「さて、そうなるとお前の名前や個人情報やらを考えなきゃいけないな」
作業机のパソコンと向き合いながら安藤さんはいった。
私達はここで暮らすために自分の部屋となる二回の部屋の片付けをしていた。まだ机とベットしかないが、今度安藤さんと一緒に部屋の生活用品やら家具を買いに行くことになった。
「ずっと名無しって言うわけにもいかないだろ。それになんの情報もないと周りの人からも怪しまれる可能性があるしな」
「でも、どうするんですか?」
「…まぁなんとかするさ。取り敢えずお前の呼び名だな、どうするか‥」
「「うーん…」」
二人で悩んでいるがイマイチ思いつかない。すると
「『りりか』!」
本を持って部屋に入ってきたギルモンが開口一番にそういった。
「りりか?」
「うん!この絵本の女の子が君にそっくりだから!」
そう行って彼が持ってきたのは沢山の失われたの記憶を探し出す女の子の絵本だった。
確かに髪が白いところも黄色い目も私に似ていた。
「ホントだね」
「うん!」
笑顔で答えるギルモン。
「『リリカ』か、いいんじゃないのか。本当の名前を思い出せるまでその名前を使っても」
「はい、私もこの名前気に入りました」
「よし、取り敢えず名前はきまったな。次はお前の個人情報だが‥まぁこっちは俺がなんとかするさ。それより‥」
そこまで言うと安藤さんは私をじっと見てきた。
「服、どうにかしないとな」
そうだ、今の私は安藤さんの服を借りている状態だった。
前に着ていた服はボロボロでとても着れそうになかったからディテイモンが捨てたとのこと。
少し悩んだあと安藤さんはスマホを取り出しどこかに連絡を入れていた。会話を聞く限り親しい人のようだ。
「‥‥ああ、頼んだ‥悪いなそれじゃ」ピッ
「誰に連絡してたんですか?」
「俺達の仲間にな、ディテイモン今いいか?」
安藤さんが呼ぶと、出窓で日向ぼっこをしていたディテイモンは安藤さんの肩に飛び乗った。
あ、今のディテイモンは猫‥‥種類でいうと日本猫の姿をしていて(毛の色は青色だけど)本来のデジモンの姿と人の姿と今の猫の姿の3つの姿に変わることができるのだ。
「なんだい?今いいところだったのに」
「“寝るところ”の間違いだろ、リリカ達を博士とアイツのことろに案内してくれ。それと、このあたりの案内もな」
「えー‥‥彼のところでおやつ食べてもいい?」
「構わねぇよ、頼んだぞ」
「やった!」
ディテイモンは安藤の肩から飛び降り人型に変身した。
「それじゃあ行こっか、二人共!」
〜住宅街 歩道〜
家々が並ぶ住宅街を歩くリリカとディテイモン、そして腕に抱かれているギギモン。
ギギモンはギルモンの進化前で、ギルモンの姿だと目立つから退化してギギモンになってまわりからは人形を抱えているように見せている。
どうやらデジモンも言う生き物は進化と退化がでいる生き物らしい。進化はともかく退化する生き物なんて初めて見たかも‥。
まぁ私が記憶を無くす前に見たことあるかは別として。
始動中、ディテイモンがデジモンに関することを少しばかり教えてくれた。
デジモンは『デジタルモンスター』の略称であること。
彼らは本来この世界とは別の『電脳世界(デジタルワールド)』に存在していること。
デジモンは進化と退化を繰り返し、強くなる存在ということ。
たまに『現実世界(リアルワールド)』に迷い込むものも居ること。
全ては聞くことができなかったけど、なんとなくデジモンに関することはわかった気がする。
そんなことを思っているとどうやらついたようだ。
そこは二階建ての一軒家で白を特徴とした建物だった。門の看板には『桜木研究所』と書かれていた。
「ここが?」
「うん、連絡はさっき安藤が入れてたし、入ろっか」
そう言うとのディテイモンは門を潜り玄関の扉を開けて中にはいっていった。
私達はその後を追って中に入った。
中に入ると広々とした空間に様々な機械が置いてある。
