[その一はこちら https://www.digimonsalon.com/top/totupupezi/dezimonhatupiwaku-teriamonnoohua ]
ボクはテリアモンでぃす。
この喋り方は癖なのでぃす。
ボクはデジタルワールドから来たのでぃす。
そして色々あって、デジモンの派遣会社「ハッピーワーク」で働くことになったのでぃす。
今日はそんなボクの後輩を紹介するのでぃす。
介護ホームからハッピーワークの事務員に異動したボクは、毎日書類とにらめっこをしているのでぃす。
ボクの仕事は、登録されているデジモンのデータの整理に、新しいデジモンのデータ入力、デジモンに会社の事を説明するお手伝い…他にも色々あるのでぃす。
パソコンの使い方を勉強して、書類作りやメールの返信も出来るようになったのでぃす。
ぶらいんどたっちもできるのでぃす!
ある日、上司の園田さんがボクに言ったのでぃす。
「テリアくん、来週から新人さんが来るから、指導係になってもらいます。色々教えてあげてくださいね」
ボクが指導係!
ボクはびっくりしたのでぃす。
ボクは他の社員さんと比べて半人前だったからでぃす。
園田さんも他の人達もみんなベテランなのでぃす。
だからボクより他の人が教える方が良いと思ったのでぃす。
「ボクでいいのでぃすか?」
そう聞いたら、
「テリアくんなら任せられると思ったから選びました。頼みますね」
園田さんはそう言ってくれたのでぃす。
園田さんに頼まれるなんて、ボクは嬉しかったのでぃす。
だからボクは頑張って指導係をすると決めたのでぃす!
「わかったのでぃす。それで新人さんはどんな人でぃす?」
ボクがそう訊ねると、園田さんはちょっと困った顔で言ったのでぃす。
「男性で玄田さんっていうんだけど、前に勤めてた会社が…その…所謂ブラック企業というやつでね…」
ブラック企業。
ボクでも知ってるのでぃす。
サービス残業させたり、社員さんに酷いことをする悪い会社なのでぃす。
「テリアくん、玄田さんは少し疲れているから、無理しないように気を付けてあげてくださいね」
疲れていると聞いて、ボクは心配したのでぃす。
疲れている時は元気が出ないのでぃす。
「わかったのでぃす!ボクがしっかりサポートするのでぃす!」
それからボクは新人さんの為に準備をしたのでぃす。
新人さんの研修期間に教える仕事を、園田さんと打ち合わせして決めたのでぃす。
会社の業務マニュアルをちょっと手直しして、表や画像を使ったわかりやすいものにしたのでぃす。
机はしっかり拭いてピカピカにして、仕事で使う文具を引き出しに入れたのでぃす。
新人さんの席はボクの隣だから、いつでもサポートできるのでぃす!
寮に帰ってからは、同室のデジモンさん達に新人さんの話をしたのでぃす。
「ボクも先輩になるのでぃす!すごいでぃすよ!」
「楽しみなのは分かるけど、ちょっとはしゃぎ過ぎだよ」
同室のフローラモンさんがそう言ったのでぃす。
「指導係なんでしょ?先輩としてちゃんと仕事を教えられるの?」
「だ、大丈夫なのでぃす!一生懸命教えるのでぃす!」
「まあまあ、大丈夫でしょ」
同じく同室のガジモンさんがお菓子を食べながら言ったのでぃす。
「うちの事務員さん仕事出来る人が多いし、何かあってもすぐサポートしてもらえるって」
「何だかボクがダメな奴って言われてる気分でぃす…」
ボクはしょげたのでぃす。
新人さんが来る前日、ボクはすごくどきどきしていたのでぃす。
「なんだか緊張するのでぃす…」
「テリアちゃんなら大丈夫よ」
同じ事務員の国戸田さんがそう言ってくれたのでぃす。
「テリアちゃん、仕事もバリバリ出来るし、新人さんも安心して頼れるよ」
