※注意!
こちらの話は、拙作『デジモンプレセデント』の最終回からある程度時間が経過してからのお話となります。
当然本編のネタバレを含みますので、未読の方はご注意ください。
では、以下、本編です。
*
『子供博士特集!』的な番組が、昔から嫌いだった。
彼ら彼女らが周囲にその知識を褒めそやされるまでに、常人では想像もできない程の、それこそ血の滲むような努力を重ねてきた事も、今なら解る。……解る、けれど。
だけど同時に、画面越しに見る笑顔の子供達は、傍目からには眩し過ぎる程に、「恵まれている」ようにしか見えなくて。
望めば県外、どころか国内外を問わず、資料のある地域に連れて行ってくれる、潤沢な資産と途方もない理解を持つ両親。
金があるならコネクションだってある。一般人が図書館の背景、本の背表紙として視界に入れる機会があるか無いかくらいでしか認識できない専門家達とも、簡単にコンタクトを取る事ができる。
その上に今度はメディアからスポットライトを浴びて、親子共々綺麗に着飾って、いかにも一般人ウケしそうな種族のデジモンを隣に引き連れて。自分の2、3倍は生きている芸能人相手にしたり顔で講釈を垂れる連中を見ていると、虫唾が走ったし、反吐が出た。
「こんな小さい子が頑張ってるんだから、あんたももっとしっかり勉強しなさいよ」
両親は「子供が頑張っている話」が好きだったので、よくこの手の番組を、私の逃げられない夕食時に流しては、口癖のようにそう言った。
そう思うなら、この子供達の親みたいに、私を遠い国に連れて行ってよ。
……そう言い返せる程、私と両親は気安い関係とは言えなかった。
まあ――そういう、ごくごく一般的な拗らせ方をした神経で生きてきたものだから。
考えてもみなかった。
まさか自分が、あの苛立たしい『子供博士』達のように、少し首を突っ込んだだけの分野の『専門家』の前に引っ張り出される日が来るだなんて。
*
「何も取って食おうってワケじゃないんだから。そんなに緊張しなくていいよ」
返事の言葉さえ「ぴゃい……」と要領を得ない有様で、顔面、どころか全身が熱を帯びてしまう。
声の良さだけは唯一の取り柄として密かに誇って生きてきたのに、彼女と顔を合わせてからというもの、まともな発声すらできていない気がする。
ネットで写真を確認した時から薄々気がついてはいたが、滅茶苦茶美人だ。化粧けはあまり無いが、そも土台からして違う。黒髪ロングストレートがサマになっている時点で、お察しだ。
もう何度目かもわからないし、意味が無いのは重々承知の上で、私はマスクと眼鏡の位置を調整し直し、クセのある髪を手櫛で梳くのだった。
雲野環菜(ウンノ カンナ)。
デジモン研究者。専門は、デジモンの進化と、『十闘士』。
才色兼備の具体例。
究極体に進化可のパートナー持ち。
実家太し。人脈広し。
マジモンの『選ばれし存在』。
ゴリゴリに、羨望の対象。
「ゴメンネェ。シエル、動画だとあんなカンジだけど、リアルじゃヒトと話すの、慣れてないからァ」
スマホ型デジヴァイスから響く間延びした声に耳が痛い。痛いが、同時に種族として物怖じしないパートナーの存在はフツーにありがたい。
「いいのヨ、むしろこっちこそごめんなさいね。カンナってば顔怖いでしョ? しかもいい歳して大人げないし。そんなオバサンに急に呼び出されたら、誰だって萎縮しちゃうわヨ」
「あーのーねぇ! オバサンなのは認めるけど、怖い顔に関しちゃ爬虫類顔のアンタにだけは言われたくないね!」
「なんたって爬虫類型だもの、それでも愛嬌ならカンナにも負けてないんだから」
一方でウンノ先生とそのパートナー――男性の声で女性口調のアグモン(黒)は、当たり前ではあるが余裕綽々。
時間帯的にも人気の無いファミレス、その端の席で、ではあるけれど、人目もはばからずスマホの画面を挟んで噛み付き合っている様は、口喧嘩まで熟れているような印象をこちらに与えてくる。
「……収集付かなくなるからやめよっか」
「気付くのが遅い。遅いけれど、気付けるヨうになっただけでも大きくなったわね、カンナ」
今更のように音を控えめにした舌打ちを挟んで、ウンノ先生が画面を下向きにしてデジヴァイスを机に置く。
見計らったようにウェイターがやって来て、ウンノ先生の前にはコーヒー、私の前にはコーラフロート、そして伝票と「ごゆっくり」の一言を残して、去って行った。
「その子」
「ひゃい!?」
思わず開封中のストローを落とすところだった。
慌てて眼鏡のブリッジを押さえながら顔を上げれば、ウンノ先生の視線は、ウンノ先生と同じように机上に置いてある(もっとも、こちらは画面を上向きにしているが)私のデジヴァイスへと落とされていて。
「パブリモン、で合ってるかい?」
