in Rainbows─或いは、漂流大陸五番地の風は如何にして彼女の内側を通り抜けたか─
一番地の地下の下水道には、真っ白い蛇がいるんだって。
表通り近くの路地裏、ほら、さとう病院の裏のあそこだよ。路地の入口から数えて三番目のマンホール。夜になるとあそこから顔を出して、近くにいる子どもを食べちゃうんだ。
蛇と出会って、助かった子どもなんて、一人もいないよ。
気を抜いちゃいけないよ。隙を見せたらいけないよ。気を付けてないと、見事にからっぽなんだから、わたしも、あなたも。
あの人はそうもいってたっけ。
「そんなに固まらなくて大丈夫だよ」
ごく新しく見える小学校の廊下。わたしの隣をあるくおじさん先生が、やさしい声をかけてくる。いや、固まってないです。
「ここは新しい街の新しい学校だ。クラスも小さくて、ほとんどが外の街から転校してきた子だから、打ち解けるのにもそう時間はかからない。フブルさんと同じで頭が良い子も多いし、きっとすぐに友達ができるよ」
それはどうかな。わたしは少しだけいじわるに唇の端を吊り上げる。先生──確か名前はゴトウ・ハルキだったはずだ──は悪い人じゃなさそうだったけど、わたしの境遇やら何やらを見るからに持て余しているようだった。これまでもそういう人の方がずっと多かったし、今さら何というわけではないのだけれど、あと、固まってないです。
そんなことをおもっていれば、気づけば私は教室の前に立っていた。真新しい教室で、中からは賑やかなざわめきが聞こえる。ゴトウ先生が言っていたとおりそこまでの人数はいないらしいが、それでも小学生は小学生だ。あまり頭がいいとは思えない。
「さ、私が入るから、呼ばれたら入ってきてね」
「だから、固まってないです」
「ん、どうかした?」
「あ、いや、なんでもないです」
顔を赤くして俯いたわたしをもう一度何事か励まし、先生は教室に入っていく。今日は新しく転校してきた子がいます。ざわめき。ハイ、静かに。それじゃあ、入ってきて。
わたしはおそるおそる扉を開けた。視線が私の頬に突き刺さるのを肌で感じる。肩をこわばらせながらみんなの方に一瞥もくれずに黒板に向き直ると、自分の名前をいくぶん小さく書く。
「ヒラノ・フブルです。よろしくお願いします」
その後に何か付け加えることを求めるような数秒の沈黙を耐えきれば、再びささめきが教室中に広がっていく。それを制して、ゴトウ先生は教室の後ろを指さした。
「あそこ、秋波くんの隣の席があいてるから、フブルさんはとりあえずそこの席に座って」
それにはさすがにわたしも声をあげた。
「シューハ? サギサカ・シューハ?」
「あれ、知り合いだったかい?」
ゴトウ先生の素っ頓狂な声を浴びながら、わたしは自分のものだといわれた窓際後ろの席に目を向ける。彼と目があえば、前に一度記憶したわたしよりも長いおかっぱ頭の黒髪が、小さく手を挙げて応えて見せた。
「ああ、はい。前に会いました」
「それなら丁度いいね。秋波くんも色々教えてあげなさい」
その言葉を背に受けながら、わたしは教室を横切り、サギサカ・シューハの隣に座った。すぐに彼が身を乗り出して、ささやき声を投げてくる。
「やあ、昨日ぶりだね」
「この学校にいるってのは知ってたけど、クラスまで一緒だとは聞いてない」
「ぼくも転校生がいるって聞いてびっくりしたんだけど、同い年だったんだね。歳は聞いてなかったっけ?」
「聞いてたら覚えてる」
「はいはい」
「なに、はいはいって……」
「仲良しみたいでよかった。でもおしゃべりはまた後でね」
ゴトウ先生のその声にわたしとシューハが顔を前に向ければ、小規模なクラスの全視線がわたしたちに向けられている。身を縮こまらせたわたしに、先生が声をかけた。
「ところで平野さん、今日はこれから授業だけど、教科書は?」
「あ……」先生が気に留めるのも無理はない。わたしは見るからに手ぶらだ。
「もしかして、忘れちゃった?」
忘れた、というか、えっと。
「それじゃあ、とりあえず今日のところは秋波くんに見せてもらって。次からは気を付けてね。秋波くん、いいかな」
「はい」
わたしの無言の反論を遮った先生の言葉に、シューハは頷いて、机を引きずって私の席に寄せてくる。わたしも諦めたようにため息をついて、椅子に深く座りなおした。
「ねえ、もしかしてフブル」
「うん、昨夜全部覚えた」
「はあ、なんていうか、うん、そっか」
ため息をつくシューハに、わたしは大げさに肩をすくめてみせた。
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するぎスマートシティ推進特区。。
平浜県の山地にあるなんということもない寂れた町だった駿木町が、構造改革特区制度によってそんな別名を得たのは2033年のことだった。地元の大学であり、もともとスマートシティの構想及び日常生活に応用できるデジタル技術の開発を推進していた平浜大学がキャンパスを一つ開いたのを皮切りに、様々な研究施設が行政の支援を受けつくられた。
──それでも、町の見た目は私の地元とさして変わらないな。
そんなするぎの玄関口である駅──町らしい町と隣接せず、田畑と山によって外界と隔絶されたこの町では、駅が文字通りの玄関口だった──その改札口を出たスーツ姿の男が一人、額に浮き出る汗をぬぐって、そんなふうに呟いた。
駿木市の開発が決まった時、行政及び平浜大学が直面したのが、もともと住んでいた住民たちによる反対だった。地元の老人たちが中心となって、昔ながらの街を守るために運動を起こしたのだ。平浜大学の近辺には他に町もある中で、開発地域に駿木が選ばれたことに行政が明確な根拠を示さなかったことが、かれらをヒートアップさせていた。
とはいえ、開発に際してのそのような反対運動はつきものだし、この手の対応に慣れているのは行政の方だ。手厚い保証、そして昔ながらの街並みをできる限り保全するということを条件に、かれらはさして時間をかけず開発を受け入れた。結局のところ、そのままの駿木市に未来が無いことは、長くそこに住んでいた彼らが誰より知っていたのだろう。
結果としてするぎの街並みは最先端の技術とどこか懐かしい空気が同居した奇妙なものに仕上がった。町には研究者や新興IT企業、その家族が流れ込み、商店や行政施設も新たにつくられた。当初は新住民との間に隔たりをつくっていた旧住民たちも、いまでは最先端の便利な暮らしと経済効果を享受している。『ひととまちがリンクする』をキャッチコピーに平浜大学が開発したウェアラブル端末“VITAL-BRACELET”の住民への普及率が98%を超えたことがその何よりの証左だろう。
男はもう一度するぎの街並みを見回し、唇をかみしめる。見た目は四十代ほどだが、生気に満ちた表情と整った眉のおかげで、十歳下と言っても通りそうだ。けれど今、彼はその眉を顰め、険しい表情を浮かべていた。
昔は自分も行政側の代表として反対する住民の家に頭を下げて回り、早急に話を進めたがる大学側に、街並み保全の条項を飲むように説得をしたものだ。彼は思う。でもそれは、決してノスタルジーと共に思いだしていい話ではない。自分がそこまで躍起になって事に当たったのは、駿木市を特区指定する本当の理由を住民たちに隠さなければいけない罪悪感からだったからのだから
