「こっちです、こっちの方に階段が…」
ツールで確認しながら、美玖はワイソンと走っている。
彼にはフレイアを抱えてもらっていた。
「この先はデジモンの数があまりないようで良かった…イーターというモノの数がそこかしこにいますが」
「あらかた、あいつらに喰われたのでしょう」
ワイソンの言葉に、美玖は足を止めた。
「どうしました?」
「その…イーター、というのは何ですか?」
「…デジモンすら食う、危険な存在ですよ。25年前には、人間世界にも侵食してきたこともあり、多くの犠牲者を出している」
「私が生まれる、一年前…」
そこで、モーショントラッカーに反応。
デジモンが一体、近づいてくる。
(属性は、フリー…)
一体だけなら、麻痺光線銃コマンドで足止めできる。
顔を見合わせ、小声で話し合った。
「ワイソンさんは後ろで待機を。私がデバイスで麻痺させましたら、すぐに横を抜けましょう」
「大丈夫ですか」
「…多分」
足音はかなり早足で近づいてくる。
どうやら、相手は二足歩行。
(……)
そして。
相手が曲がり角を出た瞬間を狙って、デバイスから麻痺光線。
だが現れたデジモンの姿を見て驚きの声をあげた。
「シルフィーモン!?」
わずかに狙いがズレて、シルフィーモンの頭から数cmの所の壁に火花が爆ぜた。
「美玖!」
その声音には幾許かの安堵がある。
手短にワイソンへ自身の助手だと説明した。
「どうしてここに!?」
「イグドラシルからの指令でロイヤルナイツに率いられて来ているんだ。一体何があった!?」
「それは……」
話そうと美玖が口を開いた時。
ひゅー………と風を切るような音。
そして。
ドォオン!!
爆風と爆発。
壁に大きな風穴が空くのを見ながら、美玖とワイソンは意識を失った。
こちら、五十嵐電脳探偵所 #17 その欲印拭うは愛の嵐
突然の爆音、爆風。
その原因が、ヴァルキリモンと戦闘中のスカルグレイモンによる『グラウンド・ゼロ』だと誰が知り得ようか。
幸いにも直撃は免れたが、爆風に叩きのめされたシルフィーモンがかろうじて身を起こした時二人は意識を失った状態で倒れていた。
「美玖!それと…誰だ、しっかりしろ」
シルフィーモンが揺さぶるが、完全に意識を失った二人が目覚める気配はない。
現状、この階へまだ下りてきたデジモンはいない。
二階にいるイーターを片付けるのに手一杯の状態だったからだ。
「私一人で運ぶしかないか…」
美玖を背負い、ワイソンを担ぎあげ、フレイアを空いた片手に抱える。
こうなると戦うことは困難なため、途中で敵に遭遇するようなことがあれば戦闘を全力で回避しなければならない。
(……先程この階にいたデジモン達はどれも様子がおかしかった。完全に理性を失った、酷い有様だったな)
薄暗い通路を駆け抜けながら、シルフィーモンはそう思う。
美玖達なら何か知っているのだろうが、今ここで聞ける状態ではない。
(下の様子が気になるが、今はこの二人を安全な場所へ……)
だが、先程自分が降りた階段近くまで来たところで、フレイアが突然傷ついた羽根をバタつかせた。
「どうした?」
「ピイッ!ピピッ、ピイッ!」
只事ではない様子に嫌な予感を覚え、そして前方20m先向こうから歩いてくる人影に足が…止まった。
「ーーお前は……」
ヒールの音を響かせ、歩いてくるのは一人の女。
一度は目にした女。
「あら、あなた……吉原で会ったデジモン……」
乱れた黒髪を掻き上げながら笑うその姿には余裕の表情。
しかし、精神的なそれとは違う、強者特有の余裕さだ。
「そこのネズミ女はお前達の差し金ってわけね、ロイヤルナイツの狗ども。嗅ぎ回られた挙句、最下階に収容していた実験台まで解き放ってくれた御礼参りがまだなのよね」
「なんだと?」
収容。
実験台。
「まさか、今この階で見境なく殺してまわっているデジモン達は」
「この組織が開発している新薬の実験台よ。デジタルワールドへ侵攻するための戦力の足がかりとしてね」
「…なぜそんなことを」
「知らないわ。飽きたからって何もかも私にこの組織を押し付けていった、強欲ジジイにでもお聞きなさいな。…生きて帰れたらの話だけど」
じり…っ、とにじり寄る女。
その足元から、瘴気にも似た闇のオーラが湧き上がる。
「今すぐ、お前が背負っているそのネズミ女と彼女が持っているフロッピーディスクを渡しなさい。今、私はとーーっても、機嫌が悪いの。断るなら……」
闇のオーラが完全に女を、莉莉娘娘を包む。
相手が何者か知って尚、シルフィーモンは睨み、一言言い放った。
「断る」
「なら、死になさい」
ーーーー
「何をする…おいっ!」
イーターに混じり、全身を血まみれに暴れるデジモンへ駆けつけた者達は押さえるのに必死だった。
声をかけるも、それが彼らには届かず、仕方なく押さえつけて縛するしか手段がない。
「組織の連中は一体、何をしたんだ?まともに会話のできる状態じゃない。それに人間のものらしき血だらけだ」
アルフォースブイドラモンが訝しげに言いながら、縛りつけたシードラモンを引きずっていく。
それを横目にマグナモンは傍らを通りがかったデジモンへ指示を出す。
「三階への道が開け次第警戒しろ。イーターの気配もだが、近くにはーー」
そこへかすかに聞こえた、爆発音。
「今のは!?」
「三階の何処かで爆発だ!戦闘による余波の様子」
ざわめきの中、無力化させたデジモン達が上の階へ担ぎ込まれる。
外ではすでにイーターの駆逐と彼らが侵入した先と思われる空間の歪みを修正したデジモン達が、開通した道を通じて転送作業を開始していた。
(……この組織のバックには、やはり奴らが絡んでいたか。ダークエリアの事情から薄々勘付いてはいたが)
手近なパソコンのディスプレイに浮かび上がるマークにマグナモンは目を細める。
それは、それぞれ強欲と色欲を司る魔王の象徴。
組織が瓦解しただろう今、何をしているのか?
ーーー
「…………っ、ぐう……」
頭がズキズキする。
重いまぶたを開けながら身をよじれば、近くで意識を失ったワイソンとフレイアが見えた。
(一体、何が起こったの…?)
覚えているのは、シルフィーモンに事情を説明しようとした時不意に聞こえた異音。
見えない手に張り倒されたような感覚に意識を叩き落とされて以降は、何も……
「シルフィーモン、は…?」
そう呟き、床から身体を起こしかけて美玖が目にしたのは……
「ぐうっ、…っく…!」
「あはははは!どうしたのかしら?手も足も出ない?」
嘲笑うような声が響く。
美玖が見たものは、煽情的な衣装を纏う女性の姿をしたデジモンに足蹴にされるシルフィーモンの姿だった。
その身体は満身創痍、立ち上がるのもやっとな所を何度も踏みつけられ、蹴って転がされている。
(シルフィーモン!?……あの、デジモンは……)
莉莉娘娘の面影があるそのデジモンへ、美玖はツールによるスキャンを開始。
1分弱後、ホログラムは情報を展開した。
『リリスモン。魔王型、ウイルス種。究極体。女性の姿をした魔王型デジモンで“七大魔王”デジモンの一体でもある。元々はオファニモンと同種族だったと考えられており、堕天して “暗黒の女神”と呼ばれるようになった。妖しくも美しい容姿で相手を惑わし……』
美玖の背筋に冷たいものが走った。
(究極体!)
