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宝玉に龍の魂を宿す聖剣が、何の躊躇いもなく私の胸元を穿つ。
「が……はっ」
口の端から紫紺の血が漏れる。跪いたままの私は、それでも真っ直ぐ目の前の“英雄”の姿を見据えた。
「だがなムルムクスモン」
私の名を呼ぶのは創造の炎を司る伝説の英雄だった。
「一つ言えるとするならばお前の言は正しいが、全てが正解というわけでもない。貴様らが十闘士と呼ぶ英雄、ルーチェモンを倒した者は確かに存在する」
「な……に?」
英雄は当然のように語る。実在しない古代の伝説を、愚鈍なる皆によって担ぎ上げられた架空の救世主の伝承を。
「この地に無様な屍を晒す破壊(ひかり)と再生(ほのお)、その二体が最終的に魔王を討ち果たしたのは事実だ。そしてここからが本題。彼奴らにとって魔王を倒すことなど前座でしかなかった。仲間達の魂を持ち帰った果てに彼奴らが行ったことは一つだけ、互いに持ち得る力、仲間達の魂を含めたあらゆる力を用いて、破壊(ひかり)と再生(ほのお)は相争ったのだ」
「理解不能、理解不能! そんな行為に何の意味がある!? 無意味、無意味! 先の展望も理屈もなくただ命を磨り減らす戦いなど──」
だから私の言葉は当然。そんな愚昧が在るはずがない。そんな愚者がいたはずがない。
「全く以って正しい反応だよムルムクスモン。……そう、そこに意味などない。だが理屈じゃないものは確かにある。……試してみたくなったのだろうよ、彼奴らも」
そして目の前の英雄──超越種カイゼルグレイモン──もまた、私の言葉を予期していたようだった。
私の体を刺し貫く剣に力が籠められる。私は呻き声を出すことさえ許されず串刺しのまま仰向けに倒され、その剣ごと地に括り付けられるかのよう。そこで初めて思い出す。私が立っているのは元より大地ではなかった。長い時を共に在った巨鳥、最果ての地で久々の現世に舞い戻れた歓喜の声を上げる彼の背に私は立っており、今また私は彼の背で英雄の剣によって磔にされたのだった。
「言い残すことはあるか、名も亡き魔王」
「……オニスモン」
友の名を呼ぶ。ついぞ言葉を交わすことはなかった親しき者の名を。
「彼だけは、許してくれまいか」
「……できない相談だ」
「だろうな……残念だよ」
ゆっくりと目を閉じる。彼の握る剣、その柄に炎の輝きが灯るのを見据えながら。
「……炎龍撃」
刺し貫いたままの剣が発する炎が私の身を包んでいく。
背に感じる友もまた同様の業火に覆われるのがわかる。無様な命乞いなどしてしまったが、思えば最初からこれで良かったのかもしれない。永遠にも近い時間を共に過ごしてきた私達は、最後の瞬間に同じ炎として一つになるのだから。
悔いはない。あるとすれば、それはきっと最期の時に思い出したこと。
架空の英雄と、歪んだ紛い物と断じた目の前の英雄。それは確かに思い出せないぐらい昔に私が、私達が憧れ続けた存在であったこと。その存在がたとえ実証されずとも、有り得ない空想の産物だったとしても、私達が抱き続けた憧憬だけは紛れもなく本物だろう。
見上げた空。
闇の大陸の暗雲が晴れるのを、私は燃え尽きる視界の中でただ見上げていた。
憧憬~破壊(ひかり)と再生(ほのお)に魅せられた者~
「随分とまた無茶をする……」
目を覚ますと森の中。体を起こしたボクの前に、四対の翼を備えた大天使様の姿があった。
ちょっと記憶が判然としないので首を左右に振ってみる。すると視界の端で仰向けに倒れて気絶しているクワガーモンの姿を見留め、ボクはようやく思い出した。始まりの町を旅立って数日、出会う相手全てにバトルを仕掛けてきたボクは、自分の体がとっくに限界を超えていることにも気付かずうっかり成熟期のクワガーモンに喧嘩を売って死にかけたのだった。必殺技シザーアームズが眼前に迫って死を覚悟した、その瞬間までは覚えている。
大天使様。彼が助けてくれたのだろうか。
「ありがと! でも余計な手出しだよ! ボクは誰よりも強くなるんだ!」
「……血気盛んは良いことですが」
苦笑する大天使様。あまり戦いが好きではない、ボクにはそう見えた。