「そ、そうでぃすか…?」
国戸田さんに褒められて、ボクは嬉しかったのでぃす。
「じゃあボク頑張るのでぃす!」
ボクはガッツポーズをしたのでぃす。
次の日、ボクはそわそわしながら新人さんを待っていたのでぃす。
どんな人なのでぃす?背は高いでぃす?優しい人だといいのでぃすが…。
一人でほわほわ考えていたらみんなが笑ったのでぃす。
「テリアちゃん、変顔になってるよ」
新人さんについて考えていたら、顔に出ていたみたいでぃす。
ボクは恥ずかしかったから、資料の紙で顔を隠したのでぃす。
でも他の社員さんも、新人さんが来るからちょっとそわそわしていたのでぃす。
事務所の扉が開いて、園田さんと一緒に男の人が入ってきたのでぃす。
その人は、背の高い男の人だったのでぃす。
「皆さん、新入社員の玄田さんです」
「玄田一郎です。宜しくお願いします」
頭を下げた新人さんはボクを見るとギョッとした顔になったのでぃす。
きっと前の会社にはデジモンがいなかったのでぃす。
いくらデジモンがシャカイシンシュツしたといっても、デジモンに対するヘンケンが無いとは限らないのでぃす。
ボクはそういうの気にしないから平気なのでぃす。
園田さんは、玄田さんを連れてボクの所に来たのでぃす。
「玄田さん、こちらが指導係のテリアモンくんです」
「ボクはテリアモンなのでぃす。よろしくなのでぃす」
ボクはぺこりとお辞儀をしたのでぃす。
「研修中は私とテリアモンくんが指導係なので、困ったことや質問があれば何でも聞いてください」
「は、はい」
玄田さんはなんだか緊張していたのでぃす。
だからボクはマンメンのエミをしたのでぃす。
それを見たみんなは笑ったのでぃす。
園田さんは笑うのを我慢してたのでぃすが、体が震えていたのでぃす。
国戸田さんはお茶を吹き出したのでぃす。
「テリアちゃん、その顔!面白すぎる!」
ボクはへへーんと得意げになったのでぃす。
マンメンのエミはボクの十八番なのでぃす。
どんなヒトもデジモンも、見れば笑っちゃうとっておきの一発芸なのでぃす。
でも、玄田さんは笑ってなくて戸惑った顔をしてたのでぃす。
ボクの十八番が玄田さんには通用しなかったのでぃす。
ボクはしょぼんとなったのでぃす。
「ゴホン…ではあとはテリアモンくんに任せます」
「わかったのでぃす」
園田さんは自分の仕事に戻ったのでぃす。
ボクは玄田さんに向かい合ったのでぃす。
「では早速研修を始めるのでぃす」
「えっと…よろしくお願いします。テリア先輩」
「‼︎」
玄田さんに先輩って言われて、ボクはすごくすごく嬉しかったのでぃす!
ボクは本当に先輩になったのでぃす!
「分からないことがあったら先輩のボクに聞くのでぃす!」
ボクはえっへんと胸を張ったのでぃす!
それから研修が始まって、ボクは玄田さんに仕事の内容を説明したのでぃす。
玄田さんはどんな仕事もすぐ出来るようになったのでぃす。
データ入力は、ボクよりもタイピングが速くてあっという間に終わっちゃったのでぃす。
書類作りも、玄田さんは文書作成ソフトを使いこなしてささっと作ったのでぃす。
「玄田さんはすごいのでぃす!」
「そ、そんなことはありません。先輩の教え方が上手なので…私なんて…」
そう言って玄田さんは俯いたのでぃす。
お昼休憩になって、ボクはデジモン寮にある食堂へ向かって歩いていたのでぃす。
そうしたら、玄田さんが階段に座ってお弁当を食べていたのでぃす。
「玄田さん、どうしたのでぃす?」
「ああ、テリア先輩…」
玄田さんは俯いて言ったのでぃす。
「前の職場では、ずっとこうして階段で食べていたので…」
それはひどいのでぃす!
こんな寂しい場所でご飯を食べても美味しくないのでぃす!