中央のデスクの前に一人の女性がコーヒーを飲みながらこちらに振り返った。茶髪の髪を一つにまとめ、白衣を着き、メガネを掛けた女性
「おや、いらっしゃい。予定よりも早かったわね」
「やっほーモモコ、来たよ〜」
「お、お邪魔します」
「こんにちは!」
「はーい、こんにちは。君たちがリリカちゃんと…あら?ギルモンが来るって言ってたけど?」
「まぁ来る時目立つと大変だろ、だからとりあえず退化してギギモンになってもらったのさ」
総説明するディテイモン。モモコと呼ばれた人は「なるほどね」と納得したようだ。
「改めて、私の名前は『桜木桃子』。ここの研究所の所長をやってます!‥といっても私と私のデジモン達しかいないんだけどね」
「モモコさんもデジモンを?」
「ええ、でも今は仕事を頼んでるからココにはいないの。機械があったら紹介するわね。あ、そうだ忘れるところだったわ」
そう言うとモモコさんは私の前まで来た。
「安藤に頼まれて貴方に渡すものがあったの、ちょっとこちらにおいで。あ、ギギモンとディテイモンはここで待っててね」
そう行って私は別の部屋に連れて行かれた。
数分後
「わー!リリカにあってる!」
「へへ、ありがとうギギモン」
「私のお下がりだったけどサイズ丁度良かったわね」
そう、私は別の部屋に連れて行かれた後、安藤さんが頼んでいたというのは新しい(正確にはおさがりだが)服のことだった。
黄色の黒を基調とした服で肩出しスタイルの服に黒の短パン。
左右で模様の色が反対の長靴下と動きやすい黒のブーツスニーカー。そして服にあった模様と色のゴーグル。
「ありがとうございます」
「いいのよ、丁度昔の服整理したかったし丁度良かったわ。後これあげるわね、新しい仲間にプレゼント」
モモコさんが渡してきたのは黄色と黒のダイヤが描かれたカバーにはいった携帯端末だった。
「コレは?」
「新品同様のデジヴァイスまたは『デジタルデバイス』。電脳空間に接続する際に必要なものなの、といってもそれ以外の機能はスマホと一緒よ。契約とかアプリとかはこっちで色々やっちゃってるから心配しなくていいわ」
「こんなに…色々とありがとうございます!」
「いいわよ、それにコレは私のためでもあるし」
「?」
そう言うとモモコはリリカに渡したスマホの画面を開いた。
「このアプリ」といって指さした場所にはには『デジアプ』と表記された。
「『デジアプ』?」
「正確には『デジモンアプリ』。ここでデジモンに関することや電脳空間で持っているアイテムの確認何かができるの。まだまだ開発したばっかりだから、これからちょくちょくアップデートしていくわ。その時が来たら連絡いれるわね。ちなみに私と安藤とディテイモン、後もう一人の仲間の連絡先はすでに入れてるから」
「わかりました、ありがとうございます」
「いえいえ〜」と優しく返事をするモモコ。
「あ、そうだギルモンくん」
「んえ?ボク?」
「そうそう、ほらこれ君のでしょ」
そうして取り出したのはギルモンが使っていたバックだった。
あのモンスターに襲われた際ちぎれていたのだ。
「ボクのバック!」
「安藤からたのまれててね。幸い千切れてたのはバック紐だけだったからすぐに直せたわ。中身もそのまま、良かったわね」
「うん!ありがとう!!」
そうしてギルモンは嬉しそうにバックを肩にかけ直した。
「そういえばこのあと“アイツ”の所行くのよね?」
「うん、そうだけど」
「だったらもう行ってもいいかもね、今ならお店の休憩時間だろうし」
「オッケー。それじゃあ二人共、次にいこうか」
そうして私達はもう一人の仲間の所へとむかった。
〜住宅街 少し外れ〜
そこは沢山のお店が立ち並ぶ場所だった。
雑貨屋に服屋、本屋に文房具屋、お肉に魚屋さんに八百屋さん。そして喫茶店等など、色んな種類のお店が並んでいた。
私達はそんな沢山のお店が立ち並ぶ商店街の道を歩いていた。
「ここは色んなお店があるから、買い物するからココが一番だね。もう少し歩いたらショッピングセンターもあるから今度行ってみようか。…と、ついたついた」
