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水月 凪(みなづき なぎ)
5月25日

デジモンクレイドル 閑話その1

カテゴリー: デジモン創作サロン




ホメオスタシスがイグドラシルの後継機となって早200年。

彼女はデジタルワールドとデジモン達の為に尽くしたいと定期的に聖域《サンクチュエール》から護衛のナイツ達と共に地上へと降りる。

降りる場所や時期はナイツ内でも当日護衛となる者以外には徹底して秘され、視察を終えて聖域に戻るまでどのエリアを見回ったのかは明かされない。

かつての襲撃事件からこのような体制になったのだ。




ロイヤルナイツ達によって此処まで厳重に護られる彼女、ホメオスタシスは純粋無垢である。

何せ彼女を特に囲う騎士が如何わしい物に大変厳しいデジモンなもので。









【脳筋達の集い】








ホメオスタシスが視察の為に降り立ったその場所には目も当てられない混沌の光景が広がっていた。

女神とは言えうら若き乙女でもある彼女が見ていいものではない。

何故ならばナイツ達も可能なら見たくないものだったからだ。




『──ぬぅんっ!ふんっっっ!!』


『はっはっはっ!相変わらずの肉体美ですな、ガンクゥモン殿!』


『おうよ!ナイツの中じゃあ、儂は肉弾戦が専門だからな!』




ヒラヒラと舞う紅白の布、パッと迸るのは汗だ。

鍛え上げた肉体を惜しげもなく曝すのはロイヤルナイツの一員であるガンクゥモンと彼の盟友だというジャスティモンである。

むさ苦し──否、大変暑苦しい光景である。








「まあ、一体何か「いけません、我が主。貴女様の目が穢れます」




マグナモンがさっと慣れた手付きでホメオスタシスの両目を隠した。

両目を隠されたホメオスタシスは不思議そうに首を傾げている。

寸前であの暑苦しい光景を目にせず済んでいるようだ。




「マグナモン…?どうしたのです?此処は視察の予定地でしょう…?」


「お気になさらず、我が主。トラブルが有りまして少々お待ち下さいませ。

おいオメガモン、早く何とかしろ。聞いてるのか?

固まるなよ、お前の同期だろ。あの筋肉バカ止めてこい。

見苦しいモノをホメオスタシスに見せるんじゃない」


「───はっ!わ、たしは…一体…」




あまりにも暑苦しい光景に白目を剥いていたオメガモンがマグナモンの言葉でハッと正気に戻る。

若干のポンコツぶりを見せるオメガモンにマグナモンは青筋を立てながら吼えた。




「オ・メ・ガ・モ・ンッ!いい加減にしろ!」


「──くっ!アレは現実だったのか…」


「現実逃避をするなっ!ロイヤルナイツのガンクゥモン以外の誰に見えるのだ!!

あの筋肉の質量!噎せ返るような暑苦しさ!どう見てもあのガンクゥモンだろう!?」


「あー、出ちまったか…。師匠の悪癖…」


「はぁ!?悪癖だと!説明しろジエスモン!」




ジエスモンがポツリと洩らした言葉にマグナモンが噛み付く。

ホメオスタシスは目を隠されて何も見えない為、状況を把握出来ずオロオロと困惑するばかりだ。




「あー、いや。その…師匠なー、ジャスティモンの旦那に会うと大体ああやって筋肉の見せ合いするんだよ。

そーやってお互い鍛え上げて良くなった筋肉褒め合ってるんだ、それで時々関係ない周りも巻き込むから悪癖なんだよ。

オレは弟子だったからもう慣れたけど、ホメオスタシスには筋肉が胸焼けレベルかもなぁ…」


「当たり前だ!と言うかその前に見せられるか!

