二千字以下のSSです。
※Twitterで『#お前の書くor描くこのデジモンが見たい』ってタグ作ったところ、リプをもらえたので、関連デジモンでSS書く気になったので書いた感じです。暇つぶしにどうぞ。
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世界は黒く塗り潰された。どこへ行っても光がない……などということはない。どこかにわずかでも、光の、白き善なるスペースは必ず現れる。どこにも、善き部分が存在しないなんてことは、真っ当に生まれ成長するものならばありえないのだ。
だからこそ、この黒き闇の中にも、廃墟だらけの世界にも、時折緑が芽生え、白い隙間が現れる。その度に、私は意識を取り戻しては、抵抗を試みなければならない。どんなに相手が強大であってもだ。
「今回は、全体の25%ってところか?」
白い隙間の中で感じるは、他にも点在する光あふれる場所。かき集めても、3割には満たないとはいえ、過去一でこの世界の闇が揺らいでいるのだと感じる。外の世界で、何かあったのだろう。ここでの抵抗がきっかけで状況が更に良くなる可能性はある。効果的に動かねばならない。外を知ることはできないが、何か良い手がないかを検討しようと更に探ることにする。
「ライトニングスピア」
だが、その余裕はなかった。赤黒い稲妻が頬を掠める。特定されたのだ。大きな影が、この身に落ちる。ギロリと睨む瞳が、この身を突き刺す。世界の支配権が向こうにあるとはいえ、どうにかして、逃げなければ、また意識を失ってしまう。何をすれば良いか、考えるよりも先に身体を動かすしかなかった。
「ヘブンズジャッジメント」
世界の支配権が向こうにある以上、必殺技をまともに打てる訳などない。だが、それでも、不完全でいいと判断して選んだのは、先程使われた技とは別の必殺技。目的はただひとつ、無数の雷など落とせなくていい。見下ろす巨躯よりも低い位置に、黒き雷雲を喚び起こし、我が身を隠せれば、と。
すると、なんとか巨躯の頭部と自分の間に黒雲を生み、煙幕代りには使えそうにはなる。問題があるとすれば、身を隠すのに、黒いエリア、心の闇に向かうしかないであろうことか。既に先ほどまでこの場にあった緑は枯れ、黒が浸食してきている。
こうなると、蘇った精神を直接始末されなかったとしても、精神世界の闇に覆われ意思薄弱の休眠状態になる可能性もある。その場合、抵抗力は弱まってしまう。主導権を奪還するには、白を、光を拡大維持する必要があるが、相手が圧倒的過ぎる。光の同胞の祝福など、何か外的要因の大きなきっかけさえあればと、ないものねだりをしたくもなる。
状況はあまりにも悪いが、それでも少しでも可能性を信じるしかできることはない。とりあえず意識を強く持ち、点在する別の白い場所を目指し、黒のエリアに飛びむと腹をくくるしかなった。
「小賢しいわ」
黒のエリアに突き進む為、ダイブしようとする身体をぎゅっと覆われた。黒雲をかき分け、現れた巨大な手に掴まれたのだ。あぁ、また今日も、私は亡きものにされるのか、と薄れゆく意識の中、無念な想いに満たされていくのだった。
それでも私は、いずれ、必ず……。
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「ケルビモン様?」
小間使いの、黒猫の声に意識を取り戻す。精神のさざめきに、内側に向けていた意識から外へと。お気に入りの部下の死に動揺したことで、さらなる心労を招いた自分の情けなさを、黒猫には悟られぬよう、つとめて自然に振る舞おうと意識し返事をする。
「……少しほうけていた。何か私に用かな、ブラックテイルモン」
「いえ、ラモールモン様を殺した、件の騎士でしたが、先ほどノーライフキングによって討たれたようで、それをお伝えしようと……」
「ほう、それはそれは」
思わず笑みを浮かべる。ラモールモンの死により揺らいだ心を、闇が癒してくれる。これであれば、しばらく動揺することはなくなるだろう。
「正義だ善と愚かなことだな。その心が、手を出すべきでないものにまで関わろうとして、不死者の軍勢に押し潰されるというのだ」
その心が、既に取り戻すことは不可能な現実を認めず無駄に足掻いては踏み潰されるのだ。馬鹿なものだと、心の底から笑う。愉快に笑う自分に、黒猫も合わせて笑う。この魔城に、自分の笑い声が響く。
誰かの「いずれ必ず……」というか細い声は、その笑い声にかき消されていくようだった。
終
一言
兎年ですね
そーいやテリアモンは犬なのにロップモンは兎なのなんでだろうな。夏P(ナッピー)です。
ほう、さてはこれは心象風景……光と闇もしくは善と悪がスタンデンバイザサイ千年前も僕達は戦っていた奴だ。マジンガーZERO対暗黒大将軍の最終決戦みたいな感じで、悪(マジンガーZERO)の中で善の心(マジンガーZ)が頑張ってる感じでしょうか。グレートマジンガー、じゃなくてセントガルゴモンはどこだ! ちょうど俺がバイタルブレスBEで育ててるラモールモンいきなり死んでましたが、目が覚めた後もブラックテイルモンが部下なので即コイツは悪だとわかるのは良い。
卯年と言われて最初に浮かぶのアンティラモンでしょうが、そこで敢えてケルビモンを題材に挙げられたのが実に渋くてナイス。その上で善悪絡めた話になってるのも良いですがめちゃくちゃこの続きありそう。
それでは今回はこの辺で感想とさせて頂きます。