久しぶりの投稿になります。
ヤマもオチも無い短編です。
現〇〇町、合併以前〇〇村についての話である。
この地域一帯には「かてん様」と呼ばれる神が土着信仰として存在していた。
山の中にある社には、翼のある龍神と角の生えた鬼が祀られており、それぞれ豊穣の神・竈と厄除けの神として篤く信仰をされていた。
口伝を書き記した書物によると、この神は2柱で1柱の神であるらしく、荒ぶる龍神「雨離渡(うりど)」とそれを宥める優しき火の神「亜久児(あぐに)」と伝わっている。
日本以外にもこの「かてん様」によく似た信仰が南アジア・東南アジアの一部地域で語られている。インドを中心に信仰されるヒンドゥー教の邪竜「ヴリトラ」と火の神「アグニ」がこの「かてん様」の原型ではないかと考察される。これが日本に渡り、仏教におけるアグニ神の名称「火天」から、今の信仰へと根を張ったのだろうか。
かつては五穀豊穣と火除けを祈願し、村では「かてん神楽」なる、かてん様が被っているとされる鬼の面と竜の面をつけ、共に舞う奉納舞踊が行われていた。
今は後継者が絶え、その様子を映した古いフィルム撮影の映像しか残っていない。
今はひっそりと地元の有志者によって小さな社は守られている。
地元の人々の一部からは「かてん様を見た」と言うスピリチュアルな目撃談が語られているが、(目撃者がかなりの高齢者であることも含め)真偽は定かでは無い。
しかし、目撃談では共通して「鬼の面をつけた金髪の青年」の話が出てくる。
山で迷った人間を社に招いて一夜の宿を提供した、おぶって山の麓まで送ってくれた、邪気を払う火を松明に与えてくれた……等。
もしかしたらかてん様は人間の事が好きな神様なのかもしれない。
婿入り烏
山は女神が住まうとされている。
その山にいたのは、美しい女の姿に片腕が巨大な蛇になっている女神で、勝気な性格で戦は負け知らずという勇ましい伝承が残っていた。
ある日、マタギの娘が父であるマタギを追いかけて山に入ってしまった。
悪意はないにも関わらず、女人禁制の神域に入られた女神は激しく怒り狂い、掟を破ったマタギの住む麓の村に毒蛇達を差し向け恐怖に陥れた。
このままでは村が壊滅してしまうと嘆く村人の前に、仕事を探しているという1人の傭兵が現れる。
かの雑賀衆の1羽であったという男は、こうなったならばそれは女神に在らず、化け物だと言い切り、背中に背負っていた火縄を丹念に手入れして山へと向かっていった。
女神退治だと洒落込む男に、村人達は恐れおののくばかり。
女神が更に激昂するか、男が首を持ち帰るか。
震えながら男を待ってはいたが、数日経っても、数ヶ月経ってもついには男はかえってこなかった。
しかし、半年が過ぎようとしていたある夜のこと。
村の男が不思議な夢を見た。
緑髪の美しい姿をした女と、正座をして向き合っている。
片腕の大蛇がちろちろと舌を出す姿に、男はこの目の前にいる女が山の女神だと感づきすかさず頭を下げて震え出す。
「顔を上げろ。頼みがある」
凛とした声音に従い顔を上げると、女神はぽう、と頬を赤くして、もぢもぢと体を揺すりはにかむように顔を逸らした。
「そなたらがあの男を我の元に向かわせたのだろう?……此度の無礼は不問とする。速やかに蛇共を我が山に呼び戻そう。……しゅ、祝言の準備が間に合わぬのでな……」
着恥ずかしそうに唇を尖らせて語った女神の言葉に呆気に取られつつも、「おめでとうございます」と返せば、女神は嬉しそうに口角を緩ませた。
目が覚めた男は村人達に掛け合い、村にある食料や釣った魚、鳥肉、花、綺麗に焼いたつがいのかわらけ等をかき集め、山の中腹にある社へ「結婚祝い」を納めた。
それからというもの、山は更に豊かに育ち、村の暮らしも食べるものに困らぬようになった。
雑賀の一羽が女神の首ではなく、心を撃ち抜いたということで、女人禁制を解かれたその山の神社は縁結びの神としてパワースポットとなっている。
社に奉納された夫婦神の夫神の姿は、ケモノガミ信仰にて語られる「烏の大魔縁」に大変よく似ているが、同じ神であるのかは解明されてはいない。
待っていたぜケモノガミ信仰! 夏P(ナッピー)です。
デジモンサヴァイブが発売したのも気付けば遠い昔。トゥルーED的にどう考えてもデジモンサヴァイブ02出してくれなきゃよぉ~と思っていますが全然音沙汰無くてやはりアカンかったか……とガックリ来ておりますが、それはともあれケモノガミ信仰待っておりました。
しかも今回はサヴァイブで無論ハブられたアグニモン族の話! わざわざ仏教由来の火天の名を絡めてくるのもニヤリ。実際に現れたとされる“かてん様”は、龍と人(鬼)が共に踊る奉納演武を経て統一されたアルダモンなんじゃないかと思いましたが、アルダモンの元ネタであるアルダナーリーシュヴァラと繋げるのはちょっと厳しいか……? これ多分日本全国探せば光や風、雷の闘士ぐらいは祭られてるんじゃなかろうか。でも光は元ネタ的にも欧米かしら。
続けてこれは女神と呼ばれていますが間違いなくメルヴァモンだと一瞬でわかる話で、しかも最終的にはまさかの嫁入り。人食いの山姥を彷彿とさせる展開でありながら討ち取られず終わるとは。雑賀衆と言えば孫市の家紋である八咫烏ですが、それを思わせる大魔縁にも思わずニヤリ。ヤタガラモンというよりカラテンモンでしょうかと思いつつ、前回の大魔縁がベルゼブモンとのことなので、クロスウォーズ的にメルヴァモンと関係が深いベルゼブモンXW(烏っぽい羽根)と掛けられているのか……わざわざ山へ向かう際に背負った火縄を丹念に手入れしてという描写があるので、恐らく夫神は片腕が火縄銃と一体化してベレンヘーナSDXとなっているのでしょう。
というわけで、やはり非常に面白い! 今後もお待ちしております。