「えっ、え……あっ、はい……」
引き続き要領を得ない返事で応えながら、あれ? と私は内心首を捻る。
画面は暗転しており、パートナーのドット絵は表示されていない。
それに――この子の種族は、投稿している動画含め、よほどの事が無い限り口外していない筈なのだけれど。
眼鏡とマスク越しにも怪訝そうな表情が伝わってしまったのか。「ああいや」と、ウンノ先生が軽く手を振った。
「そうかな、って思ったんだよ。気になってたんだ。素人が個人でやっているにしては、取り扱っている情報の量も多くて質も高い。となると、パートナーデジモンがそっち方面に優れた種族だと勘ぐっちまうのは研究者のサガでね。そう考えると、名前の中に『紙飛行機』と『巻き貝』が見えてくる。加えて、アンタは特に、『突然変異型』に造詣が深いようだったから」
「……」
「名探偵みたいだろう? ……なんて、外して赤っ恥かかずに済んだから言えてるんだけどね」
「ほんとヨ」と合いの手を入れるパートナーが入ったデジヴァイスの背面を人差し指で小突きながらするウィンクまで、サマになっている。
私はようやく差し込んだストライプ柄のストローで、溜め息を吐く代わりに、甘ったるい炭酸を吸う。
デジモンの助けが無くても、ちょっとしたヒントで他人のパートナーまで当てられる。
『情報系』なんて胡乱な肩書きを名乗ったところで、素人は素人。本職との力量差は月とすっぽん。
改めて。そして、今更のように。
冷たいドリンクと店内の空調以外の理由で、背筋が冷たくなっていく。
私は。私なんかが。何がどうして進化分野の権威にして十闘士研究のパイオニアに、こうして呼び出されているのだろうと――
「偉いと思うよ」
思わずストローから口を離し、顔を上げる。
入れ替わるようにこの季節にも熱々のコーヒーを啜ってから、ウンノ先生が端整な顔立ちでにこりと微笑んだ。
「仕事柄スライドは作れるけれど、動画となるとさっぱりだからね。それも、聞いた人間に理解と納得を与えられる出来映えのものとなると、その分野の専門家だろうが、作れる奴は一握りさ。難しい事を簡単に。簡単なものを面白く。それが一番大事で、難しいんだよね」
「ヘェ、なんだよォ、わかってんジャン」
「ちょ、パブリモン……」
私はデジヴァイスの上に軽く手の平を被せる。隠すみたいに。
……でも、これだって結局、意味の無い行為だ。二重の意味で。
私のパートナーデジモンは既にバレているし、
この人は、どんなデジモンが相手だろうが、好悪ではなく興味で行動出来る、『本物』なのだから。
「……てっきり」
「うん?」
「怒られるものだとばかり、思っていました」
「え? なんで?」
「……、……。……あるじゃないですか、「素人質問で恐縮ですが」って」
「あー、アレね。アレ、ヤだよね」
「カンナも時々センキっちゃんにやられてたわヨね」
ウンノ先生がげんなりと唇をへの字に曲げて指先でデジヴァイスを弾く。
こっちは、結果に意味は無いけれど、パートナーとのコミュニケーションという意味はある行為だ。
センキっちゃん。……同僚や、学友だろうか。
こんな頭のいい人に『素人質問』ができる人がいるなんて、知らない人達は悉く恵まれているように見えて、世界と、自分が、嫌になる。
「確かに、専門家からすれば拙い部分も物足りない部分もあるし、嫌がる連中もいるのは知ってるけどね。でも、アタシらから見れば「そう」だとしても、一般人――特に子供達が興味を持つ窓口としてなら、このぐらいの情報量がむしろちょうど良い。本当に興味を持つ子供は、きっかけさえあれば自分でより詳しく調べ始めるからね。事実、アタシの姪っ子も自由研究のネタを求めてアンタのチャンネルに齧り付いてるよ。近くに本職がいるっていうのにさぁ」
妬いちゃうよ、と唇を尖らせる彼女に対して、心に余裕があるんだなと思ってしまう私の方こそ、そういう感情を抱いているとしか言いようが無い。
「ウソ情報を垂れ流してるなら兎も角、アンタは出典もしっかりしてるし、パートナーもその方面に特化してるみたいだし。だから、萎縮してくれる事なんて無いよ。専門家だなんて言っても、アンタとアタシじゃ、そもそも特化してる分野が違う」
「じゃあ」
評価の言葉をかけられる毎に肩身の狭くなるような気分を覚えながら、私は声を絞り出す。
「ウンノ先生は」
「下の名前でいいよ。名字で呼ばれるの、あんまり好きじゃ無いんだ」
「……カンナ先生は、どうして私に、それも直接、会って話をしたいなんて連絡をくださったんですか?」
ふいに、ウンノ先生――改め、カンナ先生がデジヴァイスを持ち上げる。
画面には示し合わせたように、動画アプリが、そこに私が投稿した、最新の動画のサムネイルが表示されていて。
