身体中が痛い。
彼は、特に痛む腹部を抑える。
全身の色がほとんど青を占める中、そこだけは真っ白だった。
その人と全く違う体色が、現在の自分の状況を再認識させられる。
(ブイモンになって…早々これって…)
彼、ブイモンは頭の中でそうボヤいた。
ブイモンが隣を見ると、真剣な表情をしているデジモンがいた。
「みんな隠れてて。これはきっと…私の責任です」
そうそのデジモンは言って、隠れていた倒木の影から姿を曝け出す。
「だ、駄目だ…!一人で勝てる相手じゃない!」
ブイモンは、出て行ったそのデジモンへと届きもしない手を伸ばした。
助けなきゃ…!
もしかしたら彼女は…!
その時、ブイモンの目の前に一枚の羽根が舞い降りた。
そんな気がした。
ソーシャル・ネットワーク・サービス
SNSと呼ばれるそれは、多くの人々の情報と欲望が渦巻く不思議な世界。
そこで人々は、現実と同じ様に一つのグループに集まって他愛もない会話をしていた。
《最新話読んだけど…いいなぁ。僕はこんな長編書けない…》
《でも私は短編とか書けないですし…》
《俺最後に更新したのいつ…? いつ…?》
《う〜ん…中々設定が固まらない…》
四人の男女が、またいつもの様に好き勝手に会話をする。
この四人に共通する趣味。それは「デジモン」だ。
彼等が生まれる少し前に生まれたコンテンツで、デジタルの世界で暮らす多種多様なモンスターは当時の子供達を夢中にさせた。
デジモンは今でもファンを惹きつけ、その人気は続いている。
この四人も、その夢中になったかつての子供達だ。
そしてそのデジモン愛を、彼等は一つの方法で表現していた。
ネット小説。
今や誰でも作れるそれは、ネットの世界では溢れかえっていた。
この四人は、そのデジモン小説を書いたり読んだりしている仲良しグループなのだ。
ある一人は、短編専門で色んな話をその都度その都度に書き、またある一人は、長編を今もなお続けて書いている。
そしてまたある一人は、長編を二つ書いていたが、多忙な生活となってその二つともを全く更新しないまま放置してしまっている現状。
そして最後の一人は、読む専門でまだ小説を書いていないが、これから書こうと設定を練っているところだ。
この四人はいつも通り、他愛もない会話をし、時計の針が12時を過ぎた頃にだんだんとそれは終息していった。
また明日、彼等はネット上で集まって話をするのだろう。
そう、ネット上で集まって。
「ん〜…」
狐の獣人の様なデジモン・レナモンは目を覚ます。
ギンギンに光る太陽の光が視界に入り、レナモンである彼女は再び目を瞑る。
「……ん?」
その時、妙な事に気付いた。
自分は屋内で寝たはずだ。
それなのに…太陽?
「へ!?」
彼女は勢いよく起き、辺りを見渡した。
青空が広がるその原っぱは、彼女の記憶の何処にも該当しなかった。
そしてその後すぐに、彼女は自分の手を見る。
「何これっ!?」
彼女は自分の手だけでなく、他の部位も確認していく。
そして確認した事で導き出された答えは一つ。
「レ、レナモンだ…」
自分がよく知るデジモン。というか、自分が一番好きなデジモンだ。
そのデジモンに、「人間である自分」がなっている。
「えっ…? ど、どういう…」
「うおぉ!?」
突然、誰かの声が聞こえた。
その方向を見ると、そこには帽子を被った熊の様なデジモン・ベアモンがいた。
ベアモンは、自分のもふもふの腕を何度か揉んだ後、呆然とする。
その姿を見て、レナモンは確信した。
このベアモンも、自分と同じだ。
そしてよく見ると、ベアモン以外にも自分と同じ様に倒れているデジモンがいた。
あれは確かブイモンだ。
そしてもう一人は…
彼は自分のゴツゴツの翼となっている手を見て愕然としていた。
全身溶岩で出来た様な飛竜の様なデジモン・ヴォーボモンは周りを見渡す。
ブイモン、レナモン、ベアモン…。
どれもよく知っているデジモンだ。
そして自分が「なっている」デジモンのヴォーボモン。
