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おでんなドルモン
2020年12月31日
  ·  最終更新: 2021年1月02日

Closing Garden 01「暴竜と茶会」

カテゴリー: デジモン創作サロン

 


これは一匹の竜と―――のお話


―――――――――――――――――


 空には黒煙が舞い上がり、その眼下に広がる森からは痛々しいくらいに赤い光が放たれていた。その光、いや真っ赤な焔だ。それは森全体を包み込む。そして逃げ惑う者達の連なる声が微かに響く中、その声をかき消す『重さ』を持った咆哮が響く。咆哮によって発生した衝撃の波が森中を迸ると先程まで聞こえていた小さな声も、そしてその命達も消えていった

 咆哮が聞こえた場所には一体のデジモンが屈むように佇んでいた。白と金、そして紫の色調の鎧に燃える焔の朱い色が反射している。特徴的な両の腕、一際濃い紫の大きな翼を持ったそのデジモンは『デュナスモン』のように……見えた。はっきりと言えないその理由は右側の腕だけが肥大しており、掌の丸いガラスのような部分が生き物の瞳のように見開き辺りを見回し、更に左側の翼は黒く二枚羽になってまるで刃のように研ぎ澄まされているようだった。そして胸の辺りの鎧が腐った鱗のように剥げ落ち、中からはくすんだ緑のひし形のクリスタルが淡い光を発してるその姿が『デュナスモン』と言葉で表していいものなのか―

ぐしゃり

 その『デュナスモンのようなデジモン』は足元に積み上がった究極体であろうデジモン達の山から一体を右腕で持ち上げると両手で掴み胴体の辺りを噛みちぎる。もう虫の息であるモノから重く低い音が少し漏れる。だが捕食者は気にもとめずにそのモノの核(デジコア)を貪る。一体、いや捕食する者から見ればそれは一つ、二つ、といった数え方の方が合っているのかもしれない。次々とデジコアを貪り、こぼれた残骸はデータへと帰っていく。口元からは大きな呼吸が放たれ、咆哮が朱い空に木霊する。もう一度深い息を吐くと、【捕食者】は空へと舞いあがり、ここではない何処かへと消えていった。

 様々なデジタルワールドで噂になっている暴竜の話があった。その暴竜が現れた世界は『死』しか残らない、と。強いデジモンを貪り、凄まじい咆哮によって生きとし生けるデジモン達は欠片も残らなくなるのだという。既にどのくらいの世界が犠牲になったのかもわからないともいった。どこから広まったかは定かではないが、そんな噂話がまことしやかに囁かれていたのだ。

 そう、つい先ほどまでは―



―――――――――――――――――




 空間が歪曲するように捻じれる。【捕食者】が現れる合図のようなものだ。空から降ってくるのではない。まるで違う層から出てくるかのようなのだ。何度それを繰り返してきたのだろうか。まず間違いなくその姿を見た者も世界も既に存在はしていないだろう。そして捕食者は次の世界へと降り立った。そこは空も地平線の向こうまで真っ黒で氷のような地面だけが色をみせていた。異形、そう言うに相応しい姿が地面に映る。だが、そんなことは【捕食者】には関係などない。世界の作りも関係ない。ただ貪れればいいのだから。そしてそれを嗅ぎ分ける力はあるらしく、己が感じる餌の方向を見やり飛んでいく。遠くに少し地面の氷が隆起している場所が見える。そこが目的地なのだろう。翼を翻し、【捕食者】は降り立った―――

「さて、お茶はいかがかな? ああ、すまない。飲めるタイプだったかな?」

一言、澄んだ声が響くと情景は一変した

そう、全てが変わっていた

真っ黒な地平も空も、氷の地面もそこにはなかった

そこには大き目なテーブルが一つ。薄く淡い青白いテーブルクロスが掛けられていた。

椅子は二つ。

いや、そんなことよりも全てが変わっているといった、先ほどの言葉の通り、変わっているものがまだある。二つの椅子の片方にはまるで狐に化かされたかのような表情で椅子に腰を下ろした『デュナスモン』の姿があったのだ。目の前には今注がれたであろう熱い湯気が立ち上る大き目のコップがソーサーの上に乗せられていた。

「……な、何……が」

 自身が椅子に腰を下ろしているということよりも、まずデュナスモンは自分自身の両手を前に広げながら信じられないような雰囲気を出していた。先ほどまでの姿ではないこともだろうが、それよりも――

 そんな客人の姿を見てふふっと笑みを溢す声がした。静かに自分のテーブルの反対側に視線を向けるとそこにはいつの間にか一体のデジモンの姿があった。騎士のような深い青と金色の鎧を纏い、頭の後には白い髪のようなものが伸びている。右肩には毛皮のようなものを纏い、左肩はまるで竜の頭のような造形をしている。そしてもっとも特徴的なのは氷のような額に伸びた角、背中にから映えた左右対になっている四本の翼のような氷だ。指や腕の各所にも同じようなパーツが見て取れた。その騎士風のデジモンが椅子に腰を掛けてゆったりとした雰囲気と姿勢で口元に手を当てながらこちらを見て笑っているのだ。すると―おっとこれは失礼だったね、と少し首を傾けながら視線を動揺しているであろうデュナスモンへと向け、一言声を掛けてきた

――――――――――――――――



「ようこそ、閉ざされた箱庭のお茶会へ。ボクの名前はヘクセブラウモン。この箱庭の主だよ」


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            次回 02「閉ざされた箱庭の主」

1件のコメント
おでんなドルモン
2020年12月31日

どうも、作者のおでんなドルモンと申します。初投稿の作品となります。以前からこのサイト様のことは見ていたのですが今年の終わり、そして新しい始まりの年の最後の日に初投稿させて頂きました。どうぞ、よろしくお願い致します。まだ右も左もわかりませんが、素敵な作品様が沢山あってとても楽しく思っております。


さて、今回のお話は所謂プロローグのようなものですね。異形と化したデュナスモンが出会ったデジモンの正体とは? そして何故デュナスモンは異形と化したのか、そしてお話は何処に着地するのか? そんなドキドキわくわくを文字として味わって頂ければ幸いです。修正などはあるかもですが、何卒宜しくお願いしますー

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