「オッ、チャンネル登録&好評価済みじゃーん、サンキュ~」
「さっき言ってたカンナの姪っ子経由で知ったの。クロちゃんも見せてもらってるわ」
「重ねてサンキュ~!」
見出しを編集したのはパブリモンだ。弾んだ声音から、デジヴァイスの中で無い鼻を高くしている様子が窺える。
映し出されているのは、世間が思い描く――所謂バ美肉した姿の――『私』が鏡を覗き込むイラスト。
巨大な長方形の鏡は金の縁と緑の布で飾られていて、鏡を見ている私は天使の翼を、鏡の向こうの私は悪魔の羽を生やしている。
その絵に被さらないように派手な暖色のグラデーションで打たれたタイトルには、
『古代十闘士に裏切り者!? 伝説の謎を大考察!!』
……と、書かれていて。
書いたわけで。
「特化してる分野が違う」と言われたところで、慰めになんてならない。
紛う事無き、カンナ先生の専門。
日本一。どころか、下手をすると世界一の。
そも、十闘士研究は、この人が――
「ちょいと気になっちまったのさ」
冷え切った全身から冷や汗が止まらない私に対して、カンナ先生がうっすらと微笑む。
「『世間』の目には、『奴』はどういう風に解釈されているのか」
こればっかりは、同業からは得られない感想だからね。と。
「アタシの知る限り、『このデジモン』に対してここまで踏み込んだ一般人はアンタだけなんだ。だから、頼むよ」
カンナ先生が軽く身を乗り出す。
「何を思って、どういう経路で、アンタはこの結論を弾き出したのか。……おばちゃんに特別講義してくれないかい? 鳶香味(とびがみ)シエルちゃん」
「ぴゃい……」
震える手のやり場に困って、デジヴァイスに指を重ねる。
とても目は合わせられなかった。
先にアグモン(黒)が彼女を「怖い顔」と表したときには「そんなことは無いだろう」と思ったけれど、今は、その、そうじゃない。妙な迫力がある。
だけどそんな中で、なんとなしに耳の奥でこだまするのは、『鳶香味シエル』の名前。
私の動画投稿アプリでの活動名にして、私を覆う巻き貝の殻。
……シエル(空)を飛ぶ紙に、巻き貝(シェル)、か。
言われてみれば、あからさまな名前だ。
「シエル、褒めてくれてるんだから、流石にもうちょっとシャキっとしなよォ」
今更のように思う。ひょっとしたら、負い目だったのかもしれないと。
……パブリモンは、世間的にはあまり歓迎される種族じゃなくて。私も結局は、そういうものとしてこの子を殻の中に仕舞っているワケだから。
*
『天使』の手の甲には、鋼の闘士セフィロトモンの額と同じマークがある。
きっかけは、パブリモンが仕入れてきてくれた、そんな情報だった。
5年前の通称『ユミル事件』と呼ばれる出来事の際に明かされた、現デジタルワールドの管理システム『ホメオスタシス』の前身である『天使』と、その敵対者であるデジタルワールド初の究極体10体。そして、彼らのデータを継いだという、『ハイブリッド体』と呼ばれる10属性の鎧の闘士達。
大なり小なり世界中を震撼させたかの旧い『新デジモン』達については、以降、私の目の前にいるカンナ先生を中心として研究が進められ、ようやく公的に纏められたデータが私のような一般人にも閲覧出来るようなところにまで降りてきたところである。
ずっとその正体が気になっていた私は、ずっと気にしていた私のためにいの一番でパブリモンが仕入れてきたその情報に飛びついた。
あの日、鏡という鏡を介して演説を行った『エンシェントワイズモン』――だけではない。
その直系であるという、あの奇妙で禍々しい見た目をした、空から零れた黒い水を飲み込んで消えた巨大デジモン――セフィロトモンを、あの時、私は比較的近い場所から、直接見ていたのだ。
少しだけ、パブリモンに似ていると、そう思った。
世間一般に、データ種とはいえ「あまり良く無いデジモン」として認識されている、私のパートナーに。
案の定、セフィロトモンのタイプはパブリモンと同じく突然変異型。
そして同じ属性をセフィロトモンに与えた太古の究極体・エンシェントワイズモンもまた、突然変異型――というか、現代に生きる突然変異型の祖こそが、かのデジモンである、と、開いた資料には書かれていて。
……あれだけの大事件の首謀者だ。同じ突然変異型であるパブリモンに向けられる目が今後ますます厳しいものになっていくかもしれないと嘆息しつつ――きっとこの子をパブリモンにした根源である、私の妙に冷静な部分が、「エンシェントワイズモンは悪者である」という前提の下に資料を纏めれば、きっと視聴者の目を引く動画ができると、そんな事ばかり、考えた。
方向性が決まっていれば、後は線をつなぎ合わせるための点を集めるだけ。
