四季は秋、時期としてはハロウィンシーズンに差しかかって来る頃にて。
時刻は夕暮れ、あと一時間もすれば夜闇が空を覆うであろう時間に、高校二年の少年こと三角(みつかど)赤馬(あかば)は、少々肌寒い風の吹く街道を歩いていた。
(あー、さむー……最近気温が変動し過ぎだろ……)
彼は部活動に通っている身であり、普段から下校する頃には夕方の時刻にはなっているのだが、諸事情でいつもよりも足が遅れ、普段よりも薄暗くなった時間に帰路を進むハメになっていた。
昨今の気温の揺れ幅はすごい。
夏場と大差無い程度に高い日もあれば、急に冬場のように寒々とした空気が流れていたりもして、天気予報を確認していようがいちいち着こなし一つで対応出来たものではない。
実際問題、運動の汗を吸った制服姿の彼は背筋から伝わる肌寒さと秋風のコンボに現在進行形で襲われている。
別に命の危機に陥ったり、すぐに風邪を引いたりすることは無いにしろ、それはそれとして嫌な気分になっていて、必要が無くなるかもしれなくとも上着の一枚でも用意しておけば良かったとちょっぴり後悔していた。
(……こういう時は何かちょっといい感じのを買いたくなるよな……)
どのような料理が作られているかは帰宅するまでわからないが、自宅に帰れば少なからず暖かな夕食にありつける。
だが、ちょっとでも嫌気が差せば、多少寄り道してでもそれを払拭しようとするのが人間のサガ。
学業の疲れ、部活動の疲れ、その他諸々の疲れ、思春期の少年にとって寄り道の理由などそれだけで十分なのだ。
コンビニかスーパーか、何処でもいいから何か自分へのご褒美よ言えるものでも買ってから帰ろう――出来れば見覚えの無いものが良い。
殆ど欲望のままに選択して、彼は街の建造物を見回していく。
広大な街の中にはコンビニやスーパー以外にもそれなりの数、多くの出店が存在し、赤馬の行ったことの無い店もそう少なくはない。
行ったとしても彼は高校生の身、値段次第ではすぐに踵を返して冷やかしすることしか出来ないし、一目見たその時点で興味が湧く店というのも多くはないからだ。
尤も、別に彼の目利きがセレブリティだったりするわけでも無いのだが。
ともあれ、彼は歩いている内にとある出店を見つける。
そこは、都会に建てられている建物にしては少々古ぼけており、店の屋根には『エデンズ・ドア』と描かれた看板が乗っかっているのが見えた。
明らかに胡散臭くはあるが、外から見る限りはホームセンターのように日用品の類が置かれているように見える。
偶然か、それともいつも通りか、あまり人が入り込んでいる様子も無い。
「……行ってみるか」
殆ど好奇心で足を運ぶ。
店の入り口にある扉を開くと、カウンターの方に突っ立っていた店員と思わしき人物が視線を向け、そしてこう言った。
「ようこそ。お客様を楽園へとお届けする店、エデンズ・ドアに」
「…………」
「……あれ、ウケがよろしくない……?」
その店員――いかにもサラリーマンやってますと言わんばかりの白いカッターシャツが特徴的な長身の男性――から突然テレビのCMのような事を言われ、つい困惑してしまう赤馬は、そこで更に異なる人物の声を聞いた。
「だから前にも言ったじゃないですか。その文句は大仰過ぎるって」
「えぇ~、瑠日くんはうちの『商品』の事を知ってるし名前に偽り無しだって解ってるじゃないか~」
「解ってようが解ってまいが大仰な事に変わりは無いんですって。普通にいらっしゃいませの一言で足りるじゃないですか」
「……えぇと……」
聞こえて、振り向いてみれば、そこには見る限り中学生と思わしき背丈の少年が立っていた。
瑠日と呼ばれたその少年は、店員の発言に呆れたように言葉を挟んだ後、赤馬の視線に気付くと少々気まずそうな顔になってこう告げる。
「あ、すいません。俺の事は気にしなくていいので」
「……君はこの店の常連とかだったりするの?」
「え? いやまぁ、ちょくちょく通う事にはなってますけど常連ってほどでは」
「いやいや瑠日くん、思いっきりうちの商品のお世話になってた身だよね?」
「ちょっとの関わりで常連扱いするのはどうかと思うんですがそれは」
(……その年の差お構いなしの会話自体が常連くさいって話なんだが……)
明らかに顔馴染みな二人の会話に、そもそも初対面の相手ではあるのだが親しみづらさを感じてしまう赤馬。
というか、少年の方は同じ店員というわけでも無いようだが、なんとなくただの客という風にも思えないが……。
(……いやいや、寄り道に来ただけだし深く考える必要無いだろ)
「えぇと、ここって何か良い感じのものとかありますか? 店長イチオシみたいなの」
「僕のイチオシ? うーん……特にそういうのは無いんだけど……そうだね、君に何か悩みの一つでもあれば何かしらおすすめは出来るよ」
「…………」
「悩み、ですか……」
問われ、考えて、そして赤馬はこう答えた。
「最近寒くなってきたので、それをどうにかしたい……ぐらいですかね」
「あぁ~、確かに最近冷え込んできたからね。特にこの時間帯は。それなら……そうだね、ちょっと待っててくれ」
長身の男はそう言うと、カウンターから離れて店の商品棚の方へと足を運んでいく。
よく見ると、男以外に店員らしき人物が見当たらないが、そうなるともしかして男はこの店の店長だったりするのだろうか?