このデジモンの事を忘れる訳がない。
ヴォーボモンは、彼の一番のお気に入りのデジモンだ。
だが、まさかそんなデジモンに自分がなるとは思わなかった。
いや、デジモンになるという事自体が驚きなのだが。
「あの…」
ヴォーボモンが困惑していると、レナモンが声をかけてきた。
彼はレナモンの方へ向き、とりあえず一度会釈する。
「な、なんです…か…?」
「さっきの反応を見るに、貴方も同じ…ですよね?」
「……同じ?」
レナモンの質問に首を傾げるヴォーボモンだったが、そこにすぐに乱入者が現れた。
「人間って事だよな!?」
取り乱した様子で、ベアモンが二人の間に割り込んできた。
突然の乱入にヴォーボモンは驚くが、ベアモンはそれを気にせずズレた帽子を直しながら口を開く。
「全く意味わかんねぇよなこの状況!ねぇ? 君は何か知ってんの?」
ベアモンはすぐにレナモンの方へと訊いてくる。
レナモンは腕を組み、ベアモンをジッと見つめる。
「………何か喜んでない?」
「よ、よよよ喜んでねぇし!!!別にベアモンになりたいなんて思った事ねぇし!!!」
「思ってたんですね」
「あぁハイ思ってましたよ! 思ってましたとも!悪かったですねケモナーで!!!!!」
ヴォーボモンにも図星を突かれ、ベアモンは最早否定を諦めて開き直った。
だがそんな彼を見て、レナモンとヴォーボモンはクスッと笑い始める。
「な、何だよ…」
「いや、実は私もちょっと今の状況にワクワクしてたものだから…」
「なんだか同じ事思ってる人いると知ったら、安心しちゃって…あ、人じゃなくてデジモンですね」
レナモンとヴォーボモンは互いにそう言った後、一人岩に座るブイモンを見る。
「貴方はどうですか? ブイモンさん」
「へ?」
レナモンに声をかけられ、少し遠くにいたブイモンは振り返った。
その瞬間、ブイモンの目は大きく開かれた。
「危ない!」
ブイモンの叫びとほぼ同時に、レナモン達の背後から大きな影が現れる。
その影の接近に気付き、レナモン達は咄嗟にその影から離れる為に走った。
そしてその直後、レナモン達がいた場所に巨大な木が落ちてきて地面を抉る。
距離を取った後にその影の正体を見るレナモン達。
それは、枯れ果てた大木の姿をしたデジモンだった。
「ウッドモンだ!」
ベアモンが空かさずそのデジモンの名を叫ぶ。
ウッドモンの事なら、ブイモンを含めた四人全員が知っていた。
だからこそ、彼等は危機感を覚えていた。
数で勝っているとはいえ、成長期相手に成熟期なんてデジモン初心者には厳しいものだ。
「貴様ら…何者だ?」
ウッドモンは鋭い目で、ブイモン達を睨む。
何者と言われても、こっちも未だに状況が判断できないのだ。そんな事を言われても困る。
「答えんのか…。ならせめて、貴様らの命でワシの心を満たすがいい!この『夜導衆《やどうしゅう》』であるワシをな!」
「夜導衆…?」
ウッドモンの言葉に、レナモンは引っかかるものを感じた。
だがそれはレナモンだけでなく、残りの三人も同じであった。
「夜導衆って…【まっちゃちゃ】さんの…」
その内一人のベアモンは、思わず疑問を口に漏らす。
そして今度は、その言葉を聞いた三人が彼を見る。
「えっ…な、なに…?」
全員が困惑している事を尻目に、ウッドモンは音を立てて迫ってきた。
四人はすぐにそれに気付き、浮かんだ疑問を一先ず置いて構える。
「お、おいどーすんだよ!? 技とかどう出すんだ!?」
「ヴォーボモンの技は『プチフレイム』だけど…あれどうやったら出るんですか!?」
「私の『狐葉楔《こようせつ》』もね…」
「出せるのは…」
ブイモンはしばらく考え、迫るウッドモンに飛びかかり、頭を向けた。
「ブイモンヘッド!」
ブイモンの頭突きが、ウッドモンの炸裂する。
ウッドモンはよろけるが、すぐに頭突きの衝撃で宙に浮くブイモンを巨大な枝の腕で殴り飛ばす。
「うっ!」
「ブイモン!」