「白鳥監査官、ですか?」
そのように呼びかけられ、スーツの男は思考の海から浮上した。振り返り見てみれば、三十代ほどの男が自分に向けて一つお辞儀をした。清潔なブルーのシャツに、音が立ちそうなくらいぱりっとした白いズボンが眩しい。ここは研究者とIT企業の町だ。フォーマルな場でもスーツを着ることはめったにない。それを加味して考えると、目の前の男の出で立ちはこの町ではかなり生真面目な方に分類されるのだろう。
「はじめまして。平浜大学スルギ総合研究センターの鷺坂雪彦(サギサカ ユキヒコ)と申します」
男が名刺を差し出してくる。改めて見てみれば、丸みを帯びたその顔にはしっかりとした格好とは不釣り合いなほどにあどけなさが残っていて、まるで余分な部位をそぎ落とす最後の工程をすっ飛ばして出荷されてしまった出来損ないの工業部品のようだった。研究者の顔だ。白鳥と呼ばれた男は思った。それも一流の研究者だ。
「ありがとう。白鳥正人(シラトリ マサト)だ。国立情報処理局情報通信戦略課長。今回は監査官としての立場だが、センターで起きた事態に対する対処も任されている。
「ええ、把握しています。“怪物屋”ですね」
「好きに言えばいい。迎えには倉科が来るものと思っていたんだが」
「倉科センター長は今回の事態の対処に追われていまして」
その返答に白鳥は大きくため息を吐いた。そのまま大股で歩き出せば、慌てたように鷺坂もついてくる。
「何かに追いたてられるような男じゃないよ。私に顔を合わせたくないんだな」
「センター長とはお知り合いでしたね」
「昔のな」
「センターに務めるものは皆知っていますよ。白鳥さん。十年前、センター長と共同で“デジメンタル”理論を提唱した。人間の感情の動きの分類をインプットした電脳を人間のバイタルとリンクさせ、簡易的・疑似的に電脳化したといえる人間同士の社会を作り上げることで、社会生活の中で起こる一部感情の高まりに対応した電脳体“デジメンタル”を採取することが──」
「君がいった通り、それを考えたのは私たちだ。講義は不要だよ」
うんざりした顔で白鳥は鷺坂の言葉を遮る。研究者の悪癖はどこも変わらないな。
失礼しました、といって、鷺坂が一台の車に彼を案内する。シートに深々と腰掛けながら、白鳥は懸案に関する問いを投げた。
「それで、サンプル第Ⅴ号の脱走については?」
それを聞かれたとたんに鷺坂は苦虫を嚙み潰したような顔で、手首のバイタルブレスを操作した。同時に白鳥の端末が震える。それを開けばごく簡易的な資料が目の前に展開された。
「ことが起こったのは昨日の午後17時23分のこと。第Ⅴ号にモニターした特区全体の情報を与える実験の最中でした。 “古代種”として分類されている第Ⅴ号が興味を示す特定のバイタルを探すため、一日に一度行っていた実験でした」
「実験の最中?」白鳥は眉をあげる。
「複数人の研究員がそれを見ている中での脱走劇だったというわけか」
「ええ。当然第Ⅴ号は閉じた電脳の中に閉じ込めていたんですが」鷺坂は首を振る。
「一昨日のデータを与えたとたんにⅤ号の活動が活発化しまして。自分のいる電脳から出たがるような反応を見せたんです。その直後に電脳が何者かによってネットにつながれて──」
「問題はそこだ。第Ⅴ号が異常な反応を示し、それに呼応するかのように研究所内の何者かがⅤ号を外に出した。私が監査官として来たのもそのためだ」
「わかっています」心底うんざりしたように鷺坂は頷いた。
「現状全ての研究が一時停止、研究員も皆連絡の取れる状態で待機を命じられています。内部の人間がⅤ号を外に出したなら大ごとだ。実験中だったとはいえ、Ⅴ号のいた電脳のセキュリティは厳重でした。ネットさせるには高位のライセンスが複数必要です。ひとつはセンター長が持っているけれど、同様の権限を持っている人はあの街に他にいませんでした。センター内の人間が外部の協力なしに開けるのは不可能です」
「ハッキングは?」
「極めて困難です」
「不可能ではない、ということだな」
「一般論を言えば、どんなシステムだってそうですよ」
セキュリティの内側にいる場合は特に。白鳥は口の中で呟く。
「第Ⅴ号の追跡は?」
「ある程度までは追えました。特区内の回線を行き来しているようでしたが、脱走から27秒後に完全にネットから気配が消えて──」
その言葉に、白鳥は深くため息をついて、眉間を抑えた。
「 “リアライズ”か」
「おそらく」
「由々しき事態だ。平浜基地に連絡は? こういう時のために自衛隊基地がほど近い駿木に特区を建設したはずだ」
「すでにセンター長が連絡済みです。有事の際にはすぐに動けるように待機してもらっています」
「住民に避難勧告は?」
「いいえ。機密保持の観点と、Ⅴ号自体にリアライズしてもそこまでの危険性が無いことから、センター長の判断で出していません」
「悠長だな。連中は一度“リアライズ”すると完全に現実の生き物と同じ原形質を得る。下手をすると町から出られる可能性もある。そうなったらもうみつけることは難しいぞ」
「分かっています。 “リアライズ“する際にデジタル・モンスターの発する微弱な電磁波を手掛かりに捜索を試みてこそいますが、正直望み薄です。連中、人の背丈よりずっとでかいのもいるくせして、ほんの少しの電波異常だけで実体化しやがる」
「災害級のはまた別さ」
「例外中の例外の話じゃないですか」
そこまで吐き出してから、鷺坂は首を振る。
「すいません、愚痴っぽくなってしまって」
「いいや、無理もない。連中との戦いは壁に頭を打ち付ける作業に近いからな」
そういって白鳥は資料を映した手元の端末をスクロールする。
「Ⅴ号が異常反応を示した日のデータの解析は?」
「始めていますが、多くの職員が潔白の証明を待機して待っている状態で、おまけに住民全員の膨大なバイタル・データですので。解析には時間がかかります。ですが」
その言葉と共に鷺坂は端末を指さす。
「一昨日、新たにバイタルブレスを登録した二名。トオヤマ・ケンジにヒラノ・フブルか」
「特にヒラノの方ですね。まだ11歳の女の子なんですが、バイタル値が──」
その言葉を聞きながら資料に目を通した白鳥が不意に眉をあげた。
「心拍の急激な変化にブレスレットが反応。 “デジメンタル”か?」
「おそらくは。確認のため、センター長が直接出向いてます」
「倉科がか」
彼は大きくひとつため息を吐く。
「アイツは変人だ。何もないといいんだが」
「そうですね。小学生との接触ですし」
そう言って鷺坂も特大のため息を返した。白鳥はちらりと隣に目を向ける。
「気がかりなことが?」
「いえ、すみません。ただ」
「構わない。言ってくれ」
その問いに、彼は黙って視線を窓の外に泳がせた。それにならって白鳥も町を見つめる。昔の街並みを残した誇りのようなこの町は、しかし今見ると、脱色され、代わりに鮮やかな薬品を流し込まれたプリザーブドフラワーの集まりのようにも見えた。
