1日目
0:00
ターゲット デジタルワールドへの侵入を確認
監視を開始する
0:12
ターゲット 果物の咀嚼、その後廃棄を確認
地面に埋めた果物に毒やデータの混入は見られない
監視を続行
0:24
ターゲット 瀕死の小悪魔成長期デジモンと接触
暗黒空間の歪みが発生
その後眷属化を確認
成長期デジモンの言動、挙動に問題なし
警戒レベルを上げる
暗黒空間のターゲット本体の動きは無し
こちらの動き次第によっては師匠を…いや、聖騎士(ロイヤルナイツ)の応援を要請する
1:54
ターゲットと成長期デジモン はじまりの街に侵入
激しい戦闘を避ける為接触不可
2:12
ターゲット 街の外へ
てか、こいつら何しに来たんだよ?
幼年期たちに一言「子供たちはいるか」って聞いてまわっただけで街出るの早すぎね?
もしやコミュ障か?
4:58
定時なので帰宅
明日は俺休みだから、こいつらの監視はデュークモン先輩が引き継ぐみたい
お仕事頑張ったし今夜は師匠達いないから帰りにこっそり美味しいもの買ってきちゃおっと♩
報告書履歴 ハックモン
現在
8:14
マントを翻し現れたのはロイヤルナイツの独り
聖騎士デュークモン
「お前の目的はこの世界に破滅を呼び込むことだろう」
「なっ!?お前何を言ってるんだ!!」
「ピコ、相手にするな。聖騎士がこちら側に接触することは予想していた。デュークモン!私は抵抗はしない、目的を言えばここを通してもらえるのか」
「お前とは500年と長い付き合いだがな、長い沈黙を唱えていたお前が動き出した、それだけでこのデジタルワールドは危機的状態に立たされるのだ。お前のその軽率な行動により盟約は破棄された。悪いが消させてもらう!!」
戦闘態勢に入る
デュークモンの覇気に空気がバリバリと凍りつく
全身の毛がザワザワする
あいつはボクたちを殺す気だ
ピコデビモンはアポカリモンの手を握り彼の様子を伺う
「独断で外に出たことは詫びよう。『我』はこの世界を粛清しない、それだけは昔とは変わらない。この行動は自らの消滅を望むために動いているにすぎない」
「デジタルワールドに降りた理由が自殺だと?呆れたものだな、人間を模した人形に精神を入れただけのお前を討ち取れば容易に死ねるぞ!!感謝するがいい!!!」
「や、やめて!アポは何も悪くないよ!!」
「ピコ、話しても無駄だ。今から本体と接続する。離れていろ」
「お前のやり方は想定済みだ」
デュークモンが腕を掲げると辺り一面魔法陣のような模様がアポカリモンたちを囲い分厚いバリアが現れる
「この結界は…」
「悪いが本体と接続できぬようにさせてもらった。精神核であるお前を潰せば本体も弱体化するであろうな」
「それだけで死ねるならこんなに苦労しないんだよ!!」
「ああ、人間の体であろうと容赦はしない!」
ロイヤルセイバー!!