「命は大事になさい。死んでしまっては元も子もないでしょう?」
「死んだって生まれ変わるよ? そりゃ記憶とかはないかもだけどさ……」
「その記憶や人格も含めての、あなたですよ」
でもその時のボクには大天使様の言葉の意味はわからなかった。
その後、ボク達はしばらく語らった。話を聞いたところ大天使様、ホーリーエンジェモンは完全体ながらあまり戦いを好まないらしく、それで先程のクワガーモンもトドメは刺さず気絶させるに留めていたということらしい。それってデジタルモンスターとしてどうなんだろうと思わなくもない。ボクらは常に強くなる為に生きているのであって、戦いを忌避するなんて有り得ないとボクは思う。少なくともボクはどんな相手にも強くなりたいって、そう考えて生きているんだから。
「そうですね、私は臆病者なのでしょう」
彼は自嘲するようにそう言った。穏やかな声は、その実自信の無さに起因しているようにボクには思えて。
「じゃあ、なってあげるよ!」
「は?」
「ボクが強くなって天使様の代わりに戦う、天使様のパートナーになってあげる!」
そんなことを言うボクに天使様は。
「……人間のようなことを言いますね、あなたは」
肩を竦めながらその言葉だけを口にしたんだったかな。
人間、選ばれし子供だとかテイマーだとか呼ばれる存在。
ボクらより遥かに脆弱なはずの生き物は、何度だって世界を救ったって聞く。一緒に戦うパートナーデジモンと肩を並べて苦難に挑んで、魔王にも災厄にも打ち勝ってみせたなんて眉唾な話、そんな伝説が幾つもボクらの世界には残されていた。似たような昔話を始まりの街で飽きるほど聞かされた。
でもボクには疑念があった。たとえデジモンと組んだとしても人間そのものが弱くて脆いことに変わりは無いんだから、だったら回りくどく人間とデジモンが協力し合わなくても、デジモンとデジモンが組んだ方が強いに決まっている。
ロイヤルナイツの頂点と言われるオメガモンだって最強の竜と獣、そう言われる二体のデジモンが力を合わせた末に生まれたって聞くじゃないか。
だから自然、ボクは昔話に沢山出てくる、そして実態はまるで知らない人間という生き物に反発心を持って育った。ボクらの世界を訪れるボクらじゃない生き物に頼まなくたって、ボクらの世界はボクらの力で守っていける、ボクらが力を合わせれば人間の力なんて要らないんだって思い続けてきた。
だって嫌だったから。人間とデジモンの起こした奇跡の物語、それを聞く度にボクらには限界があるんだって思えてしまう。ボクらは自分達の平和さえ守れない生き物なんだって突き付けられている気がする。でもそんなことはないはずだって言いたい、ボクらはきっとまだまだ先へ行ける、まだまだ遠くへ飛べるんだと叫びたい。ボクらには不可能なんてないんだと、信じたい。
だからそれを証明する為に街を出たんだ。まずそう考えるボク自身が強くならなくちゃって。
天使様と出会ってどれぐらいの時が流れただろう。
「今日はここで休みましょうか」
砂漠にできたオアシスで天使様の言葉にボクは黙って頷いた。
ボクは未だに成長期だった。
危険な目に何度も遭って、天使様の協力もあって一人では敵わない強敵とも何度も戦ってきた。とっくに進化の兆しは見えていいはずなのに、天使様の戦う力(パートナー)になるんだって宣言したあの日から何も変わらず、ボクは飛べない鳥のままだった。
劣等感と焦燥感が募る日々。自分は選ばれし者などではなく、単なる凡才だと突き付けられているようで。
(ボクは……)
同じように旅のデジモン達がオアシスには沢山訪れている。必然、砂嵐を凌ぐ木陰に皆が集まって夜を過ごすことになる。
ヒソヒソとこちらを見ながら紡がれる声。
「完全体と成長期が一緒にいるなんて珍しい」
「言うなよ、人間とデジモンが組むのに比べれば珍しくないさ」
そんな言葉。
人間とデジモン、ボクと大天使様。組み合わせとしては確かに同じ。
でも傍目から見た今のボクらは、天使様が強者(デジモン)でボクが弱者(にんげん)だった。
人間が絡まない英雄の伝説、その中に十闘士と呼ばれる救世主がいた。