「この町に、子どもがいるもので」
鷺坂が、何か恥ずかしいことでも言うかのように、小さな声でそう呟いた。
「あの、ほんとに見なくていいの?」
「37ページ。少数と少数の割り算。でしょ? いまやってる題問2のカッコ1の問題は──」
「はいはいはいはい、わかったよ」
うんざりしたようにそっぽを向くシューハに、わたしはちょっと得意げに鼻を鳴らす。今は算数の時間中、後ろでのこそこそ話にゴトウ先生は比較的寛容なようで、わたしたちは快適にサボることができていた。
いいや、別にわたしは話がしたいわけでもサボりたいわけでもないんだけどな。話しかけてくるのはずっとシューハの方だ。驚いたことに五時間目まで喋り通しだ。合間の休み時間にはクラスの他の子から囲まれ質問攻めにあってるのに、これでは気の休まる暇がない。
そう思った次の瞬間にはもうシューハがまたわたしの方を振り返ってくる。ザシキワラシさながらのおかっぱ頭を構成するさらさらとしたその髪は少しの光も通さないほどに黒く、肌は夏の最中だというのに真っ白だ。その肌の上に轢かれた線の細い眉と目と鼻と口の配置は改めて見てみると、おそらく、かなりきれいなのだと思う。見ていると腹が立つ。
「それで、フブルのその記憶力なんだけど」
「うん」
「どの程度なんだい?」
「この町の地図は全部覚えたって話はしたよね」
「それは流石にもう嘘だとは思わないよ」
「今年の教科書も全教科分覚えた」
「とんでもないってことはもうわかるからさ、こう、範囲とか、限界とかってないの」
「うーん」
わたしは首をひねる。自分の物覚えの程度が人とは違うことは昔から嫌というほど思い知らされてきたけれど、それをわざわざ人に説明しようとしたことはなかった。おにいちゃんはなんとなくで分かってくれてるし。
「そうだな、覚えられるのは、見たもの、聞いたこと、嗅いだにおい」
「だれでもそうじゃない?」
「一瞬でも見たもの、聞いたこと、嗅いだにおい、全部。覚えてられる? わたしがしてるのはそれ。……何その顔」
「いや、実際に見てるからもう疑わないけど。なんていうか、とんでもないなって。いつまでも覚えてられるもの?」
「さすがに赤ん坊のころのこととかは覚えてないよ。それに、低学年のころはまだちゃんと曜日とか時間とか分かってなかったから。例えばどんなご飯たべたかは全部覚えてるけど、それが何月何日の何曜日かとかは、正直ぼんやりとしか覚えてない」
「映像は覚えられるけど、それを系統だてて覚えることはフブル自身の頭が追いつかない、って感じ?」
「ムカつく言い方だけど、そう。系統? っていうのも、言葉と意味は分かるけどすぐにはよくわかんないし。だから──」
「はい、それじゃあフブルさん、ちょっと応用の文章題だけど、カッコ3の問題わかるかな」
ふいに自分に向けられた先生の声にわたしは弾かれたように立ち上がる。37ページの題問2のカッコ3、問題は一言一句覚えている。いるのだが。
「……わかりません」
「はい、それじゃあ隣の秋波くんは?」
隣でそう指されて立ち上がるシューハと引き換えに私は大人しく座った。そう、わたしが覚えられるのは文字や風景だけ。でも、それは瞼が全ての瞬間にシャッターを切っているようなもので、何かの意味に結びついた記憶じゃはない。だから、それが示す意味は分からない。当然、問題の答えも分からない。これはわたしが子どもであるせいなのか。わたしがわたしであるせいなのか、それも分からなかった。
わたしの隣でシューハはすらすらと先ほどまで見てもいなかった問題の答えを導いている。その正解までの筋道を頭に刻みながら、わたしはため息をついた。若干の手続き上のミス──おじさんは先生たちにも一度も顔を見せなかったらしかった──のせいでわたしがやってきたのは三時間目。それからずっと喋り通しのくせして、シューハは自分が質mんをするばかりで、肝心なことを何もしゃべらなかった。そう、例えば──。
どたん。教室の後ろで響いた音にわたしを含めクラスの全員が振り返った。見れば教室の後ろにあるロッカーから、一つのオレンジ色のランドセルが転がり落ちたようだった。
「オレンジ色! シューハのだろ!」クラスの男の子の誰かが言った。
「あ、ほ、ほんとだ、ご、ごめんなさい」
クラスに笑いが広がる。先生に戻してくるように言われ、シューハはぺこりと頭を下げてランドセルに駆け寄った。
そのランドセルをロッカーに戻す時に、彼がランドセルの中を軽く伺って何かをささやきかけたのを見て、わたしの頬からさあっと血の気が引いた。
いや、まさか、そんなわけないと思う。けれどわたしのその希望は、隣に戻ってきたシューハの蒼くなった顔と、その後の算数の問題の解き方を述べる、さっきまでとは比べ物にならないほどにたどたどしい口調に打ち砕かれた。
問題を解き終わり、冷や汗を垂らしながら崩れるように腰かけたシューハにわたしは詰め寄る。
「え、ちょっと、ねえ」
「うん、ごめん」
「え、うそ」
「ううん、嘘じゃない」
「連れて来ちゃったの? あの子のこと!」
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昨日の夕方。巨大な白蛇に襲われたわたしたちの命を救った仮面の鬼人、そしてその鬼人が光とともに消えた後に残されていた小さな青い“恐竜”。
夕陽が照らす小路ですうすうと寝息を立てるそれを挟んで、わたしとシューハは途方に暮れていた。
「え、 “恐竜”?」
「そうじゃないの、見るからに。ちっこいし、青いし」
「……」
シューハはそれを見下ろし、口をつぐんだ。
「ちょっとシューハ? 訳が分からないのはそうだけど、とりあえず助かったんだし、元気を──」
「すごい! すごいよ!!!」
「は?」
「 “恐竜”だ、ホントにいたんだ! 大きさからして子どもかな。でも体の色もカタチも、図鑑で見る恐竜とは全然違う。学説を覆すような新種なのか、そもそもほんとうに“恐竜”なのかな……」
突然の大声に唖然とするわたしをよそに、シューハはぶつぶつと何事かを喋りながらその竜をためつすがめつ見たり触ったりている。とてもさっきまで死を目前にして涙を流していたようには見えない。わたしはため息をついた。おたくくん、ってやつだな。
「ちょっと、あんまり揺すっちゃかわいそうでしょ」
わたしがそう声をかければ、はっと我に返ったようにシューハはこちらを向く。
「そ、そうだね。ごめん。ね、あの蛇はどこに行ったんだい? それにこの“恐竜”はどこから?」
「蛇は逃げた。大きなひとが助けてくれたの」
そう言ってわたしが仮面に木刀の鬼人と、彼がわたしたちを助けてくれたこと、そしてその後に恐竜がいたことを語れば、シューハは考え込むように顎に手を当てた。
「ふむ、つまり、その仮面のひとが、そこの恐竜に変わっちゃったのかな?」
「そんなことって」
あるわけない。そこまで言いかけてわたしは口をつぐんだ。あんな大きな蛇だっているわけがなかった。そんでもってその蛇が飛ぶわけがなかった。
「まあ、そういうこともあるのかもね」