今まで美玖は究極体に出会ったことがない。
……正確には、究極体と自身が認識した者と出会った事がない、が正しいか。
それほどまでに、現実世界で究極体クラスのデジモンに人が遭遇することは稀なのだ。
…だが、それより。
(……こいつ……!)
莉莉娘娘の正体は七大魔王が一体、リリスモン。
七大魔王という名は以前に警察署で閲覧可能な要注意デジモンのデータベースで見たことがあった。
究極体デジモンの中でも上位の実力者にして、彼らに殺されたデジモン達は転生する事も許されず魔王の糧となって吸収される…。
このままでは、シルフィーモンもそんな運命を辿るのは確実だ。
(助けないと…でも、どうやって)
まだリリスモンは美玖に気づいていない。
とはいえ、シルフィーモンに体勢を立て直させるに麻痺光線銃コマンドで稼げる猶予はあるのか。
そんな時、姿勢を直そうとした手が、冷たく細長い物に触れた。
先程の爆発で破損した壁の一部だろう、細長い鉄のパイプ。
「ほら、どうしたのかしら?そんなにあそこで倒れてるネズミ女が大事なようね。でももう立つ気力もないとはみっともないわ、ほほほ!」 「くっ…誰がここで…」
「お前を殺した後でゆっくりネズミ女を料理してあげるわ。言ったでしょう?御礼参りしなければならないって。素直に渡していれば命だけは助けてやったのに」
仰向けに倒れた上からリリスモンの足が踏みつける。
胸元をグリグリと踏まれ、苦悶の吐息を漏らしながらシルフィーモンは耐えた。
(上の増援が駆けつけてくれるまで、どうにか時間を…!)
七大魔王と互角で戦えるのはロイヤルナイツなど限られたデジモンだけだ。
彼らが来てくれれば、自身はともかく美玖達の命が助かる可能性はある。
その時。
リリスモンの耳が背後からの足音を拾った。
「私の助手に何をするの!!」
咄嗟に振り返れば、鉄パイプを両手に構えて走る美玖がいた。
「美玖!?」
シルフィーモンの目の前、リリスモンに向けて振り下ろされた鉄パイプは、その一撃は…硬質な音を立てて彼女の籠手のような右手に止められた。
たちまちその手の中で腐食し、朽ちていくパイプ。
触れた物全てを腐食させる「ナザルネイル」。
日向に致命傷を与えたものの正体だ。
「…っ!」 「随分早いお目覚めだったようね、可愛いネズミさん?助手ってことは思った以上に深い関係なのね、そうなの……ふふ……」
美玖の手からもぎ取った鉄パイプを放り捨て、怖いほどの笑みを唇に浮かべながらリリスモンが迫ってくる。
「やめろ…逃げるんだ、美玖…!」
シルフィーモンは立ちあがろうとするが、散々痛めつけられた身体は鉛のように重い。
距離を詰めてくるリリスモンへ、美玖はデバイスを向けた。
「……麻痺光線銃(パラライザー)コマンド、起動!」
麻痺光線はまっすぐリリスモンへ飛んだ。
ーーしかし。
バヂッ
「……うそ……」
光線はリリスモンに命中したが、彼女は涼しい顔で歩みを進める。
くすっ、と笑みすら返してきた。
「なぁに、今の。ちょっとむず痒かったけどなんともなかったわ。抵抗のつもりならごめんなさい」
全く謝罪の意図すらない言葉で、美玖に向かい左手を伸ばす。
そこで、ようやく立ち上がったシルフィーモンの必殺技の構え。
「『トップガン』!!」
だが、放たれたエネルギー弾を、リリスモンはいとも容易く弾いたばかりでなく……
「邪魔よ」
「ぐわあっ!!」
シルフィーモンに向けて返した。
自らが放ったはずの必殺技を跳ね返され、直撃されて壁へ叩きつけられる。
そのまま、動けなくなった。
「シルフィーモン……あ、ぐ…!」
彼女の左手に美玖の首元は掴まれていた。
「く…あ…」
(なんて、強い力…)
足が地面すれすれに離れる程掴み上げながらリリスモンがその耳元で囁く。
「こうするとちょっと可愛げないわねぇ。心配しなくても貴方の助手とやらは死んでないわ」
そう言いながら、ちらりとシルフィーモンへ視線を向けた。 彼はすでに全身ボロボロだったが、まだ立ちあがろうとしている。
「今ここで殺しちゃったら面白くないもの。……ふーん……?」
「な、なに?」
意味深く笑みを浮かべた後、リリスモンは唇を歪めた。
「貴方、生娘か」
「!?」
「男をまだ知らない身体なら、…うん、良い事を思いついたわ」
ナザルネイルが美玖の下腹部へ近づいていく。
「嬲り殺しにしてやろうかと思ったけど気が変わった。貴方にはちょっと面白い目に遭ってもらいたいもの。我慢がかーんたんに通用しないようなやつをね」 「ど、どういう…」 「知りたい?ふふ…」
リリスモンが右手を動かした。 先程の腐食した鉄パイプを思い出し、美玖は身体を硬直させる。
「なぁに、固くなっちゃって。安心なさい。お腹を腐らせたりはしないわよ。一番大事な部分をちょっと弄るだ・け」
美玖の腹に触れる。 臍より少し下の辺りを。
「一体何を…」
どくん。
「え…あ…」
触られた部分が、熱を帯び始めた。 殴られるような衝撃が脳を襲う。
「美玖に…美玖に、触るな…」
シルフィーモンの掠れる声を聞きながら、美玖は再び意識を手放した。
高らかな哄笑が広い回廊で響き渡る。
「あっはははは!!目覚めて時刻(とき)が経った時どうなるのかしら。きっと大切な彼氏のためにとっておいた初めてなんでしょうけれど、それももうお・し・ま・い。けれどぉ?貞淑に自分を守ろうと我慢をすればするほど、それこそ貴方の死へのカウントダウン。死に様はとーーーってもブザマよ?生きるために初めてを棄てるか、初めてを守り通して女として最も侮辱的な死に様を晒すか……愉しみ。あははは……はははーー」
ーーーやれやれ…悪趣味なのは相変わらずだね、リリスモン。
その声にリリスモンは一瞬、反応が遅れた。
視界に迫る純白の影。
凍れる魔の刃を、ナザルネイルで止める。
敵の攻撃に反応して放たれた言葉は、魔王としての威厳が込められていた。
「ーー貴様っ、ヴァルキリモン!?」
ーーーすまないね、もう少し早く駆けつけられていたら良かったのだが。あのスカルグレイモンに思いの外手を焼かされたよ。
「………すま、ない…」
シルフィーモンの方を一瞥し、ヴァルキリモンは切り返す刃でリリスモンを押し返した。
そこで、リリスモンは思い出す。
「そうか……あの鳥、何処かで見たと思ったが貴様のペットだったな!だが、貴様はなぜここに?グランドラクモンの手で永遠の闇に放逐されたと聞いたぞ!」
ーーーそれについてはそこの彼女から……は、今は無理か。まあ色々と奇縁があって彼女と知人に協力してあげているんだよ。
「……ヴァルキリモン」
シルフィーモンはリリスモンと相対したその姿を見ながら、名を呟いた。
聞いたことがある。
勇者として死んだデジモンをデジタマへ還す力を持つとされる、光の力を宿した究極体デジモン。
今から1100年以上前のデジタルワールドでの戦いで、ダークエリアから出ようとしたグランドラクモンとガルフモン相手の戦いにも多くの助勢を引き連れ馳せ参じた。
その際、グランドラクモンによる闇への放逐に、当時参戦していたロイヤルナイツや選ばれし子ども達の身代わりとして自ら盾となったとも。
(……美玖を助けてくれていたのは、そういう……)
だが、それゆえに。
無力感に、床に爪を立てる。
目の前で倒れている美玖。
その苦しげな表情に、身体を引きずりながら近づく。
「……すまない、美玖。私に、力が、あったら」
また、自分は守れなかった。
以前は目を離した不注意で。
今度は力不足で。
すでに戦闘が始まっていたが、シルフィーモンは美玖の傍らでうなだれたままでいた。
「チィッ!」
『フェンリルソード』を『ナザルネイル』で弾き、リリスモンは素早くブリッジで後ろへ回避。
返す刃が先程までリリスモンのいた場所を切るが、
ーーーまだ攻撃は終わっていない。
空気が凍りつき、氷の刃となってリリスモンへ迫った。
彼女の纏うドレスの裾が氷に囚われて張り付く。
「ちょっと!?」
眉根を寄せ、咎める間もなく距離を詰めてくる白鳥の衣の戦士に舌打ちし。
素早く自身の爪を振るうことで凍りついた裾を切り裂き、脱した。
ガキィン!
