※警察所属のお仕事デジモンが頑張る話です
◇
「やあ!君が最近地方からこちらに配属された新入りのデジモンくんだね!俺はジャスティモン!テイマーからはイチゴーと呼ばれている!分からないことが多いと思うし、慣れるまで大変だろうから何かあったら気にせず相談してくれよ!」
快活な口調で語りかけながら、背中を叩くジャスティモンに、新入りのデジモンは短く「ッス」と返事をしてぎこちなく頭を下げる。
カラカラに乾いてひび割れた田んぼの中を、2体はサクサクと音を立てながら歩いていく。
「ミルクちゃん、フィールド展開は?」
『イチゴーくん、完了済よ。久々のレア案件だけど、新入りくんは大丈夫かしら』
「大丈夫だよ、だってその部署で一番優秀だったんだよね?」
「……ッス、恐縮ッス」
『改めて私はオファニモンのミルクちゃんよ。よろしくね。危険な任務だからくれぐれも気をつけてね』
「……ス」
『うふふ、緊張しないで。オペレートはまかせてね』
オペレーターのオファニモンの通信が切れ、2体はバリア機能であるフィールド展開を再度確認した後、ゆっくり空を見上げる。
頭上に輝く眩すぎる太陽。
耐熱プログラムを仕込まれていなかったら既に灼熱に焼け焦がされていただろう。
「新入り!デジモン起因災害防衛とは!」
「……自然発生した災害とは異なる、デジモンの能力・気質を起因として発生する災害のこと。電脳工災害とも」
「端的完結でよろしい!よく分かっているな!観測しやすい具体的だとトラロックモンを起因とするハリケーン、チンロンモンが通過する際に発生する大雨などがある!だが今回はレアケースだな!」
枯れ果てた草木、すっかり乾ききった田んぼの用水路とその大元の川。
熱光を放つ太陽にかかる、翼の影。
蜃気楼に揺らめく鬣。
「うむ!厄介だな!2体合わせての起因というわけだ」
「あの、援軍は」
「別任務を片付けたオメガモンが来る!」
「ッス」
「只今からデジモン起因災害防衛任務を開始する!初期対応はテイマー本郷武所属・ジャスティモン・個体名:イチゴーとテイマー的射百合花所属・ベルゼブモン2010・個体名:瓜丸!対象カテゴリは『旱魃』!対象デジモンは"デジタルフォーリナー"のアポロモン!アルダモンについては、現在行方不明となっている◯◯市レスキュー部隊所属のアグニモン・個体名カテンと推測されます!DW転送部隊に引き渡すまでにアポロモンを鎮圧し、アルダモンを無事保護する!」
高らかにマイクに呼びかけ、ジャスティモンはブリッツアームを起動させ、確認するように拳を握りしめる。
新入りデジモン……ベルゼブモンの瓜丸はゆったりと旋回をするアルダモンから目を逸らすことなく、機内の右手でベレンヘーナのロックを解除した。銃弾が機甲内で装填されていく僅かな振動と音が響く。
「そんなにゆっくり飛んでたら、俺ど真ん中撃ち抜いちゃうぜ」
「ダメだ!アルダモンは生け捕りにするんだぞ!」
「OKす」
「行くぞ!」
アルダモンが急降下の兆しを見せ、アポロモンの鬣から周囲が大きく歪むほどの蜃気楼が立ちのぼる。
任務開始の狼煙が上がった。
◇
地上でジャスティモン……イチゴーがアポロモンと交戦をする中、ベルゼブモン2010……瓜丸は黒い翼を力強く羽ばたかせて空中戦へともつれ込む。
「アンタ、レスキュー部隊所属って聞いたけどどしたん?話聞こうか?」
アルダモンが放つ凄まじい光弾の嵐を掻い潜り、弾丸でかき消しながら相手の様子を観察し様子を伺う。
思いのほか素早い飛翔だ、その合間にもアルダモン自体から放たれる熱波が瓜丸に襲いかかってくる。
弾幕の間から垣間見た相手の顔は、目を細めて薄く口角を上げた……恍惚に似た表情をしていた。
「ねえちょい!ニヤニヤせんと話聞きんしゃい!」
右手を動かし、ベレンヘーナSDXの機構を素早く切り替え、光弾を抜けつつ瞳孔を見開いてアルダモンへ的を定めていく。
巨大な光弾を躱し、逆さの状態で体勢を整え、きゅう、と瞳孔が小さく絞られた。
「これくらいはさあ耐えれるだろ?!