「それって、どういうことなんだろう。ねえフブル、これはもしかしたら大発見かもしれないよ! あ、ところで」彼はそう言ってわたしの方に目を向ける。
「あれ、どうなったの? きみの“おまじない”」
「そういえば……」
お母さんが教えてくれたおまじないと一緒に、地面に手を突っ込んで取りだしたあの卵のようなオブジェは、あの鬼人のしゅつげんと入れ違いに消えてしまい、今も行方は知れなかった。
どこかにいった、そうシューハに応えようとしたとき、わたしの手元で小さな電子音がした。見ればそこで、バイタルブレスが画面を光らせ振動している。
「あ、これ……」
わたしがそう言って左手首を差し出せばシューハも同じように画面をのぞき込む。そこにはグリーンの、つぼみのような卵のような、あのオブジェのドット絵が映し出されていた。
「ここに入っちゃったの?」
「かもね、それにこれ」
そういってシューハがわたしのブレスレットの縦長の液晶画面の上を指さす。そこには先ほどまではなかった、何かのエンブレムが刻まれていた。
「これ、V? アルファベットの」
「そう見えるね。Vと言えば」
そう言って彼は背後で眠る恐竜の額を示す。その竜の青い額には、黄色く、アルファベットのVが刻まれていた。
「わ、ほんとだ」
そう言ってわたしもシューハにならい、指先でその竜に触れる。思いの外つるっとしたその肌を撫でると、またバイタルブレスが振動した。画面を見れば、何かの文字列が得意げに点滅を繰り返している。
「“Ⅴ‐mon”。ブイモン? それがこの子の、名前?」
「驚いた。まさかバイタルブレスにこんな隠し機能が──」
そう言ってシューハが言葉をつづけようとしたとき、わたしのブレスレットから今度はけたたましい電子音が鳴り響いた。
「ひゃあ!なに、なに?」
「ああ、通話機能だよ。えっと」
シューハがわたしの手首に手を伸ばしてボタンを押せば、うんざりするほど聞きなれたうるさい声が鳴り響いた。
『おいフブル! どこでなにしてるんだよ!』
「あ、おにいちゃん」
『ちゃんと帰るって言ってただろ! さすがの天才少女も迷ったか? だったら迎えに行くけど、寄り道してたんなら許さないからな!』
「寄り道してた」
『よーーーし、おにいちゃんもう許さないぞ。帰りにコンビニで買ったチキンカツ弁当、もう食べ始めるぞ。自分の分食べ終わったらフブルのにも手出すぞ!』
「デザートは?」
『奮発してティラミスだぞ』
「そっちにまで手出したらもう二度と口きかないから」
『わかったわかった。って、なんで俺が条件飲まされてるんだよ! いいから早く帰って来いよ! 暗くなっても帰ってきてなかったらまたかけるからな!』
がちゃり、なんて音はしないはずなのに、音が出るほどの勢いで通話は切れて、わたしはほっと息をつく。まったくもっていつものおにいちゃんだが、おそろしい大蛇に殺されかけたあとだといつものおにいちゃんでも案外安心できるものだ。
「なんだか、すごい勢いだったね」
「今のが、わたしのおにいちゃん。そうは思えないけど高校生。ついでにいうとわたしの実のおにいちゃんじゃない」
「はあ」
「そう、わたしは家に帰るとおにいちゃんがいる。だから──」
わたしはこの期に及んで眠り続けている蒼い竜──ブイモンに目を向けた。
「その子は連れて帰れないよ。どうする? ほっとけないでしょ」
「僕が連れて帰るよ!」わたしの問いに半ばかぶせるようにしてシューハが言う。
「即答だけど、ホントに大丈夫なんでしょうね。家の人に見つかったりしない?」
「大丈夫! ママはいないし、パパは研究者で滅多に帰ってこないからね」
わたしはちょっと眉をあげる。何か言った方がいいかな。いや、わたしはそうされてもいい気分にはならないし、大人しくしておこう。ブイモンのこと連れて帰ってくれるのは助かるし。
「ならいいけど。あんまり撫で繰り回さないでよ。気を付けて。起きたらちゃんとご飯あげてね」
「賛成だけど、さっきから随分“恐竜”の心配するよね」
「小さい動物は心配だよ。それに」
わたしは竜のすうすうという寝息に耳を傾け、くすりと笑う。
「ちょっと、かわいいじゃん」
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「で、なんであの子──ブイモンのこと、学校にまで連れてきてるの!」
授業中に許される最大限のボリュームのささやき声に、これまた最大限の怒りを込めて、わたしはシューハに詰め寄った。
「ほんとにごめん、でも、昨夜は急にパパが帰ってきて」
「研究者で忙しいんじゃなかったの?」
「だから急だって言ったじゃないか。おまけに朝になってもなんでかお仕事にいかないし、困ったみたいにずっと誰かと電話してたし。家にはおいてられなかったんだよ」
「だからって、ランドセルに閉じ込めてちゃかわいそうでしょ!」
「どうしようもないだろ。それに、昨日からずっと寝てて起きないんだ。今も寝返りうっただけみたいだし」
「だからって……」
わたしがなおも彼を非難しようした時、授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。五分の休憩の後に帰りの会。そしたら後は放課後だ。休憩時間の様子からして、放課後もわたしは質問攻めにあうであろうことは確実だったが、今は正直謎の竜と未解明の白蛇の謎の方が大事だった。そうじゃなくてももう転校生に向けられる奇異の目にはうんざりだし。
「シューハ、帰りの会終わったらわたしは走って逃げるから」
そうして始まった帰りの会、先生が退屈な注意を述べるのを聞きながら、わたしはシューハに一方的にそう宣言する。
「校舎の裏の方、ヘチマの鉢植えが並んでるとこ、あるでしょ? そこで待ってるから、ブイモン連れてきて。そこでこれからの話しよう?」
「転校初日なのに、学校の見取り図ももうインプット済み?」
「ざっつらいと。それじゃ、ほら、もう終わるよ」
きりつ、きをつけ、れい、さようなら。の、れい、のあたりでわたしは身をかがめて教室の後ろを走り抜け、後ろの扉から廊下にとびだした。そのことに気がついたのか後ろの方の席の子たちから声がかかる。まずは早く逃げなくちゃ。昇降口に行くにはそこの廊下を──。
「ひゃ!」
「わ、こら。廊下は走っちゃダメだよ」
角の向こうをきた誰かにぶつかった、そう思った瞬間に。わたしの体はそのまま抱き留められた。見上げれば、女の先生が、咎めるような眼でわたしを見下ろしている。若くてかわいい先生だ。茶色がかった髪を横にまとめていて、胸にはなにかピンバッジのようなものが輝いている。
「初めまして、かな。もしかして転校生の子?」
「あ、えっと、その」
参った。このままここで先生と自己紹介なんかしていては他の子が追いついてきてしまう。
「ね、ちょっと、ヒラノさーん!」
ああ、もう追いついてきちゃった。わたしは心底恨めしげな顔をその先生に向け、心底絶望した顔で振り返る。そこに居たのは今日私に話しかけてきた子の中でもひと際声の大きい女の子たちの集団だった。色々聞いてきたし、一緒に帰ろうとも誘われたが、彼女たちの言いたいことを一言で要約するのなら、自分たちの友達になるか、それともクラスでのすべてを失うか選べ、といったところだろう。わたしとしてはゆっくり時間をもらったうえで、回答はうやむやにしてしまいたかったのだけど、これでもうおしまいだ。