「玄田さん、ボクと一緒に来るのでぃす!」
ボクは玄田さんの腕を引っ張ったのでぃす。
「テリア先輩!?」
ボクは玄田さんを連れて、デジモンの寮にある食堂に行ったのでぃす。
食堂にはいっぱいデジモンがいてご飯を食べていたのでぃす。
「お、遅かったじゃねえかテリアモン…と?」
エプロンを着けたデビモンさんが声をかけてきたのでぃす。
デビモンさんは食堂のコックさんなのでぃす。
毎日美味しいご飯を作ってくれるのでぃす。
デジタルワールドにいた頃は悪いことをいっぱいしていたらしいのでぃすが、そのことはクロレキシだと言って秘密にしているのでぃす。
「デビモンさん、新人の玄田さんでぃす」
「げ、玄田一郎です。宜しくお願いします」
玄田さんは緊張してたのでぃす。
「ああ、あんたが新人か」
デビモンさんはニヤリと笑ったのでぃす。
「テリアモンが『ボクも先輩になるのでぃす』ってはしゃいでたからな。幼年期相手に先輩ごっこしてたしな。後輩ができて嬉しいか?テリア先輩?」
「わわ!それは言っちゃだめなのでぃす!」
デビモンさんはちょっといじわるなのでぃす…。
「それで今日は何にする?」
「日替わり定食にするのでぃす」
「はいよ」
デビモンさんは調理場に戻ったのでぃす。
周りを気にしながら、玄田さんは小声で言ったのでぃす。
「ここはデジモンさんの食堂ですよね…私が居てもいいのでしょうか…?」
玄田さんは真面目な人なのでぃす。
きっとボク達デジモンに気を遣っているのでぃす。
「大丈夫でぃす。皆んな気にしてないのでぃす。だから安心してお弁当を食べるのでぃす」
周りのデジモン達も頷いたり、大丈夫だって言ったりしたのでぃす。
「今日の日替わりは生姜焼きだぞ」
「わーいお肉なのでぃす!」
焼きたての生姜焼きのいい匂いを嗅いだら、ボクのお腹が鳴ったのでぃす。
「おっ、手作り弁当か。美味そうだな」
デビモンさんは玄田さんのお弁当を見て言ったのでぃす。
玄田さんのお弁当は、サラダに玉子焼きに唐揚げに…美味しいものがいっぱい詰まったお弁当だったのでぃす。
「えっと、妻が作ってくれまして…」
「そりゃいいオクサンだな」
デビモンさんの言葉を聞いて、玄田さんは明るい顔になったのでぃす。
それからごはんを食べながら、色々な話をしたのでぃす。
ボクがハッピーワークで働くことになった時の話や、玄田さんの家族について話したのでぃす。
玄田さんにはヒトの幼年期…コドモが産まれたそうなのでぃす。
「ボクもコドモに会ってみたいのでぃす」
「そうですね…先輩にうちの子を会わせたいです」
玄田さんは優しく微笑んだのでぃす。
ボクが生姜焼きをゆっくり味わっていると、
「ふう。ごちそうさまです」
そう言って、玄田さんはお箸を置いたのでぃす。
でも、玄田さんのお弁当は半分しか減ってなかったのでぃす。
「まだ全部食べてないのでぃす!」
「最近食欲がなくて…」
「大丈夫か?食欲が無いんだったら、粥でよければ作ってやるけど…」
デビモンさんが心配そうに言うと、
「いえ、その…大丈夫です」
玄田さんはそう言ったのでぃす。
でもボクは心配だったのでぃす。
園田さんが言ってたのを思い出したのでぃす。
『玄田さんは少し疲れているから、無理しないように気を付けてあげてくださいね』
きっと玄田さんは、ごはんが食べられないくらい無理してるのでぃす。
お昼からは玄田さんが無理しないように気をつけると決めたのでぃす!
お昼の休憩が終わって、ボクは玄田さんを連れて資料室に行ったのでぃす。
「午後は、資料室で書類の整理なのでぃす」
「はい」
資料室には、手書きの書類がいっぱいあるのでぃす。
会社がハッピーワークになる前、「結月商事」の時に作られたものだと園田さんは言ってたのでぃす。
結月商事は、まだデジタルワールドの存在が知られていない頃からデジモンの保護をしていたそうでぃす。
初代社長の結月巳百合さんは、何故かデジモンやデジタルワールドの知識があったらしいのでぃす。
ボクはこの結月さんが実はデジモンじゃないかと考えているのでぃす…。
園田さんには否定されたのでぃすが、この推理には自信があるのでぃす!
