夢の中で銀色の竜のような肉塊が黒い血反吐を吐き、恨めし気にこちらを見ている。
尾は二本あり、翼は四枚。
醜悪な顔をしている。
町全体に灰色の濃霧…。
生きているだけでひたすら大きなデジタルフィールドを呼び寄せてしまう人間が居る…。
現実界とデジタルフィールドを行き来しながら生きている人間が居る。
デジモンは基本、文字と絵だ。
彼らの血液は黒い。
アニメの血液はみな黒い。
まるで神に全てを気に入らないと否定されたかの如く…。
藍玉「これは…。」
ここは現実界のはずだった。
藍玉は進みたくないと思いながらも誰も居ない空間を進んだ。
そこには夢の中と同じあの銀色の竜の肉塊が居た。
なんでだろう…見ていると苦しい…。
ひたすら巨大だが、今のままでは使い物にならないことぐらいは分かる…。
黒い血をぽたぽたと口から垂らしながら重そうな四枚の翼と二本ある尻尾…。
醜悪な顔。
炭のような香りがツンと鼻をつく。
???「…あなた見えるの?」
「それが?」
藍玉は声のした方を見た。
黒い服、紫色の目、茶色の髪。
藍玉「誰?」
「退いて、始末するから。」
藍玉「…。」
藍玉はそこを退こうとした。
突然、重油のような黒い血反吐を吐きだしている竜は黒い服を着た女にぐるんと顔を向けて咆哮を放った。
凶暴性を現したのだ。
肉塊の竜「オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
邪悪な竜そのものだ。
これではまるでホラーゲームのクリーチャーだ!!
その竜とも肉塊ともつかないそれは青い空気咆を放つ。
恐ろしい肺活量だ。
「瑠香、下がって!!」
現れたのはサクヤモンだった。
サクヤモンは結界を張って黒い服を着た女を空気砲から守った。
肉塊の竜が青い空気砲を放つたびズキンと藍玉の胸を痛めた。
知っている…この技…。
私は知っている気がする…。
ただしそれは…デジモンじゃないはず…。
銀色の肉塊の竜が攻撃を放つたび、頭にノイズが走る。
攻撃名 ?????
攻撃名 ?????
攻撃名 ?????
攻撃名 ?????
攻撃名 ?????
瑠香「退いて!! そいつはもう無理よ!!」
「制御できないクリーチャーであってデジモンですらないのよ!!」
空気砲が結界にヒビを入れる。
攻撃名 ?????
攻撃名 ?????
攻撃名 ?????
攻撃名 ザァァァ!
藍玉の頭にノイズが響き渡る。
藍玉「エ・・・ア・・・ロ・・・ブ・・・ラ・・・ス・・・ト・・・?」
まさか…この銀色の肉塊…。
銀色の肉塊は藍玉が何か悟ったの同時に攻撃を止めた。
サクヤモン「はあああああああああああああああ!!!」
金剛界曼荼羅だったがあまり効いている感じではない。
瑠香「そいつはデジモンですらないクリーチャーよ!!」
「退きなさい!!」
「あんたが退かないとそいつを倒せないの!!」
藍玉は驚いて竜を見上げた。
竜「…藍…玉…。」
藍玉「やっぱり…あなたでしょ?」
「なんでそんな姿してるの!!」
このキャラクターはかつて遊んでいたキャラだったことは分かる…。
わたしはこのモンスターが大好きだった。
どうしてクリーチャーに成る程、歪んでしまったのかわからない…。
何故、そんな姿になってまでも私の前に現れるの?
銀色の4枚の翼の肉塊の竜は黒い血を吐き出しながらバタバタと暴れた。
攻撃で苦しがっているわけでもない。
何かある。
この竜をこの世界で使い物にする方法が…!!