爪と剣がぶつかり合う。
爪を繰り出すと見せかけ、闇色の吐息『ファントムペイン』が繰り出されるが。
ーーーおっと。
竜巻のような回転と上昇で回避。
そこへ下からリリスモンが迫る。
突き上げるような掌底を受け、羽根のように軽く打ち上げられた。
追い討ちをかけるため更に上昇したリリスモンだが、目前でくるりと宙回転をされた直後。
その腹部へヴァルキリモンの蹴りが突き刺さる。
「がはっ!」
真横に吹っ飛んだ先には壁。
激しく叩きつけられた部分に亀裂が大きく入り、何かがリリスモンの懐からこぼれ落ちた。
それは、床を転がりながら、うつむくシルフィーモンの手に当たって止まる。
ーーー流石は七大魔王が一人。まだ息は上がってないようで何よりだよ。
「ふざけっ…!」
涼しげなヴァルキリモンの声に苛立たしげに返しながら、壁に空いたスペースから身体を出すリリスモンだが。
(……此奴、こんなに強い奴だったか?)
激しいぶつかり合いを再開しながら、リリスモンは思った。
彼女の記憶している限り、ヴァルキリモンの強さは代にもよるが究極体としては中の下を出ない。
そも彼らの役割は勇者の再生と記録の管理・保存であるため、そう表立って戦場に出てくる機会はない。
「……貴様、永遠の闇の中で悠長にトレーニングにでも励んでいたのか?」
ーーーははっ、貴方にしては面白いジョークだ。無論、違うよ。バックアップは受けているけれど、企業秘密と黙秘権のハッピーセットだ。
「……」
探るような眼差しで、リリスモンは次の一手を模索しーー
そこへ、今度は蒼い疾風が斬り込んできた。
「!」
掠めた肩口の傷を押さえながらリリスモンは新手を睨む。
「ロイヤルナイツまで来たか」
「間に合ったようだね。……すぐに援護が来る、観念した方が良いよ」
蒼い疾風ーーアルフォースブイドラモンは言いながら、片腕から伸ばした光の刃を突きつけた。
遠くから戦闘音が聞こえたと思うと、数体のデジモン達が駆けつけてくる。
その中にはグルルモンも混ざっていた。
「お、おい、あいつ…」
「リリスモン!?七大魔王がなぜここに!」
「あっちの、白いデジモンは誰だ?」
グルルモンが脇からシルフィーモンと美玖の脇へと走り抜けて駆けつける。
「遅レテ済マナカッタ、ーー美玖ハドウシタ?無事カ!?」
「……」
シルフィーモンは答えず、手に当たった物を見た。
それはアンプルのようだ。
ラベルには中国語の文体で『進化霊丹』と書かれている。
(……私に、進化できるだけの力が、あったなら……)
「シルフィーモン?」
グルルモンの再度の問いで我に返り、無造作にアンプルを掴むシルフィーモン。
彼はそれを…自らの懐へと押し込んだ。
誰もその行為に気付く者はいない。
持ち主のリリスモンでさえだ。
もし美玖が意識を失っていなければ、薬の危険性を訴えて止めていただろう。
「リリスモン、お前に尋ねたいことが山ほどある。覚悟しろ」
黄金の鎧を纏う姿を認め、いよいよリリスモンの表情の険しさが増した。
「……興醒めだ、ここまでだな」
「待てっ」
踵を返した後ろ姿を追おうと走るアルフォースブイドラモン、マグナモンの目前で広がる闇のオーラ。
リリスモンがパチリと指を鳴らすと、粉塵爆発を起こしたかのような連鎖爆発が起きた。
「…くっ!」
マグナモンがバリアを張り、『ファントムペイン』の拡散を防ぐも、そこから先の視界は見えなくなっていた。
………
エレベーターへ駆け込み、四階のボタンを押す。
四階にはダークエリアへと繋いだポータルがある。
元々、強欲を司るバルバモンが張ったものだ。
「……ほんっっっっっっ……っっとに最悪だわ」
溜めに溜めた言葉を吐き出し、リリスモンは壁にもたれる。
意味不明・予測不可欠の出来事が多い。
「ヴァルキリモンの奴もだが、なぜイーター共が…」
デジタルウェイブの流れを変えたことでダークエリアに雪崩れ込んできたイーターの大群。
初めてあれを見た時は何の冗談かと思っていた。
総力を挙げなければならなかった程、手を焼いた事を未だ覚えている。
「本当に、一体、何の冗談よ!なぜ本来なら世界の外にいるはずの奴らがーーー」
その時である。
剥き出しの肩に、冷たいものが置かれたのが。
それは、土気色の人間の手だった。
反射的にリリスモンが振り返り、"そいつ"と目が合った。
「お前、はーー」
四階に着くエレベーター。
戸が開かれると、中はモノクロカラーのチラつく空間となっており。
そこにリリスモンの姿はなかった。
ーーー
玖……美玖…!
時間を置いて浮き上がる意識の中で美玖は声を聞いた。
「…美玖、美玖!」
今度ははっきりと聞こえたシルフィーモンの声。 目を開くと、全身手当てをされたシルフィーモンとその脇にいるラブラモンが覗き込んでいた。
「……ラブラ、モン?」
「せんせぇ!」
ラブラモンが泣きながら美玖に抱きついた。
(私は、生きてる…?)
