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フォーラム記事

てとちん
2022年11月07日
In デジモン創作サロン
「おやおや、これは熱烈な歓迎だね」 「これを歓迎と受け取る貴様は心底呆れる。いや、それこそが王の余裕というやつか?グランドラクモン」 人型の悪魔と呼べる容姿を前にし聖騎士は右手に装備したパイルバンカーを向ける グランドラクモンと呼ばれた悪魔は軽く笑う 「これはこれは、今の俺はマタドゥルモンだと言うのに・・・お供のナイトモンを20も引きつれるとは、流石は騎士王の名を冠するロードナイトモン様だ」 「貴様にはこれくらいしなければな逆に失礼だろう?」 「確かに俺は賑やかなのが好きだが・・・これでは逆に騒がしいと感じる・・・まあ、別に良いだろう。最近は退屈で仕方がなかったんだ。・・・ククク、自分の手で楽しみは見つけないとか」 まるで新たなおもちゃを見つけたかのようにマタドゥルモンは不敵な笑みを浮かべる。ロードナイトモン達も相手が相手なだけに慎重な姿勢を取る 先手を取ったのはマタドゥルモンだった 軽やかな身のこなしで包囲を突破しようと地面を蹴る 無論、そんなことはさせる気は毛頭ないナイトモン達は大剣を用いて無理やりにでも止めようとする。 「ベルセルクソード!!」 その手に持つ身の丈ほどある大剣を両手で振り回す 大剣には淡い光が纏われており、恐らくはナイトモン由来のエネルギーなのだろうと推測する事ができた。 だが、身の丈ほどある大剣を振り回すという事は尋常ではないエネルギー、そして隙が生まれる事を意味する。 無論、そんな隙を吸血鬼王と呼ばれる存在が察知出来ないはずがなく 「遅い遅い!!」 余裕のある身のこなしで一振り一振りを紙一重で躱していく あと1秒早く振れば掠るかもしれない だが振る速度を上げてもずっと紙一重で悪魔は躱わす 「ッチィ!!」 「おやおやこの程度で余裕無くなってるのかい?だらしないねえ!!」 苛立ちが頂点に達しそうな騎士を相手に悪魔は余裕で挑発を続ける 頭に血が上れば登るほど、攻撃は大振りになり隙は大きくなっていく。 そして倒すという思考に支配されれば大剣の輝きも必然と増す。 そして輝きはエネルギーである。ならば必然と騎士はエネルギー不足になる。 「・・・・・・!」 「おやおや、息が切れているように見えるが大丈夫か?もしやもう終わりなのか?」 「ああ、終わりだ!!」 騎士はあろうことが自らの武器である大剣から手を離す。いや、手から離れたと言った方が正しいかもしれない 勢いに任せて空に飛んだ ナイトモンは息を切らしており、膝を曲げ手を付いていた 「薄情だねえ、まあ、やりたい事をさせてもらうが!」 「ッ!!」 周りに他のナイトモン、それどころかロードナイトモンですら居なかった。それも当然だろう、近づいていればベルセルクソードに巻き込まれるのがオチだ。 マタドゥルモンが右手をナイトモンの首筋に突き立てる。ナイトモンは無防備な箇所であることも影響して強い痛みを感じる。それでも歯を食いしばり痛みの声を最小限にする。 「鎧でも覆いきれない箇所はさぞ痛いだろうねえ!」 マタドゥルモンの高笑いが響き渡る だがその高笑いも何か掴まれる感覚によって終わる ふと自身の右腕を見るとナイトモンが両腕で掴み、握っていた 「ん?この程度の束縛で 「いくら吸血鬼王と言えども今の、完全体としての力ではこの腕は振り解けまい!今です王よ!!」 その声と共にロードナイトモンは力の限りアルファルトの上を駆ける。 そして右腕のパールバンカーをマタドゥルモンに向ける 「アージェントフィアー!!」 パイルバンカーから衝撃波が打ち出され、粉塵が舞い上がる 「・・・甘いか」 そう呟くと共に鎧から伸びる帯刃で粉塵を吹き飛ばす そこには倒れた1人の人間がいた・・・ いかに冷徹な王といえども、部下に対し非情な訳ではない 守護を司るロイヤルナイツと言えども良き王とは何かについても考える騎士王はゼロ距離での攻撃を躊躇った。 もし、ゼロ距離での攻撃であればナイトモンごとチリも残さずに消滅した事だろう。 「あくまでも俺だけを殺そうとした・・・その理由は」 「ッ!?」 影に身を潜めていたマタドゥルモンが人間の体を掴む 首筋に右手を当て、左手で体を起こす 「俺がダークエリアの居城で何もしてないとでも思ったのか?この世界の性質くらい把握してる。そもそも俺が単独で現れてる時点でその可能性を考慮しないのは愚の骨頂よ」 「まさか・・・最初から」 「お前さんは騎士だ、部下の犠牲は覚悟できても部下が体を借りているだけの人間を殺すことなんてできやしない甘ちゃんだからな・・・ああ、いや訂正しよう、お前さんらも在り方に縛られているだけだったか」 「在り方に縛られている・・・?」 「ああそうだ、事実お前は部下もろともであれば俺に一撃は与えることができただろうな。だがお前は本能的にそれを拒絶した。大方、体を借りているだけの人間ごと滅ぼすのに抵抗があるんだろう?」 マタドゥルモンが一語一句発するごとにロードナイトモンは両腕が震えていった。 そんな様子を見てマタドゥルモンがある種、嘲笑とも取れる笑みを浮かべていた。 「おおっとすまない、こちらも興味深い駒を使ってしまってね。それにそれ以上の価値となる次のターゲットは見つけていたのだが、芽吹くまで時間が必要でね・・・悪いが今は暇つぶしの時間なのだよ。・・・実験、検証してみたいこともあるしな」 「実験・・・だと?」 「ああそうだとも・・・ほら彼をみてみると良い、俺の実験結果を君に、君たちにも見てもらわなければな」 マタドゥルモンがそう言うと倒れていたはずの人間が立ち上がる 「・・・バカな」 「ウギうぎゃああ」 だが、どこか様子がおかしかった 一歩、また一歩と足を進めるにしてはどこかぎこちなく目に光はなかった 焦点が定まっていない目にふらふらな歩き方 段々と黒く変色していく皮膚を見るとまたドゥルモンはふと呟く 「・・・予想通りといえば予想通りの結果だが、多少のイレギュラーくらいは起こって欲しかったものだな」 「ああああああああああ!!!!!」 「良い悲鳴なのは認めるが・・・少し見飽きた。骨が弾け飛び、地肉を撒き散らす光景もインパクトがあれど飽きるもの・・・さてと、あとは君たちの健闘を祈ることにしよう」 マタドゥルモンが姿を消し、残されたのは異形となりつつも人の面影を残す怪物と騎士たちだけだった 「・・・以前に比べれば検証は複雑だが、それでも調べるべきことは明確だった。以前は純粋な人間に直接力を注ぐことによる人体の崩壊、変貌を観察してきた。だが今回は既にデジモンとしての力を宿している者に力を注ぎ込む実験・・・貴重な駒を使って見つけたイレギュラーの検証をするために」 ティーカップを置き、ビスケットを一枚口に含む 「結果はまるでビスケットのようだ。デジモンとデジモンに挟まれたことによって中身のペーストがどうなるのか、大抵は拒絶反応でぐちゃぐちゃになるのだろう。凹凸が噛み合わなければバラバラになる。だが、ごく一部は融和か否か、噛み合うと凄まじい力を発揮する。これはさらなる観測、検証が必要なんだろうな。・・・まるで光と闇のようだな」 小さく笑い、闇へと溶け込む 「まあ混ぜれば拒絶反応でキラーマシンとなる。直接見なくとも、結果は見えている。さてと、再び観察を始めるとしよう」
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てとちん
2022年10月09日
In デジモン創作サロン
懐かしい感じがした 彼と出会う前に 私を支配していた感情 それは『悲しさ』 彼と出会って、私の世界に光を刺してくれた 少し離れていても連絡を取り合っていた だから心の支えであった でも あの時私は支えを失っていたはずなのに・・・ なんで『絶望』しきれなかったのか・・・ あの・・・剣がいっぱいあるデジモン とても懐かしかった 何でなのかは分からない でも今すぐには気にならなかった 失わなかった・・・それだけで十分だったから 目が覚めるとそこは病室だった 菜月芽衣は身体に不自由はなかったが少し怠いような気がした (お、お目覚めか) 直後に響いた、あの時のデジモンの声で目を見開く 「え?デュラモン!?どこに!」 周りを見回したがデュラモンの姿はなく、いたのは車いすに乗っている新庄頼賀とパイプ椅子に座っていた新月廻陰、新月結の姉弟だけであった 突然の大声に三人とも驚き、芽衣は自分の発言に恥ずかしがってしまった (落ち着てくれ・・・俺は今君の中に宿っているんだ) 「私の中に・・・ってどういうこと!!」 「姉さん、やった本人なんだから説明してください、頼賀もいるんだから」 「やった本人はアルファモンだ・・・正確には私じゃない!」 「その時ちょうど気を失ってたから俺にも説明プリーズ」 二人から説明を求められて廻陰は慌てるが一瞬のうちに落ち着く・・・いや雰囲気が変わった 「初めまして、菜月芽衣・・・私はアルファモン、廻陰に宿っているデジモンだ」 ???????? 「あ、ライガの時と同じ顔をしてる」 「え?頼賀君は知ってたの?」 「病院から出る前日に状況説明された・・・一応芽衣は昨日一日丸々昏睡してた。だから・・・3日前くらい?」 一日昏睡してた・・・?衝撃の事実に動揺を隠せない (うーんとな、君があいつらに暴行された時の傷と俺を宿した時の俺のダメージが合わさって昏睡する結果になったとか・・・だそうだ) (デュラモンは無事なの?) (まあ一応、身体が散り散りになる感覚はないし) 「傷とかは俺の中にいるパルスモンが自然治癒能力を強化してくれたから俺も芽衣も何とかなったっていう感じ。エリスモンもパルスモンも俺たちの無事を喜んでるよ」 彼の口から出たエリスモンとパルスモン・・・その名前には聞き覚えがあった 「それって数年前まで育ててたデジモンの名前だよね・・・?え?今の頼賀君ってどういう状態なの?私と同じ感じでデジモンが宿ってるの?」 「うーん大体おんなじかな?でも少し違うのが宿った経緯が違うかな。俺だけなぜか育成してたデジモンが二体も宿るっていう結果になってる・・・結構イレギュラーな存在だとも」 まあと言い 「今が無事だから問題ないかな!」 どこまでポジティブなのか・・・だが一度死んだのならそうなるのも納得してしまうような気がした 「すまないが事情の説明をさせてもらってもいいかな?」 「「あっはいすみません。どうぞ」」 頼賀と芽衣が声を重ねて謝る 「では、芽衣君、君は倉庫での出来事をどこまで覚えているかい?」 アルファモンに言われ思い出してみる 「えっと・・・頼賀君がデジモンになって姿が見えなくなったけど雰囲気で勝ったのが分かって・・・気が緩んだ感じで倒れたのかな・・・?」 「君は肉体のダメージがあったにもかかわらず、極度の緊張状態で意識を維持していた。そのため一安心して倒れてしまった・・・デュラモンと君がどちらも危険な状態であり、なおかつ波長が合ったから私はデュラモンを君に宿すというのを提案し、実行した。結果は成功。拒絶も何もなく今に至った。ダメージの方は先ほど頼賀君が言った通りだ。パルスモンのおかげで明日には退院できるだろう」 「・・・パルスモンってある意味強すぎじゃない?宿ってる本人だけじゃなくほかの人のも強化できるなんて」 「一家に一体パルスモンてか・・・まてまてまてごめんそういうわけじゃ!!エリスモンもとめっ・・・」 悪乗りで口に出した瞬間に頼賀が慌てはじめ車椅子の上で倒れこみ気を失う 「あーこれはパルスモンの怒りを買ったみたいだねー」 結は面白おかしそうに笑っていた 「ふふふ、なかなか面白そうだ」 アルファモンまでもが笑っていた 頼賀が目覚めるまでに頼賀が病室で聞いたことをそのまま話し自体の説明をする 「デジタルワールド・・・?えぇ・・・頭が追い付かない」 「うん、よかった。ある意味普通の反応で・・・頼賀があまり驚いてなかったからさ」 結は何を心配していたのだろうか・・・でも割とどうでもいいことなのは明白だったので 「頼賀君は変なところ感覚ずれてるから」 「わかる」 芽衣の幼馴染としての付き合いの長さからの感じ方に廻陰が真っ先に反応する 「あの、廻陰さんがそれ言ったらいけないような・・・?」 恐る恐る復活した頼賀が口にする 「?何故だい?」 「結のことになると殺意マシマシの雰囲気になるから」 「結が可愛いからね!!それに結は私が守ると決めたから!!」 堂々と言うとその人の結の方は参った様子で 「過保護は勘弁してください・・・時々ある空回りした時も酷いので・・・」 「結もいろんな意味で大変なんだね・・・」 悩みの種であることを察しフォローする フォローはするがやはり気になるので 「んで、どんなことがあったの?」 「二人で銀行行ってたら立てこもりに遭遇してぶちギレた姉さんが立てこもり犯五人を三秒で全員昏倒させたり」 「「え?」」 「通り魔がナイフで僕のお腹を刺そうとしたときは瞬時に見抜いて素手でナイフつかんで握りつぶしてその人を拘束したり」 「「ナイフを握りつぶす!!?」」 二件だけでも訳が分からないレベルでこれ以上は発狂の危険があったのでこれ以上はまた今度とした 「なんでそんなことが出来るんですかね?」 頼賀は恐怖を通り越して諦めとも呆れともとれる言葉しか出せなくなった 「結に手を出そうとするやつらには容赦しない」 そしてと続ける 「例え君たちであったとしても結に手を出すなら殺すから」 その目はだれも信用しておらず、冷酷でいつでも殺せるというのを感じた 思わず頼賀と芽衣は恐怖する 「ま、」 しかしすぐにその顔はいつもの穏やかな調子に戻り 「そうなることはないだろうね。だって結の大切な友達だから」 そう言って微笑む あまりにも雰囲気の差がありすぎて芽衣は緊張が解けた反動でベッドに倒れこんでしまった 「今の何・・・?私の知ってる廻陰さんじゃない」 一方の頼賀は体制を崩して車椅子から転げ落ちていた 「エリスモンの気配の強化が無くてもわかる・・・やばい人だ・・・」 二人の底知れぬ恐怖に内に宿る三体 頼賀に宿るエリスモン (これがミオン・・・?僕怖い) もう一体、パルスモン (なんだよ・・・まるでこれまでに殺すのに何のためらいもない・・・いや、今までに何万と殺してきたような雰囲気だったぜ・・・) 芽衣に宿るデュラモン (なんだ・・・?これが人間なのか?信じられないほどの殺気・・・) 三体とも恐怖や危惧といった不安を感じており、共通の認識としては 『敵に回してはいけない』 だった 不穏な雰囲気に耐えられなかったのか結が口を開き 「姉さん・・・ものすごく危険人物に見られてますよ?僕と本音で話してくれなくなったらどうしてくれるんですか?」 「結が無事でいてくれれば私は何だって良い」 「じゃあ姉さんを埋めないと」 「大根になった気分で見守らせてもらうさ!」 「誰かこの人を止めろ!!!!!!」 「「お前くらいしか止められないんだよ!!!!!!」」 「??人参、玉ねぎ・・・ジャガイモの方が良かったか?」 「「「違う!!!そういう問題じゃねえええええええええええええ!!!!!」」」」 恐ろしくも賑やかな病室に全員が日常を感じていた 「・・・とりあえず明日俺たちは退院として、明後日終業式じゃねぇか・・・病院生活で残りの学校消えたんだが・・・」 「結辺りって疫病神なんじゃないの?」 「ししししし失礼な!!」 「結、何を話すにしろ相手の目を出来る限り見なさいな」 1人の絶望 1人の疑いの目 1人の必死の否定 1人のフォロー (ふふ、やはりこの姉弟は面白い) (否定しきれないんだな・・・) (疫病神呼ばわりは言い過ぎだな) (ヤクビョウガミってなに?) (お前は知らなくていいんだよ・・・知らないほうが幸せな時もあるんだ・・・) (????そう・・・なの?) 宿るデジモン達も複雑でありながらも各々平穏を感じていた そして夏で長い日が暮れ姉弟は去った 二人と三体となった病室で過去を語り合う 「にわかには信じ難いんだけど・・・本当に育成してた二体なの?」 「そうだと・・・思うんだけど・・・」 (ねえ、ライガはメイのことが好きなの?) (いきなりどうした!?エリスモン) (だってライガは少し前に「メイは大丈夫かなあ」って心配してたし、今すっごくうれしそうなんだもん!) (あー確かにめっちゃ笑顔だな。両親も良いって言ってるんだったら結婚しちまえば?俺達も問題無いしな) (いや、なんでお前らも結婚させようとしてんだ!幼馴染の心配くらいしてもいいだろ!!) (だったらライガとメイの出会いとか聞いてみたい!) 「はっ!!?」 動揺のあまり声が漏れる それはもちろん芽衣にもきかれ 「どうしたの?」 「・・・エリスモンが俺たちの出会いとかについて知りたいって言ってきてて・・・」 (お、それ俺も興味ある) 「デュラモンも興味があるって・・・別にいいんじゃない?聞かれて困る話じゃないんだし」 「俺は困る!!」 「なんで?」 「小さいころとはいえ・・・覚えている限り恥ずかしいから・・・」 「相棒さんたちにも聞かれたくないほど?」 「・・・うん」 少し間が空き 「そうねぇ、であったのは四歳くらいの頃かな・・・今からだと十一年前くらい、もしかしたらもう十二年になるかもだけど」 「何語りだしてんだお前!!」 スルーされて語りだされ頼賀は激怒する 「えーだって」 と意地悪な笑みで続ける 「頼賀君の恥ずかしがる顔が久しぶりに見てみたいんだもん」 「お前はそういうやつだったな・・・やらかしたあ」 つまり新庄頼賀は間抜けにも芽衣の性格を忘れてしまい墓穴を掘ってしまったのだ そんな頼賀の嘆きを無視して芽衣は続ける 詳しいことは曖昧なんだけどね 公園で理由もわからずに泣いていた私に頼賀君が近づいてきてね。こう言ったみたいなんだ 「いっしょにあそぼ」 ってね。幼かったからこういうことが出来たんだと思う 手を差し出されて私はその手を掴んだ 偶然にも家が近かったから遊ぶ頻度が多くなって、たまに家の用事で家を空けないといけない時に預かったり預けられたりする仲になってね どんどん交流が続いていったんだ そんな中で二年がたった 五歳くらいになると少しは考えて行動できたりしてね 私は自分が泣いている理由について告白したことがあってね 「私が小さいころにお兄ちゃんが死んじゃって・・・それで・・・それで・・・」 「じゃあ僕が守るよ!!」 「え・・・?」 「僕が芽衣ちゃんを守る!芽衣ちゃんの笑顔が好きだから!!」 そんな感じで私は頼賀君に惹かれていった 「ふふ、頼賀君が恥ずかしがるのもわかるんじゃない?そして私はそんな頼賀君の姿を見るのが好きなの」 「だから・・・やめろって・・・」 ((ライガ・・・)) 「もうやだ・・・せめてこの場に結たちがいないのが救いか・・・・」 「でも・・・そんなに恥ずかしがることじゃないと思うんだけどね」 「なんでだよ・・・」 「だって頼賀君が優しいっていうことなんだから・・・じゃなかったらその子たちがあなたのことが好きだっていう理由がちょっと想像つかないな」 「地味にひどくない!!?それ俺に優しさ以外に長所ないってことだよね!!?」 「うん、そうだよー?だって運動神経は並で良くも悪くもなんでも普通なんだから」 でもと続ける 「優しいから私にとっての支えになってる。その子たちも・・・きっと優しいままでいてほしい、そんな願いがあるんじゃない?」 (うん!僕はライガにずっと優しいままでいてほしい!!ライガにずっと笑っていてほしいんだ!) (ああ、そうだな・・・ライガが幸せなら俺達も幸せなんだ・・・たまには俺たちに悩みを打ち解けてもいいんだぞ?) 「・・・なんでみんなそんなに・・・」 そこで言葉は途切れ嗚咽となる (ふ、誰でも弱い部分はある。彼の場合は自分に関すること・・・か) (いいじゃない、そういう部分があっても。そういうところも頼賀君の魅力なのよ!ああ、楽しい。いじくりまわすの楽しい!!