吹っ飛び地面に叩きつけられたブイモンに駆け込むレナモン。
「そ、そっか! 俺だって…」
ベアモンは自分の技が拳によるものだと思い出し、ウッドモンに向かおうとした。
だが、現実で見るウッドモンはイラストやゲームで見るものよりも恐ろしく見え、ベアモンは思わず足を止めてしまう。
「干からびてしまえ! 『ブランチドレイン』!」
「げっ!?」
ベアモンが止まった事に大して反応をせず、ウッドモンは巨大な腕を光らせベアモンに迫る。
ベアモンはすぐに危険を察知し回れ右をして走り出した。
案の定、レナモン達も逃げており、ブイモンはレナモンに担がられている。
「おいおいおいおい! やべぇよこれやべぇよこれ!なぁこれ夢じゃねぇよな!?」
「だったらどっち!? 嬉しいの!?嬉しくないの!?」
「ベアモンになれたのは嬉しいけど、ウッドモンに追われるのは嬉しくない!!!!!」
「僕もそう思います!」
レナモンに対するベアモンの答えに、ヴォーボモンも同意しながら一緒に逃げていく。
翼があるくせに、全く飛ぶ気配が見られないが、元が人間なうえにこういうタイプのデジモンはまともに飛べた試しがない。
レナモンは一見非効率的に見えるその逃げ方に効率性を見ながら、追いかけるウッドモンを見る。
「夜導衆…」
《電子狐は夢を見るか》
作者:まっちゃちゃ
虚無感に悩まされるレナモンは、その虚無感を満たす為に悪事を働く集団の中にいた。
だが、レナモンはそんなことで本当に心が満たされるのかが疑問で、どうしたらこの虚無感を満たせるものかと毎日毎日考えていた。
その時、同じく虚無感に悩まされながらも、見ず知らずの命の為に身を投げ出す不思議な生き物と出会った。
その生き物・人間の少女に興味を持ったレナモンは、彼女が人間界に帰る方法を手伝うという名目で近づき、自分自身の虚無感を満たそうと考えた。
こうして、レナモンの望月《みつき》と人間の稲荷満月《いなり みづき》の冒険が始まる——
これがとある小説投稿サイトで、とある人物が【まっちゃちゃ】というアカウント名で投稿しているネット小説《電子狐は夢を見るか》のあらすじである。
そして、その小説内に出てくる敵役の組織の名は「夜導衆」だ。
そう、今現在レナモン達を追いかけてきているウッドモンが所属しているらしい集団と同じ名前。
それに、レナモンは強く引っ掛かった。
この小説を知っているから…いや、知りすぎているからだ。
何故なら…
(何で…私の作ったお話と同じ名前が…)
そう、例の小説の作者【まっちゃちゃ】は他でもない彼女なのだ。
もちろん、彼女は実在する集団を小説に取り入れた訳ではない。
彼女自身が「頭の中で作った敵役」なのだ。
レナモンは何故そうなったのか、怪我をしたブイモンとベアモン、そしてヴォーボモンと一緒に倒木の影に隠れながら考えていた。
しかし、幾ら考えても答えは出てこない。
何故、自分の作った空想の敵が自分達を襲っているのだろうか。
「何処に行った…。出てこい!ワシの心を満たせぇ!」
ウッドモンの声が聞こえる。
このまま放って置けば、辺り一面を破壊するなんてやりかねない。
自分が作った敵なのだ。よく知っている。「夜導衆」は、そんなイカれたデジモンの集まりだ。
結局答えは出てこないが、元はと言えば「夜導衆」を作ったのは自分自身だ。
ならば、やる事は一つ。
「みんな隠れてて。これはきっと…私の責任です」
レナモンはそれだけ言って、自ら姿をウッドモンに曝け出した。
さっき意識がはっきりし始めたばかりのブイモンが何か言っていたが、レナモンはそれを無視してウッドモンに近づく。
「一人だけか…。他の三人は何処だ?」
「さぁね。逸れちゃった」
「フン…そうか。なら良い」
レナモンの嘘を信じたのか信じていないのか、ウッドモンは特に何も言わずに巨大な腕を振り上げる。
「ワシの心を満たすが良い!」
ウッドモンの腕が振り下ろされる。
レナモンは体に力を入れ、ウッドモンと迎え撃つ覚悟を決める。