そうして私達が立ち止まったのは小さくともとても素敵なカフェでした。
「『喰魔カフェ』?」
「そ、今は休憩中だから人は居ないけど結構人気のお店なんだよ」
そう言ってディテイモンはお店の中へと入っていった。
〜喰魔カフェ 店内〜
中に入ると、お店の外でも感じた通りとても素敵なお店だった。席の数は多すぎず少なすぎずちょうどいい数で、お店は行ってすぐにはキッチンの見えるカウンター席もあり。そして何と言っても珈琲の優しいいい匂いがする。
ふともう一度カウンターの奥を見ると、キッチンで作業している男性がいた。金色の短い髪。赤い目を片目だけ前髪で隠れており、少しミステリーっぽい雰囲気の人だった。
「やっほーゼブル。来たよ〜」
「いらっしゃい‥そいつが安藤が拾ってきた人間か?」
「相変わらず態度が冷たいなきみは…まぁそうだよ。博士には既に紹介したから君が最後だね」
「そうか」
そうして男性、ゼブルさんは手元の作業に戻った。
もの静かな人だなっとおもった。すると
「ねぇー、何作ってるの?」
いつの間にか進化してカウンター奥を覗き込んでいるギルモンの姿が見えた。
私は急いでギルモンの所へ向かった。
「ギルモン!邪魔しちゃだめでしょ!」
「えー、でも気になっちゃったし‥それに」
グゥ~…
大きいお腹の音がお店中に響いた。
「すごくいい匂いがしておなかすいちゃった」
そういえば目が冷めてから私達何も食べてなかった…。そう気づいたら私までお腹が空いてきてしまった。
「お前ら、飯食べてないのか?」
「は、はい…」
「なら食っていけ、丁度昼飯を食べようとして作ってたところだ。サンドイッチでいいな、それしか今は材料無いが」
「い、いいんですか!」
「やったー!!」
「一人で食べるよりかはいいさ、今作るからカウンター席に座って待ってろ」
そう言うとゼブルさんは手際よく作業を続け始めた。
「ゼブルの作る飯は美味しいから期待してなよ」とディテイモンは自信たっぷりに言った。すごくいい匂いがしてきてお腹がなりそうなのをなんとかこらえた。
数分もすると出来上がったようで、私達の前には美味しそうなハムチーズのホットサンドが置かれた。
「ほら、出来たぞ」
「わぁ…美味しそう」
「おいしそ~」
目を輝かせるリリカとお腹を盛大に鳴らしながら同じく目を輝かせよだれダラダラのギルモン
「実際美味しいぞ、ほら冷めないうちに食え」
「「いただきまーす!」」
サクサクのパンにとろ~り伸びるチーズ。すっごく美味しくて私もギルモンも「美味しい!!」と大きな声でいった。
「二人共良い食べっぷりだね」
「とっても美味しくて…」
「おかわり!」
「悪いがおかわりはないんだ」
「えー‥」
あからさまにガッカリするギルモン。
するとゼブルさんがそっと自分の分をギルモンに渡した。
「おや、珍しい」
「いいの?」
「俺はお前らが来る前に少し食ったから良いさ。遠慮するな、食いな」
「うん!いただきまーす!!」
そしてまた美味しそうに食べるギルモン。
私はゼブルさんにお礼をいうと「美味そうに食ってるから別にいいさ」と言ってくれた。
最初の印象とは違ってとても優しい人だった。
私達は美味しいごはんをもらってお礼を言った後お店をでた。
「‥‥‥あの子ども…いや、気のせいだな」
〜帰宅 安藤探偵事務所〜
私達は安藤宅&事務所に帰ってきた。
「おかえり、二人には会えたようだな」
「はい!皆さんいい人たちでした!」
「ご飯美味しかった〜!」
「そうか、それは良かったよ。あ、リリカお前モモコのヤツからデジヴァイス貰っただろ。今データ送るから確認してくれ」
そう言うとの安藤はリリカのデジヴァイスにデータを送った。
確認するとそれはリリカに関する情報だった。
「コレは?」
「お前の個人情報だ」
「え?でも私の情報は‥」
「ああ、だから作った」
え?つくった?作ったといったのか、このひとは??