"デス・ザ・キャノン"!」
銃身が2つに展開し、銃口が姿を現すのと弾丸が放たれるのはほぼ同時だった。
光弾の隙間という隙間を掻い潜り、弾丸は真っ直ぐにアルダモンへと飛んでいく。
余りの早撃ちに反応できなかったか、アルダモンも目を見開き避ける動作も間に合わない。胴体に銃弾をモロに浴びた。
装甲が割れ、間からちり、と小さく火の粉が弾ける。
「やるじゃないか!新入り!隙ができたぞ!捕縛装置を起動させてアルダモンを保護してく、ぬぅん!」
アポロモンととっ組み合う形となっていたイチゴーも、瓜丸の行動をオペレートしつつ咄嗟にアポロモンを巴投げして、優位に持っていく。
案外楽な仕事だったかもしれない、と瓜丸は左腕のデバイスを起動させて捕縛システムを引き出そうとするが。
パァン、と何かがはじけるような音が響き渡る。
顔をそちらへ向けると、体勢を建て直したアルダモンが髪の毛を靡かせながら悠々と飛んでいる。
変わらず放たれる熱にも、瓜丸の表情は崩れない。
レスキュー部隊所属だからタフだよなあ、とボヤきながら瓜丸は一旦システムを中断し、再びベレンヘーナSDXを構える。
別の作戦で捕縛を試みようとしていた。
アルダモンの目を真っ直ぐ見つめ、その時を待つ。
「よっしゃ、アンタ話分かりそうな気がしてきた!
『お前の願いはなんだ?』
アンタの願い!俺がかなえてやってもよかよ!」
左手に力を込め、爪を鋭く研ぎ澄ませて相手の返答を待つ。
この悪魔の問いかけからは誰も逃れられない。
アルダモンはその問いかけに、は、と余裕の表情を崩す。
かかった。
「ダークネスクロウ」の"起"が発動すれば後は相手が願いを言うのを待つだけ。
金縛りにして撃つなり頭をグーで殴るなりして大人しくさせたら良いのだ。
「……ぁ」
「どげんした?好きなこと言いんしゃい、遠慮せんでよかよか」
目を泳がせるアルダモンを煽るように、瓜丸は囁く。
先程の笑顔はどこへやら、焦燥を浮かべたアルダモンだが、様子がおかしい。
震える唇が、言葉を紡ぐ。
「あ、め、あめを、やませ、……やませ、たい、あのこたち、をいかして、あげたい……」
「でも、おれは、みな、を……りゅう、を」
「ん?アンタどうした?え、あらら?俺ちょっとヤバいこと聞いた系?」
あれ?
