ここはデジタルワールドの何処かに存在すると言われる魔法の国、名を『ウィッチェルニー』と言う。今尚存在する数々の魔法使いに属するデジモン達の多くがこの国から旅立っていったとされている場所である。心地の良い風が吹く、『魔法』がデジモン達を導く世界。その歴史は長く、数百年ともいわれている程だ。四季も存在し、今は春の季節が訪れていた。この世界には『ウィッチェルニー魔法学園』という学校が存在し、同時に国全体の統治・統括などの行政面も担っている。そんな学園にある大講堂から声が聞こえてきた。どうやら学園の長のデジモンから在校生に向けての講話が行われている最中のようだ。
「春を迎え、『創生祭』が近づいてきたわけですが、各魔法の試験などもありますので在校生の皆においては浮かれすぎないようにしてくださいね。それから―」
学長の話が続く中、一番後ろの席に座っていた二匹のデジモン達がこそこそと話を小さな声でしていた。この手の話は長く、こういった生徒は何処にでもいるものだ。話している話題は今まさに講話を行っている学長についてのようだ
「うちの学園の学長ってすごいんだぜ?」
「そんなの知ってるさ。学園の長であり、このウィッチェルニーの行政面の最高位に位置してるんだからな」
確かにそうだけどさ―と話を切り出した生徒が言葉を続ける
〇夏Pさんへ〇
最終話まで読んで頂いて本当に本当に本当にありがとうございます!!!
そうなんですよね。元々の題だとお話の後が見えるような気もしたので、繋がりを伏せつつ寄せていくようにしていました。そこもこのお話のポイントだと思っています。Legend-Arms、魔槍のネタの絡みは是非やりたかったのでこの形で出せたことは本当に嬉しい限りでした。
そうギルモンの過労は後に語られるかもしれませんね。ブルコモンとその友としての槍もまた何処かで動き出す時を待っている、なんていう感じもします。
そのようなわけで、夏Pさんには最後まで素敵な感想を頂けて感謝してます。モチベが続いたのもまた読んで頂けている方々のお声もあるからなのだと今回の作品を通して感じました。次回作もあればまた楽しんで頂けるように頑張りますね!
遅くなりましたが最終話まで読ませて頂きました、夏P(ナッピー)です。
タイトルが変えられていたとは。しかし多分原題だったらウィッチルーニーと繋がるのが早めに見えた気がするのでこれで良かったのでしょう。というか、Legend-Armsの名前出た時に何が関連してくるのかと思ったら最後の最後で魔槍デュナスとは「やられた!」の一言でした。
デュークモン及び学長のギルモンが登場しましたが我が友の友人という回りくどい言い回しがなんだかツボる。成長期の身で働き過ぎで過労死するのか……。ブルコモンとなった“部屋の主”は物言わぬ槍に友として語りかけているようですが、彼の過去の悔恨は晴らされたのかな……?
そんなわけで素晴らしい投稿速度、お疲れ様でした。次回作があればそちらも楽しみにしております。
※あとがき※
どうも、おでんなドルモンです。まずここまで読んで頂いた皆様に感謝を申し上げます。デジモン創作小説を書いてきて今まで自分の作品を一つでもやりきったことがなかったボクですが、この度色々な方の声援を受けたこともあり、自分の中の物語を一つ形にするに至りました。ありがとうございます。
この物語のコンセプトとしては魔法の国『ウィッチェルニー』はどうやって生まれたのか? そしてメディーバルデュークモンの設定の中で持つ魔槍デュナスはどうやって作られたのか、それに迫るものでした。
そして小話になりますがこの『Closing Garden』という作品タイトルは元々の原案は『青い魔法使いと白き竜騎士の誓い』というものでしたが、テーマとコンセプトを考え直し練り直した結果今のタイトルへと変わり、名残りと作品の一番の見どころとして9話目のタイトル『青の魔法使いと白き竜』になったというわけです。
さて、そろそろお時間となってきましたね。長文失礼しました。魔法の国の物語、そして今までの中での伏線ですが、回収する時間がなかったのではありません。これからボクが作っていく物語とこのお話の世界観は同じ世界線上にあります。なのでまたどこかの作品で聞いたことがあるキャラクターや設定が出てくることもありますので、またその時お会いしましょう
では改めましてこの作品を最後まで読んで頂きありがとうございました!