そんな疑問を胸に男の歩いた方へと付いていってみると、男は商品棚からある物を掴み取り、赤馬に見せ付けた。
それは、一言で言えば青色のスカーフだった。
特に何の変哲も無い、更に言えば暖かさとは繋がらない、どちらかと言えば寒さや冷たさと繋がる色の、一般的には首や腕などに巻きつけるアクセサリーとしての意味合いが強い一枚の布。
「……それは?」
「君が求める、寒さをどうにか出来るものだよ」
「それをマフラーみたいに巻いていればいいってことですか?」
「そうだね。出歩く時もインターネットをする時も、何なら寝る時もそれを付けていれば大丈夫だよ」
「は、はぁ……?」
思わずため息が出た。
マフラーのような熱を溜め込みやすいものならまだしも、ちょっと大きめのハンカチとさえ言えるスカーフ一枚が寒さをどうにか出来るとは考えづらい。
無論、首に何も巻いていないのであれば、巻いた方がマシだと言えるのは事実だが。
余程高い保温効果でもあるのだろうか、と男の言葉に勘潜る赤馬だったが、
「怪しむならつけてみてもいいよ?」
「? いいんですか?」
「いいよいいよ。ブディックとかで試着とか出来るのと同じだよ」
「いやそんなしっかりしたやつじゃないでしょう此処のは」
「瑠日くんうるさいよ」
やりとりはどうあれ、試して良いならと言葉に甘え、赤馬は青のスカーフを首に巻いてみた。
少なくとも、何も巻いていなかった状態よりはマシだと思えたのだが、暖かいかどうかという話になると、現時点ではまだ何とも言えない。
とはいえ、興味が失せたかと聞かれるとそういうわけでも無く。
(まぁでも、なんか良い感じはするな)
「これ、何円なんです?」
「ん、100円だよ」
「え、ここって100円ショップか何かだったんです?」
「どちらかと言えばリサイクルショップというのが近いかな。別に全部の商品が100円というわけでも無いのだし」
「はー。じゃあ、とりあえず買います」
流れ流れの内に、赤馬は男のおススメしたスカーフを買う事を決めるのだった。
お代を払い、レシートを受け取り、購入したスカーフを改めて首に巻いてみる。
やはり特別保温されている感じはしなかったが、それはそれとして悪くない買い物が出来たとは思った。
(色々気になる所はあるけど、まぁ今回はこれでいいか)
他の商品にも興味こそあるが、あまり時間を掛けすぎてもそれはそれで楽しみな夕食を食べるのが遅れるし、他の寄り道も出来なくなるので、赤馬は今回の買い物をスカーフ一枚でやめる事にした。
思ったより安く済んだし、ついでにコンビニか何かに寄ってくか、と内心で呟きながら足早に店を出ていく。
店の中に残ったのは、店長の男と瑠日と呼ばれた少年のみ。
少年はしばらく赤馬が出ていった店の玄関の方に視線を向けた後、店長たる男に向けてこう言った。
「……で、アレも『チケット』ってわけですか?」
重大な意味を含む問いかけだった。
問われた男は特に表情を変えることなく、さも当然のように言葉を返す。
「まぁ、そうだね。というか、この店にある物の殆どはあの世界に案内するためのものでしか無いんだけど」
「つくづく思うんですけどね。何も知らない人を何も解らないまま巻き込むのはやめてほしいと思いますよ」
「悩みを持ってたようだし構わないだろう? あの世界は、そういう人間にとっての楽園なのだから」
「こっちの時ほど深刻な悩みじゃなかったみたいなんですけどね。ただ寒がってただけみたいだし」
「私達にとって、人間の悩みの大きさに優劣は無いよ」
「どうあれ、突然溺れ死にかけさせられた挙句にあんな事になった側からすると、たまったもんじゃないんですけどね」
「そう言いつつも、君はあの世界に行くことをやめたわけではないんだろう」
「まぁ、約束した事があるので。……今日はそれとは無関係に行く理由が増えたみたいですけど」