ちょっと、やばいかも。
つう、と額から冷や汗が伝う感覚が鮮明につたわる。
「おれ█、⬛︎な、█、し、た……?」
アルダモンの放った言葉にノイズがかかる。
内容はよく聞き取れなかった。
……聞き取れなくてよかったのかもしれない。
その直後、上がりにあがり続けていたアルダモンのパルスが感じたこともない数値まで至ったことを、肌を焦がす熱で察する。
『イチゴーくん!瓜丸くん!今すぐ退避!アルダモンから異常なデジタルパルスを感知しました!アポロモンとの交戦をやめて今すぐ退避なさい!』
耳元でオペレーターのミルクが叫ぶ。
地上でアポロモンとプロレスで決着をつけていたイチゴーも、瓜丸へと叫ぶが。
竜の咆哮が、放たれた。
「新入りーッ!」
……
「新入り、しっかりしろ」
激痛を感じるはずの肉体にはなにもないらしく、顔を上げると赤いマントが目の前で翻った。
「……ヴァルキリモン?おれしんだ?」
「ヴァルキリモンじゃないし死んでない。ギリギリ間に合ったから良かったものの……貴様アルダモンに何したんだ」
目の前に眩しすぎる白が広がっている。
だいぶ目が慣れたところで、それが援軍のオメガモンとようやく気づいた。
「イチゴー。お前新入りは任せとけと言っておいて」
「いやあHAHAHA、アポロモンとのパンクラチオンが思ったより白熱してしまってね」
「ッス……サーセン……」
目の前で放たれた竜の咆哮の後に、目の前が真っ白になるほどの巨大すぎる光弾が放たれた所までは覚えている。
あまりの熱量に、そこで多分気絶したらしい。
アルダモンはオメガモンが放っただろう捕縛システム内に拘束されているが、長くは持たないだろう。
「いや自分、ダークネスクロウの起爆剤で願いを聞いただけなんスけどね……」
「……催眠技みたいなものだ、あんまり使わない方がいいんじゃないのか」
「便利なんスけどね、金縛りにできるから」
オメガモンから治療プログラムを受け取り、傷を修復する。
まだDW転送部隊が到着しておらず、イチゴーが取り押さえたアポロモンは腕に鎮痛作用システムが組み込まれた腕輪を装着したまま、その場に胡座で座っていた。
「今はもう話せるな!日の神たるアポロモンがこっちに進出したのは何故なんだ?」
イチゴーの問いかけに、アポロモンは深く呼吸を吐く。
先程と違い、どうやら正気を取り戻しているようだ。
「俺は妹のディアナモンと狩りをしていたんだが、ある日突然ゲートが開いてこちらに飛ばされてな」
「ほお!"境界"案件か!」
境界案件。最近多発している『デジタル・フォーリナー(電脳世界からの来訪者)』は、DWとRWの境界がなんらかの影響で偶発的に開き、デジモンがこちらへと転移、その転移の際に混乱したデジモンが暴れ回る……というのがほとんどの例だ。
時たま意志を持ってこちらに侵略しに来るデジモンもいる。
「あのアルダモン……アグニモンだな。最初にそいつが俺を止めようとして戦ったまでは覚えている」
『アルダモンから、貴方のデジタルパルスによく似た波長が計測されました。多分、太陽神と火神という似た気質が影響し合い、アグニモンの進化を促したんだと思います』
「火神のデータを元にしたアグニモンと、旱魃の邪竜のデータを元にしたヴリトラモンがジョグレスした存在がアルダモン。……ヴリトラモンのデータがどこから来たのかは知らないがな」
「もしかしたら、過去にヴリトラモンをロードした可能性もあるかもな!」
「……凶暴なヴリトラモンをアグニモンが倒せるのか?」
「ちょ、オメガモンさんッヤバッ」
パキ、と捕縛システムがひび割れる。
「イチゴー、アポロモンをフィールド外へ。転送部隊へ連絡して対応を待て。何かあれば連絡する」
「うむ!気をつけるんだぞ新入り!」
「迷惑をかけてすまないな、頼んだ!」
アポロモンを伴い、イチゴーがフィールド外へ脱出する。
ミルクもフィールドの二重構築を指示し、再び戦いに備えた。
各自に指示をしながらも、ガルルキャノンは既に捕縛システムへと向けられている。
立ち上がる最中に右指を動かし、ベレンヘーナSDXの出力のストッパーを外していく。
「瓜丸、私も加勢してやる。行けるな」
「ッス!」
「来るぞ」
「"ブラフマシル・パドマフレア"」
捕縛システムがガラスの破片の如く飛び散る。そしてそれすらをかき消すように激しい光球がアルダモンを中心に広がり始めた。