しどろもどろになるわたしの後ろで、女の先生がその子たちに声をかける。
「美奈絵さんに裕子さん、柑奈さんもこんにちは。平野さんにおはなし?」
「スズちゃん先生! そうなの。転校してきた子なんだ」
「ヒラノさん、急いで帰っちゃうんだもの」
「ね、うちどこか教えてったら!」
ああ、はい、ごめんなさい。わたしの頭の中は昔おにいちゃんと見たジャングルの映画の映像でいっぱいだった。主人公の男の子が、ジャングルの住民に仲間と認めてもらうために、真っ赤に燃える焚火の上を歩かされるのだ。
が、しかし、女の先生はそうやって絶望したわたしの肩に手を置いた。
「ごめんね、私、平野さんに用があるの。わるいけど、今日は私が独り占めで、いい?」
「えー」
「しかたないなー」
「ごめんごめん。ほら、みんなランドセルも置きっぱなしで来ちゃったんでしょ。もどったもどった」
「はーい」
「また明日ね。ヒラノさん、スズちゃん先生!」
「はいはい、また明日―」
スズちゃん先生、そう呼ばれた先生が手を振れば、女の子たちは大人しく教室に戻っていった。わたしはおそるおそる振り返り、先生を見上げる。
「あの、用って」
「あー、うん。別にないよ」
「へ?」
「別にないけど、今日は早く帰りたそうだったからね。ヒラノ・フブルさん」
「え、あ、ありがとうございます……」
わたしがしどろもどろでお辞儀をすれば、先生はくすくすと笑った。
「いいっていいって。色々聞かれるの、疲れるもんね」
「えっと、えっと?」それは先生としてはぶっちゃけ過ぎじゃないか。そんな私の言外の言葉を感じ取ったのか、先生は肩をすくめた。
「まあ、今日のところは助けてあげたけど、あんまりみんなのこと避けてもいいことないと思うし、美奈絵さんたちもそう悪い子じゃないよ。よければ明日は少し話してみて」
「……はい、で、その」
「ん?」
「先生、名前は?」
「あ、そうだった」
そういって、その先生はぺこりと頭を下げて見せた。
「鈴代円香(スズシロ・マドカ)っていいます。音楽の先生で、あなたのクラスの副担任。後藤先生がお休みの時とか、あとは音楽の授業の時しか会わないと思うけど、良ければよろしくね、フブルさん」
「あ、ヒラノ・フブルです。よろしくお願いします」
「よろしい。それじゃ、さようなら。用事、あるんでしょ?」
「はい、さようなら」
お辞儀を返したわたしの背中を軽くたたいて、スズシロ先生はそう言った。もう一度お礼を言って、わたしは彼女のすれ違う。その時に、彼女の胸のピンバッジが何かわかった。
「ヒヨコ?」
鳥、好きなのかな。廊下を早足で歩きながら、わたしは口の中で呟いた。
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「──それで、スズちゃん先生に助けてもらったんだ。幸運だったね」
「シューハまでそのあだ名で呼んでるの?」
「みんなそうだよ」
「人気者なんだ。かわいいもんね」
「か、関係ないだろ」
「テキトーなこといっただけなのにしどろもどろにならないでよ」
放課後、スズシロ先生の助けもあって無事教室から抜け出したわたしは、夏の日差しが眩しい校舎裏の、みごとなヘチマ達のそばでシューハを迎えた。そばに据え付けられた最新式の巨大なディスプレイは、ヘチマ畑にはいかにも不釣り合いだ。
四年生が育てているらしいヘチマの鉢植えは私が通っていた学校の古びたものとは違う最新のもので、バイタルブレスとリンクし、脇の大きなディスプレイによって世話の記録や成長の度合いなどが分かるようになっているらしい。つまりは世話を怠るとすぐにバレるということだ。わたしが四年生の時にこの学校の生徒じゃなくて良かったな。去年見事に枯らしたヘチマの茶色くひょろ長い姿の記憶と共に、わたしはそう思った。
「それで、その子、まだ起きないわけ?」
「うん」
そういってシューハは、鮮やかなオレンジ色のランドセルに綺麗に収まった青い竜の頭を撫でる。こうしてみると体に比べて頭がとても大きい。
「赤ん坊なのかな」
「それならこれくらい寝るのも分かるけど。ご飯だって食べてないんだよ」
「お腹減ったらそのうち起きるんじゃない?」
「そうだとして、この恐竜が何を食べるのかもわからない」
「肉じゃないの?」
「まあ、どれかと言われれば肉だろうけどさ……」
シューハは首をかしげて、それから何かを思い出したように顔をあげる。
「そうだ。分からないことがもう一つあったね。最近この町ではやりだした 一番地の“恐竜”の噂を、この町に引っ越してきたばかりの君が知っていたのはなんでだろう?」
「授業中にも散々聞いてきたくせに! 言ったでしょ。お母さんに聞いたの」
「いつ?」
「自分がそれを覚えてたことすら忘れてたくらいに昔だよ」 “覚えてない”なんてことを言うのはずいぶん久しぶりだった。
「わたしのお母さん、わたしが物心つく前にいなくなっちゃったし」
シューハが一瞬微妙な表情をして、それをすぐにほどいた。きっと授業中の私とおんなじことを考えたのだ。母親がいない者同士、これはとても楽だ。
「でもやっぱり、それだけ昔に君のママがその噂を知ってるのは、やっぱりヘンだよ」
「そっくり同じな話じゃなかったんだし、偶然じゃ──」
そこまで言ってわたしは自分で口をつぐんだ。わたしがシューハの話で母さんの記憶を思いだしたのは、シューハの話が聞いた話がある程度までわたしが聞いた話とそっくりそのまま同じだったからだ。
「まあ、ちょっとヘンだね」
「ちょっとどころじゃないよ」
「でも今考えたってわかんないことだし。それよりも、ふしぎなことは他にもあるよ」
「何?」
「わたしたちが蛇に会ったあの路地のこと」
そう、そもそもわたしがあの裏路地に踏み込んだのは、あんな道が地図に書いていなかったからだ。街を歩く中で、たった一つ開いた、正体不明の道を放っておく頃ができなかったからだ。
「……」
「シューハ。なにかいいたいわけ」
「いや、それってただの記憶ちが──」
「わたしが覚え間違えることなんてないし。帰ってちゃんと確認したもの!」
そう言ってわたしはバイタルブレスを操作し、昨晩調べたスルギの一番地の地図を彼に送信する。
「他の場所も確認したけど、わたしの記憶といっしょだった。わたしは間違ってない。地図が間違えてるの!」
「少しちがうね。正確には間違えさせたんだよ」
突如背後で、そんな声が聞こえた。
慌てて振り返りみてみれば、笑顔を浮かべた男がそこに立っていた。薄汚れた半袖のポロシャツにボロボロのジーンズという格好は、とても学校の先生や用務員さんには見えない。足に履いているのだってサンダルだ。そう年がいっているようにも見えないのに、だらしなく伸ばされた髪には白髪が混ざっていて、額を見れば生え際もだいぶ後ろに寄っている。思わず顔をしかめたくなるような老いの気配に満ちたその顔の中で、大きく高い鷲鼻とぎらぎらと輝いている一対の目が印象的だった。