「目ぇ覚ましたか」
シルフィーモンとラブラモンの後からやってきたその人物に美玖は安堵の表情を浮かべた。
「阿部警部…」 「例の組織についてはこちらも警戒態勢を敷いたりしてたが、まさか七大魔王とやらが絡んでたとはな。すまん、五十嵐。俺は話に聞いた限りだが無事だったのが不思議だったんだぞお前ら」 「全く、だ。私も駄目かと思った」
シルフィーモンが目線を美玖に向ける。 彼の目は装着したゴーグルに隠れたままだったが、心配の色を滲ませているのはわかった。
「究極体相手に殴りかかるなんて…殺されてもおかしくなかったのに」
「……あの後、何が起こったか聞かせて貰えるかしら?ワイソンさんは無事?」
ーーリリスモンが撤退した後、組織の拠点内は隅々まで彼らデジモンによる調査が始められている。
美玖とフレイアはシルフィーモンが、ワイソンはマグナモンが引き取り、後日各々の国の医療施設へと送還された。
リリスモンに殴りかかる前に美玖がワイソンの懐へ押し込んだフロッピーディスクは、無事彼によって香港政府へと届けられたようだ。
組織の目的が明るみに公開されるまで時間は要するようだが。
「それじゃ……ここは、日本の病院、なのね?でもラブラモンは…」
「ああ。…それについては、三澤警察庁長官から伝言だ。エジプト政府との取り決めは解除された。アヌビモンの意志により、今後とも身柄は五十嵐探偵所のものとして扱う…ってな」
「そうなの?」
美玖が驚いてラブラモンを見る。
パタパタと尻尾を振り、彼は頷いた。
「うん。せんせいのところがいちばんおちつくから」
「俺は今から、担当の医師を呼んでくる。お前達もあまり長居しないようにな」
阿部警部が退室すると、シルフィーモンは背後へチラリと目線を送った。
「……また君を守れなくてすまない、美玖。あの時私を置いてでも逃げて欲しかったのだが」
「ダメ、そんな事言っちゃ。シルフィーモンは私の、大事な助手なんだから」
言い張る美玖にため息を一つ。
「良いか、君は忘れてると思うが。契約上私の本来の役割は、君の探偵所に不足した人材の穴埋めと用心棒を兼ねたものだ。助手はあくまで肩書きに過ぎない。前にも言っただろう…早くデジモンの人材は雇うべきだ、と」
「あなたとグルルモンがいるじゃない」
「その認識がダメだと言ってるんだ。……グルルモンはともかく、私は元々傭兵のようなものだ。金の分働いたら、君の元を去ることだってできるんだぞ」
「……でもね」
横からラブラモンが口を聞く。
「しるふぃーもん、じぶんがいなくてもだいじょうぶなように、せんせいのこうざにじぶんがいぐどらしるのしょうしゅうでかせいだぶんのはんぶんいじょうをこっそりふりこんでるんだよ」
「ラブラモン!?なぜそれを」
「……あの、誰からのかわからない結構な額の振り込み、シルフィーモンからだったの……」
慌てるシルフィーモンを前に、美玖が思わず笑う。
「怖かったから手出さないでいたんだけど…あなたからのなら安心かな」
「いや……その、これは…」
「えへへ」
「……そろそろ医者が来るから我々はこれで失礼する。ラブラモン、どこで知ったか今から聞かせて貰うからな!」
早口で言いながらラブラモンを抱え、退室していくシルフィーモン。
また後でねと手を振り、美玖は一人になった病室の窓を眺めた。
……今回はあまりにも、衝撃的なことばかりだった。
これで、例の組織によるデジモンの事件は収束を見せる可能性はある。
組織は壊滅したのだから。
…しかし。
(……あの時、私が彼らを、解き放たなかったら)
組織の人間の半数以上が全滅。
ロイヤルナイツが確保したのはわずか20人に満たなかったという。
そして、阿部警部から受け取った、イーターというものに関して詳しく書かれた記録も読んだ。
イーターに捕食された者は、デジモンならデジタマに戻ることがなく、人間ならば死亡はないが永久的と思しき植物状態に陥るという。
データを食餌とすること、データを捕食によって摂取すればするほど形態を変化させる等々の判明している部分があるが未だ正体不明の捕食者である。
(何も知らなかった私は……どうすれば良いんだろう)
今回、医師の診断により、打撲以上の負傷は見られなかったため一日一泊のみの入院で済むこととなった。
ーーー
だが、安寧の終わりは早かった。
「ええと…これが例の書類で……、FAX必要か。ちょっと、近くのコンビニに行かないと」
病院から帰って早々。
今回の組織の件含め、幾つもの報告書に必要な書類の送検とそれに必要な書類そのものを確認していた美玖。
未だにFAXを要求される時代であることにため息をつきつつ、財布と書類をかき集めてバッグへ押し込んだ。
外へ出ると、グルルモンが腰を上げる。
「一緒ニ、行クカ?」
ちょっと考えたが、首を横に振った。
コンビニまでは徒歩で5分とない。
「大丈夫、そんな遠くないし」 「グゥウウ…ソウカ」
断るとグルルモンはガレージに戻っていく。
ちょっとコンビニで用事を済ませに行くだけだ。 そう思っていた。
――
印刷とFAXの送信を終えたので、コピー機から印刷物と残りの釣り銭を取った時だった。
どくん。
「っ、あ…」
突然下腹部を襲う熱と脈動。 苦しいとか痛いとかはなくて、只々強い疼き。
「お、お客様?」
近くにいた女性店員の声で我に返る。 どうやらファイルと財布を持ったまま床に膝をついていたらしい。
「大丈夫ですか…?顔色が良くないようですが」 「ありがとうございます。だ、大丈夫です!」
女性店員の手を借りて立ち上がるが、まだ身体の…奥が熱くて疼く。
コンビニを出ると、疼きも熱もより一層ひどくなってきた。 こんな事になるなら、グルルモンの背中を借りていけば良かったと思うのも束の間だった。
背後に、尾行の気配。
気配を隠す気のない足音に美玖も足運びを早めようとした。 が…。
ずくん
「…は…ぁあ、んあっ…」
視界が歪んでいく…。
一体どうなったら、こんなにひどい状態になるのだろう? 寄りかかる壁もなくコンクリートの地面に膝をつく美玖に、足音の主が追いついた。
「へへへ…」
相手は男。 中肉中背の推定40歳ほど。 頭がぼうっとしてきて思考が追いつかないが、鼻にツンとアルコールの臭いがつく。 安酒を飲んだ後か。
「へへ、良い匂いした姉ちゃあん。そんなとこで突っ伏してどしたあ?」
男は呂律の回らない声で笑いながら美玖へ歩み寄る。
「はあ、はあ、はあ…」
立ちあがろうと足に力を込めたが、うまく力が入らない。 もたついているうちに男が彼女に乗せかかってきた。
「く、あ…!」