滑らかな指の動きと共に、アルダモンがルードリー・タルパナの機甲ギミックを展開する。
開いた機甲から火炎が噴き出し、フィールドの水分を奪っていく。
「"ブラフマストラ"」
弾けるような音と同時に放たれた火炎弾の嵐。
一瞬瓜丸は怯むものの、オメガモンがいち早く前に出てグレイソードで火炎弾を薙ぎ払っていく。
このままではいけない、と先輩の後を追うように、黒い翼を目いっぱい羽ばたかせ、弾丸で火炎弾を弾き壊しながらアルダモンへと接近する。
「完全に正気を失っているな。何故ああも焦燥しきった顔をしているんだ」
「雨を止めないといけない、と言っとったんですが、なんか昔あったんスかね、エ!」
ガルルキャノンの一撃が命中し、絶対零度の威力にアルダモンが一瞬よろけるが、すぐに蒸発してしまう。麻酔代わりになる強制昏倒プログラムを打ち込む余裕も無い。
生かしたまま返す、のが任務だが、この荒ぶる神を生かしたまま鎮めるのは極めて難しいかもしれない。
地面のひび割れや河川の涸れはとうに限界を迎えている。このまま埒があかなければ、かなり大きな"フォーリナーハザード"となってしまう。
ベレンヘーナSDXを撃ち続け、瓜丸はオメガモンを援護する。
灼熱の太陽と化したアルダモンの一撃はかなり重たい。接近戦に持ち込んだオメガモンの桁違いの強さには感嘆しかないが、オメガモンも長くは持たない。
瓜丸は必死で打開策を考えるが、熱と焦りで考えがまとまらない。
こういう時に、パートナーがいてくれたら。
ピンチを切り抜ける一言をくれただろうか。
「百合花」
頭によぎったちょうどその時だった。
『ミルクよ。2人とも大丈夫?今ねレスキュー部隊の方たちがこちらに来ているの。どういう状況か教えてくれるかしら』
オペレーターからの通信に、瓜丸の頭の中にもう1つの策が浮かんだ。
「……ミルクさん神タイミングッスね」
アルダモンは元々レスキュー部隊所属のデジモンだ。
馴染みのデジモンや人間の声を聞けば多少気がそらせるのではないか。
パートナーの声で安心するような、そういう感じで。
瓜丸がミルクにそう伝え、ミルクからの通信に応答しながら震える指でデバイスの設定をする。
腕の通信デバイスをスピーカーとして設定し、しばらく通信の繋ぎ直しに軽くノイズが走るが、ぶち、と通信の繋ぎ直しが完了した音がワイヤレススピーカーから響いた。
『もしもし!こちら◯◯市レスキュー部隊所属のバウトモンです!うちのカテンがご迷惑をおかけしています!今どこに!』
「御安心くださいピンッピンに元気ですよ!それよかそいつに呼びかけてやってください!アンタらの声聞いたら多少気が鎮まるかもなんで!今から接近するんで!はい!どーぞ!!」
ベレンヘーナSDXから激しく発砲し、アルダモンへの道を撃ち開く。
「オラーッ!同僚の声を!聞けーッ!」
『カテンーッ!!!』
スピーカーから放たれた、爆音の野太すぎる複数の呼びかけ。
激しく干戈を交えるオメガモンとアルダモンの2者だったが、その声に、アルダモンがグレイソードを弾き返した勢いのまま振り返る。
『カテンーッ!』
『カテンどうしたんだよー!』
『らしくないぞ!』
『早くうちに帰ってきてよー!』
『後輩が、可愛い後輩が辛い目に合ってるの考えたらァァ"〜〜〜!ヴォエッ』
『シャコモンがまた泣きすぎてゲロっちまうんだよー!』
『カテンーッ!戻ってきてくれよー!』
スピーカーから煩い程に響く通信に、アルダモンの目に揺らぎが起こる。
唇は言葉を上手く紡げず、びょう、と吐息とともに火の粉が散る。
アルダモンは目を丸くしたまま、スピーカーを持つ瓜丸の方へゆっくりと飛んでいく。
まだ太陽の熱を持つ体だ。口周りにじり、とヒリつきを感じるがここで逃げてはせっかくの作戦がパアだ。
『カテン、お前がいなきゃ俺達寂しいよ』
バウトモンの言葉に、蜃気楼を纏って靡いていた髪の毛が静かに落ち着いていく。
構えていた手つきも力なく下ろしている。
背後で剣を収めてガルルキャノンをゆっくり構えたオメガモンと視線を合わせ、頷いた。
「……もう一度聞くぜ、お日様さん。
"お前の望みはなんだ"?」
先程と同じ質問。
いちかばちかであった。
先程とは違う、仲間の声でこちら側へと引き込まれつつあるアルダモンがどう答えるか。
下手をしたら、先程の灼熱地獄を近距離で浴びることになる。
さあ、答えんしゃい!あんたは何を望む!