生きてるって感じられる!!!!!) (随分と鬼畜だな) それぞれの思いを吐露し、関係を知ったデジモン達は確かなつながりを感じていた 唯一デュラモンだけ、芽衣の性格の悪さに苦笑していたが (ねぇ、ライガ扉の前に誰かいない?) 嗚咽が収まってきた頼賀にエリスモンが伝える 扉を開けてみると 「あーあバレちゃったかーふふ」 二人の担当医、新月藍がいた 「「・・・まさか」」 最悪の可能性を考え口にしてしまう 「ごめんねー調子はどうかなーって確かめに行こうとしたらね、話し声が漏れてたから耳を澄ませて聞いてみちゃったのよ」 「・・・どこからなんですか」 「頼賀君と芽衣ちゃんの出会い話辺りからかしらね」 割と最初からだと・・・? 今まで何にも気配を感じなかったことに恐怖する・・・ もしくは熱中しすぎて気づけなかったか・・・ 「大丈夫よ、あの子たちには言わないでおいてあげるから。そもそも今は別居してるし言える機会は少ないと思うけど」 そう言いながらもくすくすと笑っていた 「でも意外ねぇ」 「な、何がですか!」 藍の言葉に少し強い口調で真っ先に頼賀が反応してしまう 「だって、二人のことはあんまり知らないからどうしてあそこまで互いを思い合ってるのか不思議でしょうがなかったのよ。どうりでご両親があれこれ相談していると納得したわ」 「いったいこれでどこまで把握したんですか?」 「さあ、私は誰の心にも深くは立ち入らないと決めているからね」 そう言いながらさっさと確認を済ませる 「まあ、なにはともあれ二人が五体満足でよかったよ」 「そういえば・・・誰に運ばれたんだっけ・・・?」 芽衣が今までが盛り上がりすぎてスルーしていたことに疑問に持つ 「廻陰と結が抱えて運んできたのよ」 えぇ・・・ と困惑する 「廻陰はね、ただ結を守るだけじゃなくて、結の幸せを守りたいっていう思いがあるからあなたたちを助けようとするのよ。結が友達を亡くしたら・・・絶対に悲しむでしょうしね」 それにお続ける 「廻陰と結は互いに両親を亡くしているから・・・一個でも年上でお姉ちゃんだから・・・っていう責任感もあるのよ」 「そんなに暗くならないで!夕食食べて早めに寝なさいな」 じゃあと藍は病室から出て行った 確認をすると時刻は夜七時を回っていたようだ じゃあと別れ自分の病室に戻る頼賀 (姉弟ねぇ・・・) (?あの二人がどうかしたの?) (いや、ただ気になってな) (気になった?) (何か・・・廻陰さんがあそこまで変わる理由は分かったけど、流石に異常な気がする。だって考えてみてよ。あの雰囲気は自分のことを考えずに結だけのことを考えている・・・そんな感じだった。誰もが自分の命を大事に思うはずなのに・・・) (・・・それくらいミオンはユイのことが大好きなんじゃないかな?) (いや、エリスモンそれで片づけるのは・・・考え過ぎかな?) (疲れてるんじゃね?まあランの忠告通り早めに寝とけ) (そうさせてもうかな・・・) (じゃあ僕は寝るね) (俺も) (え?早くない?) ((おやすみー)) その一言の後には二体に精神を集中させると寝息が聞こえる程度であった まったく・・・と思いながら寝てくれたのは好都合だと感じる そう思いながら荷物から取り出したのは一冊の本 横からのぞくとざっと三百ページ分はあるように見えた そして留め具にもこだわられているちょっとだけ高級感のある本であった 「この日記帳のことを見られないのはいいことかな?」 ふふ、と笑ってしまう 7月17日 火曜日 そこまで書いて手が止まる 何書こう?流石にこればっかりはエリスモンやパルスモンにみられるわけにはいかないのでわざわざ寝静まるのを待ったのだが・・・ だから書きたいこと全部書いてしまえ!! と浮かんだこと、思ったことを手あたり次第文章にしていく とりあえず最低ラインまで書くことが出来、頼賀も寝ようとした 時刻は午後10時を回ろうとしてしまっていた 日記を書くのに2時間以上も使うとはと頭を抱える ま、と寝静まっているエリスモン、パルスモンに目をやる 寝顔を拝みつつ (君たちに出会えてよかった・・・この気持ちは嘘じゃないってわかる気がするよ・・・) 微笑みつつ日記帳を留め具で閉じる 元あったカバンにしまい 眠りにつく 一時の平穏に 素敵な出会いに 幼馴染の無事に 感謝をして穏やかなまま眠りにつく 夢の中でエリスモンとパルスモンを抱きかかえられた気がした・・・ ああ・・・君たちに触れてみたいと新たな願いが出来てしまったようだ 穏やかなまま意識が消える
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てとちん
2022年9月25日
In デジモン創作サロン
「おばあちゃん!おばあちゃん!」 少女は嬉しそうに緑の生い茂る崖側を駆け回りながら祖母を呼ぶ それに対して老婆は静かに微笑みながらゆっくりと歩きながら少女の方へと歩いていく 「元気が良いねえ、バテちゃいそうになるわ」 「あっ・・・おばあちゃん・・・」 「良いのよ、子供は元気が一番だから!元気な子を見るとやっぱりこっちまで嬉しくなっちゃうのよ」 その微笑みは少女にとって心の支えとなっていた。唯一・・・少女にとっての心の支えだった。 「そうだ、これを渡しとくわ」 「これは?」 渡されたのは金色に光る置物のようなものであった。 何かの紋章が刻まれた置物が 不思議と失くした何かを見つけたかのような そこに1匹のウサギ・・・正確にはその姿はウサギと人間のハーフのような容姿であり、ウサギのような細長い一対の耳を持っていた。 「蒼華(そうか)様、洗濯、掃除を始めとした本日の雑務が完了しました。戻り次第チェックをお願いしてもよろしいでしょうか?」 「あら、今日は執事とかそう言う気分なのね。」 「・・・おかしいですか?」 「そんな事はないわ、だってあなたなりの考えがあるって事を知っているから・・・こっそりとだけど1人でいる時に体が鈍らないように鍛錬しているのもね」 「!!・・・それは・・・・・・そのぉ・・・」 親しげに話しながら急所をつく老婆と隠し事を暴かれしどろもどろになる獣人を見るとどんな事を思うのだろうか。 老婆はひどく動揺している獣人の肩に手を置く 「昔は今じゃ想像もつかないほどバトルジャンキーだったものね、でもマシーンみたいに心が無い訳じゃ無いから涙脆く優しい面も持ち合わせてる。あれはいつだったかしら、戦っている最中に相手が友情場面に入って何故かあなたが泣いたのに10秒後には涙拭いてじゃあ続きと行こうか?って言って相手を困惑させた時あったじゃない」 「・・・・・・・・・・・・(ボカン)」 老婆によって黒歴史とも言えるような過去を掘り返されたことにより獣人の精神的体力は既にマイナス方向に限界突破してしまいそうなほどに消耗しており音もなく膝から崩れ落ちることになる。 そこに少し離れたところで走り回っていた少女が獣人の存在を視認した為なのか土煙でも出てきそうなほどの速度で・・・そして遠くですら満面の笑みですら表現には物足りないほどの笑顔を浮かべていた。 そして何か叫んでいた 「あー!あんごりゃもんだー!!!!」 「あーーこが・・・・・・ねえええええええええええええ!?!??!!!!」 沈んでいた獣人の声は1人の少女によって瞬く間に悲鳴へと変わった 少女はいつも1人だった 家族からの視線は冷たく、言葉を交わすことも無い。 それでも・・・少女は笑顔を崩さなかった。それだけならば寂しいだけだったから。 食事は余りと称して用意されていたし、特別必要なものも用意してくれた。それでも言葉を交わすことはなかったが・・・一方通行な言葉だけでも少女は満足だった。 例えどれだけ言い方が悪くても・・・どれだけ酷いことでも・・・そこに気遣いはあったから。 それに、転びそうになった時に反射的に手が伸びるくらいに、根が優しい人であることも知っていたから。どれだけ視線が冷たく、言葉を交わすことができなくても・・・これが幸せなんだと感じたから。 おばあちゃんが亡くなった。 亡くなると共にいつもそばにいたあの獣人の姿も消えた。 まるで・・・最初から居なかったかのように影も形もなくなっていた。 意外にもその死自体はすんなりと受け入れることができた。 それからしばらく・・・ 「・・・本当に行くの?」 「行きたい・・・誰も行けないのは・・・寂しいと思うから・・・」 「あーーその顔やめなさい、お金はあるの?」 「貯めたお小遣いが・・・ある」 家族が握りしめた財布を奪うように取り上げて中身を確認する。 がものの数秒で見るのをやめて頭を手で押さえていた。 「あなたねえ、往復分の交通費ギリギリしかないじゃない。確かに寂しいかもしれないけどそんな余裕のない状態で来られて死にでもしたらそれこそ悲しませるのよ?」 「・・・ごめん、なさい」 「あー泣くな、めんどくさいったらありゃしない・・・ついて来なさい」 呆れた様子でついてくるように促す それに従うようにそばを離れないように小走りに距離を維持する すると一台の車にたどり着き、視線を送りながら車を・・・正確には助手席を指差した その指示通り助手席に乗り込む 一体車に乗せてどこへ行くのだろうかと思い、意を決して聞いてみることにした。 「・・・その、どちらに?」 その質問に答える事なく運転席に乗り込み、シートベルトを着用しエンジンをかけ、シフトレバーをDへと入れる 「・・・東京駅」 呟くようにさりげなく返された一言で凍りつくように固まった 「・・・起きなさい、このまま帰るわよ?」 その一言で飛ぶように目が覚める。窓から見える景色はどこかの屋内駐車場のようであった。大量の自動車が停められている大きな場所であった。 「車・・・いっぱい・・・」 「そりゃあここは東京駅の地下駐車場だからさ・・・さっさと来なさい。転ばない、ぶつからない程度に急ぎ足でね」 「うん!」 「・・・何言ってんだろうね・・・私は」 「・・・?」 「独り言さ」 東京駅内をひたすらに歩きた新幹線の改札口まで辿り着く 辺りを見渡し看板を見つける 「・・・そこね」 そこには緑色のランプの看板があった 見とれているとふと言葉をかけられる 「帰りの新幹線は決めてるの?」 「うん、えーとね・・・これ!」 時刻表を開き、予定の新幹線を指差す 一通り目を通すと一言、「分かった」とだけ言って緑色のランプのある看板の部屋に入り列に並ぶ 「次の方どうぞ」 順番が来てカウンターへと歩く 「東京駅から・・・読めないんですけどここの駅までの乗車券、それと新幹線の指定席特急券を往復で子供1人分お願いします。」 「かしこまりました。乗車される新幹線は決まっていますか?」 「行きが1時間後発射する・・・これの空席状況見ても良いですか?・・・窓と通路どっちが好み・・・窓ね、じゃあここをお願いします。帰りは1週間後の・・・これでここの席をお願いします。」 「かしこまりました、以上でよろしいですか?」 軽く頭を押さえながら頷く 表示された金額をくれじっとかーどと言うもので支払いを完了させて乗車券などを受け取り部屋の外へと出ると軽くため息をついた 邪魔にならないところに軽く移動して少女に視線を合わせるようにしゃがみ乗車券などが入ったチケットケースを手渡す 「わからないことがあったらさっきの人みたいに係員の人とかに聞くこと。あと指定席って言う絶対に席に座れるやつだから乗る新幹線と座席を間違えないこと。特に帰りの奴は時間に余裕あるやつだが遅れないようにすること、万が一乗れなかったら係員さんに素直に状況を伝える・・・ったく、なんで私がこんなこと 「ありがとう!行ってきます!」 「え?ちょまっ・・・」 注意をちゃんと聞いているのか分からなかったが話の途中で走り出し改札を通り抜けてしまった。 なんとも楽しそうで興奮しているのはいいのだが・・・ 手のかかる子供というのはこう言うことなのだろうか、自然と表情が緩んでしまう 「・・・念のため入場券買っとくか」 今度は券売機に小走りに向かうのだった 「見える?あれが新幹線だって・・・」 まるで誰かに語りかけるかのようにベンチに座って少女が話しているのが見えた リュックを膝の上に乗せて口を開けていることからぬいぐるみでも入っているんだろうと横を通る人達は感じ、気に求めていない様子であった。 「急いできてみれば新幹線眺めてるのか・・・っ!!そういうことか・・・・・・黄金」 「!!・・・これは・・・そのぉ・・・」 横から名前を呼びながら近づき、リュックの口を思いっきり開く 中を見られた黄金と呼ばれた少女は分かりやすく狼狽し縮こまることしかできなくなった。 「・・・・・・それはおばあちゃんからの?」 「・・・・・・」 静かに頷く黄金の反応を見て今まで以上に頭を押さえる・・・頭痛がしてきそうなくらい頭の中の複雑な感情が巡る 出した言葉は 「はあ、それも学校行きたがらない理由なのね・・・とんでもねえやつ遺しやがってあのクソババア・・・たしかに学校より大切だけどさあ、あーはいもう何も聞かない。一日三食しっかり食べてちゃんと七日目には帰ってくること!後その子もちゃんと連れて帰ることいいわね!?」 「!うん!!」 しばらくし、新幹線が到着し乗り込む姿をしっかりと確認する まもなく発車し窓から手を振っていた。 (見送るってこんな感じなのかな・・・) 静かにその場を後にし、過去を思いあえしながら去る その跡を影が辿る 着いた! 目の前にあるのは少し古めの民家と言った場所であり目を輝かせる すぐにポケットから合鍵を取り出し、解錠する。 「えーっとまずはお掃除!」 リュックを置き、しまってある掃除用具を取り出す 約1時間が経つことには目につく埃や汚れは大方取り除かれていた。 休憩として顔をタオルで拭きながらお茶を飲む 「きゅうすで淹れたお茶美味しい・・・お茶っぱもいいやつだからなのかな?そうだ!」 「冷え冷えのお水で濡らしたタオルで拭いてあげないと」 リュックから取り出した一つの大きな卵を膝に抱えながら手入れと言わんばかりに汚れを拭き取る 不思議と冷え冷えのタオルで拭いた直後なのにほんのりと卵が温かくなった気がした。 一通りやることが終わったと言うことで卵を再びリュックの中に入れ家を出る 十分ほど歩いたところで足を止める (・・・やっぱり体が軽い?どうして?) 軽く疲れていたはずの体が軽くなったような気がした。 不思議とジャンプでもしてみたら電柱ほどの高さまで飛べそうな気がするほどに その予感は間違っておらず山の上に行こうとした時に頂上まで行くのにさほど時間がかからなかった 理由は岩の上を飛び跳ねるようにジャンプした結果であった。 振り返って今まで通ってきた道を見る 「・・・どうしちゃったんだろ?まあいいのかな?急がないと日が暮れちゃう」 結局それ以上に優先する事があったため気にせずに山の頂上まで走ることにした。 山頂とは言ってもそこまで大きい山ではなく標高三百メートルほどらしかった。 「・・・あ、おばあちゃんのお墓あった」 山の頂上、その端に一つの石碑のようなものが建てられており、一眼見てそれがおばあちゃんの墓だと気づくことができた。 「久しぶり、おばあちゃん」 「ああ、久しぶりだ黄金」 「・・・え?」 背後から聞こえた聞き馴染みのある声 振り返るとそこにはいなくなったはずの獣人の姿があった 表情には笑みが浮かび走り出そうとするも 獣人は左手を前に出し、動きを制止させる 見れば獣人の体から光が溢れる 「予測通りか、僕たちのも含めて・・・別れは一時のもの、いずれ新たな出会いが生まれる・・・あとは彼に任せるとするよ」 「待って!」 「君の記憶がそれを満たすためのエネルギーとなる・・・境界を歩む者、いつの日にか彼岸を渡ることになるだろう」 直後にリュックの中が光りだす 中を見ると卵にヒビが入っていた 「こちら側の彼岸の時のみここに立ち入ることができる。もしその7日間より短く、また長くいればそれはその境界を越えることになる。別に故人のことを忘れろとは言わない、でも囚われすぎずに新たな出会いを探すのもいいとは思うよ」 「新しい出会い・・・?」 光が収まると卵の殻は一片たりとも残っておらず、代わりに目の前に何かの猛々しさを少し感じ、それ以上に可愛いとも言えそうな青い体におでこに当たるところにVの字が刻まれている動物が立っていた。 その動物は目を開き、その赤い・・・熱を感じてしまいそうなほど強い視線を向けていた 「俺、ブイモン!コガネのパートナーだぜ!」 「ちょっとブイモン!なんでもっと早く起こしてくれなかったの!?」 「ちゃんと起こそうとしてよ!でもコガネってば揺すってもほお叩いても耳元で目覚まし鳴らしても起きてくれなかったんだもん!」 「あーー!!もう10時!もう10時!!!!???!うそ!?今からじゃ向こう着くのギリギリなんだけど!!?有給とった意味ないじゃん!!」 時計を見て半ば発狂に近い叫び声を響かせながらも慌ただしく最後の用意をする そして泣きつくようにブイモンを抱きしめて泣き顔になる 「ごめん!禁じ手なのはわかってるけどお願いしてもいい・・・?」 「わかったわかったから!!お願いだから涙を拭いてくれよ!!」 ブイモンも半ば悲鳴に近い声でティッシュを差し出し涙と鼻水を拭き取らせる。 互いに必死になりながらなんとか10分ほどで用意を終わらせる。 荷物を外に出し黄金はひたすらに背負う 対するブイモンは一度深呼吸をする 次の瞬間、黄金の膝ほどの身長しかなかったブイモンが何倍・・・いや、十何倍も大きくなる 姿も変わっており、蒼き鎧を身に纏う竜騎士、いや聖騎士の姿へと変化していた。 片膝をつき、とてつもなく大きくなった手のうち片方を地面へと置き、黄金は荷物と自身を手の中に収まるように収める。 ゆっくりと手を戻しもう片方の手でこぼれないように手を合わせる。 片膝を戻し立ち上がると、背中に生えている翼を広げる。 一瞬のうちに周囲に突風が起こる 風が止む頃にはもうその青い身体はどこにもなかった。 空の上 文字通りの空の上であり蒼き聖騎士がおおよそ生物として出していいのか不安になるほどの凄まじい速度で飛行していた。 押さえている手を緩め問いかける 「景色を見るか?」 「・・・意地悪」 「ふふ、たまには・・・な」 予想通りの返答で軽く息をつき、手を再び押さえ、少しだけスピードを上げる まるで空を、風を自身のテリトリーのように掻き分ける 瞬く間に下降し一気にあの山頂へと降り立つ 「荷物はその辺で良いだろう、念の為重石を置いておくが」 「・・・・・・」 「どうしt」 「おごgggggggggggggg」 口から(自主規制) 「落ち着いたか?」 「・・・はぁぃ」 蒼き聖騎士の姿はもうなく、ブイモンの姿へと戻っていた。 そしておうゲフン、ダウンした黄金の膝枕していた。 その顔は笑顔でありながら怒りが滲み出ておりその熱い思いに気づいているが故に、黄金も多少楽になっても苦しい状況には変わりなかったのにも関わらず苦笑いせざるを得ない状況になっている。 ある種の禁じ手、その本当の意味は表向きには聖騎士、アルフォースブイドラモンの力なのだがそれは別に些細な問題であった。 つまりは「よくあることで」済ませられることだからだ。 だが本当の意味としては 「・・・高所恐怖症なんとかしろよ〜」 「いじゴホッ、わる・・・」 黄金は高所恐怖症を持っていた。直接下を見なければまだいい部類なのだが、アルフォースブイドラモンの手に乗っていると大体酔う、背中や頭部であれば比較的ましなのだが・・・ 「その差は何なんだろ?」 「グフゥ・・・」 「おーい、気絶すんなよー!!」 それ以降、黄金の反応が無くなってしまったので荷物をまくらがわりに敷き寝かせる。 特別悪い感情は抱いてはいない、せいぜい困ったやつ程度の認識でありそれはそれでいいと内心は思っている。 別の荷物から菓子パンを取り出し、大きな一口を食べる。 「いやまあ、美味しいんだけどな・・・なんだか、こいつが居ないと結構・・・」 軽く痙攣のように震えている黄金を横目に見ながら一つ、大きなため息をつく 心のわだかまりとでも言うのか、口を開けば悲鳴を上げ、行動すれば大抵ダウンするこの情緒三半規管不安定運動不足小娘のことを・・・ 「いくらなんでもひどくない!?事実だけど小娘なんて・・・」 「いつまでも若々しいってつもりで言ったんだけど・・・ダメだったかな?」 「皮肉じゃん!!だってそれ昔から変わらないって意味じゃん!!なんでよ!そっちはなんか一気に大きくなっちゃって空まで飛べるよう立派な翼もっちゃって!!そこはお世辞でも少しくらい成長したって言ってよ!!」 「少しでもいいの?」 「・・・うん」 今にも拗ねて泣き出しそうな黄金の頭をヨシヨシするかのように撫でる 「境界は崩壊した・・・なぜなら境界を維持していた人間が死んだから。ならいずれあの子はどちらかになる運命、なんせあの子は境界のおかげで存在を保ててる。ある人は願った、そんな選ばれし者なんて無くなればいい。誰かと歩んでも良いんじゃないのかと、迷い苦しむこともあるだろう。だがその過ちを超える者もいるだろう。そんな新しい可能性に賭けてみたいと・・・そしてあらゆる人間にデジタマが出現した。強い思いに呼応するだとか・・・」 結果、世界には別の世界と繋がることが許された。 境界は敷かれども、人間とデジモンの距離はグッと近くなった。 「まあ、その可能性を開いた者の唯一のエゴによって生まれたのがあの子ってわけなんだけど」 影に身を置きながら呟く 影から何かしらの声が漏れるもそれは人間がおおよそ理解できるものではなかった 「まあそうだね、人間には忌み嫌われ、デジモンには同族のように感じる・・・限りなくデジモンに近い人間として生まれる。それはデジモンの力を遺憾なく引き出すことができるだろう。究極体までの力を引き出すほどにね・・・まあ、あんたよりはマシなんじゃない?」 真っ直ぐに背後の影のその先に立つ人影を見る その人影は一瞥だけして姿を消す 残されたものを拾い上げる 「白と黒の羽を一枚ずつを残して・・・か。」 見たくないものでもあったんだろうと勝手に思い、影を身に纏う 光に照らされる実態がなくなったことにより、影も必然的に消える これもまた一つの可能性(イレギュラー) こんな道を辿った世界もあると、記録者にはこう記される 希望の朝日が登った世界と