その重みに呻く。 危うく後頭部を打つ所だったが、それどころではない。 男の手がブラウスの上から小ぶりな胸を掴むように伸ばす。
「うぅ、あ、くぅ、っあ」 「はあ、はあ、ひ、ひひっ!」
涎を口から垂らす男の様子は異常だったが、異常なのは美玖の身体も同じだ。 男の見目は典型的な醜男そのもの。 こんな男に胸を揉まれて喜ぶなどまずありえない。 その筈なのに。
「んあっ、はっ、はんっ、ああっ」
揉まれれば揉まれるたびに。 揉まれる胸が、お腹が、…身体の奥底が、かっと熱くなっていく。 心地良くなっていく。
「へへ、こんなに固くなっちゃって、ヤりたかったんだろぉ?」 「んんっ!」
ぎゅうっと両胸の先を指でつままれて美玖は激しくのけぞった。 かろうじて残った理性で、頭を回転させようと努める。 すぐそばでカチャカチャと軽い金属音が聞こえる。 ベルトを外す音とわかると身体の熱が高まるのを覚える。
……期待してしまっているのだとわかった。
「さて、早く戻らなければシスターに怒られてしまいますね…」
メモを手に、そのデジモンはちょうどコンビニを曲がった狭い道を低空飛行していた。
彼が戻る場所はC地区にあるため、最短で帰りつくならちょうどいいルート。
ーー奇しくも、それにより異常を見つけることになろうとは思わなかった。
「……おや?」
道の途中で、倒れた若い人間の女とそれに乗りかかる人間の男を発見したのはその時である。
時間帯は夕方。
辺りは薄暗く、人通りの少ない夜道で行われようとしている行為に彼は当初異常を感じはしなかった。
(逢瀬、でしょうか。随分と人間の歳の差は離れているようですが)
だが、近づくにつれて、彼は異常を察知し足を止めた。
女の全身から闇の力が発散され、それに触れた男の様子も明らかに正常な精神状態のそれではない。
そして、女はなすがままのように見え、しかしその手は男の体を力なくも押し除けようとしていた。
「何をしているのですか、貴方」
それは、どちらに向けたものだったか。
地に足を付けて降り立つと、男を素早く引き剥がした。
「あ…」 「やめなさい!彼女から離れなさい」
引き剥がされた男がじたばた暴れる。
ベルトを外し、半分ほど尻がはみ出しているがまだ行為に及ぶ手前の様子。
女の方は幸いにも未遂の状態だ。
「くそぅ!なんだテメェ離しやがれこのー」
理性を失っている様子ならば、やむおえず。
その首元に手刀を打ち込む。
声もなく男が倒れ、気絶を確認してから女へと近づく。
そこで、本能的な危険を察知した。
神聖系デジモンとしての勘が告げる。
近づいてはならない、と。
「……少しの間、待っていてください」
そう女に断り、すぐに取り出したPHSでシスターの番号にかけた。
『どうしたのです?』
「すみません、異常事態に遭遇してしまいまして」
『何ですって?』
シスターの声が一段上のトーンに跳ね上がる。
「ともかく車に乗って来てください。急きょ教会へ運ばなければいけない人間がいます」
ーー
昨日の出来事をまともに覚えていない。
車の中に押し込まれた事と、美玖を助けてくれた誰かと車に乗ってきた女性が何か言葉を交わしていたくらいで。
(…で……のですか?) (………の力では、そ…)
意識がだいぶ朦朧としていて、会話がうまく聞き取れなかった。
目覚めたのは、教会と思しき建物の中の、ソファの上だった。
「目は覚めましたかな?まずはここへ連れてきた無体を詫びなくてはいけません」
救いの主がソファの近くに丸椅子を引いてきた。
「あなたは…」
救いの主は人ではなくデジモンだ。 シルフィーモンと同じように顔の上半分を兜で隠している。
真っ白な数枚の翼に、真っ白なローブを纏った長い金髪の美丈夫。
「私はこの教会の司祭をさせて頂いているホーリーエンジェモン。貴方に異常があった為急ぎ救助し此処へ運ばせていただきました」 「ここは…」 「貴方がいた場所とは隣の地区です。帰宅の際はシスターに送らせます」 「隣の地区?もしかして、C地区?」 「ええ。仕事の関係で通りがかったのですが貴方が暴行を受けているのを見かけたので…ですが、それで異常を知る事になった。貴方の名前をお聞かせ願っても?」 「五十嵐、美玖です。探偵所を営んでいます」 「おや、D地区で探偵所とはもしや、シルフィーモンが世話になっていると聞く方でしたか」
ホーリーエンジェモンの声音が穏やかなものになった。
「お知り合い…ですか?」 「ええ、まあ。シルフィーモンは今そちらでどうしていますか?」 「いつも私が世話を見られていますよ。ただ、つい先日…」
先日、香港での経緯を話す。
それを聞いたホーリーエンジェモンの表情は険しいものに変わった。
「なんと…ではやはり、貴方の身体にある"それ"は、リリスモンの仕業か…!」 「えっ?」
戸惑う美玖にホーリーエンジェモンはバスタオルを手渡した。
「身体を洗い清めてきなさい。昨日は身体を洗っていないのでしょう?…その時私の言いたいことが、わかります」 「…?」
浴室は綺麗で、最新の機能が揃ったバスフロア。 温かいシャワーで頭から洗い流しながら美玖はほっと一息ついた。 あれほど狂おしい熱も疼きもないのがありがたい。 そう思いながら、髪を拭きつつ鏡の前に立った彼女は固まった。
退院直前まで病院で検査を受けた時は、何もなかったはずの、下腹部。 ちょうど子宮がある位置。
「な、何これ…」
あの時。 リリスモンに触れられた位置には、莉莉娘娘の、リリスモンの日記に見た、記号と三日月で構成された紋様が刻まれていた。
―――
「では、お話しましょう。もう目になさったと思いますが、先程の貴方の話で得心がゆきました。…美玖さん」
ホーリーエンジェモンは深く息を吐いてから続けた。
「貴方は呪われています」 「呪い!?」 「幸い生命に関わるものではありません。ですが、一つ言えることがあります」
「……」
「貴方の今後の生活において深刻な支障をきたす、ということです」 「それって」 「この呪いは色欲に由来するもの。我々デジモンよりも貴方がた人間の方が影響力が大きく無視ができない」
ホーリーエンジェモンの説明によると。 今、美玖の身体に浮かんでいる印は強制的にかけられた者と近くにいる者を性的に興奮させる呪いがかかっている証だという。
「この呪いの厄介な点は三つ。一つは呪いの効果は不定期に発動する」 「…」 「二つは現時点で呪いを解く方法がない事。この教会は闇の力を防ぐ結界を施してあるため中にいる間は効果の発動を防げますが、貴方の職務を考えれば長居はできない。そして」 「三つ目は?」 「これが最も厄介ですが、発情するのは貴方がた人間の異性だけではありません。……我々、デジモンまでも発情させる」