瓜丸の赤い目が、答えを求めて陽を見つめる。
「……た、い……」
火の粉を零す唇がぎこちなく、言葉を紡ぐ。
オメガモンのガルルキャノンが青白く光を纏う。
「か、えり、たい……」
絞り出すような声。
陽炎のごとく揺らめいていた瞳が、水をまとう。
「お、れを……ひつよう、と、
して……くれる……
なかまの、もとに、
かえりたいっ……!」
ブワ!と火の粉を散らしながらアルダモンは叫んだ。
その瞬間、アルダモンの体に電撃が走り、身体中の神経が奪われたかのように硬直する。
待っとったとよ、こん瞬間をォ!
瓜丸は無表情のまま、オメガモンへと目配せをし、左の掌を大きく開いた。
「そん言葉ァ聞き入れたァ!!!!
"ダークネスクロウ"!!!!!」
一瞬で鋭く尖らせた爪を、アルダモンへと振りかざす。
紫電を纏ったその一撃は、灼熱という鎧を散らしたアルダモンの胸部の装甲へ、深く疵を刻んだ。
ぐらついた体がゆっくりと後ろへと倒れ、金髪が鮮やかな陽の光を浴びて輝く。
フィールド越しの太陽の光が、仄かに口元に笑みを浮かべたアルダモンの穏やかな姿を照らした。
炎の翼が霧散し、バラバラと砕けた竜の鱗が宙を舞う。
素早く急降下した瓜丸の腕へと受け止められたアグニモンは、優しく笑みを浮かべたまま、静かに涙を流して気絶している。
「……皆様、ご協力ありがとうございます。もう大丈夫です」
スピーカーの向こう、心配そうな空気を醸し出していたレスキュー部隊へ、静かに声をかけて通信を切った。
「パルス安定。異常なエネルギー反応は見られません。……オメガモン先輩」
瓜丸の隣へ降りてきたオメガモンも、アグニモンをデータスキャンして異常の有無を確認し、静かに頷いた。
「……ミルク、こちらオメガモン。アポロモンの鎮圧に続き、アルダモン……アグニモンの保護を完了。対象のパルスは通常値、異常ステータスは見られない。一旦データ還元をしてデジモン治療プログラムへと送る。フィールド解除を申請。最終対応はテイマー一文字基所属・オメガモン、テイマー的射百合花所属・ベルゼブモン2010・個体名:瓜丸。デジモン起因災害防衛、任務完了だ」
澱みなく通信を終わらせる。
腕の中に抱かれたアグニモンに、USBによく似た転送装置を翳すと、その姿はあっという間にデータ還元され、そのままデジモン治療プログラムへと転送されていった。
数秒の静寂の後、オメガモンが深呼吸して空を仰ぐ。
「……初めての防衛任務、お疲れ様だったな」
ガルルキャノンの代わりに人間によく似た形の手が、ドンと瓜丸の背中を優しく叩く。
その衝撃で、ようやく全身の緊張が霧散した感覚で、瓜丸はその場にどっかりと倒れ込む。
乾いた土の感覚は固くて痛いが、悪くは無い。
キラキラとまるでサンキャッチャーの光が散るかのように、フィールドが解除されていく。
フィールドが解除され、遮るものが無くなった大地に、輝く雨が降る。
「天気雨ッスね」
「丁度いいタイミングだったな」
「もう喉カラカラ。装甲冷やしてから帰ろっかなあ。お、虹」
晴れやかな雨の中、鮮やかに虹がかかった。
「……百合花に写真送ったげよ」
無表情は変わらないが、嬉しそうに呟く瓜丸に、オメガモンは目を細めた。
◇
数日後。
「アグニモンは元気と?」
「おー大丈夫とよ。すっかり元気になっとるたい」
昼間12時。
瓜丸はテイマーである的射百合花と共に昼休憩に入っている。
あの後も、事務処理やら治療プログラムなどで忙しい日が続いたが、2者ようやく余裕を持って話をする時間が出来たところだ。
「体に異常はなし。2日前に治療プログラムを完了させてレスキュー部隊の元に戻ったばい」
「そ。なんか安心した」