ホメオスタシスは女神だぞ!?女神の前に如何わしいモノなど出せるか!!」


「あ、のう…?マグナモン…?ジエスモン…?」




怒り狂うマグナモンに対してガンクゥモンの悪癖にすっかり慣れた様子のジエスモン。

そして、何も見えないが不穏な空気を感じ取るホメオスタシスは心配そうな声を洩らす。








『うん、やはりこの大胸筋が素晴らしい!はち切れそうですね』


『何を言うか!ジャスティモン、お主の腹筋もなかなかではないか~!』


『ガンクゥモン殿に比べたらまだまだですよ!ふふふ』


『お主はセパレーションの数が多過ぎて数え切れんではないか!ガハハハ!』




筋肉談義に花を咲かせて大盛り上がりの二体を余所にホメオスタシスの周辺はナイツ達が全員頭を抱えるという異常事態だ。

最早収拾のつかないこの状況にオメガモンはポンコツ化しマグナモンはブチ切れジエスモンは頭を悩ませている。

誉れ高いロイヤルナイツ三体がこうも筋肉達に振り回されているのだ。

こんな状況になっていることを"彼"に知られでもしたら──。



ただでさえ今日の視察の護衛に選ばれず、虫の居所も悪くなっている彼である。

ホメオスタシスが関わると知れば恐ろしいことになることは想像に難しくないのだ。



現在キレ散らかしているマグナモンなどが可愛らしく見えてしまうほどに。






怒髪衝天した彼───アルファモンの恐ろしさはロイヤルナイツ達の中では共通認識されている。

ロイヤルナイツ最強の名は伊達ではないのである。









事態の収拾に何とか知恵を絞ろうと躍起になっていると不意に体が揺れた。

否、地面が揺れている。

ズシンズシンと音を立てて何かが此方に向かって来ているようだ。


これにはナイツ達も顔色を変えて警戒態勢に入る。

ホメオスタシスを護るように彼女の周りを囲み、周辺を警戒した。





すると、













『───やぁやぁ、遅くなってしまい申し訳ない』


『おお、やっと来たな!待っていたぞ、ヒュドラモンよ!』



ぬぅっと木々の中から顔を出したのはヒュドラモンだ。

ガンクゥモンやジャスティモンと並べたら彼らが子供に見えてしまうほどの巨体である。

先ほどまでの揺れの正体はヒュドラモンが移動していた際の振動だったのだ。







「「 ─────は?」」




木々の間からヒュドラモンの全身が露わになるとオメガモン達の目が一様に点になる。

正確にはある一点に彼らの視線が釘付けになった。


ガンクゥモン、ジャスティモンにも共通するソレ。

ヒュドラモンの場合、彼らと比べ物にならないレベルの凶悪なインパクトを生んでいる。




『ああ、良かったですよ。よくお似合いです、金の薔薇!

鍛え上げられたお体に映えます、映えですね!ヒュドラモン殿』


『ワハハ!ジャスティモンが新作を見つけて贈ったっつってたがコレか!

コイツを着こなすたぁ、やるな!ヒュドラモン!』


『もったいない言葉だ、恐縮恐縮。身に付け方はこれで合っているか心配だったんだ』




金の糸で薔薇の刺繍が施された一点物のふんどしが風に靡いている。

降り注ぐ陽光を金の薔薇が反射してキラキラと輝いている。

何とも言えない光景にナイツ達は絶句した。

思わずマグナモンはホメオスタシスの目を隠していた手を離してしまう。


隠された視界が開けてホメオスタシスは彼らが釘付けになっている方向を見る。

彼女の視界いっぱいにはち切れそうな筋肉の塊とカラーバリエーション豊富なふんどしが風に舞う光景が広がった。







「────うっ」


「ぎゃあああああああっ!ホ、ホメオスタシスーーっ!!」




神は、女神は全能だが万能とは異なる。

理解の限界を超えた光景を処理し切れず、彼女はそのまま昏倒してしまう。

寸前でマグナモンが抱き留めるものの完全に気を失ってしまったホメオスタシスは悪夢を見ているかのように魘されている。


オメガモンの悲鳴を聞いて漸くガンクゥモン達もホメオスタシス達の存在に気付く。

しかし、状況を全く理解出来ていないのか意気揚々と歩み寄って来た。





「おー、なんだぁ?お主らも来とったかぁ!