「本来は個人情報の製作はだめなことだが、俺にはツテがいてな、事情を話したら目を瞑ってくれるとさ」
そういう安藤さんの顔はとても悪い顔をしていた。
私は苦笑いしながらも貰った個人情報に目を通した。
名前、年齢、身長体重、出身地まできちんと書かれていた。
「それから、これも」
そうして送られてきたのは『アヴァロンID』だった。
「それがあればアヴァロンに入っても怪しまれないからな」
なるほど、となんとなく納得する私。
「それから、お前には今から初仕事をしてもらうぞ」
「え!もうですか!?」
「覚えるなら早いほうがいいだろ?安心しろ、ディテイモンも同行するし簡単な仕事だ」
「え!ボクも‼」
「当たり前だろ、俺はまだやることあるんだ。後でお前の大好きなドーナッツ買ってやるよ」
「まるでボクがドーナッツで釣れるようなやつだとおもってない?」
「じゃあいらないんだな?」
「いらないと入ってないだろ!やるよ!やりますよ!!」
少しキレ気味にディテイモンは承諾した。
[newpage]
私達は安藤さんに渡された依頼先の場所に来ていた。
依頼人はこの近くの珈琲豆専門店を営む店長。依頼の内容は『空調システムの調子がおかしい』とのこと。だったら業者に頼めばいいのにと思ったが、どうやら既にしていたらしいが、結果は『異常なし』だったらしい。
それでもやはり誰も触れていないのに勝手に温度が上がったり下がったり、更には消されていた、なんてこともあったそうだ。
しかも夜になると不気味な声も聞こえて、誰に相談できるわけもなくここに依頼してきたとのこと。
「十中八九、デジモンの仕業だね」
そうディテイモンはそう答えた。
「そうなんですか?」
「まぁね、でもどんなデジモンな何のためにこんなことをしているかはわからないな‥。よし、まずはその空調システムを調べてみようか」
そうして私達は空調システムを調べ始めた。
因みにギルモンはディテイモンのアドバイスのもと、デジヴァイスの中に入っている。こっちの状況も声も向こうにはわかるらしい。
少し散策していると視界の済に変なものが見えた気がした。
私は気になり横を向くと、まるでノイズのようなものが空調のスイッチの上に覆いかぶさるようにあった。
「なにこれ?」
私がそれに触れようとした瞬間「ストップ!!!!!」と大きな声でディテイモンが後ろから止めてきた。
「安易に触れないほうが良いよ、それは『クラック』だ」
「『クラック』?」
初めて耳にする言葉に首を傾げるリリカ。
「簡単に説明すると現実世界と電脳空間に出来る『次元の裂け目』さ。これが原因で電脳空間にいるデジモン達がコッチに来る時があるんだ」
ディテイモンが言うに、昔この『クラック』からデジモンが現れて大変なことが起こったらしい。
「でもこの先になにかあるのは確かだね…」
うーん…と悩むディテイモンはなにかを決断したかのように「よし!」と言ってリリカの手を握った。
「とりあえず行ってみるか!」
「え!?さっき危険だって‥」
「それは生身の体のままだとって意味さ。君は電脳空間にいたんだしきっと大丈夫だよ。もしものときはボクがなんとかするからさ。さぁ行こうか!」
「え!ちょっ…えええ!!」
そうして私達はその『クラック』を通じて電脳空間へと飛び込んだのだった。
『クラック』を抜けると、そこは前に見た電脳空間と似たようなところだった。
「ここは?」
「うーん見た感じ『アヴァロン』のエリア0に似た空間のようだね」
大きな二足歩行の青猫のデジモンの姿に戻っていたディテイモンは周りを確認しながら答えた。
「ねぇリリカ、ディテイモン。あっちからデジモンの匂いがする!」
いつの間にかデジヴァイスから出ていたギルモンが奥に繋がる道を指さしていた。
「もしかしたら今回の原因のデジモンが居るのかもね。用心していこう」
「はい!」