創世記のデジタルワールド、まだ一度も人間が訪れたことのない世界を貶めた魔王を倒した十体の英雄の物語。けれど仔細の不明な英雄譚は、今となってはその英雄も魔王も実態を誰も知らない御伽噺として語られていた。ボク以外の誰もが心奪われるのは人間の子供とそのパートナーであるデジタルモンスターが共に戦った伝説であり、その中でも人とデジモンが一つとなって生まれたとされる聖騎士や竜戦士だった。
人間の登場しない英雄譚は、それだけで皆の興味を引かない扱いだった。それがボクにはとても嫌だった。
ボクは憧れたのに、夢見たのに。まだ法もない世界を切り開いたヒーローの物語に。
いつかボクもなりたいと誓ったのに。人の手を借りず世界を救った究極体の伝説に。
だって十闘士を架空の、実際には存在しない英雄だと言う者さえいるんだ。ロイヤルナイツやオリンポス十二神と違って現代でその存在を確認されていない十闘士は、伝承や風聞が形作った神話の中の存在に過ぎないなんて言うんだ。
でもボクは憧れる。初めて現れた究極体、自分達の世界を自分達で守った英雄に。
「天使様は……さ」
きっとその問いは、してはいけないものだった。
「え?」
「どうしてボクと一緒にいてくれるのさ?」
何度も頭に浮かんでは消えた疑問。それを口にしたら何もかもおしまいだと知っていた。
「……それは」
口を噤む天使様。優しく思慮深い彼が巡らせる思考が面白いぐらいにわかった。
天使様は完全体だ。戦いは不得手だと言ってもボクより遥かに強かった。そもそもボクは天使様の手助けがなければ成熟期と戦うことなんてできない。殺生を嫌って敵にトドメを刺せない、それだけの話で今まで敵と戦ってきたのは殆ど天使様だったから。敵とだけじゃない、訪れる森でも山でも街でも会う者は皆天使様に語りかけ、ボクはそのオマケでしかなかった。
なんてことはない、ボクの役割はパートナーなんてものじゃない。
ボクはただおこぼれに預かっていただけ。
美味しいところを貰って経験値だけを頂く、RPGゲームの弱キャラこそがボクだった。
「……あなたは、放っておけませんから」
だからそれが全てなんだ。天使様にとってのボクは、つまりそういうことだった。
知っていたのに無視し続けた。きっと成熟期に進化さえすれば変わると思っていた。でも進化の兆しは相変わらず来なくて、そして戦えば戦うほど天使様と自分の間にある差を思い知らされて、それはボクが進化したところで埋められない、そんな確信があった。
「ッ……!」
口汚い言葉を吐かずに済んだのは僥倖だったと思う。
ボクはこれ以上天使様と向き合うことができず、飛べない羽根をバタつかせてただ荒野を駆けた果てに。
砂地に潜んで迷い込む獲物を虎視眈々と狙っていた完全体、スコピオモンに食われて。
何も為し得ずにその命を散らした。
「ピヨモンーーーーッッ!!」
初めて聞いた天使様の、ホーリーエンジェモンの叫び声を聞きながら。
きっと、憧れだったのでしょう。
乾いた自分には決して持ち得ぬ数多の感情。英雄に対する憧憬も強さを求める熱意も人間に対する反発心も彼の持つ子供染みたそれらは全て、どこか世界と自らにすら諦観を抱いた私には眩しすぎるものでした。
三大天使、私の仕えるべき主の存在が不確かとなって幾星霜。我ら天使族にも先の見えぬ不透明な日々。
私も元々は闇や魔と戦ってきました。聖剣エクスキャリバーで数多のウイルス種を討伐してきたはずです。それでもいつしか戦う意味を介せなくなっていた、仕えるべき主も守るべき世界の安寧も不明瞭な世界で、我ら天使族は果たして何の為に戦えばいいのか。
そして気付けば聖剣を振るえなくなっていました。命を奪うことができなくなっていました。きっとそれは緩やかな死。戦いを生業とするデジタルモンスターにとって、戦えなくなることは生きる意味すら失ったも同然。
だからここにいる私はただの抜け殻、肉体が朽ち往くのに任せてただ世界に在るだけのホーリーエンジェモンという単なる事象。
『ボクが強くなって天使様の代わりに戦う、天使様のパートナーになってあげる!』
そんな中、彼と出会った。まるで灰色の世界に光が灯るようでした。
英雄に憧れ、強さを求め、それでいて人間は否定する。青臭くも美しい、きっといつかの私自身もそうであったろう生き様、気付けば未熟な彼の歩む道を見届けたい、そう思い始めている私がいました。