思惑通り、いつも通り。『ネタ』は順調に集まった。
エンシェントワイズモンとほぼ同じ名前のワイズモンは、『ウィッチェルニー』と呼ばれる別のデジタルワールドが発生元らしい、という研究結果がある。
すると、エンシェントワイズモンは私達の知るデジタルワールドから見て「よそ者」な可能性がある、と解釈できなくは無い。
『デジモンアドベンチャー』作者の高石タケル先生のパートナー、天使型の筆頭・エンジェモンと、彼と冒険を共にした弁護士の火田伊織先生のパートナー、古代種のアンキロモンがジョグレスした姿・シャッコウモンは突然変異型だが、その翼の付いた土偶のような見た目から、古代デジタルワールドに降臨した天使型デジモンではないか、と噂されている。
では、シャッコウモンはあくまで突然変異型で、しかし「古代に君臨した天使型」を模して作られた存在なんじゃないか? と提起しても、否定出来るほどの材料は少なくともまだ見つかっていない。
セフィロトモンの中央――おそらくモデルである『セフィロトの樹』と同様に、『ティファレト』と呼ばれる球――には、やはり『ティファレト』の名を冠する、ロゼモンの持つ宝玉と同じシンボルが刻まれており、その文様は、八神ヒカリ氏が持つ『光の紋章』と酷似している。……にもかかわらず、セフィロトモンのその球は、『闇』の属性を持つという。
『闇』。言うまでも無く、この世界とデジタルワールドを何度も脅威にさらした勢力。
セフィロトモンがエンシェントワイズモンの直系だというのなら、『ティファレト』が闇の属性を持つ事には、必ずエンシェントワイズモンの意図がある筈だ。
『ティファレト』のシンボルは「愛と美」を意味し、『光の紋章』は「進化と美」を司るという。エンシェントワイズモンが最古の究極体の一角である以上、ロゼモンは彼ら以降のデジモンという事になる。で、即ち『ティファレト』の起源は、ロゼモンよりもセフィロトモンの方が古い筈なのだ。
何故、デジタルワールドで進化の頂に至った存在が、「進化」よりも「愛」を意味する文様を、よりにもよって『闇』の属性に与えて末裔へと遺したのか。
「進化」すらせずに全てを圧倒した存在こそを、敬愛していたからではないのか。
……この辺りになると、流石にそろそろ胡乱インターネット仕草だ。でも、こういう推測に過ぎない部分こそが、結局『前例の無い真新しい発見』として、視聴者には一番ウケるのだ。
そして何より決め手となったのが、先にも挙げた、セフィロトモンの額と太古の『天使』の左手の甲。
同じマークが、刻まれている。
アーカイブが公開された原初の究極体10体――通称古代十闘士達は、皆想像も付かない程の戦闘力を持っていたらしく、その中でもエンシェントワイズモンのスペックは群を抜いていた。
実際にこの世界に対して見せ付けた『邪神の召喚』……だけじゃない。
かのデジモンは、アカシックレコード的な存在――つまり、古代の叡智を全て記録として有していたのだという。
このアーカイブを見た者なら、恐らく誰もが同じ疑問を抱くだろう。
そんな規格外の存在を含んだ10体もの究極体が、いくら管理システムの前身だとはいっても成長期相手に相打ちなどするだろうか? と。
少なくとも私はそう感じたし、きっと共感は得られるだろうと思った。
そして更に、刺激的な考察を加えれば、きっと見た者の目を引けるだろう、と。
古代十闘士の中には、『天使』の側に寝返った裏切り者が居たのではないか。
その裏切り者とは、古代鋼の闘士エンシェントワイズモンだったのではないか。
私は線の上にパブリモンが探し出した点を置いて、「そういう事」だった事にしようと思ったのだ。
*
「公的な見解を述べるなら」
パブリモンの補助を受けつつも、動画内と違ってひどく辿々しかったに違いない私の意見に最後まで耳を傾けて。
すっかり冷めたコーヒーを啜って一度間を置いてから、カンナ先生はゆっくりと口を開いた。
「例えば、そうだね。シエルちゃん、アンタ、もちろん自分のパートナーの特性については詳しいよね」
「えっと、それは、はい」
「パブリモンの必殺技は?」
「え……その」
パブリモンは、自身が記事を書くためのウィンドウを実体化・巨大化させて召喚する事ができる。
そのウィンドウで相手を挟んで潰す『デュアルプレッサー』と、ウィンドウを紙飛行機のように折って投げやりのように相手にぶつけて貫く『ジュークラック』が、パブリモンの必殺技だ。
シルエットだけを見れば人間の子供じみた姿をしているパブリモンはその見た目から侮られる事が多いけれど、一瞬で展開できるウィンドを用いて相手を奇襲する戦い方は、本人の観察眼も相まって意外と強力だったりする。
「うん。つまり、アンタはパブリモンの必殺技2種について、十分過ぎる程知っている」