資料室で、玄田さんと二人でデータ化する書類を抜き出したり、書類が年代別に並んでいるか確認したり、地道な作業をしたのでぃす。
ボクは時々玄田さんを見たのでぃす。
玄田さんは黙々と作業をしていたのでぃす。
無理をしているようには見えなかったけど、もしかしたら実は辛いのかもしれないのでぃす。
「玄田さん、ちょっと休憩するのでぃす」
「あ…はい…分かりました」
ボク達は少し休憩したのでぃす。
玄田さんはちょっと落ち着かない様子だったのでぃす。
「テリアちゃん、玄田さん。お疲れ様」
国戸田さんがお茶を持ってきてくれたのでぃす。
「ありがとうなのでぃす」
「ありがとうございます」
ボク達はお茶をいただいたのでぃす。
玄田さんはお茶を飲んでも落ち着かないみたいなのでぃす。
「玄田さんどうしたのでぃす?」
「えっと…その…トイレに行きたくて…」
「トイレでぃすか!急いで行くのでぃす!」
「行ってもいいのですか?」
「もちろんでぃす!」
「じゃあすみませんが行ってきます」
玄田さんは小走りで部屋を出たのでぃす。
「玄田さん、ずっとトイレを我慢してたのでぃすね」
「きっと前の職場じゃトイレも自由に行けなかったんだね…」
玄田さんがトイレに行きやすいように、ボクがもっともっと気を付けないと!
ボクは先輩でぃすから!
待ってたぜ第二話でぃす! 夏P(ナッピー)です。
前回は人間の究極体だったのに対して、今度は人間の幼年期なる凶悪なワードが出てきているううううううう! 玄田さんもテリア先輩の指導や補佐の甲斐あってか、1話の内にすっかり成長、というか元々持っていた(?)強みを出せるようになったようで。しかしブラック企業を知ってるでぃすってお前、知っているのか雷電!?
玄田先輩がテリア先輩を家ではとても可愛いと話しているのに和みましたが、所々で垣間見せてくるブラック企業時代の息苦しさにこちらも息が詰まるような思いをしてみたり。あと初代社長は絶対デジモンだ! テリア先輩の予想だからな!
そんなわけで、この辺りで感想とさせて頂きます。
こちらでは初めましてになりますかね。そのうえ前話とまとめての感想になりますがご容赦を。
独特な癖で言動がゆるいテリアモンの人間界のお仕事と日常。でもただゆるい以上の素直さで真摯に向き合っているから、橘のおばあちゃんを始めとした老人ホームの方々だけでなく、その家族にも感謝される幸せな仕事になったんだなと。
人の年齢を進化段階に置き換えると進化ルートがニ択になるすれ違いのおかしさが導入としてのゆるい笑いだけでなく、後に同じ勘違いをするオーガモンの天丼になるのが個人的に好きなところです。速攻でお縄になるのも含めて。
事務員として社内の仕事が主になったテリアモンが次に幸せにするのはブラック企業から転職してきた玄田さん。
初日から重症気味の玄田さんの振る舞いが描写される度にあるはずのない心の傷が浮き出るようで――
いや自分はまっとうな会社の筈ですけども――だからこそ、自分より優れたところを褒めて暖かく誘い見守るテリアモン先輩の包容力が炸裂する場面はぐっと来ました。……うちのロップモン(ぬいぐるみ)にも包容力を少しだけでも分けてもらえないかと思ったり。
まさかの新しい社員の確保に繋がるかたちで前を向けた玄田さん。彼が笑える場こそが真の意味で笑顔の絶えない職場と言ったところでしょうか。
まとまりない感じですがこのあたりで失礼します。
ある日、事務所に警察から連絡があったのでぃす。
「隣町の工事現場にデジモンが居座っているそうです。テリアくん、玄田さん、お願いできますか?」
「わ、私ですか?」
「玄田さん、初出動なのでぃす!」
「でも私は…」
玄田さんは自信なさげなのでぃす。
ボクは胸を張って言ったのでぃす。
「玄田さんにはボクがついているのでぃす!だから大丈夫なのでぃすよ!」
玄田さんは戸惑った顔をしてたのでぃすが、決めたように頷いたのでぃす。
「分かりました。行ってきます」
こうしてボクと玄田さんは工事現場に向かったのでぃす!
