*あけおめ、ことよろ*
*今回は♡付き喘ぎ声がありますがそれだけです。苦手な方はスクロールでお楽しみください*
*ハロウィン企画SS・その蜜味は出会いの味を先に読めばよりわかりやすくなるかも…?*
のどかな朝は、突如その空気を打ち破られる。
そんな事をつゆ知らず、シルフィーモンは朝早く起きてのトレーニングに勤しんでいた。
探偵所の2階の部屋の一つ、そこがトレーニング室代わりになっていて、シルフィーモンが自分で持ち込んできたサンドバッグやダンベルが置かれている。
しなやかに、力強く、サンドバッグに打ち込む。
「……ふう」
架空敵に良い一撃を見舞い、残心。
ワンテンポおいて残心を解くと、揺れたサンドバッグを手で軽く押さえた。
「よし、ここまでしてお……」
その時である。
「んほぉおおおおおおおっ♡♡♡♡♡♡♡」
……それが、悲劇の始まりだった。
ーーー
「美玖!!」
声の出処は寝室。
シルフィーモンが起きた時はまだ就寝中だったはずだ。
寝室に駆け込んだ彼が見たものは、めくれ上がった掛け布団と白目を剥きながら身体を震わせた美玖の姿だった。
「どうしたんだ、美玖!?」
何かしらの疾病の発作か。
険しい表情でシルフィーモンが美玖に触れた瞬間。
「んほぉおおぉ♡♡♡♡らめっ、らめぇええ♡♡♡」
「!?」
身体をガクガク振るわせ、口から涎が流れ落ちる。
何かが、違う。
これは、何らかの病気の発作で苦しむ人間のそれではない。
シルフィーモンは、美玖のその姿に既視感を覚えた。
その姿は、まるで、性行為中の人間の……。
「しっか…しっかりしろ。ラブラモン!いるか!?」
「はぁい!!」
パタパタと音がしてラブラモンが入ってくる。
「どうしたの?」
「すまない、美玖の様子がおかしい。病院に連れて行く前に精査したい。クズハモンを呼んできてくれないか」
「わかった!」
………
【ウィッチェルニーにて】
「ふふふふふふ……」
使い魔を通した幻視のヴィジョンが映し出された水晶玉を覗き見、ほくそ笑んでいるのは赤いローブに帽子が特徴的な魔女・ウィッチモン。
「あの人間、この間は良い結果を出してくれたから今回は初めから狙って試したけど良いわ!良い結果だわ!!」
ウィッチモンが覗き見ているのは、喘ぎ声をあげて絶頂している美玖の姿。
……ミスティモンに嗅ぎつけられ、人間をデジモンに変える飴玉を売った件から謹慎の意もあってウィッチェルニーに連れ戻されてきたウィッチモンは、しかし懲りていなかった。
彼女は謹慎中でありながらも、魔法薬を作り黒猫型の使い魔を通じて美玖をモルモットにしたのである。
「人間界をリサーチしてて見つけた、『感度を3000倍にする薬』!正直、意味がわからなかったけど色んなデジモンや人間に盛ったら面白い事になるじゃないか!!」
使い魔はリアルタイムで、美玖の(色々と凄惨な)有様をウィッチモンに伝える。
シルフィーモンに触れられただけで絶頂。
お着替えされただけで絶頂。
コーヒーを一口飲んだだけで絶頂。
金色の鳥ことフレイアに肩に止まられただけで絶頂。
呼ばれて来たクズハモンが託宣による占いを始め、彼女が呪符を焼き落とした水を美玖に飲ませてようやく治った。
「む、クズハモンか…まさか究極体があっちにいるとは思わなかったなー。もうちょっと経過観察したかったのに」
いかにも残念という口ぶりでそれを眺めながら椅子に腰掛けるウィッチモン。
それを眺めていたのは、ウィッチモン以上に赤色とそれに加え炎のモチーフが入ったローブ姿の魔人型デジモン。
「……ダメだこりゃ」
ーーー
「感度を3000倍にする薬?」
その魔人型デジモン、フレイウィザーモンから聞かされた話の内容に、ウィッチモンと同門のウィザーモンは目を瞬かせた。
「何だそれは?」
「オレだって知らんよ。だけどウィッチモンの奴、そんなモン作ってまたミスティモンからこってり油絞られるだろアレは…ひどかったぜ」
やれやれといった様子でフレイウィザーモンは答える。
アイツ、全然懲りてねえと盛大にため息をついて。
「感度、ということは…触覚に影響を及ぼす…ふむ…」
「ともかく人間に盛るなんざ流石にマズいって。お前もあんまり変なマネはすんじゃねえぞ?」
お前は真面目に見えて探究心が過ぎるとやらかすタイプだから、と言い置き、フレイウィザーモンは歩き去った。
……その嫌な予感が最悪な方向へ的中していくなど、つゆも知らず。
………
「ンホォォォオオオオオオ♡♡♡♡♡♡♡♡」
再び事件が起こったのは、それから三日後の昼だった。
「な、何!?」
「ガレージからだ!」
ガレージへと駆けつけたシルフィーモンと美玖が見たものは。
腹を見せてひっくり返り、ビクビクと全身を震わせたグルルモンの姿だった。