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てとちん
2022年9月04日
In デジモン創作サロン
静寂に包まれる 今どうなっているのか分からない 誰かの鼓動と共に 何かの線が聞こえる 病院で何度も…何度も聞いたあの音に近いものが 死んだのならこうはならない 恐らくこれは走馬灯 なにかあったときに記憶が巡ってくる…っていう ああ…俺は死ぬのか… あいつを支えるって決めたのに あいつのあんな悲しそうな顔をもう見たくなかった… けどなにも出来なくて… でも・・・このままで終わらせたくない まだ何も出来てないじゃないか・・・ まだまだこれからだっていうときに 何もできないまま終わるなんて・・・ 新月結は急いでいた いや、正確には新月結だったもの・・・か 今は『ヒシャリュウモン』というデジモンとなって空を駆けていた 以前に追っ払った不良の上と思われるものたちに友人である新庄頼賀と菜月芽衣がさらわれていたため、一刻も早く助け出す必要があったのだ (足止めでも完全体五体・・・姉さんは大丈夫だろうか) (問題ねぇだろ、俺たちが追撃で一体落としたしお前に危害加えようとしてるのが明確な奴らを廻陰が容赦しないしな。それに奥の手もあるしな) 足止めの相手を姉の廻陰に頼んだ結の心配にヒシャリュウモンの力の大本であるオウリュウモンが語り掛ける (ま、今は目の前のことに集中しろ。姉を信用しているならなおさら・・・な) (うん、ありがとう) オウリュウモンの言葉で再び前を向く 目的の場所が見えたあたりで目の前に立ちふさがるものがいた それはこの場合、まったく予想できなかった相手だった 思わず口を開く 「なぜ・・・あなたがここに・・・ジエスモン!!」 「お前が不吉な気配の正体か?」 白い骨のようなものが浮かびあがったかのような姿に両腕と尻尾に大きな剣を持ったデジモン『ジエスモン』がそこにいた そしてそのジエスモンはアルファモンが探しているロイヤルナイツの一体であった 「まさかここでジエスモンと遭遇するとは・・・予想もしなかったな・・・」 「なんだ?その様子ではお前がこの気配の大本であると?それに時空のゆがみも感じた!お前は何を企んでいるんだ!」 口ぶりからして今表に出ているのはジエスモン自身のようだった どうやらジエスモンは別の事情でここに来たらしいが誤解されてしまっているようだった アルファモンの探している仲間である以上、変に戦うことが出来ず、かといってこのまま通してくれそうな雰囲気ではない 足止めして廻陰が来るまで持ちこたえるか・・・それとも説得をするか・・・ 「すみませんがこちらは急いでいるんです。友達がさらわれてこのあたりにいるはずなんです」 「そう言って僕をだますつもりか!!」 「ああ・・・話が通じてくれないよう・・・・」 自分の口では無理だと悟った結はダメもとで (ねえ、オウリュウモン) (なんだ?) (説得できない?) (無理だな、アルファモンならともかく俺はロイヤルナイツとはほぼ無関係だしな。信用してもらえる要素がない) 何かの間違いで何とかなってくれとも思ったが難しそうだった ならば最終手段として 「すまないが、僕はあんたに恨みとかそんなものはないが・・・非常事態なもんでね、押し通ってでも行かなきゃいけないんだ!」 「そうか、なら僕がお前を倒す!」 結にとっては不本意な戦いではあったが避けて通ることは出来そうになく 完全体VS究極体(ロイヤルナイツ)の戦いとなった 戦い自体ははっきり言えば膠着していた ジエスモン自体ロイヤルナイツの方でも経験が浅い方であるためオウリュウモンの戦闘経験が共有されている結にとっては完全体のヒシャリュウモンでも捌くだけなら何とかなってはいた 相手の動きに合わせ少しずつカウンターを入れて隙ができるのを待つ・・・それが結の選択であった 「どうした!捌くだけでは倒せんぞ!!」 「ロイヤルナイツの言葉・・・ずしッと来るなあ・・・」 徐々にこちらが押されていった (やっぱり相手の素の能力の高さを戦闘経験で無理やりカバーしてるだけだからなあ・・・) (究極体の力使うか?今回はやむを得ないとして許容できるが) 今回の相手はただの究極体ではなくロイヤルナイツ・・・新米ではあるが、それはつまり想像もできないポテンシャルを秘めているという意味にもなる 唯一、この状況で突破できるとすれば究極体、『オウリュウモン』に進化すること・・・しかしそれはこの相手では賭けに等しかった (『シュベルトガイスト』・・・もし全方位カウンター技をされたらどちらもただでは済まなくないのは明白・・・頼賀と芽衣を助けるどころじゃなくなる) (なるほど、図鑑の情報ではあるが確実に相性が悪い技があるとわかっているから渋ってたわけか) (え?警戒しないの?) (すまん、俺はとりあえず斬るみたいな感じだからな。考えるのはアルファモン(あいつ)の仕事だったし) (それでいいのか・・・) 相棒(オウリュウモン)の回答に戦闘中でも苦笑してしまう ヒシャリュウモンの姿でも苦笑しているのが分かってしまうのか、ジエスモンが攻撃の手を緩めずに問答を始めた 「っ!おまえ、何がおかしい!」 「いや、あなたに関しては何もおかしく思ってない。ただ相棒がこのタイミングで困惑する回答をするもんで、ね!」 そう答えると結はジエスモンと距離を取る 「相棒・・・だと?お前は今一人のはず・・・一体どういうことなんだ・・・?」 「一人で戦っているわけじゃないっていうこと」 必要最低限の情報だけで済ませる だが、これまでジエスモンとコンタクトが取れなかったことを考えると人間の体に宿り姿を隠していたと考えるのが妥当か・・・単体ならば起きるはずの消滅の兆候もない (問題は共存か乗っ取っている、もしくは本当は人間側が表の状態で使役されている状態なのかだ) 共存しているのであれば比較的状況の説明がしやすいが使役されている場合は意識を目覚めさせなければならない。それに変に情報を伝えることも出来ない。最悪精神が取り込まれている形で融合してしまているかもしれない。乗っ取っている場合は元の人間の精神がどう影響してしまっているのか・・・昔やっていたゲームでは人格を変えてしまうほどの影響があるときもあった。 常に最悪を想定しておけ (いつだったかアルファモンに言われたことがあったかな) 最悪を想定・・・? 最悪・・・? そういえば状況に動きが・・・? 結はハッとなる ジエスモンと戦っていたことで頭から抜け落ちていた要素があった 『時空のゆがみも感じた!』 確かにジエスモンはそう言っていた 一番の可能性としては デジタルワールドとリアルワールドがつながった可能性・・! 結は急いで気配を研ぎ澄ます するとかすかに見える倉庫で完全体レベルのデジモンの戦闘を感じ取ることが出来た そしてそのうちの一体の気配が消えかけであった (しまった・・・ジエスモンの攻撃を捌くことに気を取られて・・・もしこの消えかけの気配が頼賀ならばまずい!) 背後から攻撃を受けるのも厭わない形でジエスモンを無視してでも先に行こうとする結に (・・・待て、俺たちが来た方向から一体・・・さっきの五体の内の一体が来るぞ!!) オウリュウモンの言葉を聞き後ろを振り返る 全速力でこちらに飛んで来る吸血鬼・・・完全体のヴァンデモンがいた その目は必死な目であった。恐らくは廻陰が取り逃がしてしまったが追われているということなんだろう。結を人質に出来れば戦況が変わると考えるのは容易かった そして必殺技の構えをする・・・狙いは間違いなく結(こちら)だったが その射線に結を追おうとするジエスモンが被る だがヴァンデモンは構わずに必殺技を放とうとする・・・邪魔だから排除しようとする。ただそれだけなのだ。そして結のなっているヒシャリュウモンではもうそれを止める手段がなかった (こっちに集中していて気づいていない・・・!?まずい!) いくらロイヤルナイツでも背後からの不意打ちに大ダメージを負わないという保証はない そしてもし仮にジエスモンに何かあればこちらにも大打撃を被るのは明らかであった (狙いは僕だ・・・明確な敵じゃないジエスモンにここでダメージを受けてはいけない・・・!) (この世っていうのはなんでも出来るわけじゃない。俺はお前が頼賀たちを優先しても咎めないぜ) (おそらく姉さんはすぐそこだけど今は間に合わない・・・なら!!) 「ナイトレイド!!!」 ヴァンデモンが必殺技を放つ 「何!?背後から!!」 目の前に熱くなり過ぎていたジエスモンは不意をつかれる 急いで受けの体制をしようとしたが さっきまで向いていた方向から自身が追おうとしていた竜(ヒシャリュウモン)が割り込む (な・・・なぜ急に戻ってきた・・・まさか!!) ヒシャリュウモンがジエスモンを庇い『ナイトレイド』を全身に受ける 「ぐうっ!!あああああああ!!」 ジエスモンには意味が分からなかった 仲間でもなんでもなく今遭遇したばかりの、それも敵であるはずの存在が庇うなど ヴァンデモンの必殺技を受けヒシャリュウモンが飛ぶことを維持できなくなり地面に落下するところでジエスモンが両手でキャッチする 「なぜ庇ったんだ・・・敵であるはずなのに」 ジエスモンにとって解せない問であった。進化レベルはジエスモンの方が完全体の1段階上の究極体であるにも関わらず庇う行動に・・・ それに対して結(ヒシャリュウモン)は少し笑って答える 「あんたにとっては敵かもしれないけど、こっちにとっては違う。深手を負われるとアルファモンが困ってしまうから・・・かな」 ジエスモンにとっては信じられない内容であった このデジモンが自分と同じロイヤルナイツであり抑止力であるアルファモンの仲間であったことに動揺を隠せない 一方でヴァンデモンの方は会話の内容は分からなかったが白いデジモンが動揺している様子を確認した瞬間、追撃を放とうとする 「ナイトレイド!!!」 「誰の許可を得て」 一瞬だった 気配を感じる間もなく 『それ』はいた 「弟に手を出している」 放つより早く 後ろを向くよりも早く 胸を刺し貫かれた 「ガアッ!!!?」 その光景を見てジエスモンは動くことも出来ずにいた 動くことが出来たのは 胸を刺し貫かれたヴァンデモンを空に放り投げた『赤い竜』がこちらに寄って来た時であった 「結・・・!大丈夫か!!」 赤い巨体をしたデジモンは自身を庇った竜のことを『結』と呼んでいた 「何とか大・・・丈夫、姉さん、それ・・・よりあっちを・・・頼賀たちを・・・」 絞り出すように結が話した・・・ ああ、わかっている・・・そう言い赤い竜、ドルグレモンとなっている廻陰がジエスモンの方に顔を向ける 「あんたは・・・ジエスモン・・・なぜここに?・・・ん?そうですか、じゃあジエスモンと話をつけて」 なにかと話しているような話し方をして 一瞬で雰囲気が変わる 「ジエスモン、君が無事なようで良かった・・・私はアルファモン、と言っても今は完全体のドルグレモンだがね・・・彼女の身体を借りて今君と話している。」 その竜は自身ををアルファモンと名乗った・・・ 「今僕が無事なのは庇ってくれたからです・・・あなたがアルファモンというのであれば姿ぐらい見せてください。そうでなければあなたをアルファモンと認識はできません」 「ふむ・・・信用してもらうには致し方がない・・・か。いいだろう、一瞬だけだが究極体となろう。ただしあまり究極体での活動はできないことを分かって貰いたい」 そう言うとドルグレモンは光に包まれ一瞬だけ黒い鎧に青いマントをした騎士となった 「・・・」 「これでどうかな?信用してもらえるといいのだが」 「わかりました・・・あなたを信用しましょう・・・ですがあなたは『空白の席』のはずのです!事態を教えてもらいたい」 「ああ、約束しよう。だが今は私の仲間であるこの子らの友人に危険が迫っている。それもデジモンの力を悪用している者たちによってだ。私にとっても無関係では済まない事件なんだ。まずはそれを何とかしたい。協力してくれるかい?」 「庇ってもらった礼には足りませんが・・・はい。もちろんです。僕も確かめたいことがあるので」 「ああ、頼む。それとその子を頼む。今はダメージが大きく身動きを取れる状態ではないのでな・・・守ってほしい。廻陰、用が終わった、変わるぞ」 そう言うとアルファモンだった雰囲気が戻る そして三体のデジモンは異変の中心へと急ぐ 「うっ!!」 鈍い痛みが全身に広がり感じる (殴るなり蹴るなり・・・好き勝手・・・頼賀は・・・) 男に暴行されていた少女、菜月芽衣は自分の前に暴行されていた新庄頼賀に目を向けた・・・ 「ん?そいつのことが気になるのか?」 煽っているようにも思える様子で暴行するのをやめた (むかつくけど・・・確認するなら今しかない) 片足を引きずる形で立ち上がり、全身すり傷と打撲の身体で頼賀に駆け寄る (さっきから頼賀が動いてない・・・普通なら痛みで暴れたりするはずなのに・・・強大な再生力があっても痛覚は感じるはずなのに) 疑問の中で最悪の可能性が浮かび、必死に否定しようとする 芽衣が頼賀の腕に触れ動揺する 「ッ!?そんなはずっ!!」 勘違いだと思いたかった そんなはずないと思い 今度は胸に・・・心臓の上に手を触れる 「そんな・・・・」 そして絶句した 男たちは特に気にもしない様子で「ん?」と言っていたが今の芽衣には届かなかった 「『心臓が動いてない』なんてそんな・・・嘘・・・嘘だといってよ!!」 自分の肌で、その手で感じたはずのものを否定するかのように 芽衣は頼賀の頬をつねったり叩いたりしたが全く反応がなかった 芽衣の目から大粒の涙がこぼれ落ちる 芽衣の嗚咽を聞いた男たちは状態を悟り 「へぇ~そいつもうくたばっちまったか・・・よえーな」 「女がうるせえから同じところに送ってやってもいいですかね?」 「好きにしろ。どうせ死体でもやることは変わんねぇんだからよ」 男たちにとって二人はただの道具であった 自分たちが強いコマを得るための・・・ 男の一人が芽衣に近づいたとき 空が斬れた・・・正確には時空が 思わず男たちはその先を見る 芽衣も涙でぼやけた目でその先を見る そこから現れたのは金色の姿をし、両手が剣となっていてさらに背中に大剣をもつ・・・ 『デジモン』であった そのデジモンが現れると斬れた時空はふさがった 「へぇ・・・なかなか強そうじゃねーか・・・あいつもコマにしましょうや!」 そう言い男たちはデジモンの身体はデジモンへと変化した ある者は黒い人狼、ある者は昆虫の身体に竜の腕を持った異形・・・様々な姿に変わるが芽衣は一切目を向けずに何かに取りつかれたかのようにただそのデジモンだけを見ていた 男たちが変化したデジモンの一部が先手必勝のごとくそのデジモンに向かって走り出したその時 一瞬のうちにそのすべてを薙ぎ払った・・・少なくとも十は居た数を一瞬で・・・ そして薙ぎ払ったデジモンが芽衣たちに飛んで来る 心臓が止まっているとはいえ頼賀を見捨てることのできない芽衣は無謀だろうとわかっていても覆いかぶさって守ろうとする が、芽衣には一切の衝撃がなかった 否、届かなかった あのデジモンが薙ぎ払って飛んできた男たちが変化したデジモンより早く芽衣と頼賀の前に立ち、そして弾いた (守ってくれた・・・?) 芽衣が顔を上げるとそのデジモンの背中があった こちらが顔を上げたのに気付いたのか そのデジモンは顔だけをこちらに向けて 「俺は『デュラモン』だ・・・大丈夫か?」 とだけ言った デジモンが現れるだけでも訳分からないのに自分の意志で守ってくれて心配までしてくれている・・・ 残酷なばかりではないと希望を持てた気がした それになぜかは分からないけれど安心感があった 芽衣はうなずき 「私は大丈夫・・・でも彼が・・・頼賀が・・・」 倒れている頼賀に目をやりながら答える それを聞くとそのデジモンは前に向き直りながら小さな声で何かつぶやいた 芽衣にはその言葉を辛うじて聞き取ることが出来た 俺が・・・守るんだ そう呟くと守ってくれたデジモンは一瞬で残った男たちを薙ぎ払う (すごいはやい・・・これがデジモン・・・頼賀がはまってたやつ・・・) 何が起こっているのかは分からなかったがあのデジモンが戦っているのは分かった 芽衣に出来たのは見ることだけだった 数分が経ち、残りが三体となった だが、芽衣たちを守ったデジモン『デュラモン』は自身の身体の異常を感じていた (おかしい・・・身体が散り散りにになるようだ・・・くっ) その様子を芽衣が見て異変を感じ取っていた (あれ・・・?デュラモンの身体から・・・なんだろう光みたいなのが散っているような・・?それに苦しそう) そしてついに膝をついた さらに息が荒くなっていた その様子を見て人間状態の時に黒いコートと帽子を被っていたリーダー格の男・・・今は黒い鎧、マントを纏い、赤い槍を持ったデジモン・・・『ダークナイトモン』が口を開く 「ふふふ・・・流石にこの数では君であってもどうにもならないということかな?いや?それとも元からダメージがあって傷口が開いたのかな?」 嘲笑いながら考察を立てていた デュラモンはその言葉に耳を貸さずによろけながらも立ち上がる (まだ倒れるわけには・・・折角師・の気配がするというのに) それに 守らなければならない 本能に似た何かがそう叫んでいた 選択肢は二つだった 一つ目は二人を抱えてこの場を離れるか 二つ目はこの身体に鞭打って三体の相手をするか 一つ目は現実的ではなかった 完全体・・・それも三体からこの手負いの身体で撒ける可能性が低かった 二つ目も難しかった 自分の身体がどこまで持つかによる賭けであった 「ぐ・・・ならば」 とデュラモンが構えると 「無駄な抵抗はやめておとなしくしたまえ、自分の命を縮めるめるだけだぞ?」 ダークナイトモンが降伏を促す 「断る・・・ここで見捨てたら後悔してしまう」 それにと続ける 「俺の17年間の修行の意味が無くなる」 決意の目をしていた その目を見るとダークナイトモンは 「なら、死ね」 2体の配下を差し向けるが (持ってくれよ・・・) デュラモンは両手の剣を構え 「グラスラッシュ!!」 