「それは……はい」
「じゃあ、その攻撃がアンタ自身に向けられた時、人間のアンタはその攻撃を躱せるかい?」
「……」
そう判断するしか無いんだよね。と、ウンノ先生。
パブリモンが「オレはシエルにそんな事しないよォ」と反論しているけれど、当然問題はそこじゃない。
この上なく解りやすい、一瞬での論破だった。
「知識があっても、相手に対応出来るスペックが無ければどうしようも無い。究極体に成長期がそこまで力負けするなんてあり得るのか? と聞かれたら、「資料を読み解く限りではそうとしか考えられない」って答えなきゃいけないのが、結局は考察に頼るしか無い界隈の辛いところだねぇ」
カンナ先生はそう言っているが、あくまで素人の、お金もコネクションも動画投稿者と本職のデジモン研究者では、得られる資料の範囲も幅も違う。
どちらが正しいかなんて、比べる事自体が失礼だ。
「ただ、こんな説がある。『天使』が敷いた『暗黒の時代』っていうのは、『進化を必要としない時代』だったんじゃないか、ってのがね」
『天使』は混沌としたデジタルワールドに秩序と平和をもたらし、しかし反乱を起こして永きに渡る暗黒の時代を招いた。
……『天使』についての数少ない資料に記述されている内容だ。
「なまじ『天使』の存在が『完全体を越える成長期』という前例を生んだがために、デジタルワールドの理は進化を重要視しなくなった。デジメンタルってあるだろう。知っての通り、アレも古代の遺物だ」
そしてデジメンタルは、適性のある古代種に、その実質的なレベルを変えないままにそれ以上の力を与えるアイテムであり、その特異性によって、ダークタワーによって通常の進化を封じられたデジタルワールドを修正するために遣わされた2003年の選ばれし子供達を大いに助けたとされている。
「つまり――もちろん、デジメンタルと古代十闘士の時代が本当に被っていたら、の話だけれど――実際のレベルを変えないまま進化に近い強化を行う方法が、古代のデジタルワールドにはある程度定着していた可能性がある、って事だ。強くなるのに世代を変える必要が無いなら、当然、膨大なエネルギーを消費・維持してまで進化を行うメリットは無い」
だけど、デジモンとは本来、生きるために強くなり、強くなるために生きる存在。
それ以上自力で「強くなる」必要が無くなれば、彼らが生きる目的もまた、失われていく。
「だから、単純に、システムとして。『天使』は『新しい進化』によって倒されなければならなかった」
やはりデジモンは成長を、進化をして強くならなければならない。
「そして、『新たな進化』のデータをデジタルワールド全体に浸透させるためには、やはり『新たな進化』の体現者――究極体デジモン・古代十闘士のデータもまた、腑分けされなければならなかった」
必要以上に強く生み出された『天使』と、相打ちに持ち込める性能を持たされた原初の究極体10種。
『当時』を生きた存在達の感情ではなく、システムとして見た時に。
なるほど、確かにその考え方は理にかなっている。
「『奴』の言うところの『本来の歴史』だと、『天使』はあくまで封印に留まり、封じられた先で『闇』の力を吸収して『進化』に至るだのなんだの言ってたけれど――何にせよ、光の体現者である『天使』は、認めたんじゃないかねぇ。「やっぱりデジタルワールドには、『進化』が必要だ」って」
即ち、古代十闘士の勝利の証こそが、『光の紋章』。
進化とは美しい――賛美されるべきものであると、『天使』に認めさせた証拠だと。
……結露したグラスの水滴を指の腹に乗せて、頬に触れる。
冷たい。冷たいと感じる分、かぁ、と熱を帯びているのが解る。
恥ずかしかった。自分の的外れを、丁寧に人に指摘されるのは。
これってやっぱり、「素人質問で恐縮ですが」案件じゃないか。
わざわざ直接私に恥を欠かせなくたって、正しい知識を詳らかにしたいなら、文書にでも纏めて送ってきてくれれば私もまだ耐えられたのに。
「でもまあ」
私の内心を知ってか知らずか、ふいにウンノ先生は、語調を和らげた。
「「本当のところ」なんて、当時その場に居たワケでもないアタシらにはわからないし――何よりアンタの考えた説を見た時にさ。ぶっちゃけ、ね。「ざまぁみろ」って、そう思ったんだよ、ちょっとだけ」
虚しい慰めだと言い出しかねない口を結んだ唇を、更にマスクで改めて覆い隠そうとしていたその時に聞こえたその言葉に、私は、また一瞬固まって。それから耳を疑った。
言葉遣いが汚いとアグモン(黒)が彼女を窘めている声が、カンナ先生が汚い言葉を使った事実を裏付けていて、余計にワケがわからなくなる。
ざまぁみろ。
人の失敗を嘲笑う言葉。
……誰に対して?
