出来ない。

デジモンは直接人間を殺せぬように人間も奴らを殺せぬのだ。


そしてかくなる私も。

暁はメガネを外す。


端に先ほどと同じ緑色の小鬼が映る。


キヒヒ…!!


「シャーマモン。」

暁はドスの利いた声で目の端に見えているシャーマモンににらみを利かせた。


わかってますって、ひらにー!!

シャーマモンは引っ込んで姿を消してしまった。


これはデジモンのテイマーになる素質のある存在の洗礼だ。


この鬼と女の傍についていた鬼は通称シャーマモン。

デジタルモンスターである。


100人に一人、統合失調症の患者には必ずシャーマモンのような下級のデジモンが付く。

統合失調症の患者に必ずと言っていいほど纏わる下級のデジモンだ。


パートナーデジモンとパートナーの人間は常に一心同体。

シャーマモンのようなモンスターは基本的に下級のモンスター。

侮る存在は徹底的に侮り自身のパートナーであったとしても徹底的に貶める。

下級のデジモンは性根があまり良くない。


先日はどっかの大馬鹿がオメガモンをパートナーにしたのを見かけたがバカ騒ぎもほどほどにしろと伝えたい、全く。

アルコールで反吐をつかぬまでも余計な厄介事を抱え込んで物騒な目に逢ったりしているのを見ているがアイツは本当にどうしようもない。


夜、バタバタと廊下から誰かがかけてくる音がする。


扉が開いた。

「暁先生!!」


「何だ、騒々しい。」


「緊急の患者です!!」


男が運ばれてきた。


男は拘束され錯乱していた。


「放せ―!!」

「俺は病気じゃねぇ!!」

「俺は国単位で集団でストーカーされてんだ!!」


暁「※セルシンを持ってこい。」

※鎮静剤のこと。


暁は助手から渡されたセルシンを男に注射した。


拘束された最初は暴れていたが鎮静剤で落ち着いてきたようだ。


暁「とりあえず話を聞く。」


鎮静剤で落ち着いた男は暁を見た。


男「お前、国の回し者だろ?」

「言う事を聞かない俺を寄ってたかって抹殺しようとして、お前もどうせグルなんだろ?」


暁はメガネの隙間から男を見た。

男の周りにシャーマモンが5体。


この手の存在はプライドが高く、自意識が過剰で飲んでいる薬を勝手にやめてしまう頑迷な人間が多い。

所詮は精神疾患だ。

精神の病と勘違いしているが実はれっきとした脳のシナプスに関わる肉体の病だ。

薬が無ければ症状が逆戻りしてしまう事が分かっていない。

こいつもデジモンテイムだ。


「俺は病気じゃねぇんだ!!」

「監視カメラが家に仕掛けられてんだ!!」

男は言う。


後ろでは家族が心配そうに見ている。


暁は男を待合室に下げさせ、家族を呼んだ。


暁「いいですか、あの方の病名の告知をします。」

「おそらく、統合失調症です、すぐに入院させてください。」


テイマーの在り方は実に様々だが大抵は自分がテイマーだと認識できていない。


過去には見えぬシャーマモンにそそのかされて、眉毛を全剃りして赤い服を着て真っ赤な自転車で自らの髪をロン毛にして町を徘徊した存在もいると聞く。


街中でそう言うたぐいの変人をよく見てみるとそいつの傍には大体シャーマモンかゴブリモンがいる。


下級のデジモンがやることの相場は決まっている。

大体がパートナーとなる人間を脅して恐がらせることだ。


精神疾患の話は別としてまがりなりにも望もうと望まいと実は誰もがデジモンテイマー。

デジモンテイマーには特定の言語や何らかの意味が普通よりも理解できるという特典が付く。

言語などに関しての理解は普通の人間よりもはるかに精通し、数か国の言語も簡単に覚えてしまう人間もたまにだがいる。


だが一つ言っておく。

何のリスクもなしに現実界の人間がデジモンテイマーになどなれる訳が無いだろう?