藍玉は必死で考えた。
とある存在であったキャラに4枚の翼はなかった。
2枚の尾っぽでもなかった。
まるで二人羽織だ。
瑠香「そいつは力の源としてあんたを依り代にしてんのよ!!」
「もう無理よ!! 諦めたら退きなさい!!」
何か重なって2人場織になっている感じ…。
藍玉の頭にピーンとした何かが浮かぶ。
ジョグレス!!
ジョグレスで竜ならアイツしかいない。
藍玉は銀色の肉塊の竜に対して決死の力を込めて名前を呼んだ。
藍玉「インペリアルドラモン!!」
次の瞬間、銀色の肉塊の竜が光り輝いてデジコードが出現して彼を包んだ。
同時に藍玉の手にデジヴァイスが現れた。
瑠香「バカな…!!」
「そいつはクリーチャーでしょ?!」
姿を現したのは紛れもない見事なインペリアルドラモンだった。
インペリアルドラモンはただ黙って藍玉を見ている。
藍玉「こんなこと…できるんだ…。」
現実でデジモンテイマーズをやっている人間は生きながら二つのフィールドを行き来する。
カードスラッシュの唄の様に…。
彼らはデジタルワールドでない場所からふと出現するのだ…。
そいつをデジモンたらしめている力は実は力だ。
元々は争いという強い力であり、何らかの超自然的な力なのだ。
それが、納得してデジモンという皮を被って現れる。
アニメは要するにかれらの生皮なのだ。
生皮を被った黒い血液の何かは大抵、苦しみを抱えている。
ただ、それが何なのかあまりよくわからない。
デジタルワールドなどどこにもない。
デジタルワールドが本当に存在するのは人間の頭だけだ。
そのくせ彼らには大義だけあるから本当に不思議な話だ。
だから人間に黒い何かをしょわせるだけで人間には攻撃してこない。
主従になった人間が苦しみを共有してともに歩むしか道がない。
終わりなどどこにもありはしない。
本来であればアポカリモンやディアボロモンのような存在が現れて空想の世界を終わらせて私たちは大人になっていくはずだったのだ。
ヒーローの存在の方が実は異常なのだ。
そしてデジモンが居る場合、大抵前触れとしてポルダーがイストのような何かが起こるのが常だ。
挨拶の様に同じ方角から何か起こるのが大体の相場だ。
その場合、その方角にはデジモンが居る…。
インペリアルドラモンはいきなり凶暴性を現して咆哮をあげた。
藍玉は息が詰まり、膝をついた。
黒い服を着た女は藍玉を静かに見ていた。
インペリアルドラモンはいきなりメガデスを撃とうとする準備に入った。
藍玉は気が付いた。
目の前にいる瑠香という存在は人間ではないことに。
実際のデジモンテイムはどちらかと言えばホラーゲームをやってる感じに近い。
デジモンが現れる理由は何か理由があるのだ。
なぜ、そのデジモンが現れるのか理由を解かねばならない。
デジモンはテイマーを探して彷徨う。
その人間が気になるようであればずっと遠くの方から見ている。
藍玉はカードを買ったり、ソーシャルゲームでガチャを引くと苦しむ体質をしている。
インペリアルドラモンはメガデスをうちはなった。
瑠香とサクヤモンはすんでのところで避けた。
向こう側は全てが灰になって燃えた。
彼女達は見た感じ悪い存在でないのは分かる。
インペリアルドラモンの凶暴性が彼女の中に流れ込んできた。
藍玉「ぐ…。」
インペリアルドラモンは黒い服を着た彼女に対してもう一度メガデスを放とうとしていた。
瑠香「テイマーなら、制御なさい。」
「それはあんたの凶暴性でもあんのよ。」
瑠香と呼ばれたそれはサクヤモンと共に霧の向こうへと消えていった。
時を同じくしてデジタルフィールドが解除された。
藍玉は町中にいる。
ただ一つだけ違ったことは…藍玉の手の中にデジヴァイスがあることだけだった。