「グルルモン!?」
「今度はお前かー!!」
すぐさまクズハモンが呼ばれる。
再発の気配があるだろうと近くで待機していた彼女は、グルルモンを占って気難しい顔になった。
「なんと、面妖な……」
「ど、どうなんです?」
「うむ、其処許(そこもと)と同じ効能の薬を盛られておるな。実行犯は、違うが…」
シルフィーモンは尋ねる。
「相手は…」
「此奴も、同じ魔法使い系統のデジモンじゃな。それも、ただ盛ったのではない。強化された薬を使っておるのう」
「えっ」
「……30000倍」
「さんまんっ…!?」
シルフィーモンが天を仰いだ。
美玖に使われたものの10倍ではないか。
「息をしたのがきっかけで先程から息注ぐ間もなく絶頂し続けておる」
「……今、も……?」
美玖が恐る恐るグルルモンの方へ視線を戻せば。
その視線だけでグルルモンは股間を濡らし、跳ね上がった。
「ン"オ"ッ♡♡♡♡♡♡♡」
「………其処許と同じく、符水を飲ませるとしよう。それで快癒する筈じゃ」
…………
ウィッチモンは激怒した。
必ず、かのライバルを超えてやると改めて決意した。
ウィッチモンにライバルの動機がわからぬ。
ウィッチモンは、文字通りの魔女である。
ただいたずらに薬を生み出しては、"モルモット"の反応を見て愉しんでいた。
けれども、ライバルたるウィザーモンの動向には、人一倍に敏感であった。
ゴリっ……
ゴリっ…!
ゴリリッ…!
薬研の軸を握る手に青筋が入る。
ライバルに先を越されたという怒りが、薬の材料をより細かくしつこく粉砕していった。
「許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない!!」
ブツブツと恨み言を吐きながら薬研を磨り続けるウィッチモン。
側から見ても一種凄まじい剣幕で、フレイウィザーモンさえぎょっとし、
「なにあの子怖っ……とずまりしとこ」
と覗き見して数秒でそそくさと離れるレベルだ。
ゴリっ……
ゴリゴリゴリっ……
ゴリリリッ……
「三億倍…三億倍ならっ…!」
喉から血が滲むような声で呟きながら磨り続ける彼女を止める者は誰もおらず。
やがてウィッチモンが自室に篭ること数週間後の、C地区の片隅で。
「んほぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡!!!」
犠牲者はナイトモン。
デジタルワールドから来たばかりの、探偵所とは全く無関係の彼は。
鎧の隙間からあらゆる体液を漏らしながら、打ち上げられた魚が如く道端で跳ねているところを警察に保護された。
「どうなってんだこりゃ……」
捜査官とデジモン専用医療機関関係者一同が困惑の色を浮かべ、阿部警部がこの案件を五十嵐探偵所に持ち込んだ事で探偵所一同も言葉を失った。
クズハモンがすぐさまナイトモンを治療しに向かい、この一連の出来事に唯一の傍観者であったヴァルキリモンはこう思う。
(肉体、失った状態で良かったあああ…!!)
と。
ーーー
この出来事で、ウィッチェルニーでウィッチモンとウィザーモンによるやらかしが判明。
二体は、特に元凶のウィッチモンは念入りにこってり油を搾られ、しばらく成長期に退化させられて過ごすこととなった。
ミスティモンどころか、普段はウィッチェルニーの誰も知らぬ場所で隠居していたはずのヘクセブラウモンまでが出張するという事態。
さらにこの事件がきっかけで、デジタルワールドやダークエリアに『感度が3000倍になる薬』という知識が広まり、七大魔王やロイヤルナイツや三大天使といった錚々たるメンバーは揃って外人の肩透かしポーズをする羽目になった。
「なんだこれは、たまげたなあ……」
イグドラシルがデジタルワールドへ『感度が3000倍になる薬』の開発や輸入を禁じたのは、人間界に住んでいたデジモン達の間でちょっとした話題となるが。
これはまた、別のお話。
遅くなりましてすみませんが感想です。夏P(ナッピー)です。
遅くなりましてすみませんと申し上げましたが、もう少し早く読んでいたら新年初笑いがんほおおおおになるところだったので危なかった。というか、ヒロインがんほおおおおおしてるのに別にえっちぃ展開になることもなく普通に場面転換して次はデジモンがんほおおおおおするのもダメだった。んほおおおおおはどうやって治療してるんだサクヤモン、しかも三万倍ってお前。
唐突なメロスって何だメロスって。そして三億倍は……流石の対魔忍でも死ぬな……ッ! どうなってるんだウィッチルニー、そしてたまげるなデジタルワールド。正月からカオスの極みでド派手に笑わせて頂きましたが、この感度3000倍の薬っていうのは使えるぞ!
それでは今回はこの辺で感想とさせて頂きます。