自身の必殺技で配下である2体を一撃で斬る!! それに間を開けず ダークナイトモンの懐に潜り込み 「はああああああああああああああああ!!!!」 背中の大剣を使い、わき腹に一撃をたたきこむ!! 「ぐあああああああああああ!!」 たまらずダークナイトモンは苦しみながら右手に持つ槍で反撃する 「ぐ、おおおおお!」 堪えながらまた少し、また少しと傷を広げていく 「ええい!ならば望み通り殺してやるぞ!!」 ダークナイトモンが自身の武器である槍で 「ツインスピア!!」 必殺技を放つ 「ぐ!!」 鈍い音が響き デュラモンの大剣が砕け芽衣の方向に吹き飛んだ 「デュラモン!!」 思わず芽衣が嗚咽の混じった声で叫ぶ 「随分とてこずらせてくれたな・・・だが、もう終わりだ」 ダークナイトモンが再び余裕そうな口調に戻る 残った芽衣はただの平凡な日常で過ごしてきた人間 廻陰や結みたいに鍛えたりしていない、並程度の身体能力 だからたとえダークナイトモンが深手を負っていようとも関係がなかった いや、そもそも芽衣はデジモンを宿しているわけではない。 故にダークナイトモンの視認は出来なかった それでも雰囲気だけで察知することはできた・・・デュラモンがいた影響だからだろうか (いや・・・こんなところであんな奴らに殺されるなんて) 芽衣は泣きながらも希望を捨てようとはしなかった 幼馴染である頼賀が死んだとしても 守ってくれていたデュラモンが倒れたとしても 諦めていい理由にはならなかった 頼賀の手を握り立ち上がろうとする (何も出来ずに・・・ただ泣いているだけで終わりたくない!) 「え?」 芽衣は何が起きたか分からなかった ただ分かったのは 『手を握られる』感覚だった 「・・・ガ」 ぼんやりと声が聞こえた・・・声自体は初めてのものであったがどこか懐かしかった 「・・ーい!」 なぜかは分からない・・・ 『二人分』の声がした 段々と意識がはっきりしていく 目を開けるような感覚を取り戻すとそこに『灰色と黄色の針のような毛をした』ものと『シューズを履いて黄色い体をし白い角みたいな前髪をした』ものがいた 思わず驚き後ずさりする 「良かったーやっとライガと会えた!」 「俺たちの第一目標は達成だな!」 そう言うとその2体はハイタッチをする 訳が分からなかったが これってまさか・・・ 頼賀にはその2体に見覚えがあった かつてはデジモンにハマっていたころ、とあるゲームとおもちゃで初登場したデジモンだったのだ そしてそのおもちゃで特に愛着を持って育てていた2体であった 「まさか・・・『エリスモン』と『パルスモン』・・・?」 その言葉を聞いた2体はさらに喜び 「やった!僕のこと覚えてる!!」 「俺のこともだ!!」 と大喜びしてしまった (ん?『覚えてる・・・・』?まさか・・・!) 「もしかして・・・数年前まであれで育てていたデジモンが君たちだっていうのか!?」 「「うん!」」 なんの疑問もなく2体は声をそろえて言った ゲームで育てたデジモンと会えるなんてゲームの中でしかなかったのに・・・ 一時の夢だとは思えず夢であっても 涙がこぼれ落ちる 「?ライガ泣いてる・・・悲しいの?」 「大丈夫かー」 すぐに涙に気づき心配してくれる それに答えようと ただ・・ 「嬉しいんだよ・・・でも謝りたいんだ」 「アヤマルって何を?」 エリスモンが不思議そうに聞く 「だって・・・あの頃からずっとお世話出来てなかったし・・・」 デジモンの存在を否定し始めていたあの頃・・・中学3年で親に趣味を否定されてから デジモンから離れ始めた・・・それからお世話できていなかったことを口にする 「それか?一応保管状態だったから何ともなかったが・・・」 パルスモンが少しだけしかフォローできなかったからかエリスモンが続ける あのゲームのように純真無垢な笑顔で 「僕たち、ライガともっともっと一緒にいたい!って思ったんだ!それでパルスモンと色々試したりしたんだけど・・・そしたらなんかいつの間にかここにいたんだ!!そしたらライガと一緒に居られて、今ではこうして気づいてもらえてお話しもできてる!僕たち今が一番嬉しいんだ!!」 その笑顔でのその言葉に頼賀の中で何かが砕けるような気がした ただ・・・涙が止まらなかった そしてこの言葉以外言えなくなってしまっていた ありがとう・・・こんな俺を・・・ 一通り泣いた頼賀は落ち着きを取り戻し 3人(?)で事実の確認をする 「・・・なるほど、気配の察知と結を庇ったときはエリスモンが強化してくれていたのか・・・」 「ごめん・・・その時の僕じゃそれが限界で・・・」 「謝る必要はないさ、こんな俺を手助けしてくれただけでもありがたいのに」 そしてと続ける 「俺の強大な再生力の正体はパルスモンがやってくれた生体電流の強化による自然治癒の強化ということなのか」 「俺にかかればその程度朝飯前!無事早めに回復してくれて一安心したんだぜー俺達」 「つまり命の恩人っていうことだよね。本当にありがとう」 『ありがとう』という言葉に反応したのか照れくさそうに顔が赤くなり前髪がとんでもなく動いていた お礼を言われるのに慣れていないのだろうか 思わずくすっと微笑んでしまう それを見たエリスモンも何かを感じ取ったのか嬉しそうに笑ってしまう 「笑うな!!これはその・・・とにかく笑うな!!いくら二人でも電気ショック喰らわすぞ!!」 恥ずかしさのあまりうまく感情をまとめられないままパルスモンがキレてしまった 「ごめんねーなんていうかギャップを感じちゃったから」 「ギャップって何?」 思わず出した言葉にエリスモンが反応した 「この場合は溝・・・差的な感じかな、ほら普段のパルスモンはクールというかかっこいい感じがしない?そこからのあの照れ具合・・・普段だけしか見てなかったら想像できないでしょ?」 「確かに!パルスモンはお兄ちゃんみたいな感じだけどあんなに恥ずかしそうな顔とか今まで見たことがなかったよ!」 エリスモンは良くも悪くも思ったことをそのまま言葉にしてしまった 「お前らやめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」 ビリッとした音ともに二人分の悲鳴が響いた 夢みたいな感じでも電気ショックはなかなかに効いた 「い・・・いてぇ・・・」 「まだびりびりするぅ・・・」 頼賀とエリスモンがまだ少し痺れているところに 痺れさせた張本人が話し出す 「んで、ライガ、今現実あっちがどうなってるのか把握してるのか?」 「?えーと・・・さらわれて・・・」 少しずつ覚えている記憶を引っ張り出してハッとなる 「芽衣・・・芽衣!!!」 大切な幼馴染のことを忘れてしまうなんて・・・と頭を抱える 「なあ・・・教えてくれ、今の俺はどんな状態なんだ。外は芽衣は・・・」 「えっとね・・・ライガとメイを守ってくれたデジモンが瀕死でなにか・・・消えかけてる・・・多分病院でアルファモンが言ってたことだと思う・・・存在を維持できないっていう・・・そしてそのデジモンが最後の一体・・・黒い鎧をしたデジモンに一撃を入れたところ」 気配に敏感なエリスモンがデジモンについて話し 「メイは無事・・・だけどダークナイトモンだっけ?がどんどんメイに近寄ってきてる」 それと・・・ 「ライガの心臓・・が止まってるんだ・・・」 意味が分からなかった・・・芽衣はまだ無事であるが芽衣を守ってくれた正体不明のデジモンは瀕死であり単体であるが故に消滅の危機に瀕していると だが何より 「俺の心臓が止まってる・・・?」 自分が事実上死んでいるといわれたも同然の発言に血が引いたような気がした 「じゃあ・・俺は・・・もう・・」 膝をつき絶望していると 「再び心臓を動かす方法はあるんだけどね」 パルスモンが言った 「でも心臓を動かせたとしてもあの・・・ダークナイトモンをどうにかしないといけないから・・・」 エリスモンが申し訳なさそうに小さな声で答える 「ねぇ・・・二人に確認したいことがあるんだけど」 頼賀は二人に対して質問を飛ばしてみる 「君たちの力を俺の身体で表現・・・例えば俺の身体をエリスモンとかにはできる?」 2体は多分とうなづいた 「なら次・・・仮にエリスモンになれたとする・・・もう一方の補助って受けられる?たとえば生体電流の強化で足を速くさせたり身体に電気を纏わせたり」 できるけど・・・と答えた 「じゃあ最後・・・どこまでの進化レベルまでできそう?」 エリスモンは 「・・・多分すぐに完全体とか究極体は無理だと思う・・・身体のダメージもあるしある程度慣れたり経験がないと振り回される結果になりそうだから・・・今は成熟期・・・フィルモンまでかな」 パルスモンの方は 「エリスモンとほとんど同じ・・・電気を操るコツとか掴まないと巻き添えやっちゃいそうだから・・・」 2体とも成熟期までの力なら許容できると それを聞いた頼賀は 「少し賭けになるけど不可能じゃない・・・成熟期程度の力でも構わない、芽衣を守りたいんだ・・・頼める?」 2体は互いに顔を合わせてからこちらを向き 力強くうなずいた まだ手段はある・・・あとはチャンスをものにするだけ 頼賀は芽衣のもとへ・・・現実へと急ぐ・・・ 例えこの出会いが現実でなくとも見捨てられないから 芽衣は握られた手を見て驚く 驚かないほうがどうかしていた 心臓が動かなくなってはや10分ほど 本当なら死んでいるはずの人間が息を吹き返すとは思わなかったから ゆっくりと頼賀の身体が動いていく そして芽衣の手に力を入れ立ち上がった 「ん・・・あれ・・・?これどういうじょうきょ・・・!!?え?芽衣の手を握ってゴハッ!!」 状況が呑み込めないまま芽衣が手を握っていることに気づいたが、その芽衣に頬を引っ張たれてしまう 「驚かすなばか!!」 泣きながら罵声を飛ばすが その目のまま 「良かった・・・死んでなくて・・・」 再び嗚咽が止まらなくなってしまっていた 頼賀は芽衣の背中をさすりながら 「心配・・・かけすぎちゃったかな・・・?」 と声をかける そこにダークナイトモンが動揺を隠せずに 「馬鹿な!!お前の心臓は止まっていたはずだ!!心肺蘇生もなしに蘇るはずがない!!お前・・・一体何者なんだ!!」 対する頼賀は立ち上がり芽衣から離れ 「さあね。こっちが知りたいくらい・・・と言いたいところだけどどうやらあれも現実だったみたい・・・二人には感謝しなきゃな」 「二人だと!?お前・・・チッ!!ならもう一度殺してくれる!!」 ダークナイトモンが槍を構えると 「殺されるのはごめんだから・・・」 そう言うと小さな声で 「エリスモン・・・パルスモン・・・頼む」 と呟き (うん!)(おう!) 2体の返事を聞き エリスモンと自分を重ね合わせるようなイメージをする 瞬間、頼賀の身体は光に包まれる 光が消えるとそこには成長期のエリスモンから進化した成熟期『フィルモン』がいた 「抵抗させてもらう!!」 姿を見れなくなったがその声は芽衣にも届いていた 状況を悟り芽衣はフィルモンとなった頼賀から離れデュラモンのもとへ駆け寄る 「大丈夫ですか・・・」 ダメージを負っているデュラモンへ声をかけた 「む・・・まだ、何とか、だが・・・あの者は一体・・・デジモンになったのか?」 頼賀のいるであろう方向を見てデュラモンは問う 「分からないけど・・・でもあれは頼賀・・・そう思える」 姿は見えないが雰囲気でそう直感する 「ならば・・・見せてもらうとするか・・・!」 状況ははっきり言えばフィルモン側が悪かった 自慢の素早さで翻弄しながら赤い爪でダークナイトモンへ攻撃をするが (こいつ・・・硬すぎるよ・・・ライガ~) (俺の電撃を纏わせればいけるか?) (いや、まだだ。出来れば決め手の時に頼みたい。それより足へのブーストはいつでもできそう?パルスモン) (合図があればいつでも行けるぜ!) (どこか・・・弱点があれば・・・) (ジャクテン・・・?それってあのわき腹みたいなところ?) (わき腹・・・?) エリスモンがわき腹と言ったので注視してみると大きく、まだふさがっていない傷跡が1か所だけあった (次の隙でパルスモンの強化で一気に懐に潜り込み、必殺技とパルスモンの電撃でケリをつける!!) 「その目・・・何かを狙っているな?ならさせずに動くのみ!」 フィルモンがなにかを狙っていることを悟ったダークナイトモンは瀕死のデュラモンとそのそばにいる芽衣に狙いを定め 「アンデッドソルジャー!!」 必殺技を放つ フィルモンはその方向を見て受け止めようとするが 芽衣が視線を送り指をさしていた なにかを察したフィルモンは構わず ダークナイトモンの懐に潜り込んだ 「ふん、最後には見捨てるか」 その様子を見て嘲笑ったが 突然デュラモンが起き上がり 最後の力を振り絞り 両手を構える 「グラスラッシュ!!」 放った必殺技はダークナイトモンの必殺技と相殺し合い再びデュラモンは膝をつく 予想外の事態にダークナイトモンは反応が一瞬遅れ 先ほど翻弄してきたよりさらに早く・・・電光石火のように距離を詰めるフィルモンに対応できず 「ライトニングスティンガー!!」 自身の必殺技でデュラモンが付けた傷跡に爪と針毛を奥深く刺し、エネルギーを流し込む いくら完全体であっても体の中からエネルギーを送り込まれれば痛いですむはずもなくもろに受けてしまう 「ぐううおおおおお!!」 それでも槍でフィルモンを串刺しにしようとするが (させねえぜ!!) 突然フィルモンの身体から稲妻がほとばしりエネルギーと一緒に電撃がさらに送り込まれる 感電してしまったダークナイトモンは槍から手を放してしまい 動くこともままならないまま受け続けるしかなかった 「おのれえええええええええええええええええええええ!!」 完全体であるダークナイトモンにとっては屈辱でしかなかっただろう・・・妨害やダメージがあったとはいえ自身より進化レベルが下のデジモンに、死にぞこないに完全敗北することなど エネルギーと電撃を流し終え、ダークナイトモンが倒れると 爪と針毛を傷から抜くとフィルモンは息を切らしていた 「はあ・・・はあ・・・死にかけてからのすぐにこれは体に来る・・・」 (すごい!本当に倒せちゃった!) (3人で力を合わせたりあの金色のデジモンの助けもあったけど・・・ギリギリだったな) 芽衣とデュラモンの方を見ると、結末を察したのか芽衣がはち切れそうなほど涙をこらえていた・・・既に泣いていたはずなのに だが芽衣は力なく倒れる え? そしてエリスモンの声が響く (待って!三体のデジモンが・・・それも結構強いのが来るよ!!) (んな!!) 「そん・・な・・・アガッ!!?」 身体をそのまま捕まれた 「この私をここまでコケにしたのはあなたが初めてでしたよ・・・せめてお前だけでも殺して差し上げますよ・・・二度と生き返らないようにね!!」 身体が・・・握りつぶされていく 意識が遠のく エリスモンとパルスモンの声も・・・聞こえなくなっ・・・・ 意識が途切れる寸前で 廃倉庫の壁を突き破る何かがいた 憤怒と殺意に満ちた赤い竜がこちらに向かってきて 額の剣で瞬時にダークナイトモンの傷に突き刺した 痛みによってフィルモンを掴んでいた手を放してしまいその身体が宙に浮かぶ そのままダークナイトモンは地面に叩きつけられ 「メタルメテオ!!」 赤い竜は鉄球を吐き出し 遅れてやってきた辰が追撃と言わんばかりに 「成龍刃!!」 自身を剣とし斬りつけた その2つの必殺技を受けてダークナイトモンは黒いコートに帽子を被った人間へと戻った 落ちるフィルモンを白い骨のような姿をしたデジモンが抱きかかえ 「大丈夫か?」 と聞く 「なん・・・とか・・・でも、そっちを・・・」 必死に指を芽衣たちの方に向ける その白いデジモンには金色のデジモンに見覚えがあったようでその名を叫んだ 「まさか・・・!デュラモンか!!」 すぐに駆け寄りフィルモンを赤い竜、廻陰のドルグレモンに託し問いかける デュラモンは少しだけ目を開き 「ああ・・・わが師・・・ジエスモン様・・・やっと・・・お会い出来ました・・・」 「待て!死ぬな!!ぐっ!!」 手の施しようがない 少なくともジエスモンの目にはそう見えていた 瀕死の重傷を負い、単体であるがゆえに消滅してしまう寸前であった状態では そこにドルグレモンが近寄り、アルファモンが表に出て 「まだ死んではいない・・・彼を助けるためには・・・芽衣の身体に宿すしか方法はない。致し方のない事態だが・・・芽衣も危険な状態だ・・・いいな?」 アルファモンが同意を求めて意識のある者はうなずいた ドルグレモンは再びアルファモンの姿、力を使い芽衣とデュラモンが重なり合う そこでフィルモンとなっていた頼賀は力尽き 人間、新庄頼賀へ戻り意識を失った
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てとちん
2022年8月06日
In デジモン創作サロン
注意 今回は個人的にグロっぽい場面がございます。ご注意ください あと若干本来の3ページ目に当たる後半部分がバグりました。直すのがめんどくさいので多分このままかもです。 世界は時に残酷だ 顔を知らずに若くしてこの世を去った兄・がいた なぜかは分からないけれど、ぬくもりが染みついているような気がした 『海を割ってみたい』 それが兄がよく口にする言葉だったようだ 子供特有の無邪気な願いだったのだろうと思う 時々思い出し、そして泣き崩れる みんなはそんな私をどう見ていたんだろう 泣き虫か 哀れか 過去に縛られる者か いくら考えても仕方がないのだ・・・過去は変えられないし変わらない そしてもう大切な人に死んでほしくないという願いだけが残る その願いも消えてしまうのだろうか 何もかも奪われるのだろうか 新庄頼賀と菜月芽衣が目覚めると、そこは特撮とかでよく使われるであろう倉庫跡のような光景だった 周りにあるのは捨てられた台車をはじめとした運搬器具があちこちにあった まずは互いの無事を確認し安堵する そしてすぐさま思考をめぐらす もし本当に跡地ならば・・・ここに来るものなど相当な気まぐれか何物をも恐れない好奇心か愚か者だろう・・・助けを期待するだけ無駄だ。位置を知らせられるものは何もない・・・ ふと考えてみる なぜ俺たちをさらったのか、わざわざ部外者である芽衣までも・・・あの速さでさらえるならば退院後を狙えばもっとスムーズにできたはずなのに まさか…芽衣も目的? その思考は目の前に現れたさらった本人と思われる者たちによってかき消された なぜかは分からないが異質なオーラみたいなのを感じた・・・あの時みたいに 1人・・・黒いコートと帽子をかぶった男が口を開いた 「よぉ、会いたかったぜぇ、新庄頼賀君」 ヤンキーみたいな言い方に一瞬戸惑いを感じた だがすぐに気を取り直し口を開く 「なんで俺の名前をフルネームで知っているかわかりませんけど。俺の方は会いたくはありませんでしたよ」 「んだよつれねぇな」 「初対面の相手にそれを求める方がどうかしていると思いますが」 「へぇ、そういう返しができる程度には冷静なんだなぁ」 そう言いながら男は笑みを浮かべる そこに芽衣が突っ込む 「んで、聞きたいことがあるんだけど」 「ん?なんだいお嬢ちゃん?」 明らかにお嬢ちゃんという言葉に反応し苛立ちを覚えたのがよく分かった それでも芽衣は率直に問いをぶつける 「なんで私たちをこんなところに拉致ったの。その様子だと身代金目当てっていうわけじゃなさそうだけど」 「へぇ、勘がいいんだねぇ君、気に入りそうだよ」 「どうも」 苛立ちが頂点に達しそうな芽衣に男たちは愉快そうに笑っている 確認できる限りで3人いた 二人目の男の言葉で目が覚めるような感覚になる 「お前が俺たちの舎弟どもを蹴散らした奴の仲間か・・・ひょろすぎて強大な再生力を持ってるのか疑問が残るけどな!」 