言うだけ言って、瑠日と呼ばれた少年もまた店を出る。
楽園への扉、と名付けられた店の中には男一人のみが残り、彼は新たなる客の来店を待つのみだった。
◆ ◆ ◆ ◆
ついでの流れで寄ったコンビニでブラックサンダーを二個ほど購入して食べ歩き、帰り着いた家で夕食も済ませて。
色々あって、就寝の時間になった三角赤馬は自室で寝床に就くところだった。
寝間着を纏った彼の手には、風呂に入る際に一度外した件の青いスカーフがある。
(寝る時にもつけておけば大丈夫、なんて事を言ってたっけ)
正直に言って、今でもあの店員の男の言葉は胡散臭いと思う。
事実として、肌寒い風の吹く中を歩いている間も、スカーフ一枚だけで暖まるような事は無かった。
付ける前から、保温効果の程度などわかりきっていたため、それ自体には驚きも落胆も無かった。
が、一方で着けていて良い気分にはなっていた。
なんとなく、肌とは違う何かが温まっているような、何かを満たしているような、そんな感覚がして。
店員の言う事――というか宣伝文句――など全く信じてはいないが、着けたまま寝るぐらいはやっても良いだろうと赤馬は思い、そして実行した。
布団の下に体を通し、目覚まし時計のアラームを設定し、青いスカーフを身につけたまま目を閉じる。
今宵は少々肌寒く、かと言って暖房までつけるほどでは無い微妙な室温だった。
とはいえ赤馬にとってはその微量な寒さが嫌で仕方なく、体を沈みこませた布団を肩の上まで覆うように動かすと、ついには全身を包まわせてしまう。
とにかく眠ってしまおうと意識をするが、思うように寝付けない。
(……最近つまんないな……)
明日もまた学校だ。
将来の夢が決まっているわけでも、学業が楽しいわけでも無い赤馬にとっては、ただただ平凡なだけの時間が待っている。
そんな平凡なだけの時間が嫌で部活動に通い始めたものの、特別何かを得られたような感覚は無く、あくまでも暇つぶしの一環という認識を出られずにいた。
全てが将来のために必要なことだと解っていても、それよりも優先してやりたい事が別にある。
気楽に自由にやりたい事が出来る時間がもっとほしい。
勉強などよりも、願わくばもっと楽しい事をやっていたい。
そうして嫌な気分になっているとなかなか眠れなくて、ついつい枕元に置いていたスマートフォンを手に取ってしまう。
電源を入れ、SNSの画面を開く。
近頃はインターネット上で、奇妙な噂が流れている。
人間が突然怪物になるとか、異世界への扉がどうとか、眉唾な話題がちらほらと。
どの情報も曖昧で、誰も彼も信じてはいない。
無論、赤馬もまた信じていない者達の内の一人である。
が、
(……本当にそんな事があるのなら、面白そうなんだけどな……)
そんな風に考えられる程度には、興味がありはした。
人間が怪物になったり、異世界へ通じる扉が仮に存在するのなら。
そういう場面に立ち会うか、あるいは試しに行ってみたい、と。
現実離れした話は、退屈な現実を時に忘れさせてくれるから好きだった。
無論、そんなものは現実に無いのだと、理解はしているけれど。
(……そういや、あの人も楽園がどうとか言ってたっけ……)
楽園。
そう呼べるところが現実にあるのなら、実際に行かせてみせてほしいと思った。
それがたとえ夢の中の話であろうが構わないから、と。
首に巻いた青色のスカーフ、そこから伝わる僅かな熱に意識が向けられる。
(……まぁ、悪夢じゃなければ最悪何でも……)
そんな風にぼんやり考えた。
特別なことなんて起きないと、一方では諦めながら。
「――ん?」
直後の事だった。
布団に包まっているとはいえ、普段よりもやけに暖かい――いや、いっそ熱いとさえ思えるほどの熱が全身にじんわりと行き渡っている事に気付いた赤馬が、流石におかしいと思って起き上がり、布団を捲り上げてみた時には、既に明確な異変は起こりきっていた。
(……なっ!?)