工事現場に着くと、セキニンシャのヒトに挨拶したのでぃす。
「…それで、デジモンさんはどちらに?」
「案内しますので一緒に来てください」
セキニンシャさんに案内された場所は、工事中の建物の最上階だったのでぃす。
そこにいたのは、全身包帯でぐるぐる巻きのデジモン、マミーモンだったのでぃす。
マミーモンはボク達に気づいてため息を吐いたのでぃす。
「またニンゲンが来やがったのか。面倒臭え…」
マミーモンはボク達に背を向けたのでぃす。
「テリア先輩、こういう時はどうすれば…?」
「そうでぃすね…先にボクが声をかけてみるのでぃす」
ボクはマミーモンに近づいたのでぃす。
「こんにちはでぃす」
「ああ?何だお前?」
「ボクはテリアモンなのでぃす」
ボクは名刺を渡したのでぃす。
名刺を見たマミーモンは、鼻で笑って捨てたのでぃす。
「ニンゲンの真似事ってか?くだらねえ。お前らも他のニンゲンみたいに俺を連れ出そうってんだろ?俺は此処にいるだけなんだから放っておけよ」
そう言って、マミーモンはシッシッと手を振ったのでぃす。
「マミーモンさん、ボクの話を聞いてほしいのでぃす」
「チビと話すことなんてねえよ。とっとと帰んな」
マミーモンの態度にボクはむっとなったのでぃす。
離れた場所で様子を伺っていた玄田さんが、近付いてきたのでぃす。
「テリア先輩、大丈夫ですか?」
「マミーモンさん、ボクの話を聞いてくれないのでぃす」
「困りましたね…」
ボクと玄田さんはうーんうーんと唸ったのでぃす。
「もう一度話してみるのでぃす」
ボクがそう言うと、
「あの…今度は私が声をかけてみます」
そう玄田さんが言ったのでぃす。
「じゃあボクと一緒に行くでぃす」
「はい」
ゴロリと横になったマミーモンの所へ、今度は玄田さんと一緒に行ったのでぃす。
「あ、あの…デジモンさん…」
玄田さんは緊張しながら声をかけたのでぃす。
「私は玄田一郎といいます…」
マミーモンはちらっと玄田さんを見たのでぃす。
「デジタルワールドからこの世界に来て困っていませんか?私達はデジモンさんが安心して暮らせる為に…」
「うるせえ、そんな話はもう聞きたくねえ」
マミーモンは玄田さんの話を遮ったのでぃす。
「俺に会いに来たニンゲンは大体そう言うんだ。デジモンの為に、だの、居場所がどうこう、だの。お前らは親切でやってるかも知れねえが、俺にとっちゃ大迷惑なんだよ!」
マミーモンは立ち上がったのでぃす。
「俺は俺のやりたいようにやる。じゃあな」
そう言ってマミーモンは行っちゃったのでぃす。
「むむー、なかなか手強いのでぃす…」
ボクは眉間に皺を寄せたのでぃす。
その時でぃす。
「…しまった…」
「玄田さん?どうしたのでぃす?」
何か呟いたと思ったら、玄田さんが突然蹲ったのでぃす!
「玄田さん!大丈夫でぃすか?お腹が痛いのでぃす?頭がふらふらするでぃす?」
ボクが聞いても、玄田さんは蹲ったまま動かないのでぃす。
「私…失敗してしまった…失敗…」
玄田さんはすごく落ち込んでいたのでぃす。
ボクはどうしたらいいのかわからなかったのでぃす。
「私なんて…駄目な奴なんだ…」
「玄田さんは駄目じゃないでぃす!ボクよりずっと仕事が出来るのでぃす!」
ボクは玄田さんを励ましたのでぃす。
「私なんて…」
玄田さんはもっと落ち込んだのでぃす。
ボクはうーんと考えて、閃いたのでぃす!