ありえない。
思わず、口を開いた。
「けれど…デジモンには、性別がないはずじゃ」 「ご存知だからこそこの呪いは厄介なのです。私でさえこの教会を出てしまえば例外ではない。貴方にかけられた呪いは、デジモンに対して発情させるだけでなく、デジモンの身体に干渉して呪いの主と交わりやすいものに変質させる特性がある。故に女性型デジモンだろうと危険です」
それを聞いて嫌な予感を覚えながら、美玖は訊ねる。
「……その、デジモンと、……して、妊娠の可能性はありますか?」 「曖昧な答えをしなくてはなりませんが、少なくとも、無いとは言えない」 「!」 「リリスモンめ、相当な悪趣味に及んでくれたものだ。ともあれ、私の方で手を打ちます」
ホーリーエンジェモンは苦虫を噛むような表情を浮かべながらも希望はあると話した。 呪いの力を劣化させる護符を作成するので、時間こそかかるものの待って欲しいという。 話がついた後、美玖はホーリーエンジェモンの手配で、彼の補佐と教会の土地の管理を担っているシスターに車で送って貰うことになった。
「あなたも大変ね。デジモンを相手に探偵なんて、骨が折れない?」
車を運転しながらシスターが尋ねて、それに美玖は首を横に振る。
「大丈夫です。デジモンと話をしたりするのは、…私の、支えなんです」 「…そう」
シスターはその返事に少し心配げな面持ちだったけれど、納得してくれたようだった。
「ともあれ、彼からの忠告はちゃんと聞いてなさい。今のあなたは女性としての今後が大変なんだから…ね?」 「はい」
それ以降。
探偵業は変わらず運営はしたものの、美玖の行動は大きく変わった。
シルフィーモン達を避けるようになったのだ。
依頼を受ける時でさえ、依頼人が同性の時はシルフィーモン達を遠ざけ、逆に異性の時は彼らに応対させている。
移動手段もグルルモンに頼らず、なるべく徒歩か実家から持ってきたスクーターを利用するようになった。
不審がられたが仕方ないと、何度も心の中で押し殺した。
でなければ…デジモンのあり方が自分にかかった呪いのせいで歪められてしまう。
それでも苦しかった。
身体の奥が幾度となく燻る。
こればかりは、抑えたところでどうにかなるものでもなく。
それでも、身体を押さえながらひたすら耐え続ける、そんな日が続いた。
日に日に、印はその色を濃くなっていく。
けれど、誰かに初めてを捧げる勇気があるわけもない。
「せんせい、ほんとうにだいじょうぶ?」
ある日、ラブラモンがコーヒーを持ってきた時も、発作が起きて一人個室に立てこもっていた。
「…ごめんね、はあっ、はっ…ラブラモン。ちょっとの間だけ、はっ、だから」 「かぜ?びょういんいく?」 「はぁ、はぁ、…風邪じゃないの。風邪じゃないけど…皆の近くにいたら、はあっ、迷惑かけちゃうから…」 「そうなの?…うーん…」
コーヒーを隣の部屋に置く事だけ告げて、ラブラモンの足音が遠ざかった。
(……いつまで……)
こんな生活が続くのだろう。 疼く身体を抱き締めるように泣いた。
―――
「美玖」
その夕方、シルフィーモンがファイルを手渡してきた。
「この間の事件の調査結果だ。阿部警部が持ってきてくれた」 「ありがとう」
発作が起きないか内心恐々としつつも、眼鏡をかけてファイルを開く。 それを見ながら、シルフィーモンが切り出してきた。
「美玖、ここ最近の君の行動だけど」 「…」 「ラブラモンもグルルモンも君の事を心配している。この間ホーリーエンジェモンに送って貰って帰ってきたそうだが、何があった?」
…言葉に詰まった。 例の呪いの件を、彼らに話していない。 デジモンにも作用する呪いを彼らに話したら、今以上に心配させてしまうのではと思ったから。
「…言えない」 「美玖、大事な事ならきちんと話してくれ。でないと私も君に何をしてやればいいかわからない」
シルフィーモンの言葉に尚のこと詰まる。 もちろんシルフィーモンの事は信頼している。
けれど。
(何度も助けて貰ってるんだ。けれど、この呪いにばかりは……)
その沈黙を遮るように電話が鳴る。
「ごめん、お風呂に行ってくる」 「美玖!……全く」
美玖が逃げるように浴室へ向かったのを腹立たしく思いながら、シルフィーモンは受話器を取っていた。
「こちら五十嵐探偵所です。ご用件をどうぞ」
『おや、貴方かシルフィーモン。久しぶりだな』 「久々だな、ホーリーエンジェモン。この間は美玖が世話になったようですまない」 『何、通りすがりだ。危うい所だった』
ホーリーエンジェモンの声は知人の声を久々に聞いてか安堵したようなものだったが。
「それで要件は?こちらもお前に聞きたい事がある」 『今、彼女は?』 「入浴中だ」 『ふむ。……彼女から呪いの事は既に聞いているね?護符が完成するまでの対処について提案をしたくてだな』 「待て、呪いだと?」
その言葉を聞いて硬直した。
呪い。
(彼女が私達から距離を置いている事と関係があるとしたら、それか?しかし、いつ……)
「……いや、あの時か!」
リリスモンに殴りかかり、その場で彼女から何かをされていた姿を思い出す。
『話していない!?』 「まだ、一度も」
シルフィーモンが答えるとホーリーエンジェモンの声は低くなった。
『いいかシルフィーモン、聞いてくれ。今、彼女は深刻な状態にある。現状その解決状況の見込みは薄くてな…少しでも呪いの効果を劣化させるための護符の作成を急いでいるがこれだけで確実な手段とはいえない』
ホーリーエンジェモンから呪いについての詳細を聞く。 聞けば、その呪いはかけられた者だけでなく近くにいる人間の異性やデジモンを発情という状態に陥れる。 のみならず、デジモンの身体に干渉し、人間や他の生物同様性別の概念を持つ身体に変えられてしまうとも。
しかし、交わらなければ彼女の体内に闇のエネルギーが蓄積し、その結果死に至る、と。
「…それは…」
ここ最近に渡って美玖が誰からも距離を取ろうと必死な理由がはっきりする。
「私は疑問だったんだ。何故美玖が私達を避けようとするようになったのかと。それをお前に聞こうと思っていたが…そういう事だったんだな」 『こちらも、まさか彼女が呪いについての説明をしていないのは想定外だ』 「いや、彼女は私達に迷惑をかけたくないと、あるデジモンが言っていた。だから話したがらなかったんだ」
腑に落ちた。 しかし、そうだとしたら、どうしてやればいい?
このまま美玖を見殺しにしていいのか?
