自らのことを『ヘクセブラウモン』と名乗った青い鎧と氷を纏ったデジモンに対して、対面している形で既に着席しているデュナスモンはいかにも動揺した様子で周りを見渡す。そして掠れた声で二言目を発する。その様子はまるで自身が『言語』というものを話せるのか―そういった反応にもみえた
「オレは……どうして元の姿に……っ」
その言葉を聞いたヘクセブラウモンは首をやや斜めに傾けながら言葉を返す
「落ち着いて……ゆっくりで構わないさ。相当の時間、自分の声を出していなかったのだから無理は禁物だよ?」
何度か咳払いをした後、思い出すように言葉の呼吸―とでも言うのだろうか、その白亜に金色の装飾が彩られた双肩の鎧が大きく上下する。同時に息も整えたデュナスモンは再び対面するヘクセブラウモンの姿を視野にいれる。先ほどまでの動揺も少しずつ収まってきているのだろう。あるいは既に状況を自らで把握しようと構えているようでもあった。そんな客人に対して気軽にまた声が掛けられた
「そんなに警戒しなくてもいいよ、デュナスモン。ああ、気をつかわせ続けるのも何だね―ここはイグドラシルの管理を離れた箱庭。まあ、『Closing Garden』とでも言っておこうかな。そしてボクはそこに生まれた『特異点』だよ」
ここまで言えば、この場所がどんな場所で目の前にいるデジモンの姿をした者がどういう存在なのかわかるだろう―そう言っているかのようだった。
「……我が主であるイグドラシルが手放した『箱庭』……そして稀にデジモンという理を越えた存在が『特異点』と呼ばれるのは聞き及んでいるが……まさかそんな存在に会おうとは……」
重い鎧が微かに音をたてた。ヘクセブラウモンの言葉を聞いたデュナスモンは自身が知り得る情報を口にする。そこに間髪いれずに言葉は重ねられる。
夏Pさんへ
全ては勢いなのです! いつもありがとうございます!!
白飯美味しそうわかります!(?)そう、デュナスモン側からだと不審な奴にみえますよね、ヘクセブラウモン。でもデュナスモンの反応はああいう感じなのですよね。そこもこれからわかってくる、かもと思いますっ。
デュナスモンの性格などを作品から感じ取っていただけているようでとっても嬉しいですね!作者としてはその部分とてもとても嬉しいですね。そして変異の期間を読み取る所さすが夏Pさんです。
それでは感想ありがとうございましたっ
続きが、というか執筆速度が速い! そんなわけで夏P(ナッピー)です。
ワシらは茶会よりも腹いっぱいの白飯が食いたいわい(加藤清正)。というのはともかくとして、視点の主体がヘクセブラウモンかつ進化の道程を明かされてるので特に悪者ってわけではないかと思いますが、デュナスモン視点からだとなんか不審な奴にしか見えない……そしてタイトル来た!
てっきりデュナスモンは錯乱していきなり戦闘になるものかと思っていましたが流石はロイヤルナイツだけあって紳士的というか騎士的というか。久々に言葉を発したという表現的に、結構長い間変異していたということなのでしょうか。
今回はこの辺りで感想とさせて頂きます。
Closing Gardenの3話目になります! どうも、おでんなドルモンです!今回からデュナスモンの台詞が増えましたね(そこ)。やはり話をさせるからこそ、わかってくる性格とか特徴とかが少しでも表現出来てるといいなーと思いながら書いております! 今回は茶会の席についた両者が対面しての初場面となりまして、次回4話から謎が多いデュナスモンの立ち位置などが語られると思いますのでお楽しみにです! ではClosing Garden4話でまたお会いしましょう~
「ボクはね、デュナスモン。『特異点』としてではなく『デジモン』として君と話がしたいんだよ」
―まあ、理を越えてしまったボクには実質的には無理なんだろうけれどね、と静かな言葉が相手に続けて返される。それを聞いたデュナスモンに反論の色は見えない。むしろ、何処か了承しているかのようにも見えた
「具体的には何を話せばいい……?」
「乗り気そうで良かったよ。そうだねぇ……君は色々話すことが多そうだしね。だけど、何から話せばいいかは自分でも整理がまだ出来ていないようだから―」
良い空気で話が進んだことに喜ばしい素振りをヘクセブラウモンはみせる。そして少し考えるような仕草をみせると一つの『提案』を投げかける
「元々このお茶会に招待したのはボクなのだから、ボクから君にいくつかの『問いかけ』をするというのはどうだろうか……? 君はその問いに自由に答えてくれて構わないよ。もちろん、長くなっても一向に構わない。むしろ話してほしいかな」
お互いの視線が重なる。刹那の後、デュナスモンは大きく上半身を上下させ深呼吸をして息を整えると大きな両手をテーブルの上で重ねるように両肘をついてヘクセブラウモンを見据えながら言葉を発した。
「ああ、それで構わない―」
「ありがとう」
その言葉を受けて好意的な素振りをヘクセブラウモンは示した。軽く両の掌を目の前でぽんっと合わせ顔を左右に軽く揺らしてみせる。楽しそうな吐息が混じっていることからも上々の返答だったのだろう。乗り出し気味だった姿勢を元に戻す。そして軽く組んでいた足を組みかえ一言デュナスモンに問いかける
「それじゃぁ、まずは一つ目。―デュナスモン、『君というデジモンはどういうデジモン』かな?」
次回 「一つ目の問い」
「いやいや、そこは手放した、じゃなくて『見切りをつけた』という言葉のほうが合っているとボクは思うのだけれどね。―ああ、すまない今のは事実を言ったまでで君の気を悪くしようとしたわけじゃあないよ」
軽く右腕を上げながら飄々と語る。言葉の通り、恨みや嫌味といった感情は籠っていないように感じられた。すると今度はデュナスモンが口をゆっくり開く。
「その特異点であるお前が……『こんなこと』をするのは何故だ……?」
こんなこと、というのは抽象的であると同時に自分に行った具体的に全てのことをさしている実に重い意味を含んだ言葉だ。―核心を突く一言、そういう意味で相手に捉えられても良いということだ。対面したヘクセブラウモンは言葉を返す
「んー、そうだなぁ。一番は君と話がしたかったから……じゃ駄目かい?」
時折こちらを見透かすような両の瞳を警戒していたデュナスモンにその言葉の返しは意外―そのものだっただろう。いや、デュナスモンとってその言葉はまた別の意味にも感じられたような表情が浮かんでいた。
「それに……きっと君もそれを望んでいたんじゃないのかい?」
投げかけるように右の掌をデュナスモンに向ける。するとガチャっと鎧のどこかが大きく重なって起きた音が響く。相手の瞳はまっすぐ自分を見据えていた。
「……特異点となった者は無限の叡智を得ると聞く……」
「確かに、ボクには全てが『視えて』いるよ」
「なら……こんな回りくどいことをしなくともいいのではないのか」
会話が続く。その中でヘクセブラウモンは首を横に振り、一息ついた後口を開いた。