「玄田さん、ボクをぎゅっとするのでぃす!」
そう言ってボクは玄田さんに抱きついたのでぃす。
玄田さんはとってもびっくりしたのでぃす。
「ボクをぎゅっとすると皆気持ちが落ち着くのでぃす!だから玄田さんもぎゅっとするのでぃす!」
玄田さんはおろおろしてたのでぃすが、ボクをぎゅっとしたのでぃす。
ボクはぎゅっとされるのには慣れてるのでぃす。
だから、玄田さんが落ち着くまでじっとしてたのでぃす。
玄田さんは深呼吸すると、話したのでぃす。
「私…前の職場では毎日怒鳴られていました。仕事で失敗をするとお前は能無しの屑だと言われ、同僚にも邪魔者扱いされて…」
「そんなのひどいのでぃす!」
玄田さんは嫌なことを言われて仕事をしてたのでぃす…。
ボクは悲しくなったのでぃす…。
「怒られて、罵られるうちに、失敗が怖くなったんです…書類を作るにも、会議でも…少しでも何かが違うと思うと、これはミスだ、失敗だと自分を責めてしまって…」
「玄田さん…」
玄田さんは苦しそうに顔を歪めたのでぃす。
「その内に自分自身にルールを作ったんです。ルーティーンなんて呼べるようなものじゃなくて、唯の制約で…朝起きて夜寝るまで、そのルールに従って、縛られて…」
玄田さんは自分で自分をいじめていたのでぃす…。
ボクは言ったのでぃす。
「玄田さん、失敗は誰にでもあるのでぃす。失敗はしないのが一番良いのでぃすが、そう上手くするのは難しいのでぃす」
「でも…」
玄田さんはずっと酷いことを言われてきたのでぃす。
きっとどうでもいいことで怒られて、その度に傷ついてきたのでぃす。
だからボクは先輩として、玄田さんがもう傷つかないように助けるのでぃす。
「玄田さんは失敗を怖がらなくていいのでぃす。一人で頑張らなくてもいいのでぃす。玄田さんにはボク達がついてるのでぃす。玄田さんが失敗してもみんながフォローするのでぃす。一人で出来ない仕事はボク達を頼るのでぃす。みんな玄田さんの味方でぃす」
「先輩…」
玄田さんはぽろぽろ涙を零したのでぃす。
「先輩、私は、私は…先輩の優しさに甘えていいのでしょうか…一人で頑張らなくても…我慢しなくてもいいのでしょうか…」
「ボクは先輩でぃす。先輩は後輩を手助けするのでぃす。だから一人で抱えこまなくていいのでぃす」
「先輩…」
ボクはハンカチで玄田さんの涙を拭いたのでぃす。
玄田さんはボクをもう一度ぎゅっとしたのでぃす。
その後、会社に戻って園田さんに報告したのでぃす。
園田さんは怒ったりせずに、
「今日みたいに話を聞いてもらえないことはよくあります。家に帰って休んでください」
そう言ってくれたのでぃす。
玄田さんはまだしょんぼりしてたから、ボクの部屋へ連れて帰ったのでぃす。
フローラモンさんとガジモンさんはちょっとびっくりしてたのでぃすが、お菓子とお茶を用意してくれたのでぃす。
「玄田さん、テリアモンは先輩としてどう?」
「やっぱり頼りない?」
「やっぱりってなんでぃすか!」
二体ともボクのことを分かってないのでぃす!
玄田さんは少し考えて、言ったのでぃす。
「テリア先輩は…とても良い先輩だと思います」
玄田さんにそう言われてボクは嬉しかったのでぃす!
「そうなんだ。テリアモン、ちゃんと先輩やってるんだね」
「そうなのでぃす!」
ボクは先輩として頑張っているのでぃす!
それから数日経った日の夕方、
「テリア先輩、今日私の家に来ませんか?」
玄田さんにそう言われたのでぃす。
「玄田さんのおうちでぃすか?」
「はい。夕食をご一緒したいと思いまして…」
玄田さんとごはんでぃす!
そんな楽しいこと、断る理由がないのでぃす!
「玄田さんの家に行くのでぃす!」
ボクは大きな声で返事をしたのでぃす!