『そこで、改めて提案がしたい。……いや、協力して欲しい』
ホーリーエンジェモンが訊ねる。
「聞かせてくれ」
『彼女に人間の恋人や親しい異性はいないか?』
「……彼女とその友人のやりとりを聞く限り、恋人はいないはずだ。親しい人間にも心当たりがあるが、彼は既婚者だ」 『そうか………シルフィーモン。そこまで聞けば私としては、…お前以外に頼みたい奴はいない』
かなり間を置いて、ホーリーエンジェモンは続けた。
『……呪いの発作が起きた状態の彼女に近づいて、彼女を抱いてくれ。呪いの影響を受けてしまえば、お前の身体が変質してしまうのは免れない。が、彼女の呪いから来る状況の悪化と死そのものを防ぐ唯一の手段だ』 「…そんな事をして、大丈夫か」 『彼女は妊娠の可能性について聞いてきた。当然不安だろう。だが、現状で、呪いの発作を抑えるためには性行為を行って精液と呼ばれる物質を彼女の中に出すしかないのだ。おそらくリリスモンはそれにより彼女を快楽に堕とす目論見だ。呪いに耐えようとすればする程、彼女の情欲が抑えられなくなり死以外に最悪の結果さえある』 「色欲というものはデジモンには無縁だからか」 『私が彼女を発見した時、彼女は呪いの影響を受けた人間に襲われていた。抵抗の利かない様子で。彼女にとって、知らぬ者に自身の身体を許すなどありたくはないだろうから…そういう意味で、私はお前に任せたい。頼めるか…?』 「わかった」
……シルフィーモンは、引き受けた。
(…私に究極体に進化するだけの力と経験があったならばまた違っていたかもしれない。少なくとも、美玖を苦しませる結果は防げたはずだったんだ)
夜が更けて。
美玖が就寝に入る頃を見計らって。 コンビニに向かった彼は終始、店員から好奇の視線を投げかけられながら帰宅した。 …デジモンが人間向けの本を買うのが珍しかったのだろうか。
「しるふぃーもん、コーヒーいる?」 「ありがとう。そこに置いておいてくれ」 「はーい」
ラブラモンが淹れてくれたコーヒーを脇にシルフィーモンは買った本を手に取る。 買ったのは成人向けと書かれたコーナーの本……要するにエロ雑誌だ。
それが数冊ほど。 美玖が見たら顔を真っ赤に速攻で取り上げられる可能性は高かったので、タイミングは今しかない。
「…なるほど、性別ごとの人間の身体とは、こういう…」
食い入るように、彼は雑誌から人間の性行為を学び取る。
…デジモンには性別がない。 だから、人間や動物のように、性の営みというもので子どもを産んで増やす事はない。 まさか、この場で学ばなければならない必要があるなんて、思いもしなかった。
――
ひと通り学んだところで、冷めきったコーヒーを喉に流し込みシルフィーモンは椅子を立った。 実行に移す時だ。
早くの就寝についた美玖。 寝る場所も、シルフィーモンとラブラモンから離れて個室だ。
この部屋は今の探偵所になる前は、探偵アグモンと一緒に過ごしていた部屋でもある。
ベッドもそのまま埃をかぶっていたので、多少は快適に寝られるよう綺麗にした。
ぎしり、とスプリングが軋む音。 中々眠れないまま美玖は目を閉じている。
(…こうして静かだと、シルフィーモンが来る前の頃思い出すなぁ。それを考えると、今の探偵所はだいぶ賑やかになってきたんだね)
そう思った時。
耳が、カタリ、と微かな音を拾い上げた。 一瞬気のせいか、と思ったのだが。
からからからっ
音がすぐ近くで聞こえ、跳ね起きた。
「誰!?」
この部屋は二階だ。
音の出所は外に面した窓。 そこから侵入してきた相手が何者か考える間もなく。 ベッドから半身を起こした美玖の前で、空いた窓から入ってきたのは……
「…すまない」
シルフィーモンだった。
「どうして…」
投げられた問いに彼は答えず。
「鍵がかかっていたから。それと…」
躊躇うような面持ちで答えながら、シルフィーモンは美玖の眼前まで近づくと。 彼女の身体に腕を巻き付けるようにして抱きしめてきた。
「な、何を…!?」 「美玖」
美玖をベッドに押し倒しながら、シルフィーモンはゴーグル越しに彼女の目を見据えつつ、
「聞いたよ。君の呪いの件を」 「ど、どうして!………まさか、先程の、電話!?」
「ホーリーエンジェモンがな、君に用だったらしい。私が代わりに出たからと頼み込んできた」
「……それで、それで、何て…… っ!」
ずくりっ
もう何度目かわからない、身体の奥を襲う強烈な熱と疼き。 今回はシルフィーモンが目の前にいる。
(駄目、駄目よ……それ、は)
「……、これが、その呪いか」
シルフィーモンも気づいたようで美玖に様子に気遣うような様子を見せている。 そして彼は自分の胸当てと肩当てを外し始めた。
「し、シルフィーモン…?」 「ホーリーエンジェモンから提案を受けた。君の呪いを抑える為の護符が完成するにまだ時間がかかるから、その呪いによるものを発散させる手段として、君を抱いてくれ。と」
「……え?」
理解が追いつかない。
「待って、それってどういう意味ーー」
その瞬間、美玖の意識がぼんやり霞み始める。 身体が、以前のあの男に襲われた時のように、急激に変化していくのを感じる。 両脚の奥から潤みが満ちて滴りだす。 シルフィーモンの手が美玖の着ているパジャマのボタンを外しだした。
「…さっき読んだテキストの通りなら…」
呟きながら、シルフィーモンがパジャマを脱がし、ブラのホックを外す。
「だ、駄目…」
押しのけようとしても身体が言うことを聞かない。 ギシリと大きくスプリングが悲鳴をあげて、シルフィーモンが乗り上げてきた。 張りとしなやかさを持つ白い獣毛に覆われた大きな手が、そっと美玖の胸を包むように覆うと下からやんわりと揉み上げてきた。
「んっ」
力を加減したものなんだろうけれど、心地よさを感じながらどこかで物足りなさも感じる。
「…痛くはないか?」
そう聞くシルフィーモンを美玖は潤んだ目で見上げる。
「大丈夫そうなら、続けるぞ」
「ん、あっ、ふっ、んんっ、あっ…」
胸を揉む手に少し力が加わったように感じる。 じれったく美玖は震えた。 …いや、手だけじゃない。 片方を手で揉まれ、もう片方が彼の口で愛撫されている。 ちゅぱ、ちゅっ、ちゅるちゅると、唇が、ザラザラした舌が、牙が刺激を与えてくる。
「あ、あ、あっ、あっ…!」
空いた彼の片手は美玖の下腹部に伸びている。
「んああっ、はあっ、ああんっ」
指に触れられるたびに濡れた水音が伝えてくる。 腰が激しく浮く。
(もう、もう、駄目っ…駄目っ、てぇ…)
だがまだだと言わんばかりに責めは継続される。
「ぁあん…!はぁ、はぁ、お、お願いぃ…お願いだかっ、んん!」
一瞬、視界に迫ったゴーグルに顔をぶつけるかと思った刹那、シルフィーモンの唇が美玖の唇を奪った。
「ん、ふっ、ふぁ、んっ」 「んふ、はっ、あはっ、ふ…!」
舌が絡み合い、互いの唾液が互いの口の中で混ざる。 大事な所から手が離れて、両胸が揉まれる。 脚の間に彼の腰が入ってきて、羽毛のもふもふとした手触りを感じる。
そこで、美玖の太ももに硬い何かが当たった。 とん、とん、と小突くように揺れるそれは、…まさかとは思ったが。
(そ、そう…か…、呪いで…)
ホーリーエンジェモンが言っていた、呪いの特性。 本来性別を持たないデジモンの身体に性別の概念を植え付けて、人間との交わりを可能にさせる特性。
今まで、今まで、避けていたのに。
じわり、と涙が浮かぶ。
(シルフィーモン…ごめん、なさい) 「…っ、ぷ、はっ」