舎弟・・・恐らくはあの四人のことだろう・・・デジモンになって襲ってきたやつらの上ということは、確実に強い・・・恐らくは完全体以上 このままでは二人とも殺されてもおかしくない状況 だが、再生力というワードが引っかかる・・・あいつらの狙いは何だ SF映画のごとく自分たちに移植でもするつもりか それともほかに利用価値があるのか 幸い結一人のことしか言っていないがどこまで知っているのか・・・ だが本命は分からなくても一つだけ確実にわかることがあった 「俺たちを餌にもう一人をおびき寄せる気か!」 「まあ、それもあるな」 黒いコート男が意味ありげに答えた 「舎弟どもの話ではとっても仲間思いなやつっていう話だからなあ、たとえお前たちが死体・・でも来るだろうさぁ」 「っ!!何が何でも潰すつもりか!!」 「あぁ?少し違うかなぁ!そいつには俺たちの手足になってもらうぜぇ!!」 最悪に近い答えが返ってきた そしてそれはこの場で唯一、不良どもを倒した結に宿るデジモンの正体を知っているが故に最悪な答えだった。 それに弟思いで俺達ともそこそこの交流を持つ結の姉の廻陰さんも動かないわけがない しかも二人とも二体のデジモンの力を最大限に使うわけにはいかない事情がある それに死体でも俺たちを盾にでもされたら温厚な二人なら攻撃をためらうのが嫌でもわかる 万が一ロイヤルナイツとそれに匹敵するデジモンがやつらの手に渡ったら取り返しがつかなくなる こちらの表情を見て二人目の男が面白そうに言った 「へぇ、お前の表情から察するに相当強いんだなぁ。ま、イレギュラーは起こらないようにするに限るかぁ!!」 「ガハッ!!」 思いっきり腹を蹴られた その光景を見て芽衣が思わず悲鳴を上げる (また腹を蹴られるのかよ!) 思わず倒れながらも咳き込む 「まぁそういうこったでお前らには死なない程度に苦しんでもらうぜぇ?ハハハ!」 男の高笑いが聞こえてくるような気がしたが痛みでそれどころではなかった 段々と身体がけいれんしていってるような気がした 意識がもうろうとしてくる中で聞こえてくる 次はお前だなぁ! 芽衣にまで暴行する男の声・・・そして聞こえてくる芽衣の悲鳴・・・ ああ、俺は無力だ 何も出来ずに 惨めで 愚かで そして今度は幼馴染を 少なくとも芽衣はこの状況をどうにかできる人間ではない 無力であることの絶望 (信頼されてたのに・・・何も出来なくて・・・) 「ごめん・・・やっぱり俺じゃ・・・何もできない・・・」 意識が消えていった 何かが斬れたような音を最後に その頃、上空では一匹の竜にも似た赤い体に頭に剣のような角に赤い物体で巨大な体な翼を持ったなにかがタブレットを見ている一人の少年を載せて飛んでいた 「どうだ?場所は分かったか?」 竜が口を開き背中に乗せている少年に問いかける まぎれもない人の言葉で喋っていた 「うーんとね、もうそろそろ反応のあった場所だよ、姉さん」 その少年は竜のことを姉と言った 「全く・・・悪いことは続くものだな・・・結」 「さらには芽衣まで巻き込まれるなんて」 「頼賀君ならこの状態の私を廻陰と認識してもらえるだろうが・・・ぐぬぬ」 新月姉弟が頼賀と芽衣を探すことになったのは一本の電話だった 育ての親であり恩人でもある新月藍から 「今朝、頼賀君と芽衣ちゃんが病院から出てから戻ってきてないの、それに車椅子と日傘が近所の公園で見つかったのよ。何かトラブルにあったかもしれないからあなたたちでも調べて頂戴!」 幸い頼んでおいた発信機を仕込んでくれていたので大体の場所は分かっていた、がしかし一つだけ懸念があった デジモンの力を誰かが使ってしまうと電子機器に異常が出る可能性があるのだ だから一刻も早く場所を特定する必要があったのだ 赤い竜、『ドルグレモン』となった廻陰の背に乗りナビゲートする結 誰がこんなことをしたのかは想像がついていた 「頼賀を狙っているということは不良どもの上・・・かな。本命は僕だろうけど」 「弟まで狙うのなら殺すのも考えるか・・・」 「それは最終手段でお願いします」 弟思いが故にとんでもなく物騒なことを言う廻陰に結はくぎを刺す だがあまり手段を選んでもいられないので最終手段ということで妥協せざるを得ない・・・ 五分ほど空を駆けていると突然発信機からの信号が消えた 状況が動いたということだろう 急ごうとしたがそこに・・・ 「おやおや、来るのが速いですねえ」 聞きなれない声が聞こえたふと周りを見渡すと 5人・・・いや五体のデジモンが周りを取り囲んでいた 明らかに待ち伏せをされていた 猫が擬人化したようなデジモンがリーダーのようだった 「すまないが通してもらえないだろうか、急用があってね」 廻陰がひとまず急用ということで通ろうとするが 「あら、急用とはあの二人の子供かしら?背中に乗せているのは、もう一人の方ね。まさか大きな竜まで釣れるなんて運がいいわ」 明らかにこちらの目的を理解している口ぶりであった そして狙いがもう一人の方・・・結だということが明白であった それに釣れたとも・・・二人とも始末か引き込むのが狙いだろうと勘が言っていた この状況から瞬時に判断した 「結、時間は精一杯稼ぐ、二人の元へ迎え」 廻陰がそう言うと結が立ち上がりタブレットをしまいながら OK 「容赦 できそうに ない けどね!」 というと光に包まれる 光が収まるとそこにいたのは新月結ではなく、 赤い体がベースでところどころ鎧のような金色の部分があり、左右にそれぞれ異なる水晶を持つ辰のような姿となった デジモンの種族としてはこう呼ばれている 『ヒシャリュウモン』と これを見て五体のデジモンは歓喜する 「ふふふ、まさかもう一人の方はデジモンの力・・・それに完全体の力を持っていたのね!!それじゃあ何としてでも捕まえないとねえ!!!」 「悪いが、押し通る!!」 結が叫ぶのに呼応するかのように 「メタルメテオ!!」 新月廻陰がなっているデジモンであるドルグレモンの必殺技を叫び 口から巨大な鉄球を吐き出した 突然の必殺技に不意をつかれた五体のデジモンの内、正面にいた白いローブにも似ている何かを着ていたデジモン、ワイズモンを巻き込み突破口を開く すかさず結・・・ヒシャリュウモンは全速力で正面突破をする ワイズモンの横を通り過ぎるときに止めと言わんばかりに 「成龍刃!!」 自身の必殺技でさらに叩ききっていく 突然の強行突破に驚きつつも2体のデジモンが結の後を追おうとしたが素早く廻陰が立ちふさがる 「ふ、さっきとは逆の立場になったな。時間が惜しい、全員なぎ倒させてもらうぞ!!」 「へえそこまでやるのね・・・連携はばっちりと言ったところね、でも残念、完全体同士の4対1、この差は覆せるかしら?」 廻陰の相手は4体・・・デジモンの知識がなければ危ないところだったが 「まずはやってみなければわからない」 にやっとし 「話はそれからだ」 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 結論から言って、一体を不意打ちで落とせたところでまともに・・・・やりあえば勝ち目は薄い が、不可能ではない たとえ進化レベルが同じであっても機転を利かせたり経験で実力は何とかなる場合がある (さて、五体で翻弄されたら流石にきつかったが、結が一体落としてくれて助かったな。) 先に行くなら少しでも楽させたいという優しさを感じた 2分ほど戦ってはいたが 「・・・そろそろ降参してくれると嬉しいんだがな」 面倒なのが嫌過ぎてついこぼした 「逆にそっちが降参してほしいんだけどねえ!!」 相対するのは猫のような容姿をしたデジモン、『バステモン』 図鑑によれば魅了して骨抜きにするデジモンのようだが、あいにく廻陰は女なので鬱陶しいの一言になる 「さっきから全然攻撃してこねえなあ!さっきので疲れちまったか?」 二体目、紫色の大きな鳥・・・『ヤタガラモン』 必殺技の中にデジモンを分解する技がある・・・要注意だな 「おらおら!」 三体目、青色のサイボーグ恐竜『メタルグレイモン(青)』 ミサイルとアーム・・・遠近両対応なのが面倒だな・・・ 「んふふふ、さあさあ踊れ!」 四体目、夜だとかなり強い、『ヴァンデモン』 蝙蝠がめんどくさいが・・・疑似的に夜を再現できたらまずいな (アルファモン・・・ごめん、容赦できそうにないから強化(ブースト)をいつでもできるようにしておいてもらえる?あと加減も) (ああ、仕方がないだろう。相手の想定を超えていかないとこの戦いは難しそうだ) アルファモンへ頼み終えて本格的に攻撃を開始する・・・その目は殺意をも纏った冷酷非情な目をしており四体のデジモンを威圧する まるで全く別の存在を相手にしているかのように錯覚させる 突然の雰囲気の豹変に思わず恐怖してしまい判断が遅れる 竜はその一瞬の隙を逃さなかった ドルグレモン(廻陰)はその一瞬でヤタガラモンとの距離を詰め 頭部の剣で首元を串刺しにした 「な・・・」 串刺しにされたヤタガラモンは絞り出すように声を出すが 最後まで言えることはなく人間の姿に戻る 首元に傷があり血が噴き出る ドルグレモンは服に着いた埃を払うかのようにその人間を剣からポイッと捨てた 「・・・ブラッディータワー」 静かに必殺技を口にする 剣から解放されたその人間は重力によって落ちていき、そして・・・ ほかの三体はあっけにとられただ呆然とする 一方でドルグレモン(廻陰)は 「これだから嫌なのよね・・・うわっ血汚いなあ、鉄臭いからさっさと終わらせて結とお風呂入ろ」 気にも留めずただ呟いていた 「あ・・・あんた一体何なのよ!!」 目の前で仲間が致命傷を受けたバステモンが動揺を隠しきれないまま叫ぶ 対するドルグレモンは 「ん?」 抜けたような声で答えた 「デジタルモンスター(電脳怪物)さ。あと全員なぎ倒すって言わなかった?何より私たちの大切なものに手を出してるんだよ?それ相応の覚悟あるって思ったんだけどその程度だったのね」 吐き捨てるように言った 対するバステモンは怒り狂い 「きさまああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」 俊敏な動きで一矢報いようとするが 「よっと」 「!?」 ドルグレモンがバステモンより素早く動き、翼でバステモンのバランスを崩した 「いただきまーす」 そしてドルグレモンの巨体ゆえの大きな口でくらいついた 無論、バランスを崩していたため何も出来ずに牙がお腹に食い込んだバステモンは言葉にならない悲鳴を上げる そんな悲鳴を聞き流すかのようにドルグレモンは徐々に顎に力を加えていく 「イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」 バステモンを牙で貫こうとしているドルグレモンはまともにしゃべることが出来ないので (そんなにいやだったらさっき降参してくれればよかったのに・・・) (ここまでされるのはのは予想外だったんだろう、相手が悪すぎたな。誰だって死ぬのが怖いと思うが・・・そうかお前は弟のためなら手にかけるのもかけられるのも厭わなかったな) 廻陰のぼやきにアルファモンが反応したが止めはしなかった。恐らくはデジタルワールドではこういうのが日常茶飯事だったころがあったのだろう 「ふぇい」 咥えているのでまともなしゃべりが出来ずにバステモンのお腹を牙が貫く 貫通したのを瞬時に確認し吐き出す バステモンが人間の姿となり落下していく 「………不味い」 その光景に恐怖したのか残りの二体は呆然とするしかなかった まともにやって勝てるわけがない・・・そう悟ったかのようだった だからか廻陰には不穏な雰囲気をまとっているかのように見えた すこし話し合ったの見るとヴァンデモンが結の向かった方向に全速力で飛んで行った そしてメタルグレイモン(青)が突然ドルグレモンの方に向かってきた (なるほど、ヴァンデモンが結を捕らえて人質にしこいつは私を抑えるということか) 狙いは瞬時に分かった だが過程までは見通すことが出来なかった 「な・・・に?」 あろうことかメタルグレイモン(青)はドルグレモンを羽交い絞めにした サイボーグ型である特徴を生かした防御力でドルグレモンの抵抗にも耐える (ゼロ距離で『ギガデストロイヤー』を放つ気か!) 『ギガデストロイヤー』サイボーグ化されたメタルグレイモン共通の必殺技 胸の砲台から二発のミサイル・・・一発で核ミサイルと同等の威力を誇る設定だ ゼロ距離ではいくらドルグレモンでも防ぎようがない (耐えきる・・・は現実的ではないな、手先にするためならばダメージの大きい状態でいるのは危険だ。かといってこの状態では出来ることが限られる) もがきながらも思考をめぐらす がもはや時間の問題でしかなかった 頭の剣では位置が悪く首元や腹には当たらない、もちろん口も封じられたようなものだ 翼だけで何とかなる保証もない ・・・防御力の高さでごり押しされてしまっては圧倒的にこちらの分が悪い 「はあ・・・」 そうため息をつくとドルグレモンはもがくのをやめた 「やっと諦めたか?」 力を緩めずにメタルグレイモン(青)が問いかける 決して油断はしていなかった 「ああ、ご自慢の防御力で拘束されてしまってはどうにもならないということがわかったよ」 「なら、降参か?」 やっと収まったかのように安堵した が無視しドルグレモンは話を続ける 「確かにこの状況、このまま・・・・では勝ち目はないな」 アルファモンとの約束上、究極体としての力を使うわけにはいかない廻陰の次の一手は 「私がデジモンの力以外で戦えなければだがな」 「はあ?なにいって・・・!?」 その瞬間、ドルグレモンは光に包まれ小さくなっていく・・・年相応の容姿をした人間、新月廻陰に戻ったのだ 予想外の行動に思考が追い付かなくなりメタルグレイモン(青)は呆然としてしまう 「行くよ・・・」 (やれやれ、やはりこうなるのか) すると廻陰はにやっとし叫ぶ 「強化(ブースト)、起動(アクティブ)!!」 その瞬間、廻陰はすさまじい速度で何倍もの巨体であるメタルグレイモン(青)に突撃し その拳で殴り頭部の装甲を砕きつつダメージを与える 唯一まともにデジモンと殴り合った作品では『デジソウル』というものをまとって殴っていたが 今回はアルファモンのエネルギーの一部を肉体に少しだけ表現させて文字通り肉体を強化したのだ 無論、大本が強ければ強いほど恩恵が大きい (鍛えておいてよかった・・・おかげでこんな状況にも対応できるようになったし) (いくら鍛えてもそこまで行くことはまれだがな・・・それで、この後はどうするつもりなんだ?ひとまず私の方で加減はして辛うじて死なないようにはしたが、やつらは風前の灯火だぞ?良くて昏睡だがな) (殺すと結が騒いだり頼賀君らから変な目で見られちゃいそうだからね) (・・・既に見られていると思うが?) (嘘・・・でしょ・・・どこがなんだ!!) (表立った主な行動全部) (うわああああああああああああああああああああああああああ) アルファモンがツッコミを入れ次の行動を問う 廻陰の強化込みの拳を受けてメタルグレイモン(青)は人間の姿に戻り地面で伸びていた 少なくとも六時間は目覚めないだろうと 「とりあえず」 そう言うと廻陰はさっきの『ドルグレモン』にもどり飛翔する 落ち着いたようだ 「結の後を追わなきゃいけない・・・まだヴァンデモンが残ってるし・・・それに大きな気配を感じる」 一抹の不安を感じながらもその翼で目的地へ急ぐ
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てとちん
2022年7月13日
In デジモン創作サロン
・・・・・・・・・ その二体は少し表に出て自己紹介をした後ひっそりと中で過去語りを・・・他愛もない会話に耳を傾けて苦笑していたりしていた・・・ そしてその二体はそれぞれ思うところがあったりもしていた 「家族・・・か」 「あれってなんで相棒が駆けつけれたんだっけ?」 「あのときは手を貸す程度しかできなかったが・・・彼が宿っている云々抜きに助かってよかった・・・」 「こいつが自覚してないだけで俺はずっといたから、あいつを初めて見た時え?何あいつ応急処置できるし、よく抱えて運ぶとか考えついたな、そして実行していく」 「里親とはいえ無理を言ったな・・・しかしこれが成長といったところか」 「いいねえ・・・泣けてくるぜ」 「「人もデジモンも成長していく・・・手を取り合うことでも」」 「猟奇的殺人・・・こいつならやってもおかしくはないかもな」 「死体処理めんどくさいっていう理由で絶対やらないだろうな・・・」 「本当に半殺しにしそうだからやめてくれ・・・」 「おーやれやれー」 こちらに意識が向いていないことをいいことに普段からは分からない素(?)となり各々好き勝手考えたりしていた・・・彼ら的には割とアウトラインの発言になっていそうだが・・・ 二体はリアルワールドの裏のことを知ったからには事件解決に向けて協力者になってほしいと考えていた・・・もし仮に彼が究極体クラスのデジモンを宿していた場合、いつ発現するかは別として大きな戦力になり大きく動くかもしれない・・・姉弟の次に我々の話を聞いて頭がパンクしないかと不安になりながらも再び表へと動く ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 「・・・ところで」 個室の病室のベッドでとある事件のけがで一時的に四肢が動かせず横たわっている少年、新庄頼賀(しんじょうらいが)が口を開いた 「「どうした?」」 それに同時に反応したのは二つのパイプ椅子にそれぞれ座っているのは、一応義理の姉弟である二人、頼賀の一歳上の新月廻陰(しんげつみおん)と頼賀の同級生であり友人である新月結(しんげつゆい)の二人である とりあえず二人とも反応したことに安堵し続ける 「さっきのさ・・・確かアルファモンとオウリュウモンだっけ?の言ってた事件が何なのか知りたくてさ・・・うーんと・・・二人?を呼んでもらえない?」 おっけーと緩い感じで二人は少し黙る 次に動いた時にはあの時の異質な雰囲気をまとっていた 「ちょうどいい、私も君にそのことを話したかったんだ。それに今の我々の状態も知っておいてほしくてね」 廻陰に宿っているアルファモンが表に出て廻陰の口で話す また、それに続いて結に宿っているオウリュウモンも表に出て口を開く 「へえ、アルファモンも俺と同じこと考えてたんだな~忘れてるかと思ってたぜ」 少しにやにやしながらアルファモンに絡んでいくオウリュウモン 「私の記憶違いであればすまないが、君はデジタルワールドにいたころからほかのことで頭がいっぱいになって大事なことが抜け落ちることが多くなかったかな?」 記憶違いであればと言ったものの真剣なまなざしでオウリュウモンをにらんでいる 「さあ?なんのことやら」 追及を逃れようとごまかそうとするオウリュウモン・・・大体、関係が新月姉弟と似ているように感じながら頼賀は恐る恐る二体に問いをぶつける 「あの・・・お二人の言っていた事件について・・・あとさっきの結が言っていたデジモンになれるって結や廻陰さんでもできるんですか?」 「デジタルワールドの事件についての質問には私が答えよう」 といいながら結に宿っていて今表に出ているオウリュウモンを睨みつけながら言った・・・恐らくは・・・さっきのことだろう・・・・ そしてアルファモンが語りだす 人間世界で16年前に私は人間世界を訪れたことは廻陰が語っていた・・・そして廻陰に宿り命を共有化させて今まで共に過ごしてきたことも、その過程で結と出会い・・・ともに人間世界に訪れていたがはぐれてしまっていたオウリュウモンとも合流することが出来た さて・・・事件のことだが 簡単にはデジモンが行方不明になる事件が多数にわたって起きていた 正確な数までは分からないが少なくとも数年で一万件以上だ、さらにはダークエリアからも消失しているとも管理者であるアヌビモンから報告が来ている・・・中には七大魔王やロイヤルナイツ、三大天使といった良くも悪くもデジタルワールドのバランスを保っている存在の一部まで消えていた この事態にイグドラシルは未曽有の危機と判断し、私(アルファモン)に人間世界の調査を命じた 私はそれに従い、相棒であるオウリュウモンとともに人間世界へと訪れた・・・ただしいろんなアクシデントに見舞われたが・・・あとは二人が説明したとおりだ 「デジタルワールドからデジモンが消えてる!?