その時、レナモンを中心にデータの嵐が起きた。
「ぐおぉ!?」
突然の衝撃に、ウッドモンは吹き飛ばされた。
その衝撃の中心にいるレナモンに、徐々にデータが集まってくる。
「レナモン進化!」
データはレナモンの体に纏わりつき、データで覆われた体は別の形へと変化する。
脚、腕、尻尾と変化していき、最後には顔にデータが集まり、レナモンと比べて大人びた顔へとなり、レナモンは九本の尻尾の生えた四足歩行の狐のデジモンに変化…いや、進化した。
「キュウビモン!」
キュウビモンへと進化したレナモンを見て、ウッドモンは起き上がりながら目を見開く。
だがすぐに冷静さを取り戻し、戦闘態勢を取った。
「少し進化したところでぇ…!」
ウッドモンが迫ると、キュウビモンは空かさずその九本の尻尾を大きく広げる。
するとその尻尾の先端に、次々と青い炎が現れた。
「鬼火玉!」
九つの鬼火が、ウッドモンの周りを浮遊する。
植物型デジモンであるウッドモンにとって天敵であるその鬼火に、彼は身動きが取れずに辺りを見渡す。
「フン…馬鹿にするな」
するとウッドモンは、自身の腕で勢いよく地面を叩き、その反動で宙に浮いた。
「なにっ!?」
予想外の行動に、キュウビモンは思わず驚く。
重力に従って迫ってくるウッドモンから逃げようと足を動かすが、バランスを崩してよろけてしまう。
「くらえぇ!」
「ぐあぁ!」
ウッドモンは落ちた瞬間に腕で地面を叩き、その衝撃で鬼火は消え、逃げ遅れたキュウビモンは吹き飛ばされ木にぶつかる。
「どうした? 進化したばかりで、体が慣れないのか?」
「くっ…そんな訳…」
キュウビモンは強がってみせたが、実際はその通りだった。
無理もない。本当の姿は人間で、ついさっきまではレナモンという人に近い姿形をしたデジモンだったのだ。
九本の尻尾を持ち、四足で歩くなど人生で一秒たりとも経験は無い。
「強がりを。まぁ良い。その程度なら、簡単に殺せるからな」
再び、ウッドモンは腕をキュウビモンに振り下ろした。
動く事すらままならない程だ。
直撃はせずとも、ダメージは必ず受ける。
そう、ウッドモンは油断していた。
だから、ウッドモンはキュウビモンの姿を見失ってしまった。
「なにっ!?」
ウッドモンは焦り、右方へ体を向ける。
あの一瞬で攻撃を避けていたキュウビモンの姿を目に捉えたが、それもすぐに消えてしまった。
キュウビモンは、立ち並ぶ木々を素早く蹴っていって、ウッドモンを翻弄する。
「どういう事だ!? 何故…!?」
「鬼火玉!」
「ぐおっ!」
ウッドモンが混乱していると、様々な方向から鬼火が襲ってくる。
ただでさえ動きが遅いウッドモンはそれを避けきれず、どんどん体力を消耗していく。
「何が起きてるんだ…!」
息を切らして、ウッドモンは頭を整理させる。
さっきまではキュウビモンは、自分自身の体に慣れていない様子だった。
それなのに突然、彼女は素早く動き始めたのだ。
突然の事で動揺しているが、この動きはキュウビモンとしてはまだ平均的だ。
だが、それにしてもだ。
それにしても、動きが別人過ぎる。
その時、太陽に一つの影が重なった。
ウッドモンは反射的に太陽を見る。
キュウビモンだ。
キュウビモンは炎を纏いながら体を縦回転させる。
「孤炎龍!」
キュウビモンは青い炎の龍の姿となり、ウッドモンに迫った。
「馬鹿な…!」
ウッドモンはそれを避けきれず、青い炎に包まれ断末魔をあげながら消滅した。
燃え盛る青い炎をバックに、キュウビモンは地面に着地してレナモンへと姿を戻したのであった。
レナモンは青い炎を見つめた後、不思議そうに自分の手を見つめる。
進化、技、そしてあのキュウビモン特有の素早い動き。
何故、それらをあそこまで自然に行えたのか、レナモン自身にも分からなかった。
そんな時、ブイモン達がレナモンへと駆け寄ってきた。
ブイモンの手には、何やらメカニカルな羽根ペンの様なものが握られている。
