ヘクセブラウモンから一つ目に問われたのは『君というデジモンはどういうデジモン』という内容だった。当のデジモンを見てみると楽しそうな雰囲気を出しつつ、前傾の姿勢で両肘をテーブルにつき両手に顎をのせてこちらを覗いてきている。どうもその行動は掴みどころがない。溜息にも似た息を一つ吐いた後、デュナスモンは口を開いた
「オレはこのデジタルワールドを管理する存在であり主である『イグドラシル』に選ばれた『ロイヤルナイツ』の一体だ」
そうだろうね、と微笑を浮かべつつ続きが気になるような素振りをみせる相手を一度見た後、言葉が続く
「元々は箱庭である世界の一つでエアロブイドラモンとして生きていた。その世界には自警団のような組織があり、オレはその組織の隊長の任を担っていた」
「そのエアロブイドラモンだった君が、またどうしてロイヤルナイツになったのかな」
「―オレがデュナスモンへと進化したことがきっかけだ」
へえ、面白いね―言葉には出さないが興味津々だとわかる小さい笑い声が発せられる。両手で支えられているヘクセブラウモンの顔がゆっくりと傾き、瞳を細くしながら話をするデュナスモンをじっと見つめながら言葉をかけてくる
「何があって、進化をしたのかな?」
静かな空間に鎧が重なって起きた音が響く。その後少し間をあけてデュナスモンは言葉を返してきた
「それを話す前に、お前は『ブイドラモン』という種が持つ『定め』を知っているか―?」
ああ、知っているとも―ヘクセブラウモンは口を開く
※あとがき
はいどうも、おでんなドルモンです! Closing Garden第四話になりますっ。今回はヘクセブラウモンからの問いにデュナスモンが答えていくという場面になります。対話形式で明らかになるデュナスモンの過去とか背景とかを読んでもらえればと思います。色々みたことあるデジモン用語がでたりと、懐かしさとかあ、これ知ってる知ってるーっていう感覚も抱いて頂けると幸いです。面白いですよね、こういう用語でたりすると☆
さてさて、お話は更に進んでいきますね! ではでは、第五話でお会いしましょう~
「究極体へと進化したオレはその立ち位置を受け入れたんだ」
そうか―とヘクセブラウモンはそれ以上その点については聞くことはない。そういった雰囲気を出していた。更にデュナスモンに尋ねる
「ロイヤルナイツとなった後はどんなものだったのかな?」
「我が主から箱庭へ干渉を可能にするコードを貰い受け、与えられた任をこなしていた。どんな内容だとしてもそれを果たすのが我らの使命だからな」
「お堅いイメージだねぇ。友達とかいなかったのかい?」
少しつまらなそうな雰囲気がのった声がヘクセブラウモンから発せられた。デュナスモンは少し笑みを浮かべながら口を開く
「ロイヤルナイツ同士は基本任務が同じ時以外、交わりを持たないのが普通だったからな。だが……オレよりも先に席についていたデュークモンだけはよく世話を焼いてくれていたな。何でもリアルワールドで育ったという話もしてくれたくらいだ。そんな会話をよく思わないのか、オメガモンにはよく注意されていたし会話は他のロイヤルナイツよりは多かっただろうか」
思い出すようにデュナスモンは語る。話が一区切りついたその時、ゆったりと客人の話を聞いていたヘクセブラウモンが姿勢を正すようにすっと上体を起こして口を開いた。どうやら満足のいく『答え』に至ったようだ
「なるほどね、『君というデジモンはどういうデジモン』なのか、よくわかったよ。ありがとう」
一呼吸着いた後、ヘクセブラウモンからデュナスモンへと次の問いがかけられた
「なら、二つ目。君に問うことにしよう。―デュナスモン、『何故、君は【異形の竜】になってしまったのか』―」
問いの内容を聞いたデュナスモンは覚悟していたかのように一度両の瞼を閉じ、そして見開く。同時に微動し、重って起きた鎧の音が二体のいる静寂な空間に木霊した―
次回「二つ目の問い」
「そのデジモンは自らを『デーモン』と名乗った。今考えれば【七大魔王】の属性は持ち合わせていなかったように感じる。だが、その時のオレは今まで戦ったことのない圧倒的な相手の『強さ』を身を持って知ることになった」
更に相槌が話の背中を推す
「正直オレは……あの時程心躍ったことはなかった。自分の持てる力を振り絞っても更に上から覆いかぶさるようなデーモンというデジモンの強さに。―オレは一体のデジモンとして『ここで自らの命が燃え尽きても構わない』、そんな衝動に駆られていた。そして極限の力を相対する者と激突させた」
再び鎧が音を響かせる。デュナスモンは大きな息を吐きしばらくの間を置いた後、続けた―
「その時だ……『限界』を越えて『ブイドラモン』という種の定めの楔から解き放たれたオレはデュナスモンへと進化し『箱庭』の外側の世界、つまりは我が主イグドラシルの存在する高次のレイヤーへと転送されていた」
オレの求めた景色はもうそこには無かった―そうデュナスモンは小さく呟いた。まあ、ヘクセブラウモンがソレを聞き逃すことはないのだが。
「そこでオレは我が主の側近である【エージェント】から自分に起こったことを説明された。事実を把握したオレは管理者であるイグドラシル直属のロイヤルナイツになることを決めたのだ」
「何だか意外だね。君は真面目な性格のようだから、元いた世界に戻れない弊害を考えなかったのかい?」
何かを見据えた赤い瞳がデュナスモンを捉えていた。返答は―左右に振った首の素振り。そして一言続く
「『ブイドラモン』という古代種は他のデジモンよりも『オーバーライト』、つまりデータの書き換えによる感情や身体能力における変化が大きい代わりに負荷が遥かに大きい。だから書き換えが激しい『ブイドラモン』という種は自らを形成するデータの劣化が早く、【寿命が極端に短い】―というところかな。まあ、普通に暮らしているようなデジモンの界隈では短に寿命が他のデジモンよりも短い、希少なんていう噂くらいだろうけれどね」
ヘクセブラウモンが語った内容は極めて詳細だった。流石は特異点だ―そういうかのようにデュナスモンは語りの続きを始めた
「今の立ち位置になってから『オーバーライト』という原理を知ることになったが、元の世界では短命な古代種であるブイドラモンという自らの定めの真実を知った時は驚いたものだ。悩みもした……だが、恐れることはなかった」
「どうしてだい?」
「オレは誰よりも『強さ』を求めていたからだ。例え短命だったとしてもその先にある『強さ』を欲した。その為に強くなり、気がつけば完全体であるエアロブイドラモンへと進化していた」
なるほどね―そういって傾けていた顔を元の正面に戻したヘクセブラウモンはもう一度デュナスモンに言葉をかけた
「話が戻るけれど、その話を踏まえた上で聞こうか。―デュナスモンへと進化したきっかけは何だったのかな?」
何かを思い出すようにデュナスモンは今自分のいる空間の真っ白でどこまでも続いているかのような天を一度見上げる。そして正面の相手に視線を向き直して語り始める
「自警団の隊長として活動していたある日のことだ。デジタルワールド全体にダークエリアからの干渉と思われる『歪み』が発生し始めた。原因を究明するためにオレは隊を率いて歪みの深部を目指した。歪みの中には暗黒系のデジモン達が溢れ返り、交戦状態になった……そしてオレはその最深部で一体のデジモンと対峙することになった」
続けていいよ―そういう相槌が入る