玄田さんの家は、会社から電車で二駅のところにあるマンションだったのでぃす。
「ただいま」
玄田さんが扉を開けると、綺麗な女のヒトがいたのでぃす。
「妻の志津子です」
「テリアモンでぃす。よろしくなのでぃす」
「あなたがテリア先輩さん…!」
志津子さんは嬉しそうな顔をしたのでぃす。
「主人から聞いていた通り、とっても可愛いです」
「そう言われるとちょっと照れるのでぃす…」
玄田さんはボクを可愛いって言ってたのでぃすか…何だか恥ずかしいのでぃす。
「先輩、こちらです」
そう玄田さんに案内された部屋には、普通のベッドが二つと小さなベッドが一つ、置いてあったのでぃす。
小さなベッドに寝ているのが、ニンゲンの幼年期だったのでぃす。
「この子がコドモでぃすか」
「はい。女の子で名前は美奈子です」
ニンゲンの幼年期はなんだか不思議なのでぃす。
小さいけどニンゲンの姿なのでぃす。
デジモンは進化すると見た目がすごく変わったりするのでぃすが、ニンゲンはそうじゃないのでぃす。
ボクがじっと見ていると、美奈子ちゃんは目を覚ましたのでぃす。
美奈子ちゃんの目は大きかったのでぃす。
ボクは美奈子ちゃんのほっぺをつんつんしたのでぃす。
「美奈子ちゃんはもちもちしてるのでぃす」
「そうですね。もちもちでふわふわで、テリア先輩みたいです」
「ボクでぃすか?」
ボクは自分のほっぺをつんつんしたのでぃす。
確かにボクのほっぺももちもちふわふわなのでぃす。
「ニンゲンとデジモンは似てないけど似てるのでぃす」
「似てないけれど似ている…確かにそうかもしれません」
ニンゲンとデジモンが似てないけど似てるっていうのは、何だかテツガクテキなのでぃす。
「夕食の準備が出来ました」
志津子さんが呼びに来てくれたのでぃす。
ボク達は部屋を移動したのでぃす。
志津子さんは、美奈子ちゃんの様子を見ているそうなのでぃす。
ボクと玄田さんは向かい合って座ったのでぃす。
「おいしそうでぃす…!」
机に置かれた料理を見て、よだれが出てしまったのでぃす…。
料理のなかに、ボクが大好きなロールキャベツがあったのでぃす!
「わーい!ボクロールキャベツ大好きなのでぃす!」
ボクはとっても嬉しかったのでぃす!
「いただきます」
「いただきますでぃす」
ボクは食事をしながら玄田さんの様子を見てたのでぃす。
ボクは玄田さんがこの間みたいにごはんを食べられなかったら…と不安だったのでぃす。
でも、玄田さんは美味しそうに料理を食べてたのでぃす。
何だか前より元気になってて安心したのでぃす。
「そういえば、玄田さんはどうしてハッピーワークで働くことになったのでぃすか?」
「それは…」
玄田さんは俯いたのでぃす。
ボク、何だか聞いちゃ駄目な質問をしてしまったのでぃす…。
「ご、ごめんなさいでぃす」
ボクが謝ると、
「いえ、大丈夫です」
そう玄田さんは言ってくれたのでぃす。
「私、以前の会社に行くのが辛くて、でも家族の為に働くしかなくて、上司に怒鳴られて同僚に虐められる毎日に心が追い詰められていったんです」
玄田さんは、その頃を思い出したみたいで苦しそうな顔になったのでぃす。
「その日も残業で、会社を出たのは夜中でした。夜道を歩きながら、失敗したことを思い出して気分が落ち込んでいって…」
ボクはじっと玄田さんを見て、話を聞いたのでぃす。
「心も体も限界で、交差点で信号を待っているうちにもういっそ死んでしまおうかと思って、スピードを上げて走る車の前に飛び出そうとして…その時誰かに腕を掴まれたんです。その人が園田さんでした」
園田さんが玄田さんを助けてくれたのでぃすね…ボクを助けた時みたいに…。
「園田さんは近くの公園へ私を連れて行きました。そこで私の話を聞いてくださって…ハッピーワークに転職しませんかとお誘いくださったんです」
「そうだったんでぃすか…」
「園田さんがいなかったら今頃私は…」
そう言って目を閉じた玄田さんにボクは言ったのでぃす。
「玄田さんが生きてて、こうやってボクとごはんを食べられるのが、ボクはとっても嬉しいでぃす」
玄田さんは優しく微笑んだのでぃす。
「私も…あの日死ななくて良かったと思います。園田さんには感謝しても足りないくらいです」
「園田さんは優しくて、すごいヒトなのでぃす」
「はい。園田さんは凄いです」