寝間着を纏った体が、まるで電波障害の起こったテレビ画面のように、ほんのり赤色を帯びながらジリジリと揺らいでいた。
手も足も、おそらく鏡でも見れば顔も何もかも。
「っ、熱っ……!?」
その事実を自覚したからか、あるいは別の要因からか。
体を伝う熱は更に強くなり、たまらず赤馬は思わず着ていた寝間着を脱ぎ捨て、上半身だけ裸の状態になる。
だが、熱は収まらない。
寝室に通う寒気もまったく感じられない。
「っは……う……!!」
ノイズのようになった体が痺れ、脳髄が茹で上がる。
立っていられず、赤馬は捲り上げた布団の上にうつ伏せに倒れ込んでしまう。
その意識がどんどん薄れていき、それに伴って全身と首に巻いて青のスカーフがどんどんノイズのように変化していって。
(――ぁ――)
やがて、その意識が失われると同時。
ノイズのようになった体が、青いスカーフや寝間着ごとバラバラのブロックとなって弾け飛び、その全てが光るスマホの画面の中に向かって吸い込まれていく。
寝室に残ったのは、敷かれた布団と脱ぎ捨てた上の寝間着とスマートフォンのみ。
電源が入ったままのスマートフォンもやがて、ある程度の時間が過ぎると画面消灯の機能が働き、何も映さなくなり。
光源を失った寝室には、暗闇が残った。
◆ ◆ ◆ ◆
漂っていた。
スマートフォンの画面の中に向かって吸い込まれたノイズこと三角赤馬は、蒼くきらめく海のような場所に放り込まれ、ただ漂流していた。
意識は無い。
あったとしても、常識的に考えて脳は真っ当に機能しない。
海の中、酸素を取り込めない窒息状態が続いた人間の体は容易く壊れ、腐っていくのが条理なのだから。
されど、この海は現実の海にあらず。
故にこそ、そこに溺れた者の行く末も現実のそれとは異なっている。
「――――」
力なく四肢を投げ出し、無意識に酸素を求めんと細く開いた赤馬の口の中に、海水はどんどん入り込む。
彼自身の呼吸の結果というよりも、いっそ海そのものが意思をもって潜り込んでいるかのような、そうとしか思えないような速度で。
臓腑に、皮膚に染み込み、全てを冒し――されどその全ては体から外に漏れることは無い。
染み込んだ分だけ、取り込まれた分だけ、彼の体は人間のそれからかけ離れていく。
非現実の海に浸った影響からか、まず最初に彼が下半身に穿いていた寝間着や首に巻かれた青いスカーフが海のそれと同じ色に染まって見えなくなり、次いで全身の皮膚がふやけて剥がれ落ちていく。
剥がれ落ちた皮膚に裏には、そこにあるべき血肉の色が無く、代わりに緑色の線で描かれたワイヤーフレームがその輪郭を形作っていた。
しばらく経つと人間・三角赤馬の姿などそこには無く、変わりに存在しているのは目も鼻も口も見当たらず、中心に0と1の数字が書かれた球体を有するヒトのカタチをしただけの何かだけ。
そしてそれもまた、まるで見えざる手に引っ張られるように、徐々にヒトのカタチでは無くなっていく。
腹や胴体に四肢、首から頭までにあたる部分が、内を満たす海水に押し広げられる。
剥がれ落ちた色を補うように赤と白の色がワイヤーフレームに浮き出てきた頃には、既にそのカタチに境界線などと呼べるものは無くなっており、ある一つのものを形作ってしまっていた。
それは卵。
赤と白の縞模様に彩られた、成人男性程度の大きさはあろう大きな卵だ。
物言わず、微動だにせず、ただ内より産声を上げる『何か』に砕かれるだけの物体。
そして。
沈みゆく卵の内側で、変化は次の段階へと以降していた。
人間の体を基に形作られた卵の内側には、0と1の数字が書かれた球体以外に何も無い。
筋肉も骨も、胃袋も心臓も脳みそも何もかも。
存在するのは肉体を満たした未知の海水のみであり、あるいは臓腑の全ては海水の中に溶け果てたのかもしれなかった。
0と1の球体が回転しはじめる。
回転に引き寄せられるように、球体の周りで海水が渦を巻く。
渦を巻いた海水が球体に纏わりつき、飴細工のように新たなるものを形作っていく。
三本の角を額から生やし、鼻と口が僅かに突き出た刺々しい頭部。
太く強靭な三本の指を供えた手足、陸上選手のように割れて引き締まった腹筋。
腰元から生えた長い尻尾、両膝と胸元と股間の三箇所を覆う鉄板、首に巻きついたスカーフ。
そして――そうした形作られた体は主に赤色に彩られ、ところどころに白や黒の色を宿し、一つの完成を得る。