『……あなたは、放っておけませんから』
だからその言葉は真実です。それが彼を傷付けるとしても、そこに嘘を吐くことはできなかった。大勢に否定されるべき考えであっても、きっとそんなデジモンが世界に少しはいてもいいと思う。それが世界の理に反していたとしても、人間抜きで最強の座に手が届くデジモンがいてもいいと思う。
彼の憧れる十闘士が架空の存在だとしても、彼の憧憬は無意味などでは決してない。世界を歪めた末に生まれた英雄など唾棄すべき紛い物だろうが、それでもそれに憧れる者の思いは確かな意味を持つ。
だからあなたが死ぬことはない、死ぬ必要はないのです。
──ピヨモン。
「えっ……」
生きている。ボクはピヨモンの姿のまま、誰かに抱き抱えられていた。
背後を見やるとそこにはボクを食い殺したはずのスコピオモンが仰向けに倒れて果てている。胸元のデジコア、生命体としての急所を鋭い爪か何かで穿たれた彼の体が、ゆっくりと粒子の奔流となって散っていく。
そしてその鋭い爪は、恐らくは今ボクを抱いているそれのものだった。
「天使……様?」
見上げるそこにあったのは、少なくともボクの知っているホーリーエンジェモンの顔ではなかった。
真紅に染まった巨大な双翼は今までの純白であったそれとは似ても似つかない。ボクを軽々と抱き抱える両腕だけでなく全身を紫紺に染め上げた彼は、その合成獣を模した衣装の服と仮面を持つ禍々しい魔王として、そこに在った。
「あなたは……それでいい」
それでも落ち着いた声は紛れもなく天使様のもの。
魔王ムルムクスモン。殺生を忌避し続けてきた身で敵対者の命を奪ったことで堕天した彼は、無様で惨めで未熟なボクを否定せず愚弄せず叱責せず、ただ諭すように告げる。
墜ちたのは誰の為? ボクの為?
「あなたは、それでいいのです……」
こんな馬鹿が一体ぐらいいてもいい。こんな夢を一体ぐらい追ってもいい。
そう言いたげにボクを握る彼の手に力が籠もる。魔王の操る紫炎がボクの身を焼いていくようで、それはその実ボクの身を作り替えていくようだった。
大言壮語。大口を叩きながら何も為し得なかったピヨモンが、今ここに生まれ変わる。
「あなたの望む力ではないかも知れない、あなたの望む姿ではないかもしれない。それでも手助けしたい、あなたの目指す高みを私にも見せて欲しい」
「天使様……」
「私はきっと、そんなあなたにこそ、魅せられたのだから」
誰よりも英雄に憧れるなら。
誰よりも強さを求めるなら。
誰よりも人を否定するなら。
その生き方、貫いてみせなさい。
遠い昔のおはなし。
世界各地を荒らし回る二体のデジモンがいたという。
この時代において最強と謳われた彼らは片時も離れることなく共に在り、どこか穏やかな日々の続いていたデジタルワールドに少なくない混乱を巻き起こした。どこからともなく現れ、まるで爆撃機のように炎と雷を放って街や村を焦土と変える彼らの姿は、未熟な成長期や成熟期デジモンには十分に恐怖の対象となった。
名を魔王ムルムクスモン、災厄の巨鳥オニスモン。
見かねた幾体かのデジモンが決起し、二体の討伐作戦を決行した。立ち上がったのは十体の完全体、彼らはやがて究極体へと進化すると共にデジタルワールドの最果て、闇の大陸と呼ばれる場所で決戦の時を迎え、敗れたムルムクスモンとオニスモンはダークエリアに封印されたという。
それはこの世界では珍しい人間の一切絡まない、一つのおはなし。
伝説の十闘士と魔王の戦いをなぞるかのような、一つのおはなし。
・ピヨモン(オニスモン)
ある時代に生きた未熟な成長期。いつまでも成熟期に進化できない落ちこぼれが口ぶりだけは大きい大した奴。Vテイマー01に登場したピヨモンのオマージュだが最終的に禍々しい進化を遂げた。
・ホーリーエンジェモン(ムルムクスモン)
先の見えぬ世界で殺生を嫌う完全体。ピヨモンを助けるべく咄嗟にスコピオモンを殺めてしまい堕天使ムルムクスモンと化した。言うまでもなくデジモンネクストのオマージュ。最終的にデジタルワールドで暴れ回ったが、別段世界の支配などといった野望はなく、純粋に戦闘種族(デジタルモンスター)として生きただけの存在。