そうして、ボクと玄田さんはいっぱい話をしたのでぃす。
それからまた数日経って。
事務所に電話がかかってきたのでぃす。
「玄田さん、テリアくん。先日のデジモンがまた現れたそうです」
受話器を置いた園田さんが、ボク達を見て言ったのでぃす。
「分かりました」
玄田さんは緊張でも不安でもない、真剣な顔で答えたのでぃす。
「大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。テリア先輩が一緒ですから」
玄田さんはそう言ってボクを見たのでぃす。
そうでぃす、玄田さんは一人じゃないのでぃす。
ボクも一緒なのでぃす。
「ではお願いします」
「行ってくるのでぃす」
ボク達は連絡のあった場所へ向かったのでぃす。
そこはショッピングモールの屋上だったのでぃす。
ボク達が屋上に着くと、ケンブツキャクさんがいっぱいいて、警察官さんが見張りをしていたのでぃす。
ボク達は社員証を見せて挨拶したのでぃす。
「お疲れ様です。連絡をいただいたハッピーワークの者です」
「お待ちしていました。あちらに居ます」
警察官さんが顔を向けた方を見ると、マミーモンは背中を向けて座ってたのでぃす。
マミーモンを真っ直ぐ見つめて、玄田さんが言ったのでぃす。
「テリア先輩、私に任せていただけませんか?」
「玄田さん、一人ででぃすか?」
ボクはちょっと心配だったのでぃす。
もしまた失敗したら、また落ち込んじゃうかもしれないのでぃす。
「大丈夫でぃすか?」
「私は大丈夫です。テリア先輩が見守ってくださるなら、それだけで私は一人じゃないから…」
玄田さんは真剣な眼差しで、でも穏やかな表情で、ボクは何だか安心できたのでぃす。
今の玄田さんなら、きっと…。
「玄田さん、よろしくなのでぃす!」
「はい!」
玄田さんはマミーモンの隣に座ったのでぃす。
二人は話をしているみたいでぃすが、ボクには背中しか見えないのでぃす。
玄田さんなら絶対大丈夫でぃす!
ボクは玄田さんを信じているのでぃす!
二人は長い間話をしていたのでぃす。
ボクはその間に園田さんに連絡して、玄田さんが話をしていると伝えたのでぃす。
「…そうですか。テリアくんは玄田さんを信じているのですね」
「はい、玄田さんはきっと大丈夫でぃす」
「分かりました。私も玄田さんを信じましょう」
園田さんも玄田さんを信じると言ってくれたのでぃす!
それから時間が過ぎてボクのおなかがぐうぐう鳴ってきた頃、玄田さんがマミーモンを連れて歩いてきたのでぃす。
「玄田さん!」
ボクが駆け寄ったら、玄田さんは嬉しそうに言ったのでぃす。
「マミーモンさん、我が社で働いてくださるそうです」
「本当でぃすか!?」
ボクはマミーモンを見たのでぃす。
「この世界で孤独に生きるのも飽きたしな」
なんてちょっと照れ臭そうにマミーモンは言ったのでぃす。
その後、事務所に戻って手続きをしたのでぃす。
事務所では、園田さん達が待っててくれたのでぃす。
「お疲れ様、テリアくん、玄田さん」
「お疲れ様なのでぃす」
「お疲れ様です」
園田さんは笑顔だったのでぃす。
「無事に仕事を完遂しましたね」
「玄田さんはやっぱりすごいのでぃす!」
「わ、私は…」
玄田さんは顔を赤くしたのでぃす。
「流石はボクの後輩なのでぃす!」
「テリアちゃん先輩風吹かせるじゃない」
国戸田さんにそう言われてちょっと恥ずかしかったのでぃす。
だからボクは誤魔化すためにマンメンのエミをしたのでぃす。
皆が笑っている中で、玄田さんは俯いていたのでぃす。
また笑ってないと思ってボクはしょんぼりしたのでぃす。
でもそうじゃなかったのでぃす。
「ふふ…テリア先輩、その顔は反則です」
玄田さんが笑ったのでぃす!
ボクは嬉しくて跳び上がったのでぃす!
「玄田さん!もっと笑うのでぃす!」
ボクは顔芸をいっぱいしたのでぃす。
そうしたら、玄田さんは声をあげて笑ったのでぃす。
ボク達はとっても楽しかったのでぃす!
そして現在。
玄田さんは前より明るい顔で仕事をしているのでぃす。
事務所でもみんなと仲良くおしゃべりをして、とっても楽しそうなのでぃす。
昼休みはボクと一緒にご飯を食べているのでぃす。
玄田さんとご飯を食べるのがボクの楽しみなのでぃす
ボクと玄田さんはこれからも一緒にお仕事を頑張るのでぃす!
ーテリアモンの日誌