「これだけ調べたなら知ってるだろう。アタシは、エンシェントワイズモンと接触した事がある」
エンシェントワイズモンの企みを阻止するために、その末裔であるセフィロトモンが、カンナ先生に助けを求めたのが、彼女がスピリットを認知するきっかけだった、と。
「あれだけ大それた事をやらかして、あれだけの大演説をかましたのに、見下していた『息子』に計画を阻止されたどころか、後の世では仲間に対する裏切りを疑われる」
結果を見れば、奴のやった事に、意味はなかった。と。
「ざまぁみろ」という罵りの印象とは裏腹に、カンナ先生は、静かに言葉を紡ぐ。
「当然の報いなんだろうね。あのデジモンは、やってはいけない真似をした。自分の力を、今を生きる人とデジモンを傷つけるために使ったんだから」
「……」
「でもね、同時に。……これも、今なら、少しだけ解るのさ」
カンナ先生は、続けて、僅かに眼を伏せた。
「自分がどうなろうが、世界がどうなろうが。もう、なんだって構わないって。自暴自棄に力を振りかざした『奴』の『心』が。……腹立たしい事にね」
何かを思い出しているような。……もっと言えば、悼んでいるような印象を覚える眼差しを、自分の手指へと落としながら。
「自暴自棄……」
「シエルちゃんも触れていた、セフィロトモンの『ティファレト』の球に、何故闇の属性が当てはめられているのか問題。これは未だ研究者の間でも解釈が別れてるんだ」
光と闇の力は表裏一体だから、であるとか。
エンシェントワイズモンの言う通り、『天使』が闇の属性を得て復活する可能性があったというのなら、それを預言していただとか。
『愛情』のデジメンタルが風の属性を持つ事から、ここに関連性は無いのかと探る者もいる。……だとか。
「けれど、いくら数字や資料を並べたところで、『愛』ってのは心の動きだ。感情を抜きにして解釈する事はできないんじゃ無いかと思う」
「感情」
「その上で、アタシは、個人的に。……『愛』の無い奴に、あんな真似は。自分も世界も顧みないような真似は、出来ないんじゃ無いかって。……そう思わずにはいられないのさ」
本当に、そう思ったところで何だけれどね。と力無く微笑むカンナ先生を、先程までとは違ってパートナーのアグモン(黒)が補足する事は無い。
闇の球に与えられた、愛の意味を持つ文様。
私はそれを、『天使』への忠誠の証だとか、そういうものとして解釈しようと思った。一般人でも拾えるような情報をつなぎ合わせて。
けれど、エンシェントワイズモンと直接対峙したこの研究者は、誰よりもあのデジモンについての資料を持っている筈なのに、感情でそれを解釈しようとしている。
エンシェントワイズモンの『愛』は、もっと違う誰かに宛てられた、『心』だったのではないのか、と。
「話せて良かったよ、シエルちゃん。研究者じゃ無い人間の考えるエンシェントワイズモンについて直接聞けて、アタシも多少は視野が広がった気がする」
カンナ先生のコーヒーカップも、私のグラスも。中の液体はすっかり空になっている。
「……正直、カンナ先生ばっかりに喋らせてしまった気が」
「え? そう? そうかなぁ」
「……ごめんなさいねシエルちゃん。カンナってば、自分の考えを纏める時ほど独り言が止まらないタイプのおしゃべりなの」
「気にしてないよォ。素のシエルが全然喋らないダケなところもあるからさァ」
「クロちゃん」
「パブリモン……」
私達はほとんど同時にパートナーを咎めて。
肩を竦めるカンナ先生に、私は、軽く首を横に振った。
「私の方は、専門家であるカンナ先生と話して。……自分の考えなんて間違いしか無いって、反省するばっかりです」
「シエル」
「素人が、恥ずかしいですよね。ホントは今回のエンシェントワイズモンの回だけじゃなくて、専門の人から見たら、ウソばっかり発信してるんでしょ、私なんか」
「……シエル、ってば」
パブリモンの声が耳に痛い。
私がこんなだから、この子はパブリモンになってしまったのだ。
私のパートナーがこの子だと知ると、大概の人は、嫌そうな顔をする。
デリカシーが無さそうだとか。強引そうだとか。主張が強そうだとか。
パブリモンがそんな風に振る舞った事なんて、私の知る限りは一度も無いけれど、両親だって「ちゃんと勉強をしないから」とこの子を私の怠慢の根拠にした。
この子の存在を明かしさえしなければ、この子の集めた情報をすごいすごいと多くの人がもてはやしてくれるのに。
……でも、そんな風にしかこの子を活かしてあげられないような人間だから、私は――
「そんな事無いよ」
顔を上げた先では、カンナ先生があっけらかんと笑っていた。
「アンタの取り扱ってる情報は、大体みんな出典がしっかりしてるじゃ無いか。最初に言ったけれど、アタシだってウソ情報垂れ流しているようなヤツにわざわざ会いに行く程暇じゃ無いよ。アタシから見ても、「そう解釈してもおかしくはない」って考察を取り扱ってるから、アンタに会ってみたいって思ったんだ」
「え……でも」
「色々註釈入れちまったけど、ほら、エンシェントワイズモンのウィッチェルニー出身説とか、シャッコウモンが突然変異型に分類されている意味だとか。あの辺、研究者界隈だと結構注目されてるんだけど、一般にはあんまり知られてないじゃないか。よく調べたと思うよ」
「あれは……パブリモンが」
「パートナーの能力を最大限引き出しての事なら、なおのこと大したモンさね!」
