たすけて、たすけて、たすけて。
ゆめをみる。
いつもいつも、まぶたをとじるとおもいだす。
あかいほのお、ひめいとわらいごえ、なにかがくずれるおと。
たすけて、たすけて、たすけて。
きぼうなんてなかった、だれもたすけてはくれなかった。
かなしいきもちばかりがわきたった。
だれにも、あんなことになっていいりゆうなんてなかったのに。
たすけて、たすけて、たすけて。
やめてっていったけど、やめてはくれなかった。
にげようとするこどもたちも、ていこうしたみんなも、きえていった。
どうして、なんでってかんがえても、こたえなんてでなかった。
たすけて、たすけて、たすけて。
せかいのどこかにひーろーといわれるそんざいはいるのだとおもう。
そうじゃなかったらえほんにかかれたりなんてしないはずだから。
ただ、いまこのときにまにあってはくれなかったというだけで。
たすけて、たすけて、たすけて。
なんどもなんども、あたまのなかでひびいてる。
おこるこえ、かなしむこえ、たすけをもとめるこえ。
もう、そのこえがじっさいにきこえることはないのに、きこえてる。
たすけて、たすけて、たすけて。
みんなにためにできることをしないとって、おもった。
みんなをまもれるとくべつなそんざいに、せいぎのひーろーにならないとって、ずっとまえから。
ぼくには、ぱーとなーといえるあいてなんていないし、せかいをすくうなんてたいやくがにあうようなやつだとはおもえないけれど。
おこられることからも、きらわれることからも、いたいことからもにげたいとおもってしまう、ただのおくびょうなこどもでしかないけれど。
それでも、とくべつにならないと。
とくべつなだれかになって、みんなのやくにたたないと。
たすけて、たすけて、たすけて。
ぼくは、よわくちゃいけない。
つよくないと、みんなにみとめられない。
だって、ぼくは■■■だから。
■■■のぼくをみんながすきになってくれるためには、なるしかない。
たすけて、たすけて、たすけて。
こわくない、いたくない、ふるえてなんていけない。
こわいこともいたいことも、もうなれてるんだ。
たちむかわないと、このてでみんなをたすけてみせないと。
たすけて、たすけて、たすけて。
ておくれだってことぐらい、もうわかってる。
これはわるいゆめ、いつかのできごとをぼくがかってにおもいかえしているだけ。
けっきょく、あのときもぼくはなにもできずに、たおれていた。
たすけて、たすけて、たすけて。
それからのことを、ぜんぶおぼえているわけではないけど。
だれかがたすけてくれた、ということだけはわかってる。
ひーろーはいる、まにあわないときがあるだけで、ぜったいにいる。
そのことを、ぼくはしっている。
たすけて、たすけて、たすけて。
だからがんばらないと。
やっと、ぼくにもにんげんのぱーとなーができたんだから。
ちょっと、いやかなり、すごく、しょうじき、おもってたのとはちがったけど。
いっしょにすごして、いろいろとはなしもして、そうだったらいいなって、いまならおもえるから。
にんげんのことはよくしらないけど、すくなくともゆうきはとてもやさしいとおもう。
それこそ、ぼくがえほんでよんだものがたりにでてくるものと、そっくりだとおもえなくもないぐらいには。
たすけて、たすけて、たすけて。
きらわれたくないなぁ、とこころのそこからおもう。
こんどこそ、まちがえないようにしないと。
こわがったらだめだ、いたがったらだめだ、ないたらだめだ、ぼくの■■■なところをみせたらだめだ。
えほんにでてくるひーろーみたいに、りっぱにならないと。
つよくて、りっぱなぼくでいるから、おねがいだから。
ぼくのことを、きらわないで。
「……っ……」
ふとして目が覚めてしまう。
外はまだ真っ暗で、誰もが眠って静かなままだ。
すぐ隣には、同居して今は眠っているギルモン――ユウキが一人だけ。
(……いつも、こうだよ……)
最近はあまり見なかった夢だった。
見たいとは思わないのに、見てしまう呪いのような夢。
幸せな気持ちでいる時も、嫌な気持ちでいる時も、眠るといつも同じ景色を見る。
疲れを癒すためにも、迷惑をかけないためにも、眠らないといけないということは解っているけれど。
いつもいつも、見たくも無い悪夢に夜な夜な起こされる。
あんなものをわざわざ見せられなくても、忘れることなんてありえないのに、しつこくしつこく。
(……せっかく、どちらかと言えば良い気分でいたのに……)
幸いにも、隣で寝ているユウキに起きる兆しは無い。
このまま静かに、横になって、眠ってしまえば誰にも迷惑はかけない。
明日も……というか今日も、ギルド所属のチームの一員――ベアモンのアルスとしての活動があるのだから、ちゃんと疲れは癒しておかないといけない。
僕が、みんなの足を引っ張るなんてことはしてはいけないし、したくない。
もうすっかり眠くなくなってても、眠らないと。
(……朝、辛いなぁ……)
そう思って、蹲って、まぶたを閉じ続ける。
暗闇の支配する夜の時間は、僕には不思議と長く感じられていて。
眠ろうという意識とは正反対に、意識がやけにハッキリとしてしまっていた。