「え、だ、だれですか」
シューハのその問いには答えず、男は言葉を続ける。
「この特区の開発段階で僕が町のあちこちにそういう地点を仕込んだんだ。研究所でも使う地図のデータから排除することで、上に感知されずデジタル・モンスター絡みの実験ができるようにね。まあ、野良のリアライズ・ポイントにされるのは想定外だったけどね。あれだけのデータ質量のなデジモンが出るのは初めてだし、ありえないことだ、いったい……」
喋ってる内容の意味はまるで分からないが。変な人で、おまけにヤバい人だというのは確かだ。わたしの隣でシューハがバイタルブレスに手を伸ばす。そう言えば、防犯ブザーとしての機能もついてるって帰りの会で先生が言ってたっけ。
けれど、彼がその警報音を鳴らす前に、唸り声が男の長広舌を遮った。
「……ブイモン?」
隣に目を向ければ、いつ目を覚ましたのだろう。シューハのランドセルから飛び出した小さな竜が、目を剝いて唸り声をあげながら、その男を睨みつけていた。その様は先ほどまでのかわいらしい寝顔とは打って変わって恐ろしいもので、わたしの足は思わずすくんでしまった。
「ねえ──」
わたしが怯えた声をかけるよりも先に、ブイモンはひときわ大きなうなりをあげて男に向けて駆け出した。同時にその大きな頭が白熱した光を帯び、そのまま、勢いよく男の体の中心を──。
「おっと、いけないよ」
あぶない、そう言って目を向けたわたしの目に映ったのは、どこから取り出したのだろう。白い卵のようなオブジェを片手に乗せた男の姿だった。わたしが昨日手に入れたものと丁度同じくらいの大きさで、羽に身をくるんだ鳥のヒナのようにも見える。
刹那、そのオブジェが強い光を放つ、男の体に飛び込んだブイモンがその光の中に飛び込めば、その光の中から、ずるり、と、細長い手足が伸びた。
「ど、どういうこと、ちょっと、なあ、ブイモン!」
シューハの声に呼応するように光は晴れ、そこからわたしたちの二倍ほどにも大きな四つ足の竜が姿を現す。その背中に生えた白い翼には一つの汚れもなく、小学一年生が描く天使の羽そのままの形をしているのに、それでその竜がどこかに飛んでいくことが出来るようにはとても見えない。なぜって、その竜の目は、腕は、足は、金属の拘束具で覆われていたからだ。
「ふむ、長い間自身を閉じ込めた我々を敵と認識している。人間の識別も可能か、面白い。それにしても我々の長い実験の中で偶然採取できたたった一つの“デジメンタル”が、ブイモン種には拘束具として働く“光のデジメンタル”だったのは幸運だったなぁ。Ⅴ号、君には残念な話だろうけど」
そんなことをぶつぶつと呟く男の前で、ブイモンが姿を変えた白い竜は羽をはばたかせようと動かすが、それも叶わず、やがてどさりと大きな音を立てて倒れた。地面と共にヘチマの鉢植えが揺れる。
「ちょっと、やめて!」
「そうだよ、やめてください!」
わたしとシューハ同時には声をあげた。というか声が出たのだ。あのままだったら目の前の男がやられていたのは事実だろう。だがそれ以上に、明らかにその体に対して小さな拘束具で締め付けられ、苦痛ににうめきを漏らすブイモンだった竜を放っておくことはできなかった。
「悪いが無理なんだ」しかし、男が初めてわたしたちの方を向いて言ったのはそんなあっさりとした拒絶の言葉だった。
「Ⅴ号は回収する。君たちにはこのことは忘れてもらうことになるね。ああ、でもその前に」
そう言って男はその鷲鼻の目立つ顔をわたしにむけた。
「ヒラノ・フブル、君には用があるんだ」
「わたし? え……」
近づいてくるその男にわたしは後ずさる。と、それを止めようとでもするかのようにシューハがわたしの前に立った。
「シューハ」
「よ、よくわかんないけど」彼が震える声で言う。
「こ、こっちに来るな!」
「参ったな。君には用はないんだけど」
そう軽い調子で頭をぽりぽり書きながら、男は歩みを止める気配はない。
「く、来るなって!!!」
「手荒なことはしちゃいけないことになってる。さあ、こっちに」
恐怖にわたしは思わず目を瞑った。
ずるずる、空気の上を這うあの特有の音に、わたしは目を開けた。
「うそ……」わたしの口から洩れるのはそんな言葉だけだ。
「嘘じゃなさそうだよ」シューハが応えた。
男がいた場所──つまりはわたしとシューハの目の前──に、昨日のあの白蛇がいた。横を見ればあの男は校舎裏の壁に叩きつけられたのか、無様な格好で倒れている。巨大な白蛇に鼻先で突っつかれたのだ。目の前の化け物はそれだけで人をあんなふうにしちゃうのだ。
今度こそ逃げ場はない。白蛇がわたしたちの方に向かってくる。その頭の羽は途中で痛々しく切り落とされていて、その青い目には怒りが浮かんでいる。当然だ。同じことをされたらわたしだって怒る。
けれどわたしたちが死を覚悟してうずくまる前に、その動きは途中で止まる。
その理由は、わたしたちにもすぐにわかった。
「ブイモン!」
縛り付けられた白い竜の腕が、白蛇の尾を掴んでいた。白蛇の尾についた刃を、そのままつかんでいるのだ。白い拘束具に、真っ赤な血がにじむ。
痛いのに、それでもブイモンはそうしてくれたのだ。見えない目で、思うように動かない手。
「なんで……」
「面白い、拘束状態でも君たちを守ることを優先するか」
「ぎゃ!」
シューハが冗談みたいな悲鳴を上げるのも無理はない。先ほど白蛇に壁にたたきつけられたあの怪しい男が、気がつけばわたしと彼の隣で何事かをつぶやいていたのだ。服はボロボロになって、鷲鼻からは鼻血を流しているが、声にもぎらぎらした目にも陰りはない。
「あ、あっち行けって!」
「まあおちついてくれ、君たち。一時停戦だ」
「そんな……」抗議の声をあげようとするシューハの肩にわたしは手を置いた・
「待って、シューハ。聞こう」
「でも」
「わかるよ」わたしだって、ブイモンに酷いことをして、こちらにもロクでもない用がありそうなこの怪しい男を信じたくはない。でも。
「少なくともこの人は、“あれ”が何か知ってる」
それ以上のことを話す必要はなくて、シューハは頷いて口を閉じてくれた。
「助かるよ。いや、それにしても驚いた。まさか二番地の方までやってくるとはね。自分と同じ“鎧”の気配を感じ取ったか。興味深い事象だ」
「ちょっと!」
「ああ、わるいね」男は子どものような屈託のない笑みで頭を掻く。
「Ⅴ号は──」
「ブイモンのこと?」
「どこでその仮称を知ったのか……まさかバイタルブレスの変質の影響か? いやしかし……」
「ねえ!」
「わかったわかった。あのモンスター、ブイモンはなぜか、きみ達を守りたいらしい。ここはその可能性に欠けようじゃないか。さっき僕のしたことを見たね」
「白い卵で、ブイモンを縛った」
「そうだ。正確には鎧をまとわせたわけだな。君にも同じことができる」
そういって彼がわたしの方を見れば、さすがにその意味は分かる。自分のバイタルブレスを操作し、あの緑のつぼみのような物体の画面を彼に見せる。
「これ?」
「満点だ。それは“デジメンタル”。あの怪物──デジタル・モンスターと呼ばれているが、長いから僕は“デジモン”でいいと思ってる。とにかく、それにとっての鎧のようなものだね」