ぎゅ、と、胸が痛くなる。
ずっと欲しかった言葉のような気がした。
今更だ、と。そんな風にも思ってしまう。
「カンナ先生は」
「うん?」
「気にならないんですか。私がパブリモンを連れてる事」
「元々スカモン連れてた人間が人のパートナー云々気にすると思うかい?」
今日一番のド正論だったかもしれない。
流石に知っている。とても同一人物とは思えない程ケバケバしいピンク色のボサボサ髪をした彼女の画像に一緒に写っていたから。
「でも。カンナ先生のスカモンは、その頃から究極体に進化できてたそうじゃないですか」
「……」
「私は。……そんな、特別じゃない」
「……ヴァンデモン」
と、不意にカンナ先生が口にしたのは、一般人にとって『闇』の代表格みたいなデジモンの名。
そして、それは、確か――。
「まあ特別云々って言い出すと、アタシ達以上かもしれないけどさ。アタシの助手ちゃんのパートナーが、その種族なワケ」
「……知ってます」
コラプサモンと名付けられた、エンシェントワイズモンの呼び出した邪神を退けたとかいう、あの。
「未だコラプサモンの件ばっかりフィーチャーされるけどさ。今、ヴァンデモンを参考にしたセキュリティシステムが、試験的に運用され始めてるんだ」
一拍置いて、私のデジヴァイスから通知音が鳴り響く。
「シエル、これだと思う」
早速、パブリモンが調べてきたらしい。
ヴァンデモンは、データを吸収して破壊し、その破壊したデータを更に凶悪なウィルスとして復活させるデジモン。
このメカニズムを解析して、コンピューターウィルスを吸収・破壊し、同種のウィルスを追跡して停止させるプログラムに変換するシステムの開発が進んでいる……と、リンクに載っていた記事には、そう書いてある。
「ヴァンちゃ……助手ちゃんのヴァンデモンの協力があったからこそ始まった取り組みだ。ヴァンデモンは、それこそ世間サマから歓迎されないデジモンの代表格なワケだけれど――」
と、その時。今度はカンナ先生のデジヴァイスが、連続したコールをかき鳴らす。
「あら、ユキトシちゃんから電話みたいヨ」
「あーあーあーもうアイツってばいっつも良いところで……!」
ちょっとごめんね、と断りを入れて、やや不機嫌を滲ませながら電話を取るカンナ先生。
「もしもし? 今取り込み中なんだけど?」
そうして、彼女の意識が外れて、ある意味で1人になって、考える。
恵まれた人間。恵まれていない人間。
恵まれたデジモン。恵まれていないデジモン。
「……え?」
最古の究極体にして突然変異型の祖。そんな強大な存在にもかかわらず、大事件を引き起こしたエンシェントワイズモン。
何の変哲も無い突然変異型の成熟期。でも、何もしていなくても、世間からはいい目では見られない私のパートナー、パブリモン。
何もかもを持っているように見えるカンナ先生。
何も持っていないと思っている自分。
世界征服を企てたヴァンデモン。
セキュリティシステムの基盤となるヴァンデモン。
……カンナ先生が、続けようとしていた言葉は――
「誤差みたいなモンだろ。もうちょっとだけ待たせておきな。こっちだって5年も待たされたんだ」
一瞬混じった、鼻を啜るような音になんとなしに顔を上げると、デジヴァイスを支えているカンナ先生の右手の上半分が、鈍く光を反射したように見えた。
目を擦る。見間違いにしても、おかしな話だ。人の手指が、まあ爪なら兎も角、金属みたいに光るワケが無いのに。
その時カンナ先生が浮かべていた笑顔が、眩しいと錯覚する程のものだったせいだろうか?
「――お待たせ」
ぽかんとしている内に、カンナ先生がデジヴァイスを降ろした。
心なしか、先程とは打って変わって声が弾んでいる。余程良い知らせだったのだろう。
「それで、えっと、何だっけ――」
「あ、あの!」
私は声を振り絞った。
今日初めて。……そも、最後にそうしたのはいつだったか。
「うん?」
「セフィロトモンの額と、『天使』の手の甲に同じマークがある件。……アレは、その、どういう風に解釈されているものなんですか……?」
話の流れをぶった切ってまで、問いかける。
私が思っていたところの『恵まれし子供達』が、そうしていたみたいに。
カンナ先生は、まるで気を悪くした様子も無く、むしろにっと唇の端を吊り上げた。
「諸説あるよ。だからちょっと長くなるかも」
私は「大丈夫です」の意味を込めて頷く。
許してもらえるなら。こんな機会なのだから。……専門家から直接聞いてみたいと、そう思った。
「だけど、話を始める前に、ひとつ言っておかなきゃいけない事がある」
そう言って、カンナ先生はいっそうに笑いじわを深くした。
「近々『鋼の闘士』関係の研究はとんでもない進展を見せる筈だよ。ひょっとしたら、今ある学説、全部ひっくり返っちゃうかもしれないくらいのね!」
*
「おごられてしまった……」
ファミレスを出て、カンナ先生とは逆の方向に歩きながらひとりごちる。
飲み物代ぐらい自分出払うつもりだったのだが、気付けば伝票は既にカンナ先生の手の内にあった。
彼女の上機嫌な横顔を理由にして、自分で払うと言い出せなかった私は、やっぱり小ずるい人間なのかもしれない。
その割に、喉がまた渇いている。
炎天下のせいというより、話し過ぎたのかもしれない。生の意見というヤツは、想像以上に、興味深くて。
「いいんじゃァない? ハヤテ、今日、がんばったから」