だが概念を捕らえて制御できればもうこちらのものだ。

デジモンは基本物分かりが良い。

下級から上級のデジモンで合っても人間のパートナーの全てを知る性質を持つ。

人間の方もパートナーになったデジモンの本質を理解して接してやればそうそう大事にはならん。

もちろんこの世界には選ばれし子供は一人もいない。



その日、夕方、暁はやはり仕事に励んでいた。


患者として入って来たのは男だった。

その男の隣に暁のメガネの隙間から金色の帯とピンクの装甲の騎士が見えた。


ロードナイトモン…。

ロイヤルナイツのデジモンだ。


暁「…症状をお聞きしましょう。」


男「先生、私は病気じゃないんです、誰も信じてくれませんが私は王族の血族なんです。」


ロードナイトモンが無表情に男を見据えている。

表情が元々ないデジモンとはいえさらに無表情と来るからなかなかシュールなさまだ。


私のやる事はいつも一緒だ。


暁「夜は眠れていますか?」


男「先生、薬なんかいりません、私が神武天皇であると信じて下さい。」


ロードナイトモンが男にみっしりと抱き着く。


暁「少々薬を追加しましょうか。」

「よく寝て、ご飯をちゃんと食べて生活してください。」


男「先生も私を神武天皇と信じてくれないですよね…。」

「いや、分かります、みんなそうですよ。」

「先生だけじゃありません。」


暁はパソコンのカルテに男の症状を書き込んだ。


ロイヤルナイツのデジモンは血統妄想に多いのが特徴だ。

私がよく見るのはあんな感じに粘着質なロードナイトモンだ。


ある日妙な患者が私の元に来た。


22歳の女だった。

女は落ち着いており静かだった。


暁「名前を言え。」


「氷川史観です。」


暁「そうか。」

「薬は飲めているか?」


史観「…はい、飲めています。」


史観の傍に居たのは下級なモンスターでもなくロイヤルナイツでもなかった。

傍に居たのは…。


六枚の黄金の金属の翼をはためかせた座天使型のデジモンだった。


三大天使のオファニモン…。


きたか…この手の奴は…。


フミル「こんなことを言うのはおかしいのは承知ですが私はとある世界の王様なんです。」


暁 ああ、やっぱりそうか。

これはよくある誇大妄想に付くデジモンだ。


自分が王族の血統だと誤認識する血統妄想、血統妄想の場合、ロイヤルナイツが付くことが多くキリストの再来だと認識する誇大妄想などにはセラフィモンやケルビモン、オファニモンなどが付く。


史観はオファニモンと視線が合った。

そしてオファニモンもニコリと微笑んだ。


暁はその様を見ていた。


暁「…。」

暁はメガネを取って拭いた。


暁「お前…。」


史観「分かってます、自分が王だなんて現実界では誇大妄想ですって。」

「でも、みな誰もが空想の中の王様じゃありませんか?」

「そしてそれだけ傲慢じゃなきゃ、この子達を縛れないでしょう?」


やんわりにっこりと女は微笑んだ。

明らかに両者を意識している。

デジモンを上手に認識している女だった。


暁「なるほど…。」

「症状が落ち着いているのなら何よりだ。」

「薬はしっかり飲めているようだな。」


史観「はい。」


暁「ならよし。」

暁はカルテに少女の事を打ち込んだ。

デジモンが見えて認識できている人間は非常に珍しい。


天使型をパートナーにもつのに多いのは自分の事をキリストの再来、仏陀の生まれ変わり、果ては自分は神の申し子だと誇大妄想を抱くパターンだ。

座天使型や熾天使型を抱えるとそのリスクを背負う。


そう、ちなみに座天使型や熾天使型を上手くコントロールできなければどうなるかというと…。


正常な人間であっても見えぬデジモンにささやかれて自爆テロを起こしたり、地下鉄に薬物をばらまいたりと黙示録の大惨事を演出する。

何故ならばもとになる経典には人間の脳がまだ未発達なゆえに極端な理論を書きなぐった黙示録や楽園という壮絶な欄があるからだ。

デジモンは所詮概念、文字に対しては徹底的に弱い。

似たことを演出するように出来てしまう。

だが、これならば…。


暁「携帯を渡せ、史観。」


史観「はい?」


暁は史観の携帯を受け取った。


暁「…。」


史観「…?」


暁はアプリを仕込んで渡した。


史観は箱の空間のようになった携帯の画面を見てオファニモンにかざしてみた。


オファニモンが携帯の中に取り込まれて姿を現した。


史観「わあ!」


暁「デジモンを大切にな。」


史観「はい!」


史観はにっこり笑って暁の部屋を退出した。


そして人が静かに煙草を楽しんでいる時や休憩時にはどっかの大馬鹿という横やりが必ず入る。

そいつは向こうからやってくる。


「おーい!!暁先生!!」

灰色のワンピースを着ている調子のいい女だ。


史香「いつ私と結婚してくれるの?」


暁「三億回生まれ変われ、たわけものめ。」  END

2件のコメント
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夏P(ナッピー)
2021年10月25日

 順番が前後していたら申し訳ございませんが、流れるように読ませて頂きましたのでこちらにも感想を書かせて頂きます。


 オメガモンにも触れられていたので、世界観はあちらと同一ということで良いのでしょうか。ロイヤルナイツ持ちが血統妄想に取り付かれていることが多いということは……? それにしたって自分で言っていましたが神武天皇って流石にお前。

 そんな流れだったので、前回のオメガモンに引き続き「何か大変なことが起きるのでは~」と警戒していましたが、オファニモンに関してはストレートに良い話だったので安心。しかし要所要所で台本書きになっていたのは一体……調子のいい女……。


 それではこの辺で。

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史香
2021年10月25日

マジか!!

コメントくれて嬉しく思う!!

フィクションの方はあくまで想像だ!!

ロイヤルとは王族のという意味があったりとかして、こんなことありそうというやつを想像した。

マジの実話の方では血統妄想は良くある話だ。

思いに反応するデジモンなら多分ロイヤルナイツが付くんじゃないかと思ったまでで深い意味はない。

恐ろしい事に神武天皇の方は言伝で聞いた友人から聞いた実話がモデルになっている。

そう言う事も世の中にはあるらしい…。

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