・ダルクモン→ヒポグリフォモン→グリフォモン
ムルムクスモンの設定的に出さなきゃ嘘だろと思っていたが気付いたら出る箇所を失って終えた奴。前作時点でピヨモンがこのルートに行く構想(ムルムクスモンがグリフォモンに乗って現れる)もあったが、いやどう考えても十闘士の話だしフロンティア映画をオマージュすべきだろということでオニスモンに出番を取られた。イマサラキヅイテモオソイワ!(超棒読み)
【後書き】
本作は先に投稿させて頂きました「妄執~破壊(ひかり)と再生(ほのお)を司る者~」の関連作品となります。あちらは快晴さんの1推し企画として投稿致しましたが、あちらを表とするならこちらは裏にあたる作品である故に1推しではない作品としました。
というわけで、本作の主役はあちらで文字数制限により泣く泣く削ったムルムクスモン&オニスモンとなります。デスモンと並んで魔王の名前を背負いながら七大魔王ではない故に地味な扱いを受けているムルムクスモンを立たせようと思い考えた話でしたが、あちらでは15,000字オーバーだったので削除、いやでも勿体ねーなと思い立ち一旦消した後に再執筆した形です。これ書く為にフロンティアの映画を見返しましたが、ムルムクスモン自身はアグニモンの蹴りで軽く殺されててダメだった。オニスモンはカッコいいというか、風のビーストスピリットかエンシェントはコイツが良かったな……と思うぐらい好きです。いい感じにホウオウモンと対になるヤバい鳥っぽさが大好き。そんなわけで本作ではピヨモンの進化系となります。できればダルクモンとヒポグリフォモンも絡めたかったのですが、簡潔に纏めるにはピヨモンの進化を絡める余裕が無かったのだった……。
それでは、1推し企画ではございませんが本作を書き上げられたのも1推し企画があればこそなので快晴さんに感謝を。
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こんにちは、快晴です。
1推しでは無い、とのことですが、自分の設定した事とは言えムルムクスモン&オニスモンには悪い事をしてしまったな……と思っていたので、こうして夏P様の仰るところの『裏』の部分を読ませていただけた事、大変うれしく思います。拙い物ではありますが、少しばかり、感想をば。
人間に頼らずデジモンだけで強くなる、という理想は、公式非公式問わず触れられはするけれど、基本的にメインになるテーマでは無いという印象であります。
実際このお話でも文中でも「青臭い」とムルムクスモンが評していましたが、そこにフォーカスを当てた時、確かに「美しい」理想でもあるのだと、そしてそれをデジモンだけで世界を救った十闘士の伝説と絡める手腕には、素直に感服するばかりでした。
ムルムクスモン、というかホーリーエンジェモン。ルートや根っこの部分の穏やかさはネクストの個体を彷彿とさせるなと思っていたら、ずばりオマージュでしたか。
世界の過酷さや世代差という残酷な格差がある中、幼い理想に触れてある種優しいままに堕ちていった姿は、魔王型とはいえまさしく堕天使と呼ぶにふさわしいものだったように思います。……フロンティア関連で「堕天使」って言いだすと、どうしても1体アレな奴が思い浮かんでしまうのですがそれは置いといて。
災厄となったオニスモン、その前身であったピヨモンも、確かに大口を叩くばかりではあったかもしれませんが、ホーリーエンジェモンの代わりに戦ってあげるパートナーになると言ったり、反射的に汚い言葉を吐くような子じゃ無かったりと、描写の端々に根はいい子なのが見て取れて、結末に一抹の寂しさを覚える半面、やはりデジタルモンスターは強くなってこそだと思うと、やはり彼らもまた、誰よりも『戦闘種族』……最後に雌雄を決しようとした、光と炎に憧れた者だったのだろうな、と。
2体を焼く炎が、闇の大陸に注いだ空の光が、彼らにとってある種福音であればいいなと、そう思うばかりです。
改めて、企画の方に投稿して下さった作品の裏側を覗かせてもらえたことに感謝です! 『戦闘種族デジタルモンスター』を題材とした、もう1つの素敵な物語をありがとうございました。
以上を感想とさせていただきます。