通路の奥に進むとそこには一体のデジモンらしき影があった。
「どうやら、今回の事件の犯人は彼のようだね」
「ああ?誰だ、テメェ等」
「ただの探偵の助手だよ。『ヒョーガモン』」
そう行って振り返るデジモンの姿は、まるで物語に出てくる『オーガ』という怪物の姿をしていた。
「俺の縄張りにはいってただで済むと思ってんのか?」
「悪いけど、君がココにいると困る人達がいるんだ。直ぐにこの場から離れることをおすすめするよ」
「へ、嫌なこった!『スノーパンチ』!!!」
ヒョーガモンは冷気を込めた拳をこちらに振りかざしてきたが、間一髪でリリカとギルモンはディテイモンに抱えられ、避けることが出来た。
「やっぱり戦闘は避けられないか‥リリカ、少し下がっていて」
「う、うん」
私はディテイモンの少し離れた場所に移動した。
するとギルモンが私を呼び止めて自分にかけていたカバンを渡してきた。
「また鞄がちぎれたら嫌だから持ってて」
「え、ギルモン!?」
ギルモンはディテイモンのところまで行き、戦闘態勢に入った。
「君も戦うのかい?相手は成熟期。君より1段強い相手だよ?」
「わかってる、でもボクも戦うよ!リリカを守るって約束したから!」
その覚悟を聞き、ディテイモンは微笑むとヒョーガモンの方を向いた。
「リリカ!きみはそこからギルモンに戦闘の指示を出して!」
「え!でも私戦闘なんて…」
「大丈夫、デジモンのパートナーとなった君なら出来るはずだよ。ボクも付いてるから」
「なによそ見してんだテメー等!!!」
ついに我慢できなくなったのかヒョーガモンが自身の持つ棍棒をディテイモンとギルモンに向かって振りかぶってきた。
しかし、間一髪のところで避ける二体。
「『ムーンクラッチ』!!!」
両手の爪を伸ばし、まるで月を描くように切り裂くディテイモン。
「グァァァア!!!‥ッテメェ良くもやったな!『スノーパンチ』!」
しかしヒラリとかわすディテイモン。
「リリカ、大丈夫!ギルモンに指示を!」
そう言われ私は咄嗟に頭に現れた文字を大きな声で叫んだ
「『ファイアーボール』!」
「ファイアーボール!!!!!」
ギルモンは口を大きく開き、炎の玉をヒョーガモンにぶつけた。「グギャァァァア!!!」
攻撃がダイレクトヒットしたのか、ヒョーガモンはその場に倒れた。
私達は恐る恐るヒョーガモンに近づいた。
「く、クッソぉ‥‥」
「さ、もう人間たちに迷惑をかけるんじゃないよ」
「うるせぇ‥‥俺様にはもう‥行く場所なんてねぇんだよ‥」
「?それってどういう」
「…‥」
それっきり黙り込んでしまったヒョーガモン。
「ねぇ、少しお話しない?貴方がどうしてこんな事をしたのか」
そういったのはリリカだった。
彼女に算段があったわけではないのだろう。きっとただ彼女はヒョーガモンの行っていたことが気になっただけなのだろう。
それでも、何を思ったのかヒョーガモンは少しだけだったが話してくれた。
自分はデジタルワールドにいて、そこでは縄張りのボスをしていたこと。
しかし別の大型デジモンにやられてしまい縄張りの仲間たちも守れず追い出されてしまったこと。
流れ流れにこの電脳空間にたどり着いたこと。
それによって電波障害が起こり、リアルワールドで異変が起こっていたこと。そしてそれに気づきながらも行く宛も戻る場所もないためここにとどまっていたこと。
そこまで話すとヒョーガモンは大きな目からボトボトと涙を流していた。
ギルモンがどうにか出来ないのかと訴えるようにリリカとディテイモンを交互に見ていた。
確かにこのまま放って置くわけにはいかないし、だからも行って追い出すのも、今の話を聞いてからだとどうも気が引ける。
どうするか‥そう悩んでいたときのことだった。
ピルルルルル… ピルルルルル…
とリリカのデジヴァイスから着信音が鳴った。
画面を見てみると表示に『モモコ博士』と記載されていた。