ワハハハ、良い良い!何ならお主らもどうだ?ん??」


「バカ者ーーっ!!おま、お前!お前、今どんな失態を自分が犯したか理解(わか)ってるのか!!」


「ん?失態?何がだ??」




オメガモンの元気なツッコミが虚しく響き渡る。

ガンクゥモンはホメオスタシスが昏倒したことに全く気付いていないようでオメガモンが何故怒っているのか分からずしきりに首を傾げていた。

それも変わらずふんどし姿のままでポーズまで決めながらやるのだから余計にタチが悪い。





「兎に角!早く着替えろ!こんなの奴に知られt『───奴が、なんだって?』


「「──────ッ!!!!」」




ぎゃあぎゃあと言い争う中に冷え冷えとした声が響く。

ジャスティモンやヒュドラモンはきょとんとしているがこの声に聞き覚えのあるナイツ達の表情がサァッと青ざめていく。



恐る恐るオメガモンが振り返ると其処には憤怒の限界点を突破し、凄まじい怒りの冷気を纏ったアルファモンが居た。

彼の背後に異世界の魔獣が鎮座して見えるのは決して気のせいではないとその場の全員が認識する。





「ア、アルファモン…っ」


「──良き日和だね、オメガモン?すまない、先ほどは一体何て言っていたのかな?」


「そ、それはだな…ああ、うん…」




しどろもどろになるオメガモンに穏やかな口調で尋ねるアルファモン。

オメガモンには分かっている、こんなに穏やかな口調でもアルファモンの目は一切笑ってなどいないと。

助けを求めようとオメガモンはマグナモン達の居た方向へ視線を向けるが其処には誰も居らず代わりに一枚の紙が落ちていた。









[ホメオスタシスを休ませるので先に戻る。あとはまあ頑張れ。 J&M]






(─────ッ!あ、彼奴ら~~~ッ!!全てを押し付けて自分達だけホメオスタシスと逃げたな!)




Good Luckと指を立てているマグナモンの姿が目に浮かぶようだ。

ホメオスタシスを聖域に連れ帰って休ませると言う大義名分でこの場から逃げたマグナモン達が羨ましくて仕方がない。

逃げ出したいが逃げられないし、逃げ切る自信も無い。

怒れる最強のセ○ムから逃れる術など無いのである。




それにアルファモンほどのナイツだ。

何が合ったかなどとっくに分かっているだろう。

分かっていて問うてくる辺りが確信犯であり鬼だドSだなどと陰で呼ばれる所以である。











『さて、お前達───この醜態の責任はキッチリ取れよ?』


「──げっ!!止せ、やめろっ!!誤解だっ!」


「まあまあ、アルファモンもどうだ?ふんどしならまだ有るぞ?」


「火に油を注ぐなバカ者ーーっ!!!」









「デジタライズ・オブ・ソウォォォル!!!!!」







デジタルワールドのとあるエリアにて野太い悲鳴が響き渡る。

実に元気のいい悲鳴である。




この後、ガンクゥモン達のふんどしはアルファモンによって回収され処分されたらしい。

だがふんどしの代わりにポージングパンツでガンクゥモン達が盛り上がるようになるのはまた別のお話。







終

1件のコメント
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1件のコメント
水
水月 凪(みなづき なぎ)
5月25日

連投失礼致します。水月です。

デジモンクレイドルの本編が所謂地獄の釜の蓋が開いた状態になりつつあるので箸休めになればと…。

ギャグはあまり書いた経験が無いのでちゃんとギャグになっているか心配ではありますが笑って頂けたら…。


きっかけはとある無茶ぶりからなのですが世界観がデジクレと同じなので閑話として公開させて頂きました。


このお話のBGMとして某ゲームの『三羽//烏/漢唄』をオススメしています。

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