デュークモンの技がアポカリモンを直撃する
「ぐは…っ」
爆発と共に辺り一面砂煙が舞う
技はアポカリモンの体を貫通した。人間であれば即死する威力を受けた…はず
「馬鹿な!?私の攻撃を耐えただと!?」
砂煙の中からピコデビモンを庇い頭からドス黒い血を流すアポカリモンが現れる
その顔は怒りに満ちていた
「デュークモン」
殺気に満ちた彼の顔に思わずデュークモンは悪寒がした
「こちらは抵抗しないと先に忠告したはずだぞ」
ドロドロと湧き上がる殺意
常に世界に対して恨みを募らせるだけだったアポカリモンにとって生まれて初めてできた友を傷つけられた恐怖、焦り、そして怒り
これは己の中の怨念にはないアポカリモン自身が持つ怒りだ
「私はいい、だがこいつを巻き添えに攻撃した罪は重いと知れ!」
ピコを抱きかかえたアポカリモンの足元から保険として配置していた二本の触手が召喚される
触手はムゲンドラモンのキャノンに変化し、デュークモンに向けて最大出力の∞キャノンが放たれる
「能力は本体と同一か、だがその体ではうまくはいかぬだろう」
この攻撃を容易く避けるデュークモン
バキッ
腕が折れる音がする
アポカリモンは放った∞キャノンの火傷と放った反動で片腕一本だめにしてしまったようだ
「やはり、耐えられなかったか…」
「今のお前は人間体だ。∞キャノンの火力を人間が素手で撃てば反動で耐えられるはずがない!」
「アポ!!」
「くっ…ピコ、すまないが私に血を…」
「無駄だ、本体を呼ばない限り私を倒せんぞ!」
ロイヤルスラッシュ
「!!!!」
ドカァーーーンッ
「アポ!!」
ピコデビモンは眩い閃光と共に爆風に巻き込まれる
後ろの方からドサッと何かが落ちる音がする
ピコデビモンは砂まみれになりながらも投げ出されたそれはアポカリモンだと確信し、血を飲ませようと近づくが彼の姿を見て言葉を失う
真っ黒だ
全身の皮膚は焼け焦げ、顔の形も分からなくなるほど溶けており、腕も足も無惨にも折れてしまっている
ピコデビモンはこの彼の姿を覚えている
今朝見た頭部だけになった彼を抱く夢
血を飲ませようにも顔が潰れて口が何処か分からない
仕方なくピコデビモンは涙を零しながらペロペロと焦げた彼の手を必死に舐め始める
思い出した、ボクが助けなきゃ…
アポが痛い目に合うなんて…
もう見たくない!
その思いも虚しく、背後からデュークモンが迫っている
「トドメだ」
ジャキッと屍当然と化したアポカリモンに向けて武器を構える
「ダメだ…ボクが舐めてもアポの回復が追いつかない…このままじゃ」
どくん
ピコデビモンの周りを暗黒の瘴気が囲む
一際濃い瘴気がピコデビモンに吸収された瞬間黒い光を放ちピコデビモンはデビドラモンへと進化を遂げる
「ギャオオオオォォォォォ!!!!!!!」
「なっ!ピコデビモンがデビモンドラモンに進化した!?」
突然の進化
予測のできない自体にデュークモンは構えた体勢を崩してしまう
「お前は…邪魔だぁ!!!」
「ぐっ....!!」
戸惑っているデュークモンの隙をついてデビドラモンはデュークモンを尻尾で薙ぎ払い岩盤に叩きつける
これでしばらく瓦礫に埋もれて動けないであろう
デビドラモンは血だらけになったアポカリモンの体に駆け寄り、鋭い手で丁寧に彼を抱え胸に耳を傾ける
トク…トク…と弱い心臓の音が聴こえる
まだ死んではいない
「良かった…生きてる…!」
彼の安否を確認し安心したデビドラモンは彼の体を抱きしめ甘えるようにクルルゥ…と喉を鳴らし、愛おしそうに鼻先端を彼の体にスリスリと擦り付ける
邪悪な赤い四つ目から涙がポロポロ溢れ、一雫がアポカリモンの体に落ちる
すると外傷が少しずつ回復していくことに気づく
そうだ!アポ言ってたよね
ボクの体は回復効果があるって!