しかも七大魔王とかロイヤルナイツ・・・三大天使まできえてるって・・・」 デジタルワールドについては空想の中の作品として書籍とかの情報しか知らない頼賀でも、事の重大さを理解するのが容易いほど代表的なワードであった (最強クラスの力を持つ魔王・・・七つの大罪が元のデジモンだったな・・・私利私欲的思考な奴が多いから・・・ダークエリアから解き放たれた状態ならまずい・・・) (ロイヤルナイツも何体か消えてるんだろ・・・?デジタルワールドの各地を守護している存在が消えてるってことは治安とか荒れていそうだ・・・) (三大天使・・・デジタルワールドの中枢である『カーネル』を守護する天使・・・何体かってことは一体は残ってるはずだが・・・) 主な三種のグループ・・・これだけでもいろんな意味で欠けたら不味いことを理解し恐怖する 不安な顔をしながら頭を抱えている頼賀にオウリュウモンが口をはさむ 「すまねぇがそろそろ俺のも話しておきたい。いいか?」 オウリュウモンの言葉を受けて、寝るときに整理しようと思い、今は置いておくことにしてうなずく 「よし、俺からは『結と廻陰がデジモンになれるか』だが、結論から言えば出来る」 ただしと付け加えて 「残念ながら究極体としての活動はかなり難しい。理由としては大きな力を使えばいろいろと面倒なことになるんだよ、敵対するやつに目を付けられやすくなったりしてな、もしそれが七大魔王ならさらにやばくなる。俺たちとしては二人の身体を借りてる身だろ?一応学校とやらにも行ってるし日常生活に支障が出ない程度で協力してもらう形をとっている。」 「ま、戦闘になっても二人は鍛えてるから大体体術で片づけてたりするけどな、万が一の時は成熟期や完全体クラスに落とした状態で戦ったり、俺たちが力の供給をして身体能力の強化(ブースト)をしたり武器の生成なんかで対応はできるようにはしている。あと俺たちは人間同士の戦いには積極的に干渉しないスタイルだからなー、デジモンがらみの時にしか力は使わない約束にしている。命の危機だったら致し方なしだけど」 こんなもんかなと一通り話し終わったオウリュウモンの話を頼賀は整理する (まあ、そんなに都合よく力は使えない・・・と立場上の理由であったり、共存的な形をとるために・・・) だが (いくらなんでも『鍛えてる』から大抵何とかなるは無理があるだろ?!確かに俺は結との腕相撲で一回も勝ててないけどさ!?あと生身でデジモン殴り倒す人とかアニメでいたけどさ!!) 理解できない領域に入ってしまい混乱する そこでふと思い出した。 デジモンがらみの事件が 自分が重傷を負ったときにもデジモンが関わっていたと そして確認しようとする 「俺のけがの時は相手をどうやって気絶させたんだ・・・?」 オウリュウモンが少し何かをためらったが 「ああーそれね」 「結が強化なしで殴り飛ばしちまった。そしたら全員気絶したってことだ。まあ強化無しでも俺が抑えなかったし、割と強めに殴ってたから人間の身体だったら頭蓋骨砕けてるだろうな」 最後にしれっと聞き捨てならないことを・・・ (強く殴ったら頭蓋骨が砕ける!?え?次元が違いすぎるんだけど!!) 激しく動揺しているとオウリュウモンが 「あ、最後のは冗談ね(笑)、結がそう言えば面白くなるって」 と笑いながら付け加えた。そして 「いやー結の中で君との会話とかずっと聞いてたけど、本当に冗談が通じないんだねー(笑)。はっはっは」 (殴るか叩くかしたいけど・・・タイミング悪く手を動かせないし・・・) 冗談でからかうオウリュウモン(と結)とぐぬぬと悔しがる頼賀を眺めていたアルファモンが呟いた 「人間とデジモンは互いに影響しあう・・・このような同化でも起こるのだな」 そう呟いた後にオウリュウモンが表に出ている結にデコピンを喰らわせ いてぇ!!と叫ぶオウリュウモンを横目に、彼の説明に付け加える形で 「この世界では人間と同化するという形でデジモンは存在している。あるものは我々のように人間の意識との共存を成功させている、またあるものは君たちを襲った連中のようにデジモンの力を使役するだけ、また、その逆であるデジモンが実質的に主導権を握る・・・君の場合はどうなるのか・・・まだわからないが」 と一息ついて続ける 「私としては共存の線が近いと思っていると思うがね」 「どうして・・・ですか?」 いきなりそう言われて頼賀は困惑する 「仮にも結を守りたいという意識で力を使っていたんだ。それに君はデジモンに対してかなりの知識と興味を持っている。私が知りうる情報だけでも、おもちゃやゲームの中ではそれなりの愛着を持ってデジモンと接していたと感じることぐらいは出来る」 ならばと続ける 「君は宿っているであろうデジモンと会いたいと思うはずだ。こうして我々がいるのならば・・・と」 「そんな・・・こと・・・」 的確に突かれて再び動揺してしまう・・・今日は何回動揺すればいいのか・・・ 「君は宿っているであろうデジモンと真剣に向き合えるはずだ。私たちの話にも真剣に向き合ってくれた君なら」 かなり信頼されているのか、優しくも力強いエールをもらった気がする・・・ 「まあ・・・いつになるかはわからないけど・・・頑張ってみます・・・」 曖昧な返事だが、揺るぎのない決意を確認したアルファモンは廻陰と入れ替わる 「アルファモンの観察眼すごいなあ」 (絶対にあんたの情報収集能力が影響してるだろ・・・) 廻陰の言葉に若干のイラつきを感じてしまう・・・ オウリュウモンも結と入れ替わったようで 「まあ僕たちに少しでもいいから協力してくれると嬉しいんだ!こっちも相談事とかも聞くから・・・さ?」 「断ると思うか?俺のできる範囲でよければ手伝うぜ(今はまだ非戦闘員だけどよ・・・)」 複雑な気分になりながらも結の・・・四人(?)の頼みを受ける 「ちょっと入るわよー廻陰ちゃん、結ちゃんもう面会時間終わっちゃうわよー」 切りがよくなるのを待っていたかのタイミングで頼賀の担当医であり新月姉弟の育ての親、新月藍しんげつらんが病室に入ってくる そんなに時間が経ってしまったのかと驚いてしまう 「はーい、じゃあ頼賀、また明日お見舞い来るねー」 そう言って結は廻陰と藍先生を手を引っ張ってさっさと病室を後にした 居なくなったのを確認して頼賀はこの時間に見聞きしたことを整理する・・・ (新月姉弟の真相とデジモン消失事件かあ) (究極体のデジモンが宿っているとはいえそう簡単には使えないか・・・そりゃそうだ、特に最強クラスに位置する二体だからこそ狙われるリスクが高くなる・・・それに切り札として使わないと見切られたりもする・・・かなり複雑な事情なんだな・・・) (ああ・・・今日また寝れば・・・明日には動けるようにならないかな・・・) 「再生能力さん・・・お願いします」 つい言葉にしてしまい一人赤面してしまう・・・何言ってんだ俺は・・・と 結がいたら絶対にネタにされちまうよ・・・今日からかわれたのもあってか恥ずかしすぎて投身自殺まで考えてしまいそうだった・・・まだ足動かないけど そして落ち着くとアルファモンから言葉を考える 「デジモンに対しての愛着・・・ねえ」 (俺は・・・もし仮に・・・育てていたデジモンがそのまま宿っていたら・・・俺は向き合えるんだろうか・・・そうでなくても・・・そのデジモンの全てを受け入れられなければ・・・真の関係は気づけない・・・そんな気がする) これ以上はよくない、鬱になると考え目を閉じる 思考を張り巡らしていたからなのか 一瞬で 眠りに堕ちた ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ (あれだけ話して大丈夫だったの?) 夜道を歩く中 そう、問いかける結 対するオウリュウモンは (別にいいだろ、下手に隠してお前の友人関係壊したくなかったしな) (優しいね・・・) 自然と微笑んでしまう それを見た廻陰が話しかける 「まあ、後は彼次第・・・明日には動けるようになってるかね・・・」 廻陰がそう言うとエールを送ったアルファモンが答える 「あの速度だ、遅くても明後日までには治っているだろうさ・・・あとは彼がどう邂逅するかだ・・・知りすぎて意識した結果苦しまなければいいが」 あと・・・と続ける 「彼もこの前の事件の関係者だ・・・面倒ごとに巻き込まれないといいが・・・」 ・・・警戒しておこうと四人が静かに同意する・・・囮的な感じになるのが心苦しいが 「そういえばこっちではデジモンって空想の産物でほぼ固定概念になってるから普通の人間じゃ認識がほぼできないって伝えましたっけ・・・?」 「「「「あっ!!(;゚Д゚)」」」」 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 「ふぁあああ~」 翌朝になり、頼賀はいつものように身体を起こし目をこする・・・身体を起こし目をこする? 「・・・・・あれ?マジで?昨日は全く動かなかったのに動くんだけど・・・」 昨日に言われた『俺に宿っているデジモン』の影響で得た異常な再生能力とやらで本来なら一週間目覚めないはずなのが二日で目覚め、三日で体が動くなるようになる・・・自分の身体なのに恐怖を感じる・・・されにそれは一端でしかないという・・・ だがそれにしても多すぎるような・・・ 一体のデジモンでもここまで多くの能力を持っているのはまれ・・・もしかしたら人間よりもその種族の強めの再生能力が影響しているのか? あれこれ考えていたが何も浮かんでこなかった そうこうしているうちに一時間が経ち面会可能時間になったりした そして日曜日であるがゆえの来客があった 「やっほー久しぶりー体調はどう?頼賀君」 頼賀より一回り小柄な少女でネガティブを知らないさそうなほど明るい顔が扉から現れた 「やあ、久しぶりだな・・・何か月ぶりだったか?芽衣」 久しぶりの幼馴染である菜月芽衣(なつきめい)との再会が病室だということに苦笑してしまう 「たぶん4か月ぶりだねー高校進学から一回も会ってないからごめんねー土曜日授業だったりで忙しくて来れなくてー、けがの調子はどう?」 ゆるくふわふわした話し方に懐かしさを感じる 「2日昏睡して昨日目覚めた。頭と首と顔しか動かせなかったけど、今日起きたらほとんどいつも通り動くようになったよ。多分近日中に退院できると思う。勝手な推測だけどな」 「ふーん、死にかけた割にすんなりと退院できちゃうんだ」 「それを幼馴染に言うことかよ・・・変わってないなあ」 それはお互いさま・・・と二人はそろって笑う 二人は幼稚園年中時代からの付き合いで中学までは同じであったが高校で別れてしまった そのため会える機会はあまり多くない それでも11年の付き合いがあるのでそう簡単には切れないほど深い関係になっている 「そういえば母さんがねー『頼賀君のお見舞いに行くならついでに告白しちゃいなさいよ』とか言ってたよー本当に困るんだよねー」 何度も何度も聞き飽きている言葉に嫌気がさしているのか声だけとても不機嫌だった 落ち着いて話をしようとそばにあったパイプ椅子に座るように促す 芽衣はありがととは言ったものの頼賀以外の人物に対して不機嫌の矛先を向けていた 頼賀は何とか気をそらそうとする 「ま・・・まあ11年間あったらそういってからかいたくなるのもわかるが・・・それくらい俺達の・・・なんていうか絆とかを認めてくれいるんじゃないか?あっちは割と真剣に考えちゃってるんだろ?俺の親父も『芽衣ちゃんにならうちの息子を任せられそうだ』とか結構前だけど言ってたし」 長い付き合いをかなり良好に過ごせているからなのか冗談抜きでいつ結婚話になってもいいような体制に当の本人たちは苦悩する 「でもねえ、まだ16行ったかくらいでしょ、私たち。それに今までもずっとそこにいる程度の感覚でしかなかったしねー気が早すぎるんだよ・・・」 互いに同じ悩みの種で頭を抱えてしまう しばらくして芽衣が口を開く 「ねえ、近日中に退院出来そうなら外に出られないかなー?ずっとベットの上じゃ窮屈じゃないの?」 「つまりは外出る許可もらって来いと?」 「そんな感じー、一応日傘持ってきてるから夏の日差しにやられないように頑張るけどね」 準備万端かつ久しぶりの再会でこちらも少し長く一緒にいたかったので藍先生に頼んでみることにした すると意外とすんなりGOサインを出されてしまった。 ただし条件として完全に四肢が回復したかは微妙なので車椅子で、そしてタオルと軽食を持たされた なんでも、こうなることは新月姉弟から仕組まれていたようだった。実際に確認してみると芽衣宛てに廻陰さんから「明日くらいに外には出れるくらい回復してると思うぞ」てきなメッセージが送られてきていたり・・・藍先生には車椅子とタオルをはじめとした熱中症予防道具をそろえておいてとか・・・ さらには芽衣が俺の着替えをなぜか持ち込んでいたのでささっと着替えて難なく準備ができてしまった 姉弟に対して感謝とも余計な事とも捉えられそうな複雑な感情が渦巻いていった (この場合は感謝かな…こんな状態でも幼馴染との再会は落ち着くものがあるし) 車椅子に乗り芽衣が押す形で病院から出る 久しぶりの日光で目が慣れてなくてで影を作り慣れさせようとする すると芽衣がちょうど俺に影がかかるように日傘をさしてくれた 互いに気がきくのは良いなあと、たまにやる事被ることあるけど 互いに笑みを浮かべる 「ところで外に連れ出してはなんだけど」 5分ほど歩きだしたあたりで芽衣が本来は行く前に決めることを決めたいないことを気にする 「芽衣の行きたいところでいいよ。元々目的地なんて無いし一応これ散歩のつもりだから」 自分でも車椅子押せるけどなと言ったら 昨日まで四肢動かせなかった奴が言うな と頬をつねられてしまった これが平和な日常・・・今ならまだこのままでいられそうだ・・・と 取り敢えず公園でということで向かい 芽衣がベンチに腰を下ろす 「流石に暑い・・・夏・・・それも7月だからかなあ」 きつーいと芽衣も悲鳴を上げる 今日は7月15日の日曜日、明日は第三月曜日のため海の日で祝日だった この時期になると高校ではほとんどの場合授業は行われないので勉強の遅れと言ってもそんなに問題がないことを思い出して安堵する 「これは早めに戻らないと熱中症で病院送りになりそうだ」 「しょうもないことでそれはいやー」 この場の一人が数日前に不良(?)に絡まれて病院送りになっているので説得力が違った しれっとしょうもないこととは言っているが熱中症で運ばれる人はあとを絶たないのも事実であった 好奇心でデジモンには熱中症とかあるのか、どんな病気にかかったりするのか・・・アルファモン達に聞きたいことが山ほど浮かんできてしまう・・・ついこの前に結に対してデジモンはもう卒業してもいいんじゃないかって言ったばかりなのに (俺自身もまだデジモンに何かの未練があるのかね・・・なかなか捨てられないもんだな。人のこと言えないな) 一息ついたところで二人は外に限界を感じ別の場所に行こうとするが 直感的な不安に襲われる (・・・!?これは・・・あの時・・・と同じ感覚) 頼賀は一瞬のうちに違和感を感じ取った 自分が病院送りになった事件と同じような感覚で周りを見渡す 頼賀の鬼気迫る表情に芽衣は困惑し声をかけようとしたところでお互いの背後に何かが現れ 何かと認識する前に意識を奪われる (な・・・ん・・・だ・・・) 1分もしたころ人影は何一つと無く 残されたのは車椅子と日傘だけだった
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てとちん
2022年6月18日
In デジモン創作サロン
今にも消えてしまいそうな時に『それ』は現れた ぼんやりとした姿しか見えなかったが…その姿は『怪物』であった だが、不思議と恐怖は感じなかった むしろ、親近感を感じた そして見覚えがあるようにも思えた 無意識のうちに出た言葉は (ありがとう) 何故その言葉が出たのかはわからない その『怪物』が何者なのかも今はわからない そして 一時の夢が終わる ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 意識がはっきりしてくる・・・目を開いたがいまいちぼやけてよく見えなかった こすろうにも 腕が 手首が 指が 動かなかった 仕方なく目が慣れるのを待つ ようやく見えてきた風景は病室の一室だった 思わず口を開く 「なんで・・・病室に・・・?」 どうしてこんな状態になったのか記憶をたどろうとする しかし激しい頭痛で遮られてしまう (なんだよ・・・手も足も動かねぇ・・・動くのは目と頭と首かよ・・・) 今まで骨折とかをしたことがない新庄頼賀からしたら今までとは全く違う体験となった イライラしているところに聞きなれている声が聞こえた 声が来る方に顔を向けてみると 「あら?あなたかなりしぶといのね。それでいて自然治癒能力も高い・・・気分はどうかしら新庄頼賀(しんじょうらいが)君」 彼女は面会とかで使うパイプ椅子に座っていた 動揺しながらも口を開く 「なんで・・・あなたがここに・・・廻陰さん・・・」 そこには自分の友人である新月結の姉、新月廻陰(しんげつみおん)がいた 「何でってあなたの看病をしているのよ。今私の膝の上で寝てるこの子の代わりに・・・ね」 そう言われて頼賀は膝の方に目を向ける するとそこには結(ゆい)が廻陰の膝の上で座りながら寝息をたてている 瞼の下で光が変な反射がするのが見えたが気にしないことにして 「・・・重くないんですか?」 思わず心配の言葉をこぼす 「けが人のあなたに心配されるほど貧弱ではないわ、それにずっとやってきて慣れてるし」 「そういえば・・・なんで俺は病院に・・・?」 けが人という言葉に反応しスルーしつつ今ある疑問を声に出す その言葉を聞いた廻陰は少し驚きはしたが冷静な口調で事情を説明しようとする 「正直言ってあなたが覚えてないんだったらこの子しか全部知らないことになるのよね・・・起こす?」 「でも・・・疲れて熟睡しているみたいなのでいいですよ・・・ん?」 廻陰の提案を断ろうとしたところで間抜けな声が聞こえる 廻陰の膝の上で眠っていた結が目を覚ましたのだ 「ふぁあ~姉さん、頼賀の様子はどう・・・って目覚めてたの!?よかったー!!」 寝起きのまま喜びのあまりなのか手を握られた 全く・・・いつも感情の変化が急な奴だなーと思っていたら、廻陰が結の耳に小言で囁いているかのようだった 囁いているのはあまり俺に聞かせたくないことだろう と勝手に思い込み視線を逸らす 意識しないことで耳に入らないようにした 「頼賀君が目覚めたが記憶が抜け落ちている、それに尋常ではない再生能力も・・・もしかすると」 ・・・はずだった 普通ならば聞こえないほどの小さな声であるにもかかわらず もし万が一聞こえても何を言っているかわかるはずもない なのに頼賀の耳にははっきりと届いていた 届いていたがゆえに思考が追い付かず口調を荒げてしまう 「もしかするとって何!?確かに俺はそんなに怪我の治りが速くないほうだけど、急にこうなったのには何か理由があって廻陰さんや結には心当たりがあるっていうのか!?そしてそれは記憶が抜け落ちてることにも関係している可能性があると・・・詳しく説明してくれ!!」 言い終わった後に我に返り・・・表情に影ができる それからほとんど間を開けずに「入りますよー」と言って中に入ってくる人物が一人 その姿を見るや廻陰と結は二人そろってこう呼んだ 「「先生!」」 と、結達の担当医なのだと思っていた 「あら、廻陰ちゃん、結ちゃん久しぶりだね~何か月ぶりかしら?背伸びたんじゃない?」 廻陰と結に対してとても親しげに話し・・・母性を感じるような白衣を着た女性がそこにいた 「あなたは初めまして・・・じゃないわよね、中学で一回だけあっているはずだもの」 そう言われ記憶を手繰り寄せようとする・・・抜け落ちている部分に関係することでなければ問題なく思い出すことが出来た 「確か・・・結のお母さん?」 