「ほんまね。……あん時はお互い、初めての単独任務っちゃけど。瓜丸がちゃんと生きてウチの元に帰ってきてくれて良かったばい」
ぱん、と腕を叩いて笑う百合花と目を合わせ、瓜丸はこくりと頷く。
……あの時、百合花の顔が思い浮かんでいなかったら、自分はここにいなかった。
無事に百合花の元へ帰還できた喜びも表情には出ないが、百合花は分かっている。
お互い静かに目を合わせ、拳をこつん、と合わせた。
「さて!今日もまだまだ仕事はあるけんね!飯食って頑張るたい!いただきまぁす!」
「百合花、まだ2分しかたっとらんばい」
「バリカタがよか!」
「そ。じゃあごゆっくり俺はあと3分、うどんを待つばい」
ズルズルとまだ硬い麺をすすり始めた百合花を横目に、瓜丸は上機嫌に鼻歌を歌いながらうどんの出来上がりを待つのだった。
◇
「カテン、大丈夫だったか?」
「うん!もう大丈夫だ!ちょっと嫌な夢を見たような……でも、みんながいる場所に戻れた!よかった」
「あああ〜〜〜〜〜〜〜〜こうはい"〜〜〜〜〜心配しておっぷヴェ!!!!!!」
ノベコンお疲れ様でした。夏P(ナッピー)です。
デジモン警察だ! いやウイングドラモンかウィングドラモンかとか真メタルグレイモンの呼称とかそーいうことではなく、公的権力に組み込まれているデジモン達だ! 近いものとしてはデジモンセイバーズのDATかなと思いますが、めっちゃ仮面ライダー1号の名前っぽいのが見えるし、オメガモンまで所属しているということなのでまさにヒーロー集団。ベルゼブモン2010と普通に書かれるとウルトラセブン211
を彷彿とさせるので此奴もまたヒーロー……というか、部活の後輩と言わんばかりにッスッスしか言わないの何事かと思えば、まさかそーいうことだったとは。これは萌えキャラ。
響きとしてデジタル・フォーリナーがカッコ良過ぎてこれタイトルっぽい。ジャスティモンことイチゴー良い先輩なのでしょうが、アポロモンとのバトルに夢中になってやらかす、これは失態……アポロモンとアルダモンが自力で雲吹っ飛ばしたとかそんなことがあるのかと思っていたら、旱魃を齎す邪竜であるヴリトラを要素として持つアルダモンが絡んでいたとは。あと2010版ベルゼブモンのダークネスクロウってそーいう効果だったんですね……。
待っていたぜェ! この瞬間をよォ!!
突然の特攻の拓。現れたオメガモンをヴァルキリモンと見間違えたのは、つまりアイツが死を司るデジモンだから死を確信したってことですね。そこから同じ部署の仲間を集めて呼びかけてもらうのは、まさに官憲ならではの描写でニヤリ。というかレスキュー部隊の皆さんいい奴ら過ぎる。なんとなく連続ドラマの中間の一幕、レスキュー部隊に焦点を当てた1話って感じがしますね。ベルゼブモン自身は初任務だったので、彼を中心として見ればやはり第1話か。
パートナーと揃って博多弁!?
同僚との会話で黙ってたのそれかよ! 上で萌えキャラとか言いましたが、それを上回る萌え要素が不意打ちで炸裂してきて戦慄にして驚愕。そろそろ死語となりつつあるばりすいとーよ言うのか!? 互いに言う日が来るのか!? ずっとバリ好いとーよ(バリカタ好きみたいな意味)だと勘違いしていたのは内緒ですが、何はともあれこの時間なのにバリカタの博多ラーメンが食べたくなったのでした。
何故だ!!
それでは改めましてノベコンお疲れ様でした。
この辺りで感想とさせて頂きます。
作品読ませていただきました!
感想を配信で喋らせていただきましたので、リンクを下に貼っておきます!
https://youtube.com/live/PuxrEcaLWnc
(31:08~感想になります)