「じゃあ、あのひとは……」
「どうやらもう見たこともあるね。それなら話は早い。急いでやろう。もう彼も限界のようだしね」
男がそういった瞬間、白蛇がその身を大きくしならせ、尾を掴んでいた竜を投げ飛ばす。その手は既にぼろぼろだ。
「ブイモン!」シューハが叫ぶ。
「さあ、僕が彼の拘束を解いたら、ブレスをつけた腕を彼に向けて、こういうんだ──」
その言葉にわたしはがむしゃらに腕を突き出す。意味わからないけど、でも、とにかく、ブイモンはわたしたちを助けてくれている。それなら、わたしがかけられる言葉は一つだ。
「がんばれ、ブイモン! ──“デジメンタル・アップ”!」
「あれが……」
「そうだよ、シューハ。わたしたちを助けてくれた。やっぱり、ブイモンだったんだ」
「“純真のデジメンタル”、そうか、ヤシャモンか」
緑の光と風を纏ったブイモン──木刀二刀流の鬼人は、しかし、そこに姿を現すと同時に左手に持った剣を取り落とした。
さっき白蛇を止めていた傷が、まだ治ってないんだ。そう思ったのはわたしだけではないらしかった。白蛇は昨日敗走した相手にも臆することはなく、けがをした左手側を狙って尾の刃をふるう。
がきり、とっさに鬼人は左腕につけた木の籠手でそれを受け止める。鋼の刃は深々とそれに突き刺さり、白蛇が刃を抜いて尾を自分の方に引き戻すのに苦心している間に、鬼人はもう片方の手でその尾を掴み、巨大な白蛇の体をそのまま地面にたたきつけた。
「すごい……」
「彼らは“デジタル・モンスター”。通常はネット空間に住む生物だ」
「ネット空間に、生物が?」シューハが男の方を見上げ、素っ頓狂な声をあげる。
「ああ、ネットの奥には別世界があって、そこにずっと昔から奴らはいるのさ」
なんとも信じがたい話だが、それを言いだしたら目の前の光景の方がよっぽど信じがたい。鬼人は右手の木刀を白蛇の胴に振り下ろす。それは大きな傷跡をその鎧につけたが、けれど羽のように簡単に切り落とすことはできないらしく、白蛇が身をくねらせる動きをすれば彼も一旦飛びのいて、二体がの怪物は改めてにらみ合った。
「だが、こちらの世界にやって来るものはめったにいない。いたとして、ほとんどがデータ質量の小さなものなんだが、あの蛇はどうにも大きすぎる。なぜだ?」
男の呟きに、そんなことは知らないと返そうとしたわたしの言葉を、シューハが遮った。
「都市伝説だ」
「え?」わたしと男が、同時に彼の方を見る。
「あの生き物たちは、ネットに住んでるんでしょ? だったら、ネットの書き込みから広がる都市伝説と、なにか関係があるんじゃないかって」
そうしてシューハは白い恐竜の噂を語る。何度聞いても荒唐無稽なその話に、しかしその男は酷く興味をひかれたようで、口元に手を当てて何事かをぶつぶつと呟き始める。
「そうか。都市伝説、噂か。“デジメンタル”の発生原理と同じだ。場所に関わる一つの統一された噂によって、特定の箇所で同じ方向性の恐怖や緊張を感じる人間が増加する。その際の心拍数の増加をはじめとした反応が“バイタルブレス”によって、ネットに蓄積されることで、それがモンスターにとっての鎧を形作る。一人の人間の感情の動きから作られる“デジメンタル”よりも純度は低く、”恐竜”になるには不完全だった──」
その男の言葉を遮る音はその場にはもう一つもなかった。鬼人と白蛇は尾と刀で幾度か切り結んだあと、向かい合ってお互いに動きを止めた。沈黙があたりを支配し、そこに男のぶつぶつという志向の流れのみが響き渡る。空気が張り詰める。わたしにもわかる。隣で息をのんだシューハにも分かっているはずだ。次の一撃ですべてが決まるのだ。
「──でもその鎧は、一匹の小さなワームが現実世界に這い出るには十分だった。一番地“下水道の白蛇”──クアトルモン、お前は、伝説を纏ったんだ!」
男のその叫びを合図にするように、一陣の風が吹く。その強さに、わたしは思わず目を瞑る。
目を開けたわたしが最初に見たのは、木刀を一振りし、わたしたちの方を振り返った鬼人の姿だった。そしてすぐあとに白蛇が地面に落ちる大きな音がする。
勝負に敗れた白蛇はよろよろと地面をはいずり、そして、一度体を大きく波打たせると、ヘチマ畑の脇のディスプレイに飛び込んだ。あ、と声をあげる間に、その長い体はずるずると、白い光と共にディスプレイに吞み込まれた。
「……いなくなっちゃった」
「また来るかな」
シューハの言葉に男は曖昧に首を振る。
「あれだけのダメージを与えたんだ。すぐにははリアライズはできない。だが」
「だが?」
「もしさっきの考えがあっているなら、あのデジモンの原動力は噂話だ。ネットでその“一番地の恐竜”とやらの噂が盛り上がれば、また力をつけて帰ってくるだろうね」
「そこまでしてこっちに来るのって、なんのためなんですか」シューハが男を見上げて問いかける。
「人を食べるため?」
その言葉に、男はきっぱりと首を振った。
「目的なんてないよ」
「え?」
「たまたまあのモンスターはネット空間の噂を浴びた。それが形作る鎧で体がつつまれた時点で、もうモンスター自身に自由はない。あれはもう下水道をはいずる化け物として定義されたんだ。噂が持ち上がる限り、何度だってあらわれるさ。だからこの件のことはすっぱり忘れて僕らに──」
「ひどい」
「ん?」わたしの言葉に、男は首をかしげる。
「そんなの、かわいそう」
それはほとんど勝手に喉からあふれ出した言葉だった。けれど、だってそうじゃないか。その怪物のことは知らないけれど、ブイモンと同じような生き物が、誰かをかばって戦うことができる生き物が、わたしたちの噂話に縛られて、一生薄暗い場所を這いずるなんて。
「なんとかして、助けられないの?」わたしは男を見上げる。
「おいおい、さすが“純真”を発現させるだけのことはあるけれど、でもそんなことはできないよ。そもそも奴の巣くうネット空間まで干渉できる手段なんて……おい、君」
男が小ばかにしたような言葉を途中で止めた。その隣で、シューハも目を丸くしている。
「なに?」
「いや、フブル、それ……」
そうして彼が指差したのは、わたしのバイタルブレスだった。目を落とせば、その液晶画面が眩しいイエローに輝いている。その手を持ち上げれば、近くの校舎の壁も同じ色に輝いた。
「あ、まただ」
「まさか、“デジメンタル”はその容量の大きさと、人の感情の一元化という性質から、まだ空白の部分の多く純粋な子どものみにしか発現しかしない。でも、その子どもにしたって、一人に一個の発現が限界のはずだ。これは──」
「ちょっと、フブル! なんか緊急事態みたいだよ。やめといたほうが──」
「──“ポマード・ポマード・ポマード”」
「やめたほうがって言ったよね! 昨日一度やったってだけで、そんなに簡単に壁に手突っ込まないでくれるかな!」
そんなシューハの抗議をよそに、母さんの“おまじない”を唱えたわたしの手は校舎の壁に呑み込まれ、その奥で、一つの感触を手繰り寄せた。ぐっとつかんで引きずり出せば、それは黄土色の卵のような、いや、天頂部から突起の突き出したこの形はまるで──。