「良かった。勝てたんですね」
「えぇまぁ…それは?」
レナモンはブイモンが手に持っている羽根ペンを指差した。
ブイモンは「あぁ」と言って、そのペンが見やすい様にレナモンへと向ける。
「多分、デジヴァイスみたいなものだと思いますよ。【まっちゃちゃ】さん」
ブイモンの発したその名前に、レナモン本人はもちろん、ベアモンとヴォーボモンが「えぇ!?」と声を漏らした。
ブイモンは微笑み、口を開く。
「『夜導衆』って名前を聞いて、自分の責任だなんて言うレナモンと言ったら、【まっちゃちゃ】さんしか考えられなくて。僕、【ビクト】です」
ブイモンの自己紹介に、レナモン達三人は驚き、ベアモンに至っては「えぇ!?」と声を上げる。
「えっ…マ、マジで…?俺…【グリリン】」
「ぼ、僕は【ジョージ1号】です…」
ベアモンとヴォーボモンの自己紹介にも、再び衝撃が走った。
何故ならこの四人は、よくSNSで話す四人組なのだから。
辺りはすっかり真っ暗になり、ブイモン達はとりあえず森の中で野宿をする事になった。
野宿なんて初めての経験だが、辺りに食べられそうな果物と飲み水になる川が流れていて助かった。
少し抵抗はあるが、この際だ。仕方がない。
「つまり、このペンが突然現れたと?」
小枝を集めながら、レナモンはブイモンにそう訊いた。
ブイモンは「はい」と答え、小枝を一箇所に集め始める。
「【まっちゃちゃ】さんが戦いに出た時に、僕も何かできないかと思ってたら出てきたんです」
「でもそれ…デジヴァイスみたいなものと言っていましたね。どう使うんですか?」
「見てもらった方が早いと思いますよ」
「お待ち〜!」
ブイモンとレナモンが話す中、ベアモンが沢山の小枝を抱えながら、ヴォーボモンと共に戻ってきた。
そして彼等が集めた小枝も、これまた一箇所に集める。
「よし、これで焚き火の準備完了だな。なぁ【ビクト】さん。そのペン、貸してくれねぇか?」
「良いですよ。そもそも僕のものでもないですし」
そう言ってブイモンは、ベアモンに例の羽根ペンを渡した。
ベアモンがその羽根ペンにあったスイッチを押すと、何処からともなく半透明の光の本が現れる。
「え〜と…枝が全部燃えると困るし…。つかペン持ちづれ」
ベアモンはしばらく考えた後、少し苦労しながらその本のページの上でペンを滑らせる。
【ヴォーボモンは小枝達に息を吹きかけた。すると、その息に紛れた火の粉によって、小枝に火が付く】
そうページに書かれた瞬間、ヴォーボモンは集まった小枝に顔を近付かせてそのページ通りにフッと息を吹きかけた。
そしてこれもページ通りに、小枝に火が付いて焚き火が完成する。
それを見て、レナモンはペンの能力を知って驚愕した。
「まさか…書いた通りになる…という事ですか?」
「そんな万能なものじゃないみたいですけど…まぁそんな感じです」
ブイモンは一部を否定しながら、そう答える。
その答えを聴き、レナモンは今日起きた不可思議な出来事の一つを納得できた。
「じゃあ私が進化したり、技を出せたのも…」
「えぇ、僕が書いたんです。まぁウッドモンが思ってたより強くて、筆記が間に合わなくなった時もありましたけど…すみません」
筆記が間に合わなくなった時とは、恐らく思う以上に動く事が出来なくなったあの一瞬だろう。
その後すぐにブイモンが続きの展開を書いてくれたから、自分はきっとウッドモンの意表を突いて勝てる事が出来たのだ。
「という事は、相手側の動きはコントロール出来ない…?」
「相手の行動は事前に文字で浮かぶんですけど、その後にすぐにこっちも対抗策を書かないといけないみたいですね。あと、僕やみんなを進化させたり、元の世界に戻すとかやってみましたけど、全部ダメでした」
「一体…何故?」
「多分シチュエーション…でしょうね。物語として不自然な展開は現実化できない。それがあのペンの限界なんだと思います」
「なるほど…シチュエーション…」
レナモンはそこまで聴いて納得した。