唇が離れて、混ざり合った涎が糸を引いていた。
「……大丈夫、か。美玖?」
シルフィーモンが息を荒くしながらも尋ねてきた。
「ごめんなさい…私の、呪いのっ、せいで」
ぼろぼろと涙がこぼれ落ちる。
デジモンという大好きで憧れだった存在とこんな形でひとつになりたいと願ったわけじゃない。 熱と期待に冷めやらぬ身体とは別に、こうなってしまった罪悪感に涙だけは心のままに流せた。
「…気にする、な。私が君に、こうならせてしまったんだ。君の、せいじゃない」 「んっ」
優しい声音の直後、再び唇を塞がれた。 胸から離した片手で涙を拭ってくれた助手に、どうしようもなく身体が今まで以上に熱を帯びるのを感じる美玖。 意図せず胸から身体を、彼の細くもしなやかな筋肉のついた身体へと押しつけていた。 唇を離しながら息荒く、シルフィーモンが聞いてくる。
「美玖、……そろそろ良いか?」 「………うん」
美玖が頷くと、彼女の腰に両手をかけられる。
大事な所に当たる硬い感触。
「いくぞ。痛かったらすぐに言ってくれ。……く、ううっ!」
………それは。
人間とデジモンの関係にかけられていた線引きが崩壊した瞬間であり。
もう戻れない一人と一体の関係の始まりとなった。
ユウキ
「きっと誰が誰なのかわからない事は無いだろう。そう思いながら久々の感想投稿にやってきましたこちらこちら側の主人公です」
ベアモン
「いや前回の感想から16話も経ってるし何なら前回は第二章メンバーが喋ってたわけだし何より今回の話の内容的に僕らが感想語るのって不適合じゃ」
エレキモン
「なぁに大丈夫だ。適当に喋ってれば感想ってのは自然と出来上がるもんだよ。何も書かないより何か書いたほうが有意義だってそれ一番言われてるから」
ユウキ
「そうだぞ。何でもいいから前回までのあらすじをだだーって並べて今回の話の展開についてくっちゃべる。なんならデジメンタルにもフレアリザモンの頭の鎧にも喋らせて面白おかしくやれ。それが1000年前から続く感想の書き方ってやつだろ!!」
ベアモン
「そんな常識少なくともサロンには無いしそもそも君本編でそこまで語彙力無いでしょ適当さだけ究極進化するn
《閑話休題》
レッサー(ミケモン)
「前回までのあらすじッ!! かなり数年前(大雑把)の事件によって心にトラウマを抱えた現役女サイバースルゥース五十嵐ちゃん、運命の相手っぽいような運命の相手であろうなシルフィーモンを護衛にデジモン絡みの事件をあれやこれや。なんやかんやあって元アヌビモンの犬畜生とかガルルモン亜種とかも加入しつつ、気付けばデジモン達の実家の冷蔵庫から現実世界へぶっコロ予告!! どうにかするためにチャイナ系犯罪組織の足取りを探ろうと頑張るけど銃弾食らったり突然SAN値チェック系神話触手の案件に絡まれたり「んほおおお!!」したりいろいろ黒いのに寝取られたりホラーの世界観に放り込まれたり不思議なおじさんと会ったりしていると、期限ギリギリの時期になって警察庁長官とご対面。即座に『探偵』としてではなく件の組織の『調査班』として抜擢されることになり、シルフィーモンやグルルモン達と一時離別。イーターの出現とか洒落にならない事態が表でも裏でも巻き起こってやべぇが続きながらも遂に組織の拠点の座標を特定。いざ潜入捜査してたらバレてヤベえババアに目をつけられてヤベえ!! 同伴してたメンバーもやられて、守護鳥フレイヤまで怪我するし、状況は混沌を極めちゃうし、アタイこれからどうなっちゃうのー!? 以上ッ!! 解説終わり!!」
ベアモン
「いろいろ雑でツッコミたい所があるけど、とりあえず一言。何でレッサーまで来てるの」
レッサー
「本編で出番あるまで暇で暇ゲージが最高潮だったから」
エレキモン
「暇だったなら仕方無いな。それはそれとして後でリュオンさんに怒られろ」
ユウキ
「しかしまぁ、こうして並べてみても……色々とやべぇ案件ばかりだよな。シュートモン回というかサッカー回ぐらいじゃね? 笑い話で済ませられた展開って」
ベアモン
「アレもアレで、人間とデジモンが共存している世界の難しさという意味では重要だったけどね。あとバイオレンスの一歩手前ではあったはず」
ユウキ
「で、今回の話ではこれまでの時点でも洒落にならない話が多かったところに遂に決定的なものが飛び出してきた、と……リリスモンの呪いか。流石は色欲という根本的な部分でデジモンとは遠く離れた概念を司る魔王、デジモンを”それ”に適合出来るようにするのはお手の物ってことか……流石に予想してなかった展開だ」
エレキモン
「だよな。前々からみなみさんが『問題のシーン』があるとかなんとか呟いてたけど、俺達そのことを五十嵐が件の犯罪組織モブあたりに『"初めて"を奪われる』とか何かリリスモンのペット的なデジモンからの獣■とかそういう方向性で考えてたし。リリスモンが表に出た時点で十分有り得る可能性になったからな。あながち間違いではなかったけど」
レッサー
「まぁ時系列の関係上、この後のいつかに『んほおおおおおおおおおおおおおお!!』するんですけどね。初見さん」
ベアモン
「読者の誰もが直視しないよう配慮してた事をストレートに言うのやめて」
ユウキ
「今回の話で起きたことを考えても、シルフィーモンが『んほおおおおおおおおおおお!!』する羽目にならなくて良かったな……!! アヌビモン(ラブラモン)やヴァルキリモンのは見てみたかったけど」
ベアモン
「最後の言葉が無ければ素直にそうだねって同意出来たのに。どうして君たちは本編では真面目なのにこういう場ではいろいろ台無しにしようとするのかな?」
レッサー
「わざわざ言わなきゃ解んねぇか!? ただでさえ真面目に語ろうとすりゃ決まって暗くなるのは目に見えてんだ。それが解ってて真面目であることが馬鹿みてぇだから面白おかしい不真面目に全力投球してるだけに決まってんだろッッッ!!!!!」
ベアモン
「暗い話を読んだのならちゃんと暗くなるのも大事だと思うなぁ僕!!」
ユウキ&エレキモン
「「つーか、お前が真面目ぶってるの見るとなんかムカつくんだよね」」
ベアモン
「君達、向こう側から天罰飛んできても庇ってあげないからね」
色々と洒落にならないことが起きて、物語が次の段階に進んだというか、明らかに裏に『強欲』の影があるって時点でまだまだ事件は終わらないよねというか。そうか、色々起きまくってるけど物語の全体像的には多分まだこれ序盤なんだなと思い知らされたというか。
五十嵐探偵事務所の物語、今後はより見逃せない展開になりそうですね……。
好き放題しましたが、今回の感想はここまでにしたいと思います。
PS これからしばらく、どんな事が起きても、常に心に「でも、後に『んほおおおおおおおお!!』するんだよね……」の精神を……。
今回に関してのコメントということで。
今回の投稿に関して、こちらとは別にピクシブに投稿したものとは少しシーンの描写がズレています。
それは、以前に承認待ちの記事という出だしと共に出た文面により、一週間近く投稿できなかった関係で一部変更したものがそのままシル子さまの手により承認と共に投稿されたからです。
そのため一部の文を調整しました。
そして、今回全カットいたしました本番シーンに関してですが…元となったSSにて書いておりますので18歳以上で興味のある方のみどうぞ。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17087638