(七夕SS)
時刻は19:00。
ようやく事が終わった直後、ぐったりと美玖はベッドの上で胸を上下させていた。
梅雨晴れからの気温の高さもあってか、肌は汗ばみ、ほのかに湯気が立っている。
気怠げにもたげた後頭部を、下から支えるはしなやかな筋肉と獣毛に覆われた腕。
「……大丈夫か?」
何度、こんな問いを繰り返したかわからない。
優しく手を握りしめる手指は、人のそれよりも大きく力強く。
心音とは違う、命の鼓動に耳を傾けつつ、美玖は意識を揺蕩わせた。
「もう、ちょっと…このまま…」
「わかった」
見下ろすその目はゴーグルに覆われている。
けれど声色から、彼が自分を労ってくれているのはわかった。
……30分後。
ようやく、立ち上がれるまでに状態の戻った美玖は、シルフィーモンと連れ立って格安のホテルを出た。
もう辺りは暗い。
この日は快晴で空は満天の星空だった。
「見て、天の川が綺麗…」
指差した先をシルフィーモンが見上げれば、光の帯のようとも表現される幾つもの星の連なりが見えた。
「そういえば今日、七夕だったわね」
「そうだな」
「シルフィーモンってそのゴーグル着けてるけど、星ってどんな感じに見えてるの?」
「……そう聞くか。特に意識も何もしてなかったな」
つぶやき、わずかにゴーグルをずり上げて星空を見上げる。
「……大して、そこまで違いはないよ。そもそもこれは、戦闘の補助のための装備だ。画像処理されて多少見やすくなっているかどうかしか、差異はない」
「でも、シルフィーモンがそれ外してるところ見た事がないから……いつも、どんな感じに世界を見てるんだろうって」
「世界を、か」
再度、天の川を見上げた。
「時々思うの。デジモンと人間。それぞれが見てる世界は、同じなのか、違うのか」
デジモンの多くは人間と違う感性を持つ。
それは、よく知っている。
ーーそして、それは、目の前で空を見上げる助手も同じだ。
「あの天の川だって、私達人間は綺麗だって思う人が多い。でも、あなた達デジモンがあれを綺麗だと思うとは、限らない…」
「そうだな」
素っ気なく答えてから、シルフィーモンはゴーグルの位置を戻す。
それよりは、と口を開く。
「遠くにある光の川なんかより、近くにいる君の方が好きだ」
「え……」
ーー硬直。
「ほら、帰るぞ」
「え、ちょっと、まっ…」
いくらなんでも、それはずるい。
ゆでダコのような顔をしながら、美玖は助手の後を追いかけて走る。
ーー天の川は、何処の国から見えようと同じ顔だ。
恋人達が年に一度の逢引きの為に渡る川。
女神の乳が迸って生まれたと言われる川。
しかし、長い時を経て天の川は見下ろし続けるだろう。
残酷な出来事も、ロマンスも、悲しい別れも、等しく。
甘過ぎて血反吐吐いた。
そいつは血か? オイルか?(ベジータ) 夏P(ナッピー)です。ま、まさか七夕にこんな話を投稿されていたとは……恐らく吐いたのは体内の糖質であろう。
ちゃっかり最後の一文的に今後の不穏な展開を予感させますが、当然のようにんほおおおおおしとるやないか君ら。ジョグレス進化体であるシルフィーモンが更にジョグレスしちゃってるじゃないですかい。心音とは違う命の鼓動ってちょ、おま。悲しい別れがあったとしても絶対別離した直後に胎内が脈動する奴ではないでしょうか。これ以上言うと私がヤバい奴になるのでここまでにしますが。
ぎえええええええ甘い! 天の川より甘い! 格安のホテルなんて単語は見えねえ!
それでは本編の方もまた感想書きに伺います。