「球根?」
そう呟いたわたしの傍らに鬼人が立つ。
「ブイモン」
彼が、その球根型のオブジェを見おろす。
「わたしのワガママ、付き合ってくれる?」
彼がこくりと頷くと、同時にオブジェは黄色い光の粒子となり、わたしのブレスレットに吸い込まれていく。
「ありがとう、ブイモン、いくよ」
二回目だ。もう何も迷うことはない。
「──“デジメンタル・アップ”!」
そこにあらわれた影は、風の鬼人とはうってかわって、ごくごく小さなシルエットだった。
ぶー、という音が耳を満たす。その音、そしてその姿はまるで──。
「蜂?」
そんなシューハの言葉に応えるように、そのつぶらな瞳の蜂はわたしたちに向けて一つ頷き、ヘチマ栽培用のディスプレイに近づく。すると、先ほどの白蛇の時と同じ光と共に、そのディスプレイが、その体を呑み込んだ。男が感心したような声を漏らす。
「素晴らしい。“知識のデジメンタル”。ハニービーモンか。知識の飛行者となればたしかに、情報の飛び交うネット空間の航行も自在だ。だが、ナビゲートは必要だね」
「ナビゲート?」
「おそらくあの蛇──クアトルモンは、自分を形作る噂の集まるになった場所に向かうはずだ。そういうサイトは──」
「あ、僕、調べてたから全部わかるよ」シューハが手を挙げる。
「よろしい。ならフブル君、ブレスをこのディスプレイに接続するんだ」
「接続?」
「腕をかざして近づけるだけでいいんだよ」
シューハの言葉にわたしが手をかざせば、ブレスレットが一度電信を鳴らし、ディスプレイの画面が、ヘチマの成長記録から、どこか真っ白な空間を映した。
一面の白、ところどころにカラフルな幾何学模様。雑多な文字がそこら中に浮かぶ。
「それが可視化されたネット空間だ。これは“知識のデジメンタル”を通じてバイタルブレスが受信したブイモンの視点だ。浮かんでる文字はサイト内のワードやら何やらだね」
そういって、男はシューハに目を向ける。
「おかっぱの君、君はこの文字を追うんだ。例の都市伝説を構成する単語を探せ。それがクアトルモンにつながる道になるそしてフブル君」
そういって男は鞄からタブレット端末を取りだし、わたしに見せる。一見して、ゲームの攻略サイトのコマンド表のように見えた。
「君はこのコマンドを使って、ブイモンに進むべき方向を指示するんだ。デジタル・モンスターの実験用に開発されたコマンドで、ブイモンはこれを知っている。ちょっとややこしいけど」
「覚えた」
「なに?」
「もう覚えたっていったの。ブイモン、いける?」
そう言いながらわたしはブレスレットにコマンドを入力する。こくりと、視点の持ち主がうなずくようにディスプレイの映す景色が動く。
「シューハ」
わたしはディスプレイに目を向けたまま、隣の彼に声をかける。
「何?」
「なんか変なことになっちゃったけど、わたしのワガママに、付き合ってくれる?」
「……えーと、その」
おかっぱ頭の綺麗な顔が、困ったように頬を掻くのが頭に浮かんだ。
「ちょっと聞くの遅くない?」
「たしかに。じゃあ、道間違わないでよ」
「……大丈夫だよ」少しだけ震えた声が帰ってくる。
「しゃにむな純真に広大な記憶という名の知識、なるほどね、すばらしい、面白い。これは最高だぞ」
男がそんなことをつぶやいたのも、ほとんど聞こえなかった。
「それじゃあ、いくよ」
“Go”、わたしがそのコマンドを入力すると同時に、ブイモンはネットの海にはばたいた。
「かわいそう」は子どもだけに許された言葉だなあと時々思います。
どうも、マダラマゼラン一号です。この度は「in Rainbows」第二話を読んでいただいてありがとうございます。投稿から少し日があいてしまい、こちらのコメントやtwitterさんでも感想をいただいた後になってしまいましたが、あとがきです。
ということで二話です。二話だよ。二話だ。
作者的には1話はあくまでプロローグ、ここからが「in Rainbows」だと思ってます。
ヤシャモン、ハニービーモン、クアトルモン、みんな好きなデジモンたちです。好きなデジモン書くのは楽しいなあ。推しに囲まれて僕ったらしあわせ。
そんな気持ちだけで二話までを書いてたマダラを絞め〇したいなと思いながら、今の僕はpixiv百科事典にあるデジメンタルとアーマー体の対応表と首っ引きで少し先の展開を考えています。作ってくれた人ほんとありがとう。みんなクセ強くてこいつらだけで作劇するの死ぬほど苦しいです。
ここからはぶっちゃけどうでもいい話なのですが、マダラ、昔「六月の龍が眠る街」という小説を書いていました(ちなみにPixivで読めます。拙い作品ですが物好きの方はぜひ)。
それもまた、丁度今のレインボウズのような大人と子供の視点が交互に展開する小説だったのですが、当時の僕の未熟さから、話をスムーズに先に進めることをとってしまい「大人と子どもの間の溝」をうまく書けなかった。あの作品に“反省”はいろいろあったけど、“悔い”はそれだけでした。
そしてあれから五年(五年!?)。今僕はまた龍が眠る街を舞台に、そのリベンジをしようとしています。こどもとおとなの物語。良ければ最後までお付き合いくださいませ。
以上、何年たってもあとがきが全然うまく書けないマダラマゼラン一号でした。また次回の「in Rainbows」でお会いしましょう。
仰られていた通り投稿が早い! 夏P(ナッピー)です。
割と初っ端で「……うん?」となりましたがやっぱり! 年表的にも結構な時間が経っている様子ですがオメーらお帰りというか普通に出てきた! ヒョコもといヒヨコという文言にもニヤリとしつつ、どちらもそれぞれ立派な大人になってる! 何故この土地を開発したのかという点に「明確な回答が無いまま~」とされつつ、その後の白鳥さんと鷺坂さんの会話で即刻「近場に自衛隊基地があるから」と明かして頂けましたね。シューハ君のお父さんがまさにピンポイントで絡んできていることといいまさしく学園都市で舞台設定だけで面白いですが、そこからクアトルモンに都市伝説、ネットワークを介して噂話を基に現れると明言されて更に歓喜。これぞデジタルモンスター!
現れた謎の男はtri版ゲンナイを彷彿とさせる如何にもな怪しい感じでしたが、一話の内に吹っ飛ばされて戻ってきて解説役までしてくれるという万能ぶりで、さてはアンタ実はこっから苦労人になるな!? デジメンタルという名前通り本人のメンタルが文字通り資質として顕現する感じなのかしら。ガーゴモン登場ですが拘束具扱いでちょっと残念。そしてやっぱりヤシャモンだった! しかも純真のデジメンタルはフブルちゃん本人の心の形だった! と思ったらハニービーモンまで参上! 早い! “覚えた”含め!
作中、Vの文字が象徴的に使われているのはブイモンだけでなく、バイタルブレスモチーフならではの意図的なものでしょうか。そういえばアドベンチャーモードやる時もVの字が印象に残る気がするバイタルブレス。しかしもしかして都市伝説サイトを潰しに行ったりするのか!? 禍根を断つ的なアレなのか!?
それでは今回はこの辺で感想とさせて頂きます。