だけど今の彼は血を吸えない
奴から彼を守れて回復できる方法…
「ちょっとだけ我慢してね」
デビドラモンは大きな口を開くと彼をそのまま大量の唾液を含んだ口内へ運び、優しく口を閉じた
モゴモゴと舌を用いて唾液を絡ませながら彼の体を舐めほぐす
これで、と安心した束の間岩盤に埋もれていたデュークモンが起き上がる
「何をしている」
その声とともにデュークモンの盾に吹き飛ばされデビドラモンは地面に横たわる
聖騎士と邪竜、大きさに大差はあるものの進化したばかりのデビドラモンでは覚束無い動きで空を飛び逃亡することでさえ困難であった
「そいつは世界を破壊する存在だぞ、何故庇う?もしやそいつに洗脳されたのか?」
「違うよ、ボクはボクの意思で動いたんだ」
デビドラモンは痛みを我慢しギリリと歯を食いしばりながら起き上がる
「お前も大切な人の為に戦うデジモンなんでしょ?ならボクもアポを守りたい!!守ってボクが幸せにしてあげるんだ!」
翼を広げ精一杯の威嚇をする
ビクビクと全身を震わせながらも目線と殺意はデュークモンに向けている
デュークモンは確信した。その目には恐れはなく、覚悟を宿していると
同時に驚愕した
先程の言動から推測するに、ピコデビモンが進化したきっかけが奴に対しての愛によるものだと
「…幼くしてそいつに魅入ったのか!?愚かな!」
ドカッ
「ううっ……」
デュークモンの蹴りがデビドラモンの腹部を直撃し、内部器官が破裂。大量出血によりそのまま気絶してしまう
唇からドクドクと血が溢れ出る。それでも口を押えたまま彼を守るように丸くなった姿勢のまま意識を無くしていた
どくん
口いっぱいにデビドラモンの血が満たされ、口内いるアポカリモンは目覚める
ドロリとデビドラモンの口からと大量の血と共に吐き出されたアポカリモン
無言で回復した片腕を高く上げデュークモンに向ける
黒く蠢きながらアポカリモンの触手が片腕に巻き付き、うねうねとデュークモンにとって見覚えのある形へと変える
「オメガモンの、ガルルキャノン…!!?」
ドゴォーーーーーーン
その名を発した瞬間発砲音と共にデュークモンの盾を粉砕
奴ごと辺り一面更地と化した
ガルルキャノンの反動に耐えられず変形し焼け焦げ人間体の腕がデビドラモンの血と唾液で瞬く間に回復し元通りになる
落ちた帽子を被り地に伏せるデュークモンにアポカリモンは話しかける
「他のナイツにも言っとけ、手を出さない限り我々は何もしないと」
「盟約を破ったのは貴様の方だぞ」
「!…ピコ」
アポカリモンはデュークモンを無視し、デビドラモンに駆け寄る
デビドラモンの顔を撫でると触手の力でピコデビモンに退化させ、懐に引き寄せ優しく抱きしめる
「何度も言わせるな、私はもう疲れたんだ…」
「…!」
500年前と同じだ
こいつは、アポカリモンは予言に記されていたような邪悪な存在ではなかった
だから奴と盟約を結んだ
ロイヤルナイツ全員が束になっても死ねず、何世紀も間、先代のロイヤルナイツたちが奴を封印と拘束を繰り返し続け消滅させずにいた理由を今理解した
優しすぎるのだ
優しすぎるが故に皆が幸せになれるのならば、お前はその身を犠牲にすることも良しとしているのか
「我々にできることがあれば事前に連絡しとけよ」
「今はピコと一緒にいることで私の心は満たされている、今回の様に邪魔をするならすぐ消してやってもいいんだぞ」
わかったかわかったとデュークモンは渋々結界を解除する
暗黒空間から大量の瘴気がアポカリモンの周りに集りボロボロになった服や帽子をたちまち綺麗に修復していく
綺麗に元の身なりになって一呼吸するとピコデビモンを愛おしく抱く
その姿はまるで親子…いや、恋仲のように見える
「そいつに愛されてるな、お前」
「愛?違う、これは私の眷属。私を生かすための備品にすぎない。」
「はぁ?」
こいつは何を腑抜けたこと言っているのだ?
先程見せたピコデビモン対して微笑むアポカリモンの顔は間違いなく心から愛おしく想う者の表情だ
まさかこいつ無自覚なのか?
まぁとにかく
「アポカリモン、引き続き監視はするがもしお前の目的のものが見つからなかったら我々を呼べ、ロイヤルナイツ全員でお前を屠ってやる」
「ふん、お前たちが…ねぇ」
そのセリフお前の先代にも言われたぞ、まぁ今度も私に傷をつけられるほどの力はあっても我を消せはしないだろうが、だが
「…最終的にはそうさせてもらう」
こうしてデュークモン襲撃は幕を閉じた