(――――)
額から三本の角を生やした、赤色の竜人。
それが一人の人間を基にした卵の中に生じた、非現実のカタチだった。
赤い竜人はうずくまった姿勢で眠りに着いている。
一時間か一年かはたまたそれ以上か――どれほどにせよ、目覚めるにはまだ時間が必要らしい。
人間の体を基に形作られたそれは一切の抵抗なく、海の底へと沈んでいく。
そして。
時が経って、赤い竜人はザラザラとした触覚と共に目を覚ました。
「……ぅ……?」
呻き声と共に、金色を宿した瞳が開く。
まるで常夏の太陽のような光が視界に入り、一瞬目が眩んでしまいながらも、それでも我慢しながら自分がいる場所のことを見た。
空を照らす星のきらめき、未来都市染みた建造物の数々、そしてそれ等がどうでもよくなりそうなほどに異常な――非現実染みた存在たちの姿。
ある存在は三個の歯車が寄り集まったような姿をしており、また別の存在は巨大な翼を持ち緑色の鱗を生やしたドラゴンのような姿をしていた。
人間が住まうような建造物が多く見られながら、一方で人間と呼べるような存在など何処にも見当たらない。
怪物が住まい営むその光景は、まさしく異世界のそれだった。
「……ここは……?」
「起きたか」
「――うわぁっ!?」
疑問と共に立ち上がろうとした直後、すぐ傍で声がした。
反射的に振り向くと、そこでは巨大な何かがとぐろを巻いて自らのことを見下ろしていた。
赤い鱗を生やし、刃のようなものを備えた甲殻に覆われた頭部を持つ、巨大な海蛇が。
思わず驚き、転んで尻もちをついてしまい――そこで全く覚えの無い感覚を覚えた。
疑問のままに首を動かし、自分のお尻の部分を見てみれば、そこには長く伸びた赤い尻尾があって。
次いで全身をペタペタ触って、そこまで確認して、ようやく彼は自分自身のことに気がついた。
自分の体が、人間のものではなくなっている、と。
「え? え?」
「……まぁ、疑問だらけだろうな。俺も最初はそんな感じだったし……」
「な、なんで俺こんなのに。というか、何で海蛇が……というかその声、どこかで……!?」
覚えがあった。
その反応を見て、赤い海蛇は意外そうに目を丸くした後、こんな風に反応を残した。
「ん、覚えている……んですか。まぁ、あなたの考えている通りだとは思いますよ。……というか、あなたの場合は俺の時よりも覚えてるのか……」
「……確か、あの……変な店で会った子……」
「ああそうですよ。まったく、やっぱりこの世界に来てしまいましたか。まぁ、来ちゃったからには『ダイバー』の先輩として手伝いはしてあげますけど」
大蛇の反応は、明らかに赤い竜人の疑問に確信を与え、より一層の疑問を生み出すもので。
あまりにも現実離れした状況に戸惑いを隠せない赤の竜人に向けて、何かを思い出すようにため息を吐きながら、大蛇は先駆者として以下の言葉を投げ掛けるのだった。
「ようこそ、新たなる旅人さん。非現実と怪物と夢が支配するデジタルな世界――ユニバースへ」
企画発案者に感想書けてなかった! 夏P(ナッピー)です。
取り急ぎ、というか大分遅れてしまいましたがハロウィン企画を立ち上げて頂いたことに対する感謝をここで。いやまあ内容というか主題拝見した時はいつものとなりましたが他の方々のデジモン化に対する考え方も見られたのが大変興味深くて良い。というわけで改めて感想を書かせて頂きましたがいつものというか「人間が怪物になるとか異世界の扉とか」と作中でもいつもの扱いされててダメだった。いずれ02のノリで「今や世界中全ての人間がデジモン化している……」になってしまうぜ!
寒いのであったかくしてもらおうと聞いた瞬間ハハァこりゃメラモンにされるなと勝手に確信していましたが、スカーフの時点で「ん?」となり、最終的にいつものされた時点で気付いた。こりゃベテルガンマモンだ! そーいやスカーフだ!
お菓子とハロウィン要素どこで絡んでくるのかなーと思ったらブラックサンダーかこれ。
あとメガシードラモンで良いのか彼は……最後「ユニバース」と言ってくれたので、完全に頭の中でDiVEが流れ出しましたがドッカンパンチには至らなかったのだった。
というわけで実家のような安心感でした。あの店、多分色んなデジモンの服売ってくれる奴だアレは。
それではこの辺で感想とさせて頂きます。