私は鳴り響く電話から通話ボタンを押した。
『やっほーリリカちゃん。デジヴァイス、つかいこなせてる?』
「モモコさん!」
『“さん”なんて固っ苦しいわよ、“博士”とでも呼んで頂戴』
「えっと…博士‥さん」
『ははは!まぁなれるまで練習だね』
「モモコ、今は君にかまってるヒマは無いんだけど‥」
『あら?ディテイモンも近くにいるの?え、てかなに?忙しかったの?』
「じ、実は…」
私は事の顛末を博士に話した。
『なるほどねぇ。それで、今そのヒョーガモンはどうしてるの?』
「後ろの方でギルモンに慰められながら泣いてる」
「私達もなんとかしてあげたいと思っているんですが‥‥どうにも…」
『ならちょうどよかったかも!』
「「え?」」
『実はデジアプリの新機能を追加したのよ!その名も『デジファーム』!!』
説明によると、パートナーデジモンやもしかしたらこれから仲間になるかもしれないデジモン達を一時的に預けたり育成できる電脳施設のようなものらしい。
『まだ草原エリアしか作ってないのだけれど、もし彼がそれでも良いって言うならそこに住まわせるのもありなんじゃないかしら?これからどんどんエリアを作っていくつもりだからもしかしたら彼が住みやすい場所もできるかもだし』
「私のデジモンの研究も進むかもだし」と、ボソッとつぶやいていたのは無視しよう。
それでもコレはいい知られなのかもしれない。そう思い私達はヒョーガモンにその事を話した。
ヒョーガモンは泣いて喜んでいた。
「この恩は一生忘れねぇ!ありがとう!ありがとう‼」
「ほら、彼女のデジヴァイスから入れるから一回デジファームに行ってみてよ」
「おう!」といい、ヒョーガモンはリリカのデジヴァイスからデジファームに入っていった。
画面から見た感じ、ヒョーガモンの姿は可愛らしいドット絵で表現されていた。
一時ファーム内をウロウロしたあと飛び跳ねて喜んでいるような表現と絵文字が現れていた。
「どうやら喜んでくれたようだね」
「はい!」
「よかったー!ヒョーガモン嬉しそう」
「そうだね、モモコさん‥あ、博士もありがとうございます」
『いえいえ〜、私もこんなタイミング良かったとは思わなかったからね。これからも、どんどん使っていってね』
「はい!ありがとうございます」
そして博士は『またねぇ』と言い通話を切った。
「よし、事件も解決したし。依頼人に報告して帰ろっか」
「はい!」
「ボクお腹すいた〜」
そうして私達は依頼人に報告し(とはいっても、デジモンのことを話すわけではなく、単に電気系統の故障と修理したと言ったが)私達は安藤宅に帰った。
〜安藤宅兼探偵事務所〜 時刻 夜
安藤さんからの報告も終わり、ゼブルさんのお店で晩ごはんを食べた私達はお風呂に入って歯も磨いたのでおふとんの中に入って寝る体制に入った。
私の隣にはギルモンが寝ておりちょっとだけ狭い。
安藤さんが「明日家具屋さんに行こう」と言ってくれたのでふたりで寝れるくらいの大きめのベットを頼んでみよう。
今日は一日でいろんなことがあった気がする。
そっとデジファームの様子を見ると眠ってるヒョーガモンの姿があった。
これからもしかしたら新しい仲間に出会えるのかもしれない。記憶がなくても、新しい思い出を増やしていこう。
もしかしたらそのうち思い出すかもしれないし‥。
「…りりか?」
「あ、起こしちゃった?」
「ううん、寝ないの?」
「もう寝るよ、おやすみギルモン」
「うん、おやすみぃ‥‥クゥ‥クゥ‥‥」
「ふふ、さて私も寝よう」
私は布団を深く被り直した。
明日はどんな一日になるのだろう。そう楽しみを心から思う。
〜エリア0 ???〜
「はぁ‥はぁ‥はぁ‥」
怪我だらけのデジモンが一体、エリア0の暗い場所にまるで何者かから逃げるように走っていた。
「はやく‥早くここから離れないと…そして見つけるんだ」
「私のパートナーになるであろう人間を‥‥」