閉じられていた箱庭は二体の『デジモン』の出会いにより開かれた
このお話はある魔法の国のはじまりの物語。それはこれからもずっと続いていく
その先の未来ではまた新しい物語が始まる時を待っている
そして、優しく穏やかに吹き抜ける風だけが『それ』を知っている―
魔法の国のお話はまだまだ続くけれど、それはまた別のお話―
『Closing Garden』 ~fin~
そして此処は魔法の国の何処かにある『とあるお屋敷』
その屋敷には沢山の部屋がある。そして部屋があるということは併せて『扉』が存在している。そんな沢山の扉の中の一つだけ部屋に繋がっていない扉があるという噂があった。もし、その『扉』を開けられたのならそこでは今日も『茶会』が開かれているという。
「今日のお茶もいい味だね。君もそう思うだろう?」
その『茶会』で、お気に入りのお茶をたしなむ『ブルコモン』の姿があった。反対側には装飾が綺麗な一本の槍が丁寧に置かれており、そのブルコモンはその槍に話しかけるように世間話をしていた。槍は何も語らない。それでも語り続けるのだ。
「わかっているよ。今はこの平和な世界を一緒に見ていよう。いずれ君を持つに相応しい者が現れるまで、ね―」
呼応するように槍から心地よい風が吹く。それを見てああ―とブルコモンは口にする。そしてふと、『茶会』の扉が開かれる。まるでその瞬間を待っていたようにブルコモンは楽しそうに『槍』に話しかけた
「今度はどんなお客さんだろう……楽しみだね」
所かわってこちらは学園の広場。創生祭の出店などが並ぶ場所だ。まだ取り掛かり始めたばかりで各所で設営の準備とそれに付随した音が響きわたっていた。
「おーい、そこの工具とってくれよ」
「展示品の資料誰か図書館に取りにいってくれたかー?」
「あそこの館長いい加減だから、いやなんだよな」
「無駄話してる暇があるなら、手を動かせよ。時間ないんだからさー」
そんな声が響く中、在校生と思える一体の天使型のデジモンが『体に多くの模様が入った通常種ではないギルモン』と共に祭りの準備が進む光景を見学していた。仲よく隣同士で歩く姿は、種族は違うが『兄弟』だということを物語っていた
「すごいデジモンの数だね。ボクも今年からここに通うんだよね。とっても楽しみ!」
そうですね―と笑いながらその天使型のデジモンが応える。どうやら『創生祭』が終った後からそのギルモンはこの学園に通うらしい。そんなギルモンが兄であろう天使型のデジモンに尋ねてきた
「ねえ、『そうせいさい』ってどんなものなの?」
「貴方は初めてでしたものね。『創生祭』とはこの世界『ウィッチェルニー』が生まれた日を祝うお祭りなんですよ」
天使型のデジモンは優しく弟であろうギルモンの方を見ながら説明する。その話を聞いたギルモンは嬉しそうな表情を満面に広げながら、声をあげる。両耳も感情にあわせて激しく動いていた
「その話しってる!この前よんでもらった『おとぎ話』の絵本にかいてたよねっ。むかしむかし、この国が生まれる前にいろんなところをあばれまわっていた白いりゅうと青いまほうつかいがお話をして……えっと何だっけ?」
「白い竜を青の魔法使いが説得し結果竜は魔法使いの従者となり、この世界『ウィッチェルニー』を生み出し今も尚その二体はこの世界を見守っている―ですよ」
そうだった!―と尻尾を振りながらギルモンは笑顔で天使型のデジモンに笑い返す。相手も笑顔を浮かべる。またよんでくれる?―そういったギルモンに対して、帰ったら読みましょうか―と返し笑顔を連ねた二体のデジモンは各所に設けられている移動用魔法陣が作用するポータルを介して家路につくのだった
「さて、と」
学長が大講堂から出てしばらく進むと学園の玄関であるホールに辿りつく。天井は円系にガラス張りになっている部分が見える。そこは入口出口をそれぞれ管理する受付とゲートがあり、白色と黒色のポーンチェスモン達が受付カウンターに座って管理している。ホールには各棟に移動するためのエレベーターも備わっており、三基あるうちの真ん中の一基は学長室へ直通のものになっている。学長の姿が見えたことで白色のポーンチェスモンが声をかけてくる。
「講話お疲れ様です、学長」
「ありがとう。『シロ』と『クロ』も受付けの業務、ご苦労様だね」
学長は明るく挨拶を返す。この学園には他にポーンチェスモンは存在しない為、呼称をそれぞれ設けていた。その方が愛着も湧くし、混同することもないということで学園の関係者の中ではその呼び方が普通になっていた。
「学長、この頃少し働きすぎではないでしょうか?」
少し硬派な面を持つクロが学長に労いの言葉を掛ける。それに合わせて向き合っている受付の反対側に座っていたシロもその話に続き軽く笑いながら口を開く
「確かにいつもは学長室にも不在なことが多いのに『創生祭』の時期はいつも熱心に働く姿がみれますよね」
これでも学長だからね―と二体のデジモンに対して背筋を伸ばし、胸を張るようなポーズで軽快に応える。そしてホールのガラス張りになった天井から見える青空を見上げながら一言呟く
「大切な友人と約束した日だからね―」
振り返りながら小さく呟いた言葉は受付の二体には聞こえていないようだった。学長との話が終ると受付のデジモン達から学長に向けて敬礼が行われる。再度振り返って軽く手を上げてその礼に学長は返すと学長室直通のエレベーターの中に消えていくのだった
「そこじゃなくてさ。成長期が学長をしていてこの国の一番上ってことだよ」
「ああ、確かに。でも噂によると魔法の力もすごい高いんだってさ」
「マジかよ……ぱっと見、ただの成長期……それも『ギルモン』なのにな」
お前は成熟期で成績も並みだもんな―話の相方のデジモンに言われてついお前な―とこそこそ話にしてはやや大きな声が口から出てしまう。そこにマイク越しに大講堂の一番前の講壇の上に立つ学長からそっと声が掛けられる。
「ふふ、嬉しいね。成長期のボクが学長をしていることを褒めてもらっては怒るに怒れないなー。とりあえずボクの今回の話のレポートを提出してくれれば何も聞かなかったことにしてもいいかな」
軽快な笑みを帯びた声と表情で話をしていたデジモンの方を見ながら語りかけるその様子に講堂内にどっと笑いが起こる。それは勘弁してください―と話をしていた生徒の二体が声をあげる。そんなことがあったりしたが、時間になると講話は終わりを迎えた。長い話から解放された生徒達は一斉に『創生祭』の準備に向かうのだった。学長のギルモンはそんな生徒達の後ろ姿を見ながら優しく笑っていた