中学の授業参観で一度だけあったことがあるような気がした 「あら、覚えててくれていたのね、それはよかったわ、新庄頼賀君」 本当にうれしそうな表情をしてこう続けた 「一応私があなたの担当医になったの、改めて自己紹介するわ、私は[[rb:新月 藍>しんげつらん]]よ、よろしくね」 やはり名字が同じ・・・結の母親が医者なんて初めて知ったが・・・ 次の言葉で詰まってしまう 「強く信頼している友達なんだろう?記憶の補完ついでにあれのこととか話してやってもいいんじゃないかい?」 ??????? 訳が分からなくなってきた (記憶の補完と一緒に話さなければならないことがあるのだろうか・・・それもいままで言えてなかったことを・・・) 結の顔を見ると悲しそうな表情を、廻陰の方は覚悟を決めたかのような表情をしていた 「彼が私たちのことを知っても、信じてはくれなさそうですけどね」 廻陰が冷たく言い放つ そこで 「まあ物は試しでいいじゃないか、ここまで言っちまったらこの子も気になってしょうがない状態だと思うけどねえ」 言い出しっぺである本人は面白そうににやにやさせている 後は結ちゃん次第だねえと結に選択を迫っていく 「・・・その前に約束できる?これから話すことは僕たち家族と深い関係にある人にしか知られていない事・・・一度話を聞けば君はもう戻れなくなり・・・僕の見方も・・・きっと変わる。だから」 一呼吸開けて結は今まで以上に力強く問う 「君は今まで通り、僕と接してほしい、友達でいてほしい、僕は・・・怖かったんだ、知られることも、知られた後のことも・・・今まで積み上げてきたものが全部消えてしまうんじゃないかって」 「いつか言わなきゃいけないってわかっていたけれど・・・怖くて・・・折角3年以上も一緒に居られているのに・・・失うのが怖いんだよ・・・」 そう言うと結の顔には罪悪感からか涙がこぼれ落ちていた 「言いたいこと、全部言えたか?」 普段の口調を崩さず、頼賀は続ける 「結や廻陰さんがどんな道を歩んできたか、俺には想像できない。でもさ、今まで言おうとしなかったことを言ってくれるってことはそれだけ俺のことを信用してくれているんだろ?なら俺の答えは決まってる。」 「言ってみろよ。隠してきたこと。そりゃ俺にもお前に言えてないことがあるし・・・黒歴史とか・・・それに比べたら天と地ほどの差かもしれねぇが・・・」 そして笑顔になって 「ありがとな、結、お前と出会えたおかげで俺は毎日が楽しくなったんだ。結構お前の行動に振り回されたり呆れたりもしてたけど、後、なんか覚えてないけど病院送りになってたりと色々あるけどな・・・今お前が俺の一番の友達だって思えるんだよ」 そう聞いて、結は表情が崩れる 「ぶっ・・・なにそれ・・・はははは」 涙を流しながらお腹を押さえて笑い出す その様子を見て安心したのか頼賀は気になったことを口に出してみる 「ところでさっき俺を失うのが怖いとかwお前はどれだけ俺のことを愛しているのk」 「今すぐ黙らなければ貴様を集中治療室送りにするぞ?」 安易にからかい、ガチギレの結に脅迫されて生命の危機を感じる 「病院にいなければ半殺しにしていたかもしれない・・・」 「病院の外でも勘弁してくれ・・・」 他愛もない言い合いに発展していき周囲の空気が和んでいく 「平和ですね・・・」 「そうねぇ、結ちゃんにこんな友達がいるなんてねえ・・・安心だよ」 平和な光景を眺めている二人がしみじみと感じる 互いの覚悟は決まった 後は、 受け止めきれるかだ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 一息ついて落ち着いたところで 「じゃあ私はこの辺りで・・・この病室は個室だから3人でゆっくり話しなさいな、廻陰ちゃん、結ちゃん、頼賀君の状態の説明とかしておいてねー」 残った仕事があるのか、何かを察したのか藍先生は病室から退室していった 病室から出て離れていったことを確認した新月姉弟は頼賀に今回の事件について語っていった 「え・・・?マジかよ。俺が結を庇って頭殴られたっていうことなのか!?」 頼賀は気絶する直前のことを聞いて自分でも驚きを隠せない 「んで、頼賀が気絶した後、なんとか残った3体を気絶させられたんだけど・・・」 結がそこまで言ったところで結は表情を暗くして 「僕じゃ・・・何も出来なかった。頭から血を流していく頼賀をただ泣きながら呼びかけることしかできなかった・・・でもそこで異変を感じた姉さんが駆けつけてくれて」 結は廻陰の方を向く 「なんとなく周囲でおかしなことがあってね・・・スマホの画面がバグってたんだ、あと、結と君が本屋に行くことは知っていたから大体場所は絞れた。駆けつけた時には全部終わってた」 「私ができることは一つだった」 「常備している救急箱で先生から教わっていた応急処置を施し、病院に着くまでの時間稼ぎをすること」 (え?廻陰さんっていつも救急箱常備してて応急処置もだいたいできるの!?) 頼賀はいつぞやに結の大体何でもできる姉といっていたことを思い出して感心していた 「結に119番通報を促し、最大限できる限りのことをして救急車が来るまで処置を続けた」 「んで君は病院で治療を受けて不幸中の幸いとして五体満足で今ベッドで寝ているの」 廻陰さんがあらかたの説明はしてくれたが解せないことがあった 「あの・・・結局俺らからかつあげしようとしても飽き足らずぼこぼこにしてきたやつらは一体・・・?少し思い出せたけど・・・あれってデジモンなんじゃ・・・って」 一番大きいくらいの疑問をぶつけてみる 廻陰さんはともかく結は必ず何かを知っているはずだからだ でなければあのとき異常ともいえるほど落ち着いていた理由が分からない 「ここからが本題なんだよ・・・覚悟はいい?」 結の言葉にうなづいて返す 「結論から言うと、襲ってきていた4体のデジモン、あれは人間だった。それもただの不良みたいなかんじの」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」 結の言葉に訳が分からなくなってくる・・・人間がデジモンに?そんな馬鹿な、ただでさえデジモンですら空想の産物なのにそんなものになるなんて・・・・ 「んで、私の可愛い弟と頼賀君をくだらない理由で傷つけたその『4人(くそども)』の身柄は警察に引き渡したよ、裁判起こせば確実にふんだくれるな」 とんでもなく声が怖くなり、さらに口も悪くなっている廻陰に恐怖している頼賀に、結が言葉を引き継ぐ 「恐喝、暴行、殺人未遂・・・一応僕が最後吹っ飛ばしたのは正当防衛として認められてるし・・・というか気絶させただけなのに過剰防衛判定もらったらそれはそれで困るけど」 頼賀は苦笑いしている結にあることを聞く 「結は・・・わかってたのか?人間がデジモンになってるって・・・あいつらがそういうやつらだってことを・・・」 「・・・うん・・・」 「なるほど・・・あの時の違和感はそれだったのか」 「え?」 頼賀はその時に感じていたことをそのまま結に伝える それを聞いた結は納得したような反応をした 「ねえ、頼賀」 「たぶんだけど、あなたも前兆があったと思う」 「それって・・・デジモンになる・・・?」 「なるというかなれる・・・かな?」 「どのタイミングでだよ・・・少なくとも俺の覚えている限りそんなことなかったぞ」 可能な限り否定してみるが・・・ 「じゃあ僕を庇ったときのことは覚えてる?明らかに人間の・・それもけが人が瞬時に割り込める距離じゃなかったんだけど」 「・・・・無我夢中で詳しくは覚えてねぇよ・・・」 「本当に・・・?」 「ああ!!もう!!言えばいいんだろ!そうだよ、俺がへまやらかして蹴り喰らってダウンしてるときでもお前が心配してくれてることに劣等感を抱いてたらお前がバランスを崩しててとっさに助けたいと思っって走ろうとしたんだよ!!そこから先は覚えてない・・・せいぜい目が覚める前に何かと会ったような感覚だけだよ・・・」 今思い出したことを自虐含めてわかっていることを全部話す 結は今の言葉の自虐をスルーしつつ確信を持った様子で納得していた 「やっぱり庇うときに・・・一時的でもデジモンの力を使っていた・・・それも無意識のうちに・・・姉さんの言ってた異常なほどの再生能力も納得できそうだ」 「???つまり俺が今こうして生きているのも・・・俺の中に宿ってる・・・とかでいるデジモンのおかげっていうことなのか?」 「そんな感じに考えてる・・・もしかする僕や姉さんみたいに究極体くらいだったデジモンが宿ってるのかもね・・・」 色々話が飛躍しすぎているような気がするがなんとかついていく・・・ そして今何気なく聞き捨てならないことを聞いた気がする (僕や姉さんみたいに・・・・?) 疑問に思ったら聞かないわけにはいかなかった 「おい・・・まさかと思うが・・・言えなかったことっていうのはそれだったのか?」 「それもあるけど・・・まずはそれを伝えた方がいいかもね・・・姉さん!」 そう言うと廻陰は正気になり会話に復帰する どうやら話はずっと耳で聞いていたようで特におかしく思わず続ける 「じゃあ・・・自己紹介お願いできる?『相棒さん』」 じゃあ僕もという結 その瞬間・・・まるで別人にでもなったかのように雰囲気がガラッと変わった そして廻陰の口がひらく 「・・・初めまして・・・と言うべきだろうか新庄頼賀君?私はアルファモン。そう言えば君ならわかると思うが・・・今は自己紹介だけにしておくよ」 耳を疑った 恐ろしい雰囲気を出しながらも弟を愛する廻陰とは話し方も雰囲気も何もかも違っていたのだ・・・それに今聞いた名前に間違いがなければ・・・『アルファモン』と名乗っていた ネットワークの守護者に相当するロイヤルナイツの抑止力的存在がなぜ・・・(言ってしまえば最強クラスのデジモン) 続けて結も雰囲気が変わる 「そんじゃあ俺も・・・だな。俺の名はオウリュウモン、アルファモンの相棒だ」 これもまた耳を疑った・・・デジモンの中でも最高クラスの攻撃力を持つ『オウリュウモン』であると、それでいてさっきのアルファモンの相棒だと・・・頭がパンクしそうだった(しれっと一人称変わってるし・・・) 「とま、こんな感じで私たち姉弟はデジモンと一緒に生活していたっていうわけ、学校とか行ってる時間は眠ってもらってたりしてて邪魔にならないように配慮していてくれてたの」 元に戻った(?)廻陰が淡々と語るが頼賀が納得できるわけもなく 「い・・・一体いつから…」 「10年くらい前だったかな?僕が姉さんと出会う少し前くらいかな?確か姉さんはその1年前くらいにはもう邂逅していたって聞いたかな」 「そ、そんな昔から・・・」 「だから二人?2体?とも頼賀のことは知ってるよ。寝てても実質僕たちそれぞれと記憶とか感覚は共有してるから」 次元の違う話に疲れリアクションが出来なくなってくる・・・ そして納得する・・・事情を知らない・・・何もかもただの人間としての面しか知らない自分に気を使ってくれていたと・・・あの時の悲しい表情も・・・確かにとんでもない秘密だ・・・と そして更なる謎が・・・ (ん?10年くらい前に出会った?) 「おい、ちょっと待てよ。10年前に出会ったって・・・一体・・・?」 理解不能な言葉を聞きそれを理解しようと返す それに答えたのは廻陰だった 「簡単な話・・・と言っていいのかはアレだが、私と結、そして藍先生に血縁関係はない。言ってしまえば義理の家族だ」 なんということだ・・・義理の家族・・・だったら藍先生をお母さんと呼ばないのも納得がいく そしてと結が続ける 「ここからも大事さ。なぜ義理の家族となったのか・・・時系列的には姉さんからの方がいいかな?」 「わかった。だがここからはさっきのデジモンが宿っているよりも現実的で深刻な話になる・・・心して聞いてほしい」 義理の家族となったことは・・・そう考えつつも頼賀は頷くしか出来なかった・・・ここまで来て引くわけにはいかなかった。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 私の本当の家族は・・・父親がサラリーマンであり、母親が専業主婦、そして私のいたって普通過ぎる家族構成だった・・・聞いた話によるとかなり夫婦仲はよく父が色々と奔走している苦労人だったそうだ 俗にいう鬼嫁に近く有無を言わさずに父を黙らせることが出来るほど・・・そしてそんな両親のもとで私は生まれた 普通で人並みの幸せも得られると誰もが思っていた だが私が1歳のころに私は死んだ はずだった ちょうどその頃デジタルワールドで起こっていた事件にリアルワールドが関わっているとにらんだアルファモンがリアルワールドへやってきていた しかし世界の法則が違う・・・的な感じでアニメとは違いデータの肉体を維持できなくなっていた そんなところで消滅の危機に迫っていたアルファモンが死んで間もない私の身体に目を付けた・・・いやその時には死んでいたとは思っていなかったがな 赤子であれば容易に潜り込めるかもしれない 手段を選ぶ余裕がなかったアルファモンはやむを得ず廻陰の肉体に宿った 結果的に言えば成功であった。アルファモンと命を共有するという形ではあったが、私は息を吹き返した 病院にいた人や両親は「奇跡だ!!」と歓喜していたそうだ。そりゃそうだ、可能な限り手を施したが助けられなかった命が息を吹き返したのだ 死んで間もなかったからそれで済んだ話のようだがな それから5年後の6歳 その頃には私はアルファモンの存在を自覚し幼子特有の好奇心やらでアルファモンを困らせていたそうな そして親子3人と・・・自分だけが知る同居人(?)1名との小学校生活が・・・と思っていたさ 父が会社帰りに通り魔によって殺された まだ幼過ぎて父の突然の死に理解が追い付かなかった そして悲劇は連鎖する 母が病に倒れた よくは覚えてはいないが、『悪性腫瘍』と『全身に転移』だけは覚えている 今ではその意味が分かる・・・助かる可能性が低いことも 私は毎日、母の病室に通った ただのいつもが消えてなくなるのが本能的に怖かったんだろうと今では思う そして母が死んだ・・・ それからはその時の担当医であった藍先生が母と古い付き合いだったこともあって私を養子として引き取り育ててくれた ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ それから1年後・・・姉さんが7歳になったころ 僕が6歳になってすぐ 両親が他界した 理由を知っている人は居なかった ただ死んだ・・・とだけ伝えられ、もう帰ってこないとも・・・ もう帰ってこない・・・その一言で理解するのは容易かった 家族を亡くした私は雨の中、街をさまよっていた そしたら不良どもに・・・絡まれ、訳の分からないまま腹を頭を、全身を殴打され、重症を負った その時に姉さん・・・廻陰さんが通りかかって・・・不良どもを全員なぎ倒して・・・私を助けてくれた でもその時の僕は致命傷になってもおかしくない傷を負っていた・・・ でも廻陰さんは僕を見捨てずに応急処置を・・・そしてこの病院が近かったのもあって119番通報より藍先生に連絡して重症がいる、近いから抱えてでも連れていく って言って・・・アルファモンが廻陰さんへの肉体への手助けもあって病院に運ばれて一命をとりとめた 助かった後に助けた理由を聞いたときに・・・ 「似た者同士だったような気がした」 そう言われて・・・ よくは分からなかったけど 『体内にデジモンを宿している』ことだったみたいだったんだけど その後の調べで僕が廻陰さんと同じく『天涯孤独』の身であったこともあって 「一緒に暮らしたい・・・見捨てたくないんだ」 廻陰さんの藍先生対して初めての(?)わがままを言って・・・経過観察も含めて・・・そしていずれ恩返してくれよという形で養子になった それから色々ありながらも『オウリュウモン』と邂逅したり、身体鍛えたり・・・ 二人で高校に入ってから二人でアルバイトして今のマンションに住み生計を立ててるっていう感じにに落ち着いた ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 「こんなところかな。流石に6歳のころだし近しい人とか全然いないから僕のやつは詳しくは分からない」 そう締めくくる結に頼賀は 「そんなことが・・・というか廻陰さんの一回死んで蘇るって何?某超人特撮か何かなのか?二人が出会ったきっかけって救う救われるだったの!?廻陰さんのブラコン理由が分かった気がする・・・それに結の『失いたくない』の意味も分かった気がするよ」 二人の大雑把な説明に理解と納得と感想を持っていた 頼賀の反応に廻陰が少し驚いたようで 「ふぅん、結の考えた通り・・・なのか・・・珍しく私の読みが外れた・・・負けたなこりゃ」 一体何と勝負していたのかわからないが殺意が向いてないのでよしと考える 「つまり、お二人とは今までと基本的には同じで問題ないかと、流石に猟奇的大量殺人とかやってたら考えてましたけど(笑)」 「僕らがそんな風に見える?」 「見えるからそう言った」 「「(´・ω・`)」」 反射的に即答すると本当の姉弟と思われても仕方がないレベルに反応も似ていた・・・義理でも姉弟なんだなーと再確認する 強大なデジモンを宿していても、元はただの人間 力の使いよう次第でどうにもなる 破壊者にも、守護者にも 「俺には誰が宿っているんだろうな・・・はやく・・・会ってみたいな」 (無意識的にでも力の一端を使うことが出来たんだ・・・前兆はある。守られるだけなのはごめんだ) 「はあ・・・まずはこのけがを早く治さないと・・・」 異常な治癒能力があるとはいえ死にかけたのだ 数日はかかるはずだ・・・復帰後の勉学から目をそらしたくなる・・・ 現実と非現実の板挟みに苦悩する未来を見てただ嘆く・・・ 「もっと心の余裕が欲しいなぁ・・・」
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てとちん
2022年6月04日
In デジモン創作サロン