おごられた事も。
追加で飲み物を自販機で買うことも。
自分へのご褒美なんて、都合の良い言葉で飾っても、と。
パブリモンが、私を甘やかす。
ハヤテ。本名だ。この名前でこの子に呼ばれると、どこに行っていたワケでも無いのに、日常に戻ってきた気がする。
世間は変わらない。
自分の気の持ちようだって、簡単に変わるものじゃない。
数日経てば少し前を向いた気分も落ち着くというより落ち込んで、卑屈な私が帰ってくる。きっと。
でも――当分、忘れはしないだろう。
忘れないでいようとは思う。
世界なんて、結局は視点の違いなんだと。
人は物事を都合の良いようにしか見ないんだから。
私自身だって、都合良く物事を捉えても良いと。
その角度を、少し上向きにして、そこにあるモノをしっかりと見据えれば――ちょっとくらいは、世界は良いものに見えるモンなのだ、と。
「楽しみだねェ、ハヤテ」
「?」
「ほら、あの人、コラボは流石に断られちゃったけど、代わりに「十闘士にそれなりに詳しくて、自分よりそういうの向いてるヤツを紹介したげる」って言ってたでしょォ?」
「言ってたね」
どこまで真に受けて良いのかはわからないけれど――と、思いかけて。
駄目だ駄目だ。今日ぐらいは、真っ当に信じていよう。少なくとも、約束をないがしろにするような人に見えなかったというのは、私がこの目で見て抱いた印象なのだから。
「楽しみだね」
見つけた自販機の前で、私は顔を上げて、パブリモンと同じセリフを口に出す。
それだけで、思った通り。自販機の向こう側に広がっている筈の世界が、少しだけ綺麗なモノに見えた。
それから数日後、カンナ先生から紹介された人物が、音楽系のとんでもない大物で、私達はひっくり返る羽目になるのだが――まあ、それは、また別のお話。
あとがき
セフィロトモンが額にルーチェモンと同じマークを持っていたり。
フロでセフィロトモンがやけに詳しく闇について言及していたり。
散々擦ってますけどセフィロトモンの本体部分『ティファレト』が闇属性だったり。
古代の天使らしいシャッコウモンが突然変異型だったり。
ルーチェモンとエンシェントワイズモン、何らかの繋がりがあったんじゃね? みたいな話は、前々からエンシェントワイズモン学会でも取り上げられていたワケですが(存在しない記憶)
……と、冗談はさておき。
この度はデジモンプレセデント外伝をご覧いただき、ありがとうございました。拙作デジモンプレセデントとも縁深い(ということにしている)8月3日に投稿できたらな~と8月に入ってから思い立ち、当然のように間に合わなかった快晴です。全部このガッデムホットが悪い。
ここ最近人のエンシェントワイズモン解釈を聞く機会が多く、俺もいっちょ自由研究纏めてみるかぁ~という考えは少し前からあったので、今回は処女作の枠組みを使ってその件に触れてみた感じです。
まあデジプレ時空の古代十闘士達はみんな結構仲良しだったので、ご存知の通りエンシェントワイズモンが裏切り者だったとかはうちの世界では有り得ないのですが、話が出てもおかしくは無い程度にはにおわせてない? みたいなのは前々から思っていました。
個人的には、エンシェントワイズモンはセフィロトモンに一種のメッセージを託したのではないかと思っています。ルーチェモンとの戦いで自分達が滅びると知っていたとしたら、なおのこと。後続に「ルーチェモンは闇の力を得て復活するぞ」と、そんな感じの。
でも、デジプレの世界ではルーチェモンはエンシェントワイズモンの観測に反してフォールダウンせずに管理プログラムとして君臨する運びとなったので、彼の真意はそれこそ闇の中です。諸行無常。
……あんな大演説かましたのに真意伝わってないの? と聞かれたら、エンシェントワイズモンは仲間への親愛までは詳しく語っていない(というかそもそも自分に愛情があるとは思っていなかった)し、やった事のデカさから逆恨み的なモノと解釈されてもおかしくはないよね? みたいな塩梅です。
あとは、大事なのはデジモンの種族じゃ無くて、その力をどう使うか。……みたいなのが、お話の根底にあったのかと思います。
エンシェントワイズモンは力の使い方を間違えたけれど、嫌われている種族でも正しく力を使っている者達も居る。結局、人とデジモンが生きていく上で大切なのは、そういうところなんじゃないかなと思ったり思わなかったり。
……と、色々書き連ねはしましたが、根本的には、「デジプレ主人公ズはみんな元気にやってるよ」というお話でした。でも、今は正しい道を歩んでいる彼ら彼女らの視点よりは、基本的に悪名高いデジプレモブの視点から書いた方が良いものが書けるんじゃ無いかと思い、無からパブリモン連れのテイマーが生えてきました。想像以上に卑屈な子になってしまいましたが、これからちょっとずつでも楽しく生きていけたら良いですね。
ところでちらっと名前の出て来たカズサちゃん。Twitterでも呟きましたが、リアルタイム換算だともう来年で中学1年生ですって。怖いですね。
とまあ、相変わらずとっちらかったあとがきになりましたが、いかがでしたでしょうか。
ノベコンで飛ばした反動でちょっと投降が低速気味になっていますが、サロンにはこれからもちょこちょこ顔を出していくと思うので、良ければこれからもお付き合いいただければ幸いです。
改めて、ここまで読んでくださってありがとうございました!