「書いたことを現実にする」とは一見チートアイテムに聞こえるが、その様な制限があるとなると、そこまで万能ではない。
書く側次第では、戦況が詰んでしまう可能性だってある訳だ。
「お〜い。そんな難しい話してねぇで、こっちの話も聞いてくれよ」
「え? あぁすみません」
「すみません」
ベアモンに声をかけられ、ブイモンとレナモンは謝る。
ヴォーボモンは「いえいえ」と優しく微笑み、こっちで進めていた話の続きをする。
「その…良かったらなんですけど、改めて自己紹介…とか…しません?その…本名で」
「まぁとにかく! こんな状況にもなったんだ!しばらくの間どうするか分かんねぇし、アカウント名で呼ぶのも気が引き締まらねぇからさ!な!? 良いだろ!?」
辿々しく訊くヴォーボモンのフォローをするかの様に、ベアモンは屈託のない笑顔で続けてそう言った。
ブイモンとレナモンはしばらく考え、その提案に乗った。
こうして互いに、二回目の…そして本名での自己紹介を行った。
四人のプロフィールは以下のとおりだ。
本名:伊佐田直《いさだ なおる》
アカウント名:ビクト
種族デジモン:ブイモン
執筆状況:全て完結(全て短編)
作品名:サンタモン探索隊、罪を受け入れし竜、憧れは現実へ…など
本名:佐野晶《さの あきら》
アカウント名:まっちゃちゃ
種族デジモン:レナモン
執筆状況:連載中
作品名:電子狐は夢を見るか
本名:多川優亮《たがわ ゆうすけ》
アカウント名:グリリン
種族デジモン:ベアモン
執筆状況:二つとも放置中
作品名:デジモンネバーライフ、DIGITAL-DOOMSDAY
本名:宮崎研一《みやざき けんいち》
アカウント名:ジョージ1号
種族デジモン:ヴォーボモン
執筆状況:未執筆
作品名:なし(製作予定)
彼等四人は、これからも多くの困難にぶつかる事になる。
それは四人全員、心の何処かで感じ取っていたが、とりあえず今はそれを考えない様にして、いつも通り他愛も無い話をして笑い合った。
ここから、「デジモンSNS《セーブ・ノベル・ストーリーズ》」の物語が始まるのだ。
あとがきですわー!
という訳で、デジモンSNSでした。
これはpixivでも投稿していて、第1章投稿してから半年経ってもまだ続きができてない作品となります。
なら何故出した
まぁここに投稿した理由としては、まずこの作品は「みんなこんなの考えてるでしょ!?ね!!!」って気持ちで即席で書いたもので、よくよく考えたらこの創作サロンが一番合ってる作品だよなということ。
あとは他所でも投稿することで「はよ続き書けや」と自分を追い込むことですねハイ。
まぁpixivでメインで投稿してる作品も全然書けてないんですけどね。ゴホンゴホン。
近いうちに第2章は投稿する予定ですが、果たしていつまで続くかな!?!?
という訳で(?)、皆さん読んでくれてありがとうございました。
何か気付いたらアカウント名「てるジノ坊主」のキャラ増えてたりしねぇかな
pixivの方は存じ上げませんで申し訳ございませんが感想を書かせて頂きます。夏P(ナッピー)です。
これは……我々みたいなのが主人公ということかァーッ! ネット上で物書きやってる人間には誰もに相通ずるということでこれは面白いアイデア。熱いデジモン化でしたがしっかり理由と意味があるということでこれにはニヤリ。SNSは略称で正式名称にセイバーズ入ってるというのも良い。ヴォーボモンのジョージ1号氏の「作品名:なし」にちょっと笑いましたが、これさては温めまくっていたアイデアは無数にあってチート設定チート強敵が物語性もないまま湧き出まくってカオスになる奴だな!?
仮面ライダージオウで見たようなペンが出てきましたが、これ恐らくビクト氏が最後に「この物語そのものを文字で纏めた上で小説サイトに投稿⇒完!」になる奴でしょう……。二章は早めということでお待ちしております。
それでは今回はこの辺で感想とさせて頂きます。