・・・・・・ (ここは・・・・) 思わず呟いた言葉が頭の中で反響していく (そっか・・・ここは夢なんだ・・・) 自分がどんな状態なのかを認識(?)したその者は空を漂う雲のような感覚を感じ、委ね、流されていく (夢なら何かの光景・・・覚えてなくてもいいから見たいなあ・・・勝手な妄想でもいいから・・・) その者は夢なら夢らしいものを見たかったと心の中で思う (・・・ん?あれは・・・?) 少し変わったものが見えた 何かが戦っている・・・それも一対一程度じゃない・・・恐ろしいほどの数・・・まさに軍隊とでも呼べそうなほどの数だった・・・ (でも、なんだろう・・・人間じゃ・・・ないよね・・・) それは明らかに人間とはかけ離れたものであった 一言で表すなら 『異形』 (こんなのを夢で見るなんておもわn・・・・ そこで夢は終わった 正確には終わってしまったの方が正しかったかもしれない 今日もまたいつも通りの1日が始まる ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ pppppppppppppppp 目覚まし時計のアラーム音で意識がだんだんはっきりとしてくる 「もう、朝なのか・・・変な夢・・・見ちゃったな」 目をこすり体を起こす 時刻は朝7時30分を示している 周囲を見渡すと人影が一つ…起きたことに気づくと 「お!起きたね、結(ゆい)ー!!」 そう言って結と呼ぶものに飛びつく制服姿の中性的な容姿をした人間『新月 廻陰(しんげつ みおん)』 「ぐほぉおおお?!!」 当然である、まだ体を起こしただけで下半身は布団の中なのだ 不意に勢いよく抱き着かれた苦しさと己穏の体重が布団を挟んだとはいえ下半身に一気にかかって痛むのだ 「おはよう~!朝ごはんとお弁当はできてるから早く着替えて遅れないように学校行こうかー!」 気にもしない様子で朝の支度が出来てると言う 「それより・・・早く・・・抱き着くのを一回やめて・・・足が痛いし動けないよ姉さん」 「あ・・・ごめん」 どうやら廻陰は一切気にせず本能(?)のままに抱き着いていたようだ 弟の結に指摘されて初めて気づいた様子で 廻陰は顔をしょんぼりさせて渋々、立ち上がった 「抱き着かれるのは嫌いじゃないんだけど・・・時と場合をちょっと考えてほしいなあ」 「うん・・・ごめんね」 どんどん姉のテンションが下がっていくのに危機感を感じた結は話題の転換でこれ以上下がないように図る 「ところで今日は何作ったの?」 定番中の定番の朝の話題で切り抜けようとする 「フレンチトーストを挑戦してみたんだけどどうかなーって、私の舌だと問題なかったけど結の口に合うかが心配で・・・」 「今までの姉さんの料理で姉さんが食べられたものは大体僕も食べられたから問題ないと思うけど・・・食べてみないとわからないかなー」 たまに姉が作る凝った朝食に期待と不安が渦巻く 就寝着から制服へ着替えダイニングテーブルの椅子に座りお皿に乗ったフレンチトーストを手に取り口へ運ぶ その様子を廻隠が横から覗き込む…まるで反応を間近で見たいと言うかのように… 結果的に言えばかなり美味しかった 不覚ながら無心で貪るように食べてしまい美味しいという言葉しか浮かばないくらい…記憶が飛んでいると思えるほどの美味しさだった 「ふふ♪どうだった?」 結果など横から覗き込んでいたら分かりきっているのに廻隠は結に聞く どうやら本人の口から感想を聞きたいようだった 盛ってもすぐバレてしまうので正直に言った 「記憶が飛んでしまうくらい美味しかったです」 その言葉に廻隠は笑顔になって 「じゃあさっさと行きましょうねー、もう8時だよー」 「え?・・・嘘っ!?」 どうやら本当に記憶が飛んでしまっていたらしい 慌ててお弁当とカバンを持って二人は家を出た ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 8時20分 二人は自分たちが通っている高校『明光学園』に着いた 登校時刻である30分に近いのもあって生徒が道路にはみ出るほどいて大変混雑している 「はあ・・・今日体育あるなあ」 そう呟く結に廻隠が 「確か『持久走』だったっけ?まあ私もきつかったから気持ちはわかるよ」 すかさずフォローを入れていく 「姉さん的には記録を取られるから変に意識するからじゃないの?2時間ぶっ通しで走ったりもするのに」 「変に緊張するときって疲れないのかなー?」 「いや疲れるけど姉さんはいろいろとおかしなところが・・・っとじゃあ僕はこの階だから、またあとで」 日常会話をしていたらいつの間にか自分のクラスのある5階へ着いてしまったようだ、姉のクラスは7階だ 「じゃあまたあとでねー」 そう言って二人は別れる それから2つほど教室を通り過ぎて結の所属するクラス『1-E』の教室に着き、上履きに履き替え自分の席で身支度をする するとそこに 「よう!おはよ、今日の体育持久走だよメンドクセーよな?」 「そうだねーはっきり言って走りたくないね」 結と親しげに話す友人『新庄 頼賀(しんじょう らいが)』 「それって体育全般嫌いなんじゃね?あれ?」 「剣道とか柔道、空手は好きだよ?部活のは嫌いだけど」 「なんで部活のは嫌いなんだよ・・・わけわからんのだが・・・」 「だって基礎体力つけるためにーとかで走らされるんだもん」 「・・・・・」 思った以上に理由が酷過ぎて頼賀は絶句する その時チャイムが鳴りSHRが始まる 一方そのころ廻陰は 自分の教室である『2-D』でさっさと身支度を整えてぼーっとしていた (いつも通り過ぎるのもつまらないな・・・恐らく結は頼賀君と帰るだろうし) 7時間ほど先を考えてため息をつく・・・暇だ・・・と (影が薄いのもなー友達ができないし交流がほとんどないしで) (かといって存在感が大きすぎるのも面倒な人に絡まれるしで嫌なんだよなー) 自身の抱えるジレンマに気づく者はおらずただ時間が過ぎていった ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ お昼休み、生徒が校内で取れる唯一長めの休み時間、大抵はこの時間に昼食を購買やら食堂やらお弁当を食べて午後の授業に臨む 「結ー今日の弁当の中身はなんなんだ?今日も廻隠さんの手作りなんだろ?」 結の昼食は姉の廻隠特製手作り弁当、なんでも栄養素の調節が容易で食費もあまりかからないからだそうだ 「なんでいつも大変なのにお弁当は凝ってるのかな?毎日同じもので飽きないようにしてるって言うし……ん?弁当箱以外にも何かある…?」 変な袋も入っているのを見つけ、取り出してみる…付箋付きの保存パックだった 『今日の結のお弁当にも入っているぶりの照り焼きだよ!頼賀君もぜひ食べてみて感想を教えて!』 「………………………」 付箋を見て2人は沈黙した しばらくして結が沈黙を破る 「昨日5切れ作ってたのはそれが理由だったのか…」 「え…なんで俺なんだ?」 当然の疑問だが、結にはなんとなく察しがついているようで 「僕が特に仲良いのが頼賀だからじゃない?よく家でも頼賀の話出すし、たまに会うから頼賀の事を少しは知ってるのもあると思うよ」 「!?俺の話!?いったい何話してんだ!?」 自分が恐れている廻隠がどんなイメージで自分を見ているのかに恐怖と不安がありながらも好奇心が輝いていく 「うーん」 少し思い出すように頭を捻って 「色々バカやったり勉強で悩んだりほんのちょっとバカにしあったり、あんな友達が居てくれて嬉しい、アイツがいるから学校が楽しいとかかな?」 盛ったりしている様子が全くない自分に対する気持ちを聞いて頼賀は無意識的に赤面してしまう え!?なんかまずいことでも言った!?という結の焦った声も届かない 「もう…これ以上言わないでくれ…俺がもたなくなるから…」 顔を向けることが出来なくなった頼賀は廻隠特製ぶりの照り焼きをさっさと食べて静かに「おいしい」と零した 当然結には聞こえない程度の大きさで 「ああ言われて…恥ずかしくならない奴がいるのかよ」 若干の怒りに似たものを含めて呟いた 残るは2限、もうひと頑張りしますか ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 放課後となった 「じゃあ一緒に帰るか?結」 頼賀から話を振られる 「良かった…落ち着いたんだね」 「まあな…」 感情の整理はついたが影響は深く残る…こりゃ数日はキツイかなと頼賀が内心思っていた時 「じゃあ今日はちょっと寄り道してみようかなーって思うんだけどどうかな?」 まるで現代の普通の高校生の会話をしていることを知ったら姉はどう思うのだろう・・・複雑な感情を抱きながら答える 「・・・なあ」 「?どしたの?」 ちょっと怯えたような様子で頼賀が口を開いた 「お前の・・・姉さん・・・廻陰さんに一言言わなくてもいいのかなーってちょっと心配になって・・・ほら廻陰さんお前に対して色々と目を光らせたりしてるだろ?怖くて・・・あとぶりの照り焼きの感想とかも…」 「大丈夫だよ、姉さんのことだから今日僕が頼賀と一緒に帰ることぐらい予測してると思うよ。ぶりは私から伝えても良いはずだし…もしかしたら教室に凸ってくるかもだけど」 「それはそれで怖いんだが!?」 廻陰の存在自体は薄いが、弟の結に対しての過保護具合は関わりの深いの人たちには結構知られている あとは自分の腕前に対する評価にも敏感だったり たまに校内で噂になるくらいだ。ブラコンだとかで 姉が弟のことを思ってくれるのはありがたいが・・・流石に限度があると思いたい 更にはどこからキャッチしたのかわからない情報まで揃えてくるという・・・地獄耳にも限度がある程度まで なお、頼賀はそんな感じでトラウマを持っているので廻陰のことを恐れている人のうちの一人である 愛情は本物だと感じてはいるが圧が強い それも3年とは訳が違うくらいの圧が 結も過保護具合がなければ完璧なくらいなんでもできる姉に頭を抱えている 「なんか言われたら僕も謝るから!心配しないで・・・?」 「・・・お、おう」 二人そろって同じ存在に恐怖している頃、屋上で一人の影があった 屋上にだけ少し強めの風が吹き髪がなびく 「今日は何かが起きるような気がする・・・」 「そうか・・・それでお前はどうするつもりなんだ?私とお前の力ならば未然に防ぐことも出来ると思うが?」 そこには1人しかいないはずにもかかわらず二人分の声がする 「いや、直接関わることはしないよ、少なくともあの子が危なくなったら・・・話は別だけどね」 「ま、これはお前の人生だ。どうするかの最終判断はお前に任せる」 「ふふっ、ありがとう・・・『相棒さん』」 そう言うと一つの影は完全に姿を消した 一つも痕跡を残さず・・・に ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 「取り合えず本屋行きたいかなー駅前の」 校門を出てそう話す結 「本屋?珍しいな、参考書でも買うのか?」 頼賀から本当に珍しがられていると声から感じる 「さあ、どうだろうねー当ててみてよ!」 結は自分でも難しいことを頼賀に言ってみる 「当ててみろって・・・結構きついな・・・考える時間をくれ」 そう言うと頼賀は考え込んだ 結がわくわくしながら待っているのが容易に想像できて思考を加速しようとする (結が本屋だと…本、本、本・・・漫画、小説はほとんどデジタルでしか読んでないし紙媒体でも図書館で借りている・・・漫画・小説以外の・・・それも結がわざわざ俺と一緒の時に買いに行くやつといえば・・・) (結の趣味で俺の知っている奴は・・・) 思い浮かんだ答えは 「デジモン・・・図鑑的な奴か・・・?」 「あーやっぱり分かっちゃう?」 何とか正解を導き出せた頼賀は一息つく、そして 「お前高校生にもなってまだデジモンにハマってるのか?流石にもういいんじゃないか?」 デジモン・・・正式名称デジタルモンスター デジタルに存在するモンスターとして世にでたタイトルで当時は大人も子供もやりこむといったレベルになったりもしたがピークは過ぎていったが一定のファンがいて根強い人気がある たまに大きなSNSでトレンドになるレベルで 出たのは俺たちが生まれる少し前だったか、俺の知る限り中学で結に出会った時には既に姉共々ファンとなっていた・・・俺も結ほどじゃないが好きなデジモンがいたりでそれがきっかけで仲良くなったという経緯がある それと同じ趣味を持つ姉弟とかに憧れたりもしたが・・・頼賀はあいにく一人っ子である そういう意味では・・・デジモンに感謝している。こんなにも楽しい奴とめぐり合わせてくれたしで 「好きなものがあってもいいじゃない!大人に近いからと言って好きなものを手放す理由にはならない!」 「まあそれはごもっともなんだが・・・」 結のポジティブ思考についていけなくなる・・・ 話題を変えようかなーとも思っていた時、結が立ち止まった それもすこしやっちゃったみたいな顔で 「どうした?」 不安になって声をかける 結が恐る恐る口を開く 「道一本間違えちゃった・・・」 「なんだ、だったら路地裏でもいいからさっさとその一本の修正しようぜ」 結が道を間違えるなんてめったなことだったが、いつもの調子で返すことが出来た 結が小声でごめん・・・ごめんと呟きながら近くにあった長めの路地裏に入っていった 「路地裏なんて滅多に入らないからなーなんか新鮮な感じがするよ」 二人とも比較的大きな道を通るだけで家へ帰ることが出来る、結はマンションで頼賀は一軒家だが・・・ 「アニメでもあったよねーこういう路地裏。姉さんもたまには普段と違うところ行きたいって言ってたしその気持ちわかる気がしてきたよ」 現代の高校生だとあまり通らない路地裏に二人は興奮する しかし頼賀の興奮は一瞬で恐怖に塗り替えられていった いや、正確には異質な空気によって本能的に危機を感じたのだ ふっと周りを見渡す 何もなかったが不安が収まらない・・・心拍数が増加し冷静な判断が出来なくなっていく・・・ 結が心配そうに大丈夫?と声をかけたがほとんど耳に入らなかった まだ夕方でもそれなりに日が長いはずにもかかわらずいつの間にか太陽光がほとんど届かなくなってきている ただ目の前にない何かに恐怖を覚え・・・震えるだけ・・・ 次の瞬間 恐怖の正体が目の前と後ろに現れるのを感じた 結が周りを見て何かをつぶやいたように見えた 数を言っているのか特徴をつぶやいたのか・・・頼賀には分からなかった 少しだけ慣れたのか自然と五感がいつもの調子を取り戻していく そこにいたのは人間は少し違う『何か』であった それは一言で言えば 『怪物』とも『異形』 取れるものであった なぜ少しと思ったのかはわからない でもなにかが・・・ 直感で自分たちと似たものを感じたのだ 目の前にいるのは『ちょい悪ウサギ』っぽいやつと『棍棒を持った緑色の鬼』っぽいやつ 背後にも目を向ける 『赤いティラノサウルス』っぽいやつと『毒キノコ』っぽいやつだった 不思議とそれらには見覚えがあった そして疑問が出来た デジモンの種類にも似たような奴がいたはずだ デジモンは空想の産物のはず・・・もし仮に居ても今までそんなニュースやつぶやきはなかった なぜ今になってこんな路地裏で現れた それに待ち伏せとも考えられるタイミングであった・・・出来過ぎている そんなことを考えていると結がデジモン(?)相手に口を開いた 「あのーそこを通してもらえませんか?僕たちこの路地裏を通り抜けたいだけなんですよ」 相手を刺激しないように用件を伝えようとしていた よくこの状況でいつもの声で話せるなと感心してしまいそうだった (だが言葉が通じないデジモンもいる・・・) 本当に大丈夫なのかと心配していると 「トオしテやってモいイが、あリガねゼンぶおイテけ」 背後の『赤いティラノサウルス』がぎこちないが日本語を話した 「!!???!?」 (しゃべった・・・今まぎれもなく日本語で喋った) 現状の恐怖に理解不能な恐怖がプラスされる (もう訳がわからねぇよ・・・夢なら覚めてくれよ・・・) 理解が追い付かず混乱していく 一方で結は特に驚いた様子もなかった 肝が据わっているというレベルではない・・・慣れているとだけでは言えない 落ち着きすぎている!! 「金銭ねぇ・・・残念ながらほとんど持ってないのさ、あるとしてもおつりの五円だけ・・・」 結の様子からしてそれは本当なんだろう・・・本を買う手段はなにも現金だけではない 本屋であれば図書券やら図書カードやらでも買える それを聞いた『緑色の鬼』があきれたように俺にも聞く 「おい!おめぇはどんぐらい持ってんだよ」 今度は割と流暢に話していて驚いた 緑色の鬼がサッサと答えろと急かしてくる・・・割と単純な悪とは言えないような気がした 気を取り直して口を開く 「200円・・・普段からお金はあまり持ち歩かないから・・・」 これくらい渡して無事で済むなら・・・と頼賀が思っていると 「それぽっちだけじゃ足りねぇな!!」 予想通りの言葉をウサギもどきが叫ぶように言った (デスヨネー) 「・・・通らせてもらえず引き返させてもくれない・・・何をするつもりなんですか?」 結がそう言って頼賀ははっとなる 行くのも引くのも出来ない・・・ (金銭はおまけ程度で最初からこれが狙いだった!?) 今度は毒キノコもどきが口を開いた 「お前のその目が気に入らねえし金の量も気に入らねぇ!!じっくり痛めつけてから財布や金目の物を頂かせてもらうぜぇ」 毒キノコもどきがしれっと追いはぎ宣言をすると4体は構えた それを見て結も迎撃の体制みたいに腰を低くする 「4-2でも多勢に無勢じゃないか・・・」 嘆きながらも仕方なく避ける準備はする 次の瞬間、熱気を感じた すると結が頼賀の首を掴んで無理やりかがませた その刹那 人間の頭くらいある火球がすぐ上を通り過ぎて行った 少し遅れて何かに当たって溶ける音が聞こえた すると身近で何かが焦げる音がした。はっとなって見ると今の一瞬で抜けた髪の毛が跡形もなく塵になっていた そこで頼賀はぞっとする もし結がとっさに無理やりかがませなければ髪だけではなく、良くて顔、悪くて全身やけど・・・それか焼死体になっていたかもしれなかったからだ 「分が悪すぎるな・・・」 結が悔しそうな口調で零す さっきの火球は結がいなかったら避けられなかった それを理解したとき頼賀は、自分が足手まといだと痛感する (力でダメなら・・・頭で・・・) そう考えた頼賀は既視感を感じていた・・・ (待てよ・・・仮にあいつらが人並みの知能を持っているデジモンでもアニメとおんなじ感じで行けても不思議ではないのでは?少なくともあのウサギもどきと毒キノコもどきは成長期だったはずだ。なら・・・四肢と頭で無理やり倒すことも出来るのでは‥?) 一筋の希望を見出したが現実は甘くない 残っている恐竜もどきと鬼もどきは成熟期・・・成長期の1個上の基本的な戦闘段階の2段階目 しかもさっきの火球からして攻撃が当たれば無事では済まないのは明白・・・ 顔を上げてみると結が目だけ俺に向けていた その顔はまるで「OK察したわ」とでも言っているかのように笑顔だった (これでも3年の付き合いがあるんだ。賭けてみるしかない!) 次に動き出したのはウサギもどきだった 飛び込みながら拳を作って殴ろうとしてくる 頼賀は隙の大きい攻撃を見逃さず、すかさず足で蹴り落とす 「ぐへぇ!?」 完全に慢心でもいていたかのような反応だった 「おらよ!」 しかし次の瞬間、鬼もどきの蹴りが腹に命中してしまう 「しまっ・・・」 蹴りが腹にクリーンヒットしてしまい脇の壁まで吹っ飛ばされてしまう (油断しちまった・・・) 1on1ならまだしも二対四なのだ・・・一人ずつ欠けたらそれこそ絶望的だ それも厄介な成熟期クラスがまだ二体もいる・・・手負いを庇いながらだったらこの先は誰でもわかる このままだと確実に負ける 最悪の事態に近くなり焦るが手負いが焦ったところで何も変わらない これ以上戦闘に介入出来ず、下手をすれば人質にされかねない 幸い相手はまだ人質を取るような行動はしない様子だった 怪我の痛みが響き口元を拭うと汗とは違う何かが付いた 「ちっ、吐血か口を切ったか」 もし仮に吐血なら最悪の事態・・・臓器の損傷を考えなければならない なんとか壁に寄りかかり体を起こす すると結が一人でなんとか三体を相手に攻撃を捌いているところを見ることが出来た こうなってくると相手は手段を選らばなくなってくるだろう・・・仮に殺しても今のこの世界ではデジモンを捕らえることはほぼ不可能なのだから 「くそっ!せめて俺も成熟期を一体くらい足止めできれば・・・」 反撃のタイミングを見誤った自分を責めることしかできない自分に涙がこぼれ落ちる (あいつがわけわからん連中相手に戦ってるのに一人泣いているなんて…情けねぇよ、俺) 結がちらっと一瞬だけ頼賀の方を見る その顔は悲しそうだった 「なんでだよ・・・なんでなんだよ・・・」 結のその表情を見ることが出来た頼賀はさらに自分に対しての悔しさを、情けなさを感じていく 「なんであいつは自分のことよりも俺のことを気にかけるんだよ・・・」 悔しさではちきれそうになった時 結が捌ききれなくなりバランスを崩した この隙を逃さなぬように鬼もどきが棍棒を振りかざす ドゴーンッッ!! 何か硬いと硬いものが当たる音がした 口より身体が先に動いていた 一瞬だけ痛みが引いたような気がした でも今はそれに感謝する 守れれば・・・ 自分の気が済めばそれでいい 結は         自分を庇った頼賀(とも)を見て限界まで目を見開いていた 庇った本人の顔は    苦痛に歪んだ表情ではなく 満足そうな表情をしていた 理屈では説明できない状況になり全員の動きが一瞬止まる 頼賀は結の真横に倒れた 結の無事を確認して 「よかった・・・」 そう言い 新